072-808-5555 電話でお問い合わせ
LINEでお問い合わせ

試作人基礎講座

公開日: | 更新日: | 試作人基礎講座

とんぼ加工って?気になる疑問にお答えします!

おはようございます!先日テレビ番組で製造業が取り上げられていたのですが、その番組の中で「とんぼ加工」というワードが出ていました。
とんぼ加工?となったのでとんぼ加工について解説していきたいと思います!
聞いたことある方も聞いたことがない方もぜひぜひご覧ください♪

必達試作人
必達試作人
短納期の金属加工は大阪のアスクへ!

とんぼ加工とは

とんぼ加工とは、長尺の材料に対して深穴を貫通させる際に、片側からのみ加工するのではなく、両側から加工を行って最終的に中央で穴を貫通させる深穴加工の一手法です。
この加工方法の特徴は、「材料を一度加工機にセットして片側から所定の深さまで穴をあけた後、ワーク(加工対象物)を反転させて、反対側からも同様に深穴加工を施す」という流れにあります。
中央付近で2方向からの穴が合流し、一本の貫通穴が完成するというのが、とんぼ加工の基本的な考え方です。
この加工法は、通常の深穴加工では困難とされるような長さの穴でも、高い加工精度と工具寿命を両立させることができるという利点があります。
深穴加工は、穴の深さが直径の10倍以上になるようなケースに適用されることが多く、特に長尺のシャフトやパイプ形状の部品においては、内部冷却や切りくず排出の難しさから、片側からのみの加工では工具が折損するリスクが高まります。

とんぼ

とんぼ加工の名前の由来は、この加工方法の特徴的な「対称性」と「反転動作」にあります。
トンボという昆虫は、その姿が左右対称で、空中で反転しながら飛ぶ姿が印象的です。
とんぼ加工でも、加工対象物を「反転」させて、左右対称のように両側から深穴を掘るため、その様子がトンボに似ていることから、現場では自然と「とんぼ加工」という呼び名が広まりました。
工学的な正式用語ではないものの、現場の技術者間では広く認知されており、図面に「とんぼ加工」や「反転穴加工」などと記載されることもあります。
この手法は、特に高精度な軸物や、内部に油路や空気路を設ける必要のある機械部品の加工で重宝されます。
工作機械の能力が限られていて、長尺ワークの一方向からの深穴加工が難しい場合でも、とんぼ加工を採用すれば、より短い工具で精度よく加工することが可能になります。
これは、ドリルのたわみや振動が最小限に抑えられるため、穴の真円度や直進性、表面粗さを高いレベルで維持しやすいという大きな利点につながります。
つまり、とんぼ加工は「反転動作」と「対向加工」によって、長く深い穴を高精度に加工するための、実用的かつ現場発の知恵ともいえる技術なのです。

深穴加工との関係性

とんぼ加工は、深穴加工の中でも特殊かつ実践的な手法のひとつとして位置づけられます。
深穴加工とは、その名の通り「深い穴」を加工する工程を指し、一般的には穴の深さが直径の10倍以上になる加工を指すのが通例です。
たとえば、直径10mmの穴を100mm以上の深さまで貫通させるような場合、それは深穴加工と呼ばれます。
このような加工は、油圧部品や自動車部品、航空機エンジン部品、さらには金型や長尺のシャフト部品などで広く用いられています。
しかし、深穴加工は単に「深く掘ればよい」というものではなく、いくつもの技術的課題がつきまといます。
代表的なものとしては、以下のようなものが挙げられます。
・工具のたわみや破損リスク:長尺のドリルは加工中にしなりやすく、少しのズレで穴の軌道が狂ったり、最悪の場合には工具が折れてしまう可能性があります。
・切りくずの排出:深い穴の中では、発生した切りくずがスムーズに排出されず、加工面を傷つけたり、工具に絡みついて破損につながることもあります。
・冷却不良による熱膨張:深部の加工になるほど冷却液が届きにくくなり、工具やワークが熱膨張を起こして寸法精度が不安定になる原因になります。

こうした問題を解決するために考案されたのが「とんぼ加工」です。
とんぼ加工は、ワークの両端から交互に穴を掘ることで、1方向あたりの加工深さを実質的に半分に分けられます。
つまり、片側から200mmの穴を掘る必要があるときに、100mmずつを両側から加工すれば、使用する工具の長さも短くでき、振れやたわみのリスクを大きく低減できます。
また、工具の剛性が高まることで、送り速度や回転数といった加工条件も安定しやすくなり、結果として加工時間の短縮にもつながります。
さらに、切りくず排出や冷却液の供給も比較的スムーズになるため、工具寿命も向上し、トータルの生産性や品質が向上します。
一方で、とんぼ加工には「両側から掘った穴が中央で正確に合致する」ことが前提となるため、段取りや芯出しの精度が非常に重要です。
加工前の基準出し、芯合わせの精度が悪いと、中央での穴がずれて段差や食い違いが発生してしまい、NG品となる可能性もあります。
したがって、とんぼ加工は、深穴加工の問題をクリアするための有効な手段であると同時に、高度な精度管理と経験を求められる工程でもあるのです。
総じて言えば、とんぼ加工は、深穴加工の課題を克服しつつ、高精度で高効率な加工を実現するための非常に有効なアプローチであり、現代の製造現場においては欠かせない深穴加工技術の一翼を担っています。

とんぼ加工が必要とされる理由

とんぼ加工が現場で必要とされる背景には、「長尺・深穴の高精度加工を、いかに効率的かつ安全に行うか」という現実的な課題があります。
単純に一方向から穴を深く掘れば済むように思えますが、実際にはそう簡単にはいきません。
材料の長さが長くなるほど、深穴加工における課題が一気に増えるからです。
まず第一に問題になるのは、加工工具の長さです。
ドリルやボーリングバーのような切削工具は、長くなればなるほど剛性が下がり、たわみや振動が生じやすくなります。
その結果、穴の直進性が失われたり、工具が破損したりするリスクが高まります。
特に切削抵抗が大きい材料では、この影響が顕著で、送り速度を落としたり複数回に分けて切り込みを入れるなどの対処が必要になり、加工時間が長くなる傾向があります。

また、切りくず排出の問題も見逃せません。
深穴加工では、穴の奥にたまった切りくずが排出しにくく、詰まりや再切削を引き起こすことがあります。
これは工具の摩耗や焼き付きの原因となるほか、加工面の粗さや寸法精度にも悪影響を与える重大な課題です。
切りくずを外に排出するには、高圧の切削油やスルードリル(穴の中心にクーラントを通すドリル)を使う方法もありますが、それでも限界があります。
こうした深穴加工特有の問題を解消する手法として注目されているのが「とんぼ加工」です。
加工を2方向から行うことで、工具の突き出し長さを短く保ち、剛性を高められるため、たわみや振動が抑えられ、直進性の高い深穴が安定して得られます。
さらに、片側あたりの穴深さが半分になることで、切りくず排出や冷却も容易になり、工具の寿命も延びます。

とんぼ加工が特に重宝されるのは、以下のような現場です。
・工作機械のストロークが限られており、一方向からでは加工できない長尺部品
・φ5mm以下の細穴で、長さが100mm以上になる高難度の加工
・真円度・直進性・内面粗さなど、穴精度に厳しい要求がある航空機部品や精密機器
・シャフト内部に冷却路・潤滑路などを貫通させる必要がある特殊構造品
また、最近では長尺の中空軸や油圧・空圧シリンダーなどにもこの手法が採用されており、実際の加工現場では「これでなければ加工できない」とまで言われるケースもあります。
もちろん、とんぼ加工には高精度な芯出しや冶具、段取りの工夫も不可欠ですが、上記のような理由から、その導入価値は非常に高く、多くの製造現場で「合理的な深穴加工手法」として支持されているのです。

とんぼ加工のメリットとデメリット

とんぼ加工は、深穴加工における課題を克服するために考案された優れた加工手法ですが、すべてのケースにおいて万能というわけではありません。
ここでは、そのメリットとデメリットをバランスよく解説します。

メリット

① 工具のたわみや振れを抑制できる

とんぼ加工の最大のメリットは、工具の突き出し量を半分に抑えられることにあります。
通常の深穴加工では、穴の深さに合わせて長い工具を使う必要がありますが、長い工具は加工中にしなりやすく、穴が曲がったり真円度が損なわれたりする原因になります。
これに対し、とんぼ加工では片側からの加工深さが短くなるため、工具剛性が確保しやすくなり、加工精度の向上につながります。

② 切りくず排出性の向上

深穴加工においては、穴の奥に溜まった切りくずがスムーズに排出されないことが多く、それが工具破損や加工不良の原因となります。
しかし、とんぼ加工では、穴の半分ずつをそれぞれ反対方向から加工することで、切りくずが手前側に排出されやすくなり、トラブルのリスクを軽減できます。
特に細穴や長尺の部品ではこの利点が顕著に現れます。

③ 工具寿命・加工時間の延長を抑制

工具への負荷が小さくなるため、工具摩耗の進行を遅らせることができ、結果として工具の寿命が延びます。
また、切りくず詰まりや振動が少ないことから、送り速度や切削条件を最適化しやすく、トータルの加工時間を短縮することにもつながります。

④ 工作機械のストローク制約を回避できる

たとえば、機械のストロークが500mmしかない状況でも、とんぼ加工を採用すれば、1000mmの深穴を加工することが可能になります。
機械の制約を補完する手段として非常に有効です。

デメリット

① 芯ずれのリスク

とんぼ加工では、片側ずつ深穴を加工して最後に中央で貫通させる構造になります。
つまり、両側から加工された穴が中心で正確に一致することが求められるため、段取りや芯出しに高精度が求められます。
芯ずれが発生すると、穴の継ぎ目に段差や段付きが生じ、製品不良となることもあります。

② 段取りと冶具の工夫が必要

材料を一度加工した後に反転し、反対側から同じ芯に合わせて再度加工する必要があるため、段取りが煩雑になります。
専用の冶具や測定器、芯出し用の装置が必要になるケースも多く、加工コストや工数が増える要因になります。

③ 加工条件の管理が複雑

左右対称に加工するとはいえ、工具の摩耗状態や加工環境の変化などにより、片側と反対側で穴径や表面粗さが微妙に異なることがあります。
したがって、片側ごとの加工条件の厳密な管理が不可欠であり、オペレーターの技術や経験が求められます。

このように、とんぼ加工は深穴加工における課題を効果的に解決できる一方で、芯合わせや段取りといった加工前後の精度管理と技術力が成功の鍵を握ります。
そのため、メリットを活かしつつ、デメリットへの対処をしっかり行うことが、現場におけるとんぼ加工成功のポイントと言えるでしょう。

試作全国対応!
簡単・最短1時間お見積り

アスクならこんなお困りごとを解決します!

  • 他社では納期が間に合わないと言われた
  • 急な設計変更があった
  • 他社ではできないと言われた
  • 海外調達品の手直し・追加工
今すぐ無料でお見積りを依頼する

もっとアスクの事を知りたい!という方は
こちらもご覧ください!

株式会社アスク

【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
知っているようで知らない加工に関する知識をお届けします!

他、ブログ記事もご覧ください♪

動画の投稿もしておりますので良ければご覧ください♪