真鍮ってなに?特徴や性質など解説します!
本日は材料シリーズ~真鍮編~を記事にしていきたいと思います!
特徴やメリット、デメリットなど解説していきますので、是非ご覧ください♪

真鍮とは
真鍮(しんちゅう、brass)は、銅(Cu)と亜鉛(Zn)を主成分とする合金で、一般的には銅が60〜70%、亜鉛が30〜40%の割合で構成されています。
これにより、銅の持つ優れた延性や耐食性、亜鉛のもたらす強度や硬度が組み合わさり、非常にバランスの取れた材料となっています。
さらに、加工性、導電性、熱伝導性、美しい外観など、様々な特性を備えており、工業材料や装飾品として古くから広く使われてきました。
真鍮の種類は、亜鉛の含有量や添加される微量元素によって多岐にわたります。
例えば、鉛を加えることで切削性を高めた快削真鍮(C3604)、錫や鉄、マンガンなどを加えて強度や耐食性を向上させた特殊真鍮などがあります。
これらの調整によって、使用用途に応じた真鍮材料の選定が可能となります。
また、見た目にも優れており、光沢のある金色が特徴です。
時間とともに酸化して独特の風合いを醸し出すため、アンティーク調の素材としても人気があります。
このような真鍮の特性により、建築金物、楽器、機械部品、電気端子、アクセサリーなど、極めて多様な分野で利用されています。
真鍮の歴史と由来
真鍮の使用は非常に古く、紀元前の古代ローマ時代にはすでに製造・利用されていたとされています。
当時は「オライカラム(orichalcum)」と呼ばれ、希少で価値ある金属として扱われていました。
中世ヨーロッパでも、硬貨や装飾品、宗教器具などに広く使われ、真鍮の加工技術が発展していきました。
日本においては、江戸時代に海外から導入され、「黄銅(おうどう)」あるいは「丹銅(たんどう)」と呼ばれました。
金の代用品として装飾品や建築金物に使われるなど、特にその外観的な美しさが評価されました。
近代以降は、工業の発展に伴い、真鍮の機械的特性が注目されるようになり、精密部品や電子部品としての需要が拡大しました。
また、真鍮は比較的低い温度で溶けるため、鋳造や加工がしやすく、広く工芸品にも使われてきました。
伝統的な鋳物工芸、仏具、楽器など、真鍮は日本のものづくり文化においても重要な役割を果たしてきました。
今日では、RoHS(有害物質使用制限指令)などの環境規制に対応した鉛フリー真鍮などの開発も進み、持続可能な材料として再評価されています。
真鍮の特徴と物性
機械的性質(強度・延性)
真鍮は、銅と亜鉛の比率によって強度や延性が調整できる優れた合金です。
一般に亜鉛の含有量が増えると引張強さが向上し、最大で400~600 MPa程度の強度が得られます。
一方で延性は低下する傾向があります。
銅の割合が高いタイプは柔らかく、塑性加工がしやすいため、深絞りや曲げ加工に適しています。
こうした機械的特性のバランスにより、用途に応じた適切なグレードの真鍮を選定することができます。
また、鉛を微量に加えた快削真鍮は、被削性が非常に高く、旋盤やフライスなどの機械加工で精密部品の量産に多用されます。
高い寸法精度が求められる電気・電子部品や時計部品、自動車部品などに適しています。
硬度は一般にBrinell硬度で80〜160HB程度ですが、冷間加工や熱処理によりさらなる硬度向上が可能です。
このように、真鍮は成形性・加工性に優れ、かつ必要に応じて強度を調整できるという機械材料としての利点が多く、汎用性の高い素材として重宝されています。
耐食性と耐久性
真鍮は大気中や水中での耐食性に優れており、長期間使用しても腐食しにくいという特性を持っています。
これは、銅に由来する酸化被膜(緑青)と亜鉛の自己防御効果によって表面が保護されるためです。
特に乾燥した大気環境下では安定しており、屋内用途においては極めて長い寿命が期待できます。
一方で、真鍮は「脱亜鉛腐食(dezincification)」と呼ばれる現象に注意が必要です。
これは特に酸性の水環境や海水などに晒された際に、亜鉛成分が選択的に溶出し、構造がスポンジ状になって脆化する腐食形態です。
これに対処するため、脱亜鉛腐食に強い特殊真鍮(例えばArsenical Brassなど)が開発されています。
また、耐摩耗性にも一定の評価があり、摺動部や継手などの摩擦が発生する部位でも適用されることがあります。
定期的なメンテナンスと適切な設計により、真鍮製部品は長期間にわたって安定した性能を維持することが可能です。
熱伝導性と電気伝導性
真鍮は金属として中程度の熱伝導性および電気伝導性を有しています。
電気伝導率は純銅に比べて劣りますが、それでも良好な数値を持ち、電気部品や端子、スイッチ部品などに広く使用されています。
具体的には、真鍮の電気伝導率は約15〜30%IACS(International Annealed Copper Standard)であり、耐久性や加工性を必要とする電気機器においてバランスのとれた材料といえます。
熱伝導性については、約100〜130 W/m·K 程度とされています。
これは熱交換器や放熱板、ガス器具などに適しており、熱を効率的に移動させることが求められる用途に活用されています。
加えて、真鍮は熱膨張係数も比較的一定であり、熱による寸法変化が予測しやすいという利点もあります。
これらの伝導特性は、他の合金と比較してもバランスが取れており、信頼性とコストパフォーマンスの両立を可能にする要因となっています。
音響特性
真鍮は優れた音響特性を有することでも知られています。
特に、楽器用素材としては非常に高い評価を受けており、トランペット、ホルン、サックス、トロンボーンなどの金管楽器に多用されています。
その理由は、適度な剛性と内部減衰性を兼ね備えており、響きの良い明るい音を生み出すことができるからです。
真鍮の音響伝播速度や振動の伝達性は、楽器の構造や演奏感にも大きな影響を与えます。
また、加工しやすく、複雑な形状への成形も可能なことから、音響的な設計自由度が高いという点もメリットです。
経年変化により音色が変わることもあり、これを味わいとして楽しむ奏者も多くいます。
さらに、鐘やベルなどの鳴り物にも古くから使用されており、豊かで遠くまで届く音を奏でるための材料として適しています。
音響用途における真鍮の重要性は、現代でも変わることなく受け継がれています。
真鍮の用途
建築金物
真鍮はその美しい光沢と耐食性の高さから、建築分野において幅広く使用されています。
代表的な用途にはドアノブ、ヒンジ、手すり、装飾パネル、名板、照明器具などがあります。
屋内外どちらの環境でも使用可能であり、特に風雨にさらされる屋外でも、適切な表面処理やメンテナンスを行えば長期間にわたり美観を保ちます。
また、真鍮はアンティーク調の風合いを持たせやすいため、歴史的建築物の復元や、クラシカルなデザインを採り入れた現代建築にも好んで用いられます。
経年変化によって深まる色合いが「味」として評価され、デザイン性の高い素材として建築家からの人気も高いです。
特にエッチングや打ち出し加工を施すことで、意匠性を高めることができるため、装飾用途にも最適です。
電気・電子部品
真鍮は電気伝導性と加工性のバランスが良いため、電気・電子分野でも重要な素材として使われています。
具体的には、コネクタ、スイッチ、端子台、ヒューズホルダー、プリント基板のスルーホール部品などに広く使用されます。
また、耐久性やばね性が要求される端子や接点部品には、特殊な真鍮合金(ばね黄銅など)が使用されることもあります。
さらに、真鍮ははんだ付け性にも優れており、加工後の組立作業においても扱いやすいという利点があります。
表面処理としては、ニッケルメッキやスズメッキなどが施されることが多く、接触抵抗の低減や耐腐食性の向上が図られます。
このように、真鍮は精密性・信頼性・量産性が求められる電気部品において、非常に有用な材料として長年にわたり活躍しています。
楽器
真鍮は音響特性に優れており、特に金管楽器の主要な素材として広く用いられています。
トランペット、トロンボーン、ホルン、ユーフォニウム、チューバといった楽器は、ほとんどが真鍮から作られています。
真鍮は適度な剛性と振動伝播特性を持ち、明るく張りのある音色を生み出すことができます。
また、真鍮は加工性にも優れており、楽器の製造過程で必要な絞り加工や溶接、ロー付け、表面処理が容易に行えます。
加えて、経年変化による音質の変化や外観の味わいも、奏者にとっては魅力の一つです。
多くのプロ奏者は、長年使用して自分に馴染んだ真鍮製楽器を手放すことなく愛用し続けています。
さらに、打楽器の一部や鐘、ベル、シンバルなどの鳴り物にも真鍮が使われることがあり、その響きの良さが評価されています。
音楽分野における真鍮の存在感は非常に大きく、今後も高品質な楽器素材としての需要が継続するでしょう。
真鍮のリサイクル性
真鍮は非常に高いリサイクル性を持つ合金であり、持続可能な素材としても注目されています。
銅と亜鉛という主要構成元素はいずれも再利用が可能であり、使用済みの真鍮製品から新たな真鍮材料を製造することができます。
実際、流通している真鍮の多くは再生材を含んでおり、リサイクル工程においても機械的特性や外観に大きな劣化が生じにくいという利点があります。
また、真鍮は比較的低い融点(約900〜940℃)で溶融可能なため、再溶解時のエネルギー消費も抑えられます。
これは環境負荷の低減につながり、CO₂排出量の削減にも寄与します。
産業分野では、不要となった真鍮部品や切削くずをスクラップとして回収し、再び鋳造や加工用素材として活用するリサイクルループが確立されています。
さらに、真鍮のリサイクルは経済的にも価値が高く、金属としての資源価値があるため、回収率も非常に高い傾向にあります。
これにより、資源の有効活用や廃棄物削減といったサステナビリティの観点からも、真鍮は優れた選択肢となっています。
真鍮の加工方法と注意点
真鍮の加工性と注意点
真鍮は、加工性に優れた金属材料として高く評価されています。
特に切削、圧延、プレス、鍛造、鋳造など、さまざまな加工方法に適応できる点が大きな特長です。
銅に比べて硬度が高く、加工時のバリや変形が抑えやすいため、寸法精度が要求される部品にも対応しやすい素材です。
切削加工においては、快削性を高めるために鉛を添加した「快削真鍮(C3604など)」が多用されます。
これは工具の摩耗を抑え、加工時間の短縮や仕上げ面の品質向上に寄与します。
ただし、鉛含有材は環境規制(RoHS指令など)への対応が必要となるため、鉛フリー材(C3602や新規合金など)の採用も増えています。
また、真鍮は熱伝導性が高く、溶接やロー付けといった熱加工も比較的容易です。
しかし、過度の加熱は亜鉛の揮発を引き起こし、気孔や亀裂の原因となることがあるため、適切な温度管理が不可欠です。
とくにガス溶接やろう付け時には、局所的な過熱を避ける工夫が求められます。
さらに、真鍮は加工硬化しやすいため、冷間加工を繰り返す場合は中間焼なまし(アニーリング)を施すことで、延性の回復と割れの防止が図れます。
加工後の表面処理についても注意が必要です。
酸化膜や変色を防ぐために、研磨、クリア塗装、クロムメッキ、ニッケルメッキなどの処理が施されることが多く、使用環境に応じた適切な処理選定が重要です。
このように、真鍮は高い加工性を持ちながらも、使用条件や加工方法に応じた注意点を押さえることで、より高品質な製品づくりが可能となります。
切削加工
真鍮は非鉄金属の中でも特に切削性に優れた素材とされています。
中でも快削真鍮(C3604など)は鉛を含んでおり、被削性に優れるため、NC旋盤やマシニングセンタなどによる量産加工に適しています。
被削材としての抵抗が少なく、切りくずの分断性も良いため、工具寿命の延長や仕上げ面の品位向上が期待できます。
一方で、鉛フリー真鍮(C3602など)は環境規制対応として使用が拡大していますが、鉛入りと比較してやや切削抵抗が高くなるため、切削条件の最適化が重要です。
ドリル加工では、加工熱がこもりやすいため、切削油の適切な使用やピーニング(断続送り)による冷却が推奨されます。
工具材種としては、超硬工具が安定して高い性能を発揮します。
荒加工と仕上げ加工で工具を使い分けることで、バリの発生を抑制し、加工精度の安定化が図れます。
プレス加工
真鍮は延性と展延性が高いため、冷間プレス加工においても優れた成形性を発揮します。
特に板材を使用した打ち抜きや曲げ加工、絞り加工などに適しており、複雑な形状の加工品も安定して製作可能です。
ただし、冷間加工を繰り返すと加工硬化が進み、割れやすくなるため、途中で焼なまし(アニーリング)処理を行う必要があります。
これにより、加工によって失われた延性が回復し、さらなる加工が可能になります。
また、加工硬化によって金型への負担も大きくなるため、金型設計時にはクリアランスや角のRを適切に設けるなど、成形トラブルを未然に防ぐ工夫が重要です。
真鍮は表面が比較的滑らかで潤滑性も高いため、潤滑油や離型剤との相性も良好です。
これにより金型の寿命延長や成形精度の維持にもつながります。
鋳造加工
真鍮は比較的低い融点(約900〜940℃)を持つため、鋳造に非常に適した金属です。
鋳造時の流動性が良く、複雑な形状や薄肉の鋳物製品も高精度で成形可能です。
伝統的な砂型鋳造から、精密鋳造(ロストワックス法)まで幅広い鋳造方法に対応でき、工芸品から工業部品まで用途も多岐にわたります。
ただし、鋳造時には亜鉛が蒸発しやすく、揮発によって気孔が生じたり、成分比が変化したりするリスクがあります。
そのため、温度管理や鋳型の材質選定、鋳造速度などに細心の注意を払う必要があります。
また、冷却中の収縮による「ひけ」や「巣」と呼ばれる空洞欠陥も発生しやすいため、湯流れの設計や押湯の配置にも工夫が求められます。
鋳造後の熱処理や機械加工によって、最終製品の寸法精度と機械的性質を整えることが一般的です。
ろう付けと溶接
真鍮は熱伝導性が高く、ろう付けが比較的容易な金属として知られています。
特に銀ろうを用いたろう付けは、美観と接合強度のバランスに優れ、配管部品や装飾金物などに多く用いられます。
母材へのダメージを抑えつつ、確実な接合が可能です。
一方で、真鍮の溶接は難易度が高めです。理由として、亜鉛の蒸発による気泡やブローホールの発生、さらには有害な亜鉛蒸気の発生リスクが挙げられます。
アーク溶接やTIG溶接を行う際は、適切な排気設備と防護対策が不可欠です。
また、加熱により材料が変色する可能性があるため、装飾品など外観を重視する用途では、溶接後の研磨や表面処理も必要となります。
レーザー溶接を利用すれば、熱影響を局所に限定できるため、精密部品の溶接にも適しています。
加工時の注意点(ひけ、割れ、変色など)
真鍮の加工では、いくつかのトラブルが発生することがあります。
代表的なものとしては、「ひけ」「割れ」「変色」があります。
鋳造加工における「ひけ」や「巣」は、金属の凝固時に体積が減少することで空洞が残る現象です。
これを防ぐには、鋳型設計の段階で湯流れの制御や押湯の設置、冷却速度の管理が重要です。
「割れ」は、主に冷間加工で発生しやすく、加工硬化が進んだまま成形を継続すると起こります。
焼なましによる延性回復を行うことで、割れのリスクを抑えることができます。
また、急激な加工や応力集中を避けるような設計配慮も不可欠です。
「変色」は、熱処理や溶接・ろう付けなどにより酸化膜が形成されることで起こります。
酸洗いや研磨によって表面を再処理する、あるいはクリア塗装やメッキ処理を施すことで、外観の変化を抑えることができます。
特に装飾用途では、変色防止策が製品価値に直結するため重要です。
これらの現象を未然に防ぐためには、加工方法ごとの特性を理解し、材料特性と加工条件を適切にマッチングさせることが求められます。
代表的な真鍮の種類
真鍮は用途に応じて多様な種類に分類されており、成分や加工特性に基づいて以下のような代表例があります。
C2600(黄銅一種)
C2600は、銅約70%、亜鉛約30%で構成される一般的な真鍮で、通称「70/30真鍮」とも呼ばれます。
展延性に優れており、冷間加工にも適しています。
装飾品や電気端子、精密機器部品など幅広い用途に使用されます。
C2680(黄銅二種)
C2680は、銅が約66%、亜鉛が約34%で、C2600よりやや亜鉛含有量が高いため、強度と耐摩耗性が向上しています。
適度な展延性と加工性を兼ね備え、建築金物や日用品などに多用されます。
C2801(高力黄銅)
C2801は、銅が約60%、亜鉛が約40%の「60/40真鍮」とも呼ばれる材料です。
機械的強度が高く、プレス加工や切削加工にも適しています。
機械部品や装飾品、バルブなどに用いられます。
C3604(快削黄銅)
C3604は鉛を約3%含有した快削性の高い真鍮です。
NC旋盤や自動盤での量産加工に適しており、ねじ、軸、コネクタなどの精密部品に使用されます。
ただし鉛の含有によりRoHS規制への対応が必要な場合もあります。
C3602(鉛フリー快削黄銅)
C3602はC3604と似た性質を持ちながら、鉛を含まず環境規制に適合した真鍮です。
鉛フリーでありながらある程度の切削性を確保しており、電子部品や自動車部品において使用が増えています。
C3771(鍛造用黄銅)
C3771は鍛造に特化した真鍮で、高い耐衝撃性と加工性を持ちます。
バルブ、継手、蛇口などの水まわり部品に広く用いられます。
鋳造との併用も可能で、構造部材としても適しています。
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