無電解ニッケルめっきってなに!?特性など解説します!
こんにちは!本日は無電解ニッケルめっきについて解説します!
特性など解説していきますので、是非ご覧ください♪
無電解ニッケルめっきとは
無電解ニッケルメッキとは、硫酸ニッケルおよび次亜リン酸ナトリウム、pH緩衝材、錯化材、安定化剤などで構成されるメッキ液に対象物を浸し、液中での還元反応を利用することで対象物表面にリンを含んだ金属皮膜を析出させるメッキ手法です。
無電解ニッケルメッキの被膜はリンが含有している被膜だと述べましたが、その含有率は3~13%と幅広いです。
一般的には「低リンタイプ」「中リンタイプ」「高リンタイプ」に分けられ、それぞれ磁性特性、耐薬品性、耐食性、硬度などを変化させられます。
また、無電解ニッケルメッキ後にベーキング処理(熱処理)を行うことにより、Hv900~1000程度の高硬度を実現することも可能です。
RoHS指令にも抵触しないため、安心して使用することができます。
無電解ニッケルメッキの特徴
被膜が均一
無電解ニッケルメッキは、電解ニッケルメッキと比べ被膜を均一にすることができます。
電解ニッケルメッキの場合は、対象物に通電させることでメッキを析出させていきますが、電気を使用することで通電しやすい箇所とそうでない箇所が出てきてしまい、被膜が均一になりにくいという欠点があります。
しかし無電解ニッケルメッキの場合は、化学的還元作用の力でメッキを析出させていくので、比較的被膜が均一になりやすいのです。
複雑な形状にもメッキができる
電気を使わずにメッキできる無電解ニッケルメッキは、複雑な形状のものに対しても均一な被膜をつくることができます。
上でも説明したように、電解ニッケルメッキでは電気の通りやすい箇所とそうでない箇所が発生します。
複雑な形状になればなるほどその現象が出やすくなるため、うまくメッキできないことがあります。
それに対して無電解ニッケルメッキなら、化学的還元反応を利用して行うめっきのため、対象物が複雑な形状をしていても均一に金属が析出します。
寸法精度を維持できる
対象物に対し均一に被膜を形成させられる無電解ニッケルメッキであれば、メッキ対象の寸法精度も維持できます。
メッキを施す対象物の膜厚が均一になるので、高い寸法精度が求められるような電子部品や精密機械部品などで用いられることが多いです。
硬度が高い
無電解ニッケルメッキは、電解ニッケルメッキに比べ硬度が高いという特徴があります。
リンの含有率によって硬度は変わりますが、硬度が高いことで摩擦などに強くなり、耐久性が上がります。
また無電解ニッケルメッキは、メッキ後に熱処理を加えることで硬度がより高くなるという特徴もあります。
例えば、中リンタイプの無電解ニッケルメッキ後に熱処理した場合、400℃で1~2時間熱処理を加えることで、Hv900~1000になるというデータもありますが、400℃程度ですと、素材が変形を起こし、内部応力の関係で被膜が剥離する可能性もあるため、熱処理を加える場合は、その温度に注意が必要です。
プラスチックやセラミックのような不導体(絶縁体)にもメッキ処理できる
無電解ニッケルメッキ処理は、通電を必要としないため、電流が流れにくいプラスチックやセラミックなどの不導体(絶縁体)にもメッキ処理を行うことができます。
無電解ニッケルメッキのメリット
還元反応によるメッキのため電気を必要としない
めっきに電気を使用しないことで得られるメリットは2つあります。
1つは先ほど特徴のところでも挙げたように「対象の素材が不導体(絶縁体)でもメッキが可能」であることです。
もう1つは、電気を通すための設備がいらないので、対象物の形状や大きさに制限がないことです。
形状に制限がなく複雑な形状でも均一にめっきができる
形状に制限がないとどんなメリットがあるかというと、例えば対象物が複雑な形状をしていたとしても、均一にめっきができることです。
複雑な形状のものに電気を通しメッキを行う場合、その形状のせいで通電にばらつきが出てしまうことも考えられます。
すると、表面の析出の仕方も箇所によって変わってしまうので、結果的にめっきにムラができてしまうのです。
電解ニッケルメッキと比べてピンホールが少ない
無電解ニッケルメッキを行った場合のメッキ断面は層状構造です。
そのため電解ニッケルメッキに比べピンホールも少なくなります。
リン含有率やメッキ後の熱処理により特殊な物性の被膜が得られる
無電解ニッケルメッキは、含まれるリンの含有率やメッキ後に行う熱処理によって、被膜の性質が異なります。
そのため、さまざまな用途やニーズに応じた対応が可能です。
ちなみに熱処理後の硬度変化については、上記、無電解ニッケルメッキの特徴のところで触れています。
ここでは、リンの含有の違いによって実際にどのような性質の違いがあるのかを、簡単に整理します。
無電解ニッケルメッキの場合は、リンの含有率によって「低リンタイプ」「中リンタイプ」「高リンタイプ」と分けられています。
<低リンタイプ>
・被膜が硬く耐アルカリに優れている
・特殊素材への密着性に優れている
<中リンタイプ>
・耐食性や防食性がある
・一般素材への密着性が高く、全体的にバランスが取れている
<高リンタイプ>
・高温で熱処理しても非磁性を維持できる
・耐酸性に優れている
耐薬品性が高い
無電解ニッケルメッキは、耐薬品性が高いというメリットがあります。
ただ、耐薬品性については、リンの含有量によって耐性が変わります。
リンの含有量が高い「高リン無電解ニッケルメッキ」であれば、「低リン」「中リン」に比べ耐薬品性が向上します。
アルミニウム、ステンレス、銅材にメッキが可能
無電解ニッケルメッキは、アルミニウム、ステンレス、銅材に対して特殊な前処理を行うことで、密着性の高いメッキ被膜をつくることが可能です。
また、難しい材質に他のメッキをする場合の下地メッキとして大事な役割を担っています。
無電解ニッケルメッキのデメリット
電気メッキと比較して浴組成の変動が大きいため管理がやや難しい
無電解ニッケルメッキは、電解ニッケルメッキと比べ浴組成の変動が大きくなります。
そのため管理が難しいというデメリットがあります。
また、浴温度が高温のため、熱の影響を受けやすい素材では注意が必要です。
処理温度が高温のため、製品によって注意が必要
無電解ニッケルメッキの場合、メッキの工程における処理温度が高温になります。
ですから耐熱性が低く、加熱により変形するような素材には不向きです。
また加熱により物性が変化する恐れのあるものについては、変化が許容できるものなのか、処理前の確認が必要です。
材料費が高く、メッキ析出スピードが遅いのでコストが高くなる
通電ではなく還元反応を利用するため、メッキ析出速度は遅くなります。
速度が遅いとメッキ液に浸漬する時間が長くなり、加工コストが高くなります。
また、電解ニッケルメッキと比べ材料費も高いです。
無電解ニッケルメッキの種類
無電解ニッケルメッキのリン含有率における違い
無電解ニッケルメッキの種類におけるリン含有量での特徴について
低リン | 中リン | 高リン | |
リン含有率(%) | 1~4 | 8~9 | 11~13 |
硬度(Hv)熱処理 400℃ 1時間 |
650~700 900~1000 |
500±50 900~1000 |
500程度 900~1000 |
密度(g/㎤) | 8.2 | 7.85 | 7.75 |
溶融点(℃) | 1260~1425 | 890 | 890 |
熱膨張係数(μm/m/℃) | 13~14 | 12~13 | 11~12 |
電気抵抗率(μΩcm) | 20~30 | 50~60 | 150~200 |
抵抗温度計数(ppm/℃) | 1000 | 300 | 100 |
熱伝導度(cal/cm/℃) | 0.0105~0.0135 | 0.0105~0.0135 | 0.02 |
比重 | 7.9 | ||
応力 | 圧縮 | 圧縮 | 圧縮 |
磁性 | 磁性 | 磁性 | 非磁性 |
抗張力(Mpa) | 200 | 800~900 | 800~900 |
伸び率(%) | 0.5 | 0.7 | 1.5 |
ヤング率 | 50~52 | 62~66 | 50~70 |
テーパー摩耗(TWI) | 11 | 16~20 | 21~25 |
耐食性塩水噴霧試験(時間) | 24 | 200 | 1000 |
耐酸性 | 弱 | 良 | 優 |
耐アルカリ性 | 良 | 良 | 優 |
はんだ付け性 | 優 | 良 | 可 |
被膜均一性 | ±5%以下 | ±10%以下 | ±5%以下 |
結晶構造300℃ 1時間 | 結晶結晶 | 微アモルファス結晶 | アモルファス結晶 |
耐摩耗性 | 可 | 優 | 良 |
均一析出性 | ±5% | ±10% | ±10% |
均一析出性 | ±5% | ±10% | ±10% |
均一析出性 | ±5% | ±10% | ±10% |
均一析出性 | ±5% | ±10% | ±10% |
均一析出性 | ±5% | ±10% | ±10% |
均一析出性 | ±5% | ±10% | ±10% |
均一析出性 | ±5% | ±10% | ±10% |
均一析出性 | ±5% | ±10% | ±10% |
均一析出性 | ±5% | ±10% | ±10% |
均一析出性 | ±5% | ±10% | ±10% |
均一析出性 | ±5% | ±10% | ±10% |
耐薬品性
基本的に金属ニッケルは、塩酸・硫酸・硝酸に溶けます。
下記にて他の試薬に関する耐薬品性を記載します。
試薬 | 温度(℃) | 腐食率(μm/年) |
アセトアルデヒド | 65.6 | 0.5 |
アセトン | 室温 | 0.076 |
アクリロニトリル | 65.6 | 0.4 |
硫化アンモニウム | 48.9 | 3.8 |
酢酸イソペンチル | 室温 | 0.048 |
塩化イソペンチル | 室温 | 0.33 |
ビール | 7.2 | 0.2 |
ベンゼン | 室温 | 0.04 |
酢酸ベンジル | 室温 | 0 |
ベンジンアルコール | 室温 | 0.092 |
48.5%塩化カルシウム | 室温 | 0.5 |
カプロラクタム | 85 | 0.76 |
カプリル酸 | 65.6 | 1.52 |
硫化炭素 | 室温 | 0 |
四塩化炭素 | 室温 | 0 |
5%洗剤 | 室温 | 0.94 |
エチルアルコール | 室温 | 0.16 |
エチルグリコール | 室温 | 0.64 |
37%ホルムアルデヒド | 室温 | 0.34 |
ガソリン | 室温 | 0.56 |
80%乳酸 | 室温 | 3.7% |
メチルアルコール | 室温 | 0 |
ナフサ | 室温 | 0 |
ナフタル酸 | 65.6 | 0.5 |
オレイン酸 | 室温 | 0.3 |
オレンジジュース | 室温 | 0.33 |
テトラクロロエチレン | 65.6 | 3.8 |
石油 | 室温 | 0 |
ポリ酢酸ビニル | 98.9 | 1.27 |
ロジン | 室温 | 0 |
10%炭酸ナトリウム | 室温 | 0 |
3%塩化ナトリウム | 室温 | 1 |
50%水酸化ナトリウム | 121.1 | 0 |
ソルビトール | 65.6 | 2.5 |
ステアリン酸 | 70 | 0.5 |
砂糖水 | 室温 | 0 |
蒸留水 | 室温 | 0.74 |
25%尿素溶液 | 室温 | 0 |
用途
めっきは使用する用途によって、さまざまな手法を選択します。
無電解ニッケルメッキが行われる用途は、次の通りです。
産業分類 | 応用部品 | 使用目的 |
自動車工業 | ディスクブレーキ、ピストン、シリンダ、ベアリング、精密歯車、回転軸、カム、各種弁、エンジン内部、変速機 | 耐食性、耐摩耗性、硬さ、焼き付き防止、寸法精度 |
電気電子工業 | 接点、シャフト、パッケージ、ボルト、ナット、マグネット、ばね、ステム、コンピューター部品、電子部品、抵抗体 | 耐食性、硬さ、はんだ付け性、溶接性、寸法精度 |
精密機器工業 | カメラ、時計部品、TV部品、コピー機、プリンター、光学機械部品、電子顕微鏡部品、分析機器部品 | 耐食性、耐摩耗性、硬さ、電気特性、非磁性、寸法精度 |
航空、船舶 | 水圧計機器、電気系統部品、弁配管、エンジン部品、スクリュー部品など | 耐食性、耐摩耗性、硬さ、寸法精度 |
化学工業 | 反応槽、輸送管、揺動弁、バルブ類、ポンプ、パイプ内部、熱交換器 | 耐食性、耐摩耗性、酸化防止、汚染防止 |
その他 | ハードディスク、冷凍機、冷暖房機、工作機械部品、真空機器、各種金型、繊維機械部品、食品機械、半導体産業部品、航空機など | 耐食性、耐摩耗性、硬さ、耐熱非磁性、離型性、気密度、寸法精度 |
こちらの記事は三和メッキ工業株式会社様の記事を参照しております。
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