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試作人基礎講座

公開日: | 更新日: | 試作人基礎講座

銅の特徴と活用~導電性・加工性に優れた金属素材~

おはようございます!本日は材料シリーズ~銅編~です。
ご存じの方も多いと思いますが、わかりやすく解説していきますので、是非ご覧ください。

必達試作人
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銅とは

銅の基本特性と歴史

銅(Cu)は、金属元素の中でも最も古くから人類に利用されてきた素材の一つです。
周期表の11族に属し、原子番号は29。
赤みがかった金属光沢が特徴的で、常温では安定しており、非常に高い延性・展延性を有しています。
古代から「赤金(あかがね)」とも呼ばれ、その独特の色合いと扱いやすさから、装飾品や道具として重宝されてきました。
人類が初めて手にした金属は金や銀とも言われますが、実際に道具として使用され始めた金属としては銅が最も古いとされています。
紀元前8000年ごろの中東地域で自然銅が発見され、それを石で叩いて加工する技術が発展しました。
やがて紀元前3000年ごろには銅と錫を混ぜた青銅(ブロンズ)が登場し、「青銅器時代」という新たな文明の幕開けを告げました。
現代においても、銅は電気・電子産業をはじめとしたさまざまな分野で不可欠な素材となっています。
特に高い導電性と熱伝導性を活かした用途が多く、電線や基板、熱交換器などに広く使用されています。
また、加工性が高いため、板材・線材・管材といったさまざまな形状に加工できる点も大きな利点です。
さらに、銅は抗菌性にも優れており、医療機関や公共施設のドアノブ、手すりなど衛生面が重視される場所にも活用が進んでいます。
このように銅は、古代から現代に至るまで人々の生活と密接に関わってきた、非常に汎用性の高い金属素材です。

銅の化学的・物理的性質

銅(Cu)は、その特性から多方面で重宝されている金属ですが、特に注目されるのはその化学的・物理的な性質のバランスの良さです。
ここでは、銅の基本的な性質について、科学的な視点から詳しく解説します。
まず、銅の原子番号は29、原子量は約63.55。
常温・常圧での結晶構造は「面心立方格子(FCC)」であり、これが銅の高い延性・展延性を支える要因となっています。
面心立方構造を持つ金属は、原子が滑りやすく、変形しても割れにくいため、薄く延ばしたり、細く引き延ばしたりする加工に適しています。
銅線が非常に細くても切れずに扱えるのはこの構造によるものです。
電気伝導性については、金属の中で銀に次ぐ高さを誇ります。
具体的には、室温での電気伝導率はおよそ5.96×10⁷ S/mであり、銀に次いで第2位。
しかし、コストや酸化のしやすさの観点から、実際の産業用途では銀よりも銅の方がはるかに広く使われています。
高電流が流れる回路や電力ケーブルに銅が使用されるのはこのためです。
また、銅は熱伝導性にも優れており、その値は約400 W/(m·K)と非常に高い水準です。
これにより、銅はヒートシンクや熱交換器、クッキングヒーターの内部構造など、熱を効率よく伝えたい用途にも重宝されています。
化学的性質としては、空気中で緩やかに酸化される性質を持っています。
酸化により表面に酸化銅(Cu₂O、CuO)や炭酸塩(緑青)が形成され、これが銅の独特のくすんだ赤茶色や緑青色の外観につながります。
ただし、酸化層が表面に形成されることで内部の腐食が防がれる「保護被膜効果」もあるため、耐候性はむしろ高いとも言えます。
また、銅は塩酸や硫酸などの酸には比較的溶けやすい性質を持ちますが、硝酸とは激しく反応して酸化銅(II)と二酸化窒素を生じるなど、特有の反応性もあります。
これは金属としては化学的に「中程度の安定性」と評価され、純粋な耐薬品性という観点では他の貴金属に劣る一方、反応性の制御がしやすいという利点にもなります。
このように、銅は優れた導電性・熱伝導性に加え、延性・展延性にも富み、さらには酸化による耐食性や抗菌性も兼ね備えた、非常にバランスの取れた金属材料です。
その特性の理解は、銅を適切に選定・活用するうえで非常に重要です。

銅の種類(純銅・無酸素銅・タフピッチ銅など)

銅はそのままでも高性能な素材ですが、用途に応じてさまざまな種類に分類され、特性が微妙に調整されています。
特に工業用途では、純度や含有成分の違いによって大きく性質が変化するため、適材適所の選定が重要です。
ここでは代表的な銅の種類とその特徴について詳しく解説します。

● 純銅(C1100、タフピッチ銅)

最も一般的な銅材料が「C1100」と呼ばれる純銅、別名タフピッチ銅(TP銅)です。
銅純度は99.90%以上で、導電性と熱伝導性に優れています。
微量に酸素を含んでおり、その含有量は約0.02〜0.05%。この酸素が銅の脱酸工程における不純物を除去する役割を果たすため、工業的に非常に安定した材料とされています。
タフピッチ銅は電線やバスバー、電極、端子など、電気的な性能が重視される用途に広く使われています。
ただし、酸素を含むため、水素脆化と呼ばれる現象が起こりやすく、高温環境で水素と接触すると内部に亀裂が生じることがあります。
これを嫌う場合には、次に紹介する無酸素銅が選ばれます。

● 無酸素銅(C1020)

C1020は「無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper)」と呼ばれ、酸素含有量が0.001%以下に抑えられた高純度の銅です。
純度は99.96%以上とされ、タフピッチ銅よりもさらに高い導電率を持ちます。
高真空環境や高周波用途において酸素による問題が生じないため、特に電子・通信機器や真空管、精密機器部品などに適しています。
また、無酸素銅は水素脆化の心配がほとんどないため、高温での使用にも安心感があります。
その反面、製造コストはやや高く、加工性もやや劣る場合があるため、コストと性能のバランスを見て選定する必要があります。

● 脱酸銅(C1201, C1220)

脱酸銅とは、製造時にリンなどの脱酸剤を添加して酸素をほぼ完全に取り除いた銅で、耐食性に優れているのが特徴です。
特にC1220は給湯管や冷暖房用の配管、熱交換器など、配管材料として広く使用されています。
溶接性にも優れており、はんだ付けやブレージング(ろう付け)にも対応しやすいというメリットがあります。
導電性は無酸素銅やタフピッチ銅よりもやや劣りますが、配管など熱的・機械的性質が重視される分野では問題にならないレベルです。
これらの特性から、脱酸銅は電気というよりは「熱」と「流体」に関する用途で活躍しています。

● 特殊銅・高機能銅合金

上記以外にも、機械的強度や耐食性を向上させた特殊銅材料があります。
例えばベリリウム銅(Cu-Be)は銅にベリリウムを添加した合金で、高強度・高ばね性を持ち、精密ばねや金型部品に使用されます。
また、テルル銅(Cu-Te)は切削性を改善するためにテルルを添加したもので、機械加工に適しています。
こうした特殊銅材料は、要求される性能に応じてカスタマイズされており、非常に専門的な場面で重宝されます。
このように、銅は「純銅」という一括りでは語れないほど多様な種類が存在しており、それぞれの特性に応じて最適な用途が見出されています。
次項では、こうした性質を活かした「銅の優れた特性」について掘り下げていきます。

銅の優れた特性

銅

高い導電性と熱伝導性

銅が広く利用されている最大の理由のひとつが、その優れた導電性と熱伝導性です。
この特性は、電気・電子機器から熱交換器、建築設備に至るまで、実に多岐にわたる分野で重宝されています。
ここではその科学的な根拠と具体的な応用例について詳しく解説します。

● 電気伝導性:銀に次ぐトップクラスの性能

金属の中で最も電気伝導率が高いのは「銀」ですが、銅はその次に位置する非常に高い導電性を誇ります。
室温での銅の電気伝導率は約5.96×10⁷ S/m(シーメンス毎メートル)であり、これは鉄やアルミニウムの数倍に相当します。
たとえば、鉄の伝導率は銅の約17%程度、アルミニウムでも60%程度です。
このような高い導電性により、銅は配電用の電線・ケーブル・バスバー(大電流の導体)・モーターの巻線・プリント基板の配線などに幅広く使用されています。
特に電力損失を最小限に抑えたい送電系統では、銅の選定が極めて一般的です。
さらに、銅は表面酸化によって導電性が著しく低下しにくいという利点もあります。
銀は酸化により表面が劣化しやすいのに対し、銅は酸化銅が比較的安定した保護被膜となるため、長期間にわたって安定した導電性能を維持できます。

● 熱伝導性:熱をすばやく逃がす金属

銅は熱伝導率においても非常に優れた金属です。
その値はおおよそ400 W/(m·K)で、これは熱を非常に効率よく移動させる能力を示しています。
たとえば、ステンレス鋼(約16 W/(m·K))や炭素鋼(約50 W/(m·K))と比較すると、桁違いの熱伝導率を持っています。
この特性は、ヒートシンク、冷却管、熱交換器など、熱を効率的に拡散・排出したい場面で特に重要です。
たとえば、パソコンやサーバーのCPU冷却、LED照明の放熱機構、または冷暖房機器の熱交換フィンにも銅が用いられています。
とりわけ無酸素銅は、酸化物や不純物が少ないため、さらに高い熱伝導性能を発揮します。

● 銅の特性は「バランスの良さ」がカギ

導電性と熱伝導性に優れる金属は他にも存在しますが、銅はそれらを高い水準で両立しており、かつコスト・加工性の面でも非常にバランスが良いというのが特筆すべき点です。
銀は導電率で銅を上回りますが非常に高価であり、またアルミニウムは軽量であるものの、強度・接触信頼性などで劣ることが多いため、銅の代替には慎重な設計判断が必要です。
その結果として、銅は“標準素材”として最も多くの回路・構造に使用される金属となっており、特別な制限がない限り、まず第一に検討される材料です。

加工性と成形性

銅は優れた電気的・熱的特性を持つだけでなく、加工性と成形性にも非常に優れた金属です。
これにより、複雑な形状の製品や精密部品を容易に製造でき、多種多様な分野で活躍しています。
本項では、銅の加工特性に焦点を当て、切削・塑性加工・接合など各種工程におけるメリットや注意点について解説します。

● 高い延性と展延性:複雑な成形が可能

銅は非常に延性(引っ張りで伸びやすい性質)と展延性(薄く広げやすい性質)に優れた金属です。
これにより、薄い板状や細い線状に加工するのが容易であり、電線やシート材、冷却フィンなどの製造に最適です。
たとえば、銅線はわずか数ミクロンの太さにまで延ばすことが可能で、超極細線として精密電子部品や通信機器に利用されます。
また、銅板も非常に薄く仕上げることができ、建材や装飾、ラミネート素材として使われるケースも多いです。

● 切削加工のしやすさ:安定した機械加工が可能

純銅はやや粘りが強いため、切削加工では工具への付着やバリの発生に注意が必要ですが、適切な切削条件を設定することで安定した加工が可能です。
特にテルル銅(Cu-Te)などの合金銅は、純銅よりも格段に切削性が良く、NC旋盤やマシニングセンタによる加工にも適しています。
銅は加工硬化しにくいため、連続加工でも物性変化が少なく、安定した寸法精度を保ちやすいという利点があります。
また、切削くずもリサイクルしやすく、素材ロスが少ないのも現場で歓迎されるポイントです。

● 鍛造・プレス加工:高い成形性で生産性向上

銅は冷間・熱間のどちらの鍛造にも適しており、高精度・高強度な部品の大量生産が可能です。
たとえば、給湯器のバルブ部品や、自動車の端子・コネクタ類は、冷間鍛造やプレス加工によって効率的に成形されています。
この高い塑性は、バリが出にくく、後工程の仕上げが最小限で済むという利点にもつながります。
また、深絞り加工にも向いており、容器やカバー、装飾品などの成形にも広く利用されています。

● 接合性の良さ:はんだ付けやろう付けが容易

銅ははんだ付け、ろう付け、溶接など多様な接合方法に対応しやすい素材です。
特に電子基板や配管などでは、接合信頼性が求められる場面が多いため、銅の接合性の高さは重要な特性といえます。
無酸素銅や脱酸銅は酸化による接合不良が起きにくく、ろう材とのなじみも良好です。
ただし、銅は熱伝導率が高いため、溶接やろう付け時には熱が急速に逃げてしまうため、加熱コントロールに工夫が必要となります。

● 注意点:軟らかさゆえの変形と酸化

銅は加工しやすい反面、過度の力が加わると変形しやすいという性質も持ちます。
そのため、組立や運搬時には変形防止の工夫が必要です。
また、空気中では表面が酸化して黒ずんだり、緑青(ろくしょう)と呼ばれる青緑色のサビが発生することもあります。
装飾用途や電気接点用途では、表面処理(メッキや防錆処理)を施すことが一般的です。

銅は“加工屋にとって扱いやすい金属”といわれるほど、成形・切削・接合のあらゆる面で高い対応力を持っています。
これにより、量産部品から試作品、装飾品まで、多様な分野での展開が可能となっているのです。

優れた耐食性と抗菌性

銅はその優れた物理特性に加え、腐食に対する強さ(耐食性)と、細菌やウイルスに対する抑制効果(抗菌性)にも優れた金属です。
この性質は、医療・建築・食品・上下水道など、衛生や耐久性が重視される分野で特に高く評価されています。
本項では、銅の耐食性と抗菌性について、科学的根拠と具体的な応用例を交えて解説します。

● 耐食性:保護皮膜によって錆に強い

一般的に金属は空気や水分と反応して酸化し、「錆(さび)」として劣化していきます。
しかし銅の場合、酸化反応により表面に形成される酸化被膜(酸化銅や緑青など)が内部を保護する役割を果たすため、腐食が内部まで進行しにくく、結果的に高い耐久性を発揮します。
特に屋外用途では、銅の表面に緑青(ろくしょう)と呼ばれる青緑色の皮膜が形成されますが、これは化学的に安定しており、内部の腐食を防ぐ「自己防衛的な被膜」です。
銅板屋根や銅像などが長期間にわたって美観と機能を保ち続けられるのはこのためです。
また、淡水・海水・湿潤環境においても腐食に比較的強く、耐候性の高い建材や配管材としても優れています。
ただし、酸性雰囲気やアンモニア環境では腐食が進行しやすいため、使用環境に応じた合金の選定や表面処理が必要です。

● 抗菌性:細菌・ウイルスを抑える自然の力

銅のもうひとつの大きな特徴は、自然の抗菌作用です。
銅は細菌やウイルスの細胞膜を破壊したり、酵素の働きを阻害したりする作用を持つことが知られており、接触するだけで微生物の活動を抑制する能力があります。
2008年には、アメリカ環境保護庁(EPA)が銅および一部の銅合金を「公認の抗菌素材」として登録しました。
さらに近年では、新型コロナウイルスに対する銅表面の不活化効果にも注目が集まり、エレベーターのボタン、手すり、ドアノブ、病院内の設備などで銅や銅合金の使用が拡大しています。
この抗菌性は自然発生的なものであり、薬剤や電力を使用せず、メンテナンス不要で持続的に作用するという点でも非常に優れています。

● 衛生・医療・食品分野での応用

抗菌性と耐食性を併せ持つ銅は、以下のような分野で積極的に利用されています。
・医療機器や病院設備:点滴スタンド、ベッドの柵、ドアノブなど
・上下水道設備:バクテリアの繁殖を防ぐ銅配管
・食品工場・厨房機器:まな板、調理器具、シンク周辺
・公共施設:手すりやトイレの押しボタンなど
さらに、これらの衛生的な効果に加え、銅は見た目にも高級感があり、経年変化による風合いも楽しめるため、美観と機能性を両立できる素材としても評価されています。

● 合金化による耐食性・抗菌性の最適化

銅の特性は、そのままでも優れていますが、亜鉛(Zn)やスズ(Sn)、ニッケル(Ni)などとの合金化によって、さらに目的に応じた性能向上が図られています。
たとえば、黄銅(真鍮)は加工性と強度に優れ、青銅は耐摩耗性と耐食性が高く、どちらも高い抗菌性を持ちます。
合金設計によって、用途に応じたバランスの良い素材選定ができるのも、銅の抗菌性と耐久性を活かす大きな要素です。

銅は単なる「電気を通す素材」ではなく、人の健康や暮らしを守る衛生素材としても大きな役割を果たしています。
その自然由来の抗菌性と腐食への強さは、これからの持続可能な社会においても、ますます注目される素材特性と言えるでしょう。

銅のリサイクル性と持続可能性

銅は、資源としての価値が非常に高いだけでなく、極めてリサイクル性の高い金属でもあります。
現在、世界中で使用されている銅の多くは再生材(リサイクル銅)から得られており、その再利用は環境保護や資源循環の観点からも重要な役割を果たしています。
本項では、銅のリサイクル性、環境負荷、そして持続可能な社会における意義について解説します。

● 銅は何度でもリサイクルできる

銅の大きな特徴のひとつが、繰り返しリサイクルしても性質が劣化しないという点です。
他の多くの素材とは異なり、銅は再溶解・再精製を行っても電気伝導率や強度といった性能がほとんど変わりません。
これは「無限リサイクルが可能な金属」とも表現されるほどです。
このため、製造段階で発生した端材や不良品、役目を終えた古い電線や機械部品などから回収された銅は、新しい製品の原料として再び活用されます。
実際に、現在流通している銅の約30〜40%はリサイクル由来のものとされています。

● リサイクルによる環境負荷の低減

新たに銅を採掘して精錬するには、大量のエネルギーと水を消費し、二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガスも排出されます。
これに対して、リサイクル銅の製造に必要なエネルギーは、一次銅(鉱山由来の新しい銅)の製造に比べて最大85%も少ないとされています。
また、廃棄物や有害物質の排出も抑制できるため、環境負荷の大幅な低減につながります。
持続可能な製造業や循環型社会を実現するうえで、銅のリサイクルは極めて重要な技術基盤のひとつといえるでしょう。

● リサイクルの具体例とフロー

銅のリサイクルは、大きく次のようなフローで行われます。
・回収:使用済みの電線、モーター、建材、配管などから銅を回収
・選別と分離:鉄やプラスチックなどの異物を取り除く
・破砕・圧縮:取り扱いやすい形に加工
・溶解・精製:不純物を除去し、純度の高い銅を再生成
・再利用:新たな銅製品の原料として再投入
このようなリサイクルフローにより、銅は原材料としての寿命を持たない「循環資源」として再生を繰り返し、さまざまな産業で再利用されています。

● 銅のリサイクルがもたらす経済的価値

銅は金属としての市場価値が高く、リサイクルによって得られる収益も大きいため、リサイクルビジネスにおける重要な収益源となっています。
また、銅スクラップの価格は国際的な指標にも影響を受け、地域経済や資源価格の安定にも貢献しています。
企業にとっても、スクラップ材の有効活用による原価低減や、「環境配慮型製品」のアピールによってブランド価値を高めることができる点で、リサイクルの取り組みは戦略的に重要とされています。

● 持続可能な社会における銅の役割

近年、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、資源の有効活用と廃棄物の削減は重要課題とされています。
その中で銅は、再利用が容易でエネルギー効率にも優れることから、持続可能な社会づくりに貢献する「グリーンマテリアル」としての価値が高まっています。
例えば、再生銅を活用した建材や配線材、電気自動車や再生可能エネルギー設備への導入など、次世代社会インフラの構築に欠かせない存在となっています。
銅はその物理的な性能だけでなく、リサイクル性・環境性能という観点でも極めて優れた金属です。
資源循環型の未来社会を目指すうえで、今後ますますその重要性は高まるでしょう。

銅の加工技術

銅メダル

銅の切削・曲げ加工の特性

銅は加工性に優れた金属として知られており、切削や曲げなどの機械加工においてもその特性が活かされます。
特に純銅や軟質の銅合金は、延性・展性が高く、工具の負担が少ないため、複雑な形状への加工が比較的容易です。
しかし、その反面で注意すべき点も存在します。

● 切削加工における特徴

銅は熱伝導率が高いため、切削中に発生する熱が加工部全体に拡散しやすく、熱による変形や歪みが比較的抑えられる利点があります。
しかし、純銅は切粉が長く続いて巻き付きやすい(いわゆる「ねばり」がある)ため、切削加工には工夫が必要です。
適切な切削条件(切削速度、送り、工具材質、刃先形状)を設定し、切粉の排出性を高める設計やクーラントの適切な供給が重要となります。
また、工具材としては超硬合金やコーティング工具がよく使われ、刃先の摩耗を防ぐ配慮が必要です。
一方で、リン青銅や黄銅などの銅合金になると加工性が改善されるため、量産部品や精密加工にはこれらの合金が選ばれるケースも多く見られます。

● 曲げ加工・プレス加工の特性

銅は展性に優れるため、曲げ加工や絞り加工との相性が非常に良好です。
特に電気・電子部品のような細くて薄い銅板や銅箔を用いた加工では、非常に高い寸法精度と成形性が求められます。
ただし、曲げ半径を小さくしすぎると割れやすいため、材質に応じた最小曲げRの設計が求められます。
また、作業中に酸化皮膜が形成されると割れの原因となるため、加工前の表面処理や潤滑剤の使用も重要です。

● 加工時の注意点

・純銅は柔らかいため、バリが出やすく、刃物痕も残りやすい。
・寸法精度が厳しい場合は、加工後の仕上げ工程(研磨やバフ処理)も必要。
・応力によって加工硬化が起こることがあるため、連続加工には焼きなまし工程が加えられる場合もある。
これらの特性を踏まえ、加工性と仕上がりのバランスを取る設計が重要です。

銅の接合技術(はんだ付け・溶接)

銅は接合性にも優れた金属であり、特にはんだ付けや溶接によって部品同士をしっかりと結合することができます。
電気・電子分野から配管、建築まで、接合技術は銅製品の製造に欠かせない工程です。

● はんだ付けの適性

銅ははんだのぬれ性が非常に良く、低温での接合が容易です。
特に電子機器や配線接続では、錫-鉛(Sn-Pb)や鉛フリー(Sn-Ag-Cuなど)のはんだが使われ、しっかりと密着した導電性の高い接合部が形成されます。
ただし、銅は酸化しやすいため、はんだ付け前の表面処理が重要になります。
酸化膜を除去するためにフラックス(助剤)を使用し、加熱により短時間で接合を完了させることが、信頼性の高い接合につながります。
また、高周波に対応する電子部品などでは、マイクロソルダリングやリフローはんだなどの精密接合技術も用いられています。

● 銅の溶接技術

溶接においても、銅の特性は活かされますが、熱伝導率が高いため、熱が広がって溶接しにくいという難しさもあります。
そのため、アーク溶接やTIG溶接、レーザー溶接などの高エネルギー密度な溶接法が採用されることが多いです。
・TIG溶接(アルゴンガス使用):精密で美しい仕上がりが得られるが、熱入れ制御が難しい。
・レーザー溶接:熱の集中が良いため、薄板や微細な部品に適している。
・ろう付け(ろう材を使った溶接):配管などに広く用いられ、機械的強度も高い。
配管の分野では、銀ろう付けや銅ろう(黄銅)付けが使われることが多く、冷媒配管や給湯設備の接合に活躍します。

● 接合時の注意点

・酸化膜の除去が最重要。溶接時は不活性ガスなどで酸化防止が必須。
・熱膨張率が高いため、ひずみ・クラックの管理が必要。
・特に溶接部の熱影響部の硬化や脆化に注意が必要。
以上のように、銅は接合がしやすい一方で、適切な条件管理が重要となる金属です。

銅の表面処理とメッキ

銅は空気中で酸化や硫化による変色が生じやすい金属であるため、使用環境によっては表面処理やメッキによって性能を維持・向上させる必要があります。
特に電気・電子部品では、導電性や接触抵抗、腐食性の制御が求められるため、表面処理は非常に重要です。

● 酸化防止処理

銅は自然に酸化し、表面が黒ずんだり緑青(ろくしょう)が発生します。
これを防ぐために、パッシベーション(化学皮膜処理)やクロメート処理、クリア塗装などが行われます。
・パッシベーション処理:化学薬品で表面を処理し、酸化を抑制する。
・アクリルやエポキシ系のクリアコート:装飾的価値も高めつつ、酸化防止に有効。
これらは、特に建築部材や意匠品でよく利用されます。

● 電気メッキと無電解メッキ

銅の電気・電子用途では、表面に金属をメッキすることで性能を向上させます。
・錫メッキ:はんだ付け性を高め、腐食を防止。リード線や端子に多用。
・銀メッキ:優れた導電性・接触性を付与。高周波部品や高性能コネクタに利用。
・ニッケルメッキ:耐摩耗性・防食性の強化。下地メッキとしても活躍。
・金メッキ:信頼性の高い導通性と耐腐食性が必要なコネクタやICチップに使用。
また、電流を使わず薬品反応でメッキを施す無電解ニッケルメッキも、均一な皮膜形成ができ、複雑形状の部品に適しています。

● その他の処理例

・バフ研磨や電解研磨で装飾性や清掃性を向上。
・黒染め(ブラックコーティング)による意匠性向上や反射防止。
・エンボス加工・梨地処理で滑り止めや質感の変化を演出。
このように、銅の表面処理技術は用途や目的に応じて多様化しており、性能・機能・外観を最適化するための重要なプロセスといえます。

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【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
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