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試作人基礎講座

公開日: | 更新日: | 試作人基礎講座

材料解説シリーズ~SPCC編~

本日は材料解説シリーズ「SPCC編」です!
弊社では板金加工時に使用する材料でもあるSPCCですが、他の材料とはどう違うのか?
解説していきたいと思います!是非ご覧ください♪

必達試作人
必達試作人
SPCCを使った板金加工も対応可能です

SPCCとは

SPCCの試作品

SPCCは高炉メーカーから仕入れた熱間圧延軟鋼版を、常温状態で冷間圧延して作られます。
主に曲げ加工やプレス加工、簡単な絞り加工を施すのに適した素材で、柔らかく、成形性・加工性に優れた特徴を持ちます。
SPCCは、3.2mm以下の板金加工をする場合に最適です。

SPCCは冷間圧延で製作されており、未研磨でも材の表面に光沢あり滑らかなため、ミガキ材と呼ばれることもあります。
別名「圧延材」「コールド」とも呼ばれます。

初期のSPCCには油がついていますが、この油がなくなると錆びてしまう性質を持つため、SPCCの加工後は塗装やメッキ処理の後工程を施すなど、錆対策が必須です。
他材と比べると安価で加工性にも優れていることから、自動車などの様々な機械部品やワッシャー、スペーサーなどにも使用される身近な金属です。

SPCCの規格・化学成分

SPCCは「JIS G 3141」で冷間圧延鋼板および鋼帯に規定されている鋼材です。
炭素量が少ないことから、炭素を含有した炭素鋼に対して普通鋼とも呼ばれます。
一般的な鋼材であるSS400の炭素量がおよそ0.2%程度であるのに対し、SPCCは炭素量が0.15%以下になるよう規定されています。
SPCCは炭素量が少ないため、炭素鋼の中で最も柔らかい材料です。

規格

SPCC:一般用
SPCC-T(Test):引張試験の値を保証したもの
SPCD(Deep Drawn):絞り用
SPCE(Deep Drawn Extra):深絞り用
SPCF:非時効性深絞り用
SPCG:非時効性長深絞り用

JIS G 3141で規定されている鋼材には、SPCCのほかに「SPCC-T」「SPCD」「SPCE」「SPCG」の5種の鋼種があり、それぞれ化学成分と機械的性質の違いによって分類されています。
SPCCが一般用であるのに対し、SPCC-Tは引張試験の値を保証したもの、SPCDは絞り用、SPCEは深絞り用、SPCFは非時効性深絞り用、SPCGは非時効性長深絞り用です。

種類 適用厚さ(mm) C(炭素) Mn(マンガン) P(リン) S(硫黄)
SPCC 0.10~3.2 0.15以下 0.60以下 0.100以下 0.050以下
SPCD 0.15~3.2 0.12以下 0.50以下 0.040以下 0.040以下
SPCE 0.15~3.2 0.10以下 0.45以下 0.030以下 0.030以下
SPCF 0.15~3.2 0.08以下 0.45以下 0.030以下 0.030以下
SPCG 0.40~3.2 0.02以下 0.25以下 0.020以下 0.020以下

SPCCの物理的性質

種類 溶融点 比重・密度 電気抵抗 比熱 体積比熱 線膨張係数 ヤング率 ポアソン比
SPCC 1530℃ 7.85g/㎤ 0.097μΩ・m 460KJ/kg・K 3.6W/㎤・K 12.0/K×10-6

206,000N/㎟
(206GPa)

0.30

SPCCの機械的性質

種類 引張強さ 降伏点耐力 伸び率
SPCC 270N/㎟以上 - 0.2%未満 0.20~0.25%未満 0.25~0.30%未満 0.30~0.40%未満 0.40~0.60%未満 0.60~1.0%未満

1.0~1.6%未満

1.6~2.5%未満
板厚
27mm以上 29mm以上 32mm以上 35mm以上 42mm以上 44mm以上 45mm以上 46mm以上

引張強さは全鋼種において270N/㎟以上であり、伸び率が0.2%未満なら厚さは27mm以上、0.20~0.25%未満なら29mm以上、0.25~0.30%未満なら32mm以上、0.30~0.40%未満なら35mm以上、0.40~0.60%未満なら42mm以上、0.60~1.0%未満なら44mm以上、1.0~1.6%未満なら45mm以上、1.6~2.5%未満なら46mm以上となっています。
ただし厳密には各鋼種ごとに規定があるため、板厚はもう少し抑えられます。

SPCCの板厚と流通

SPCCの試作品

製造コストを抑えたり、欠品リスクを避けるためには、流通性の高い板厚を選定することが重要です。
規格通りの板厚を選んだとしても、必ずしもすぐに手に入るわけではない点に注意が必要です。

流通性の高いSPCCの板厚

0.5mm,0.8mm,1.0mm,1.2mm,1.6mm,2.0mm,2.3mm,2.6mm,2.9mm,3.2mm

SPCCの板厚で流通性の高いものは「0.5mm」「0.8mm」「1.0mm」「1.2mm」「1.6mm」「2.0mm」「2.3mm」「3.2mm」です。
規格としては「2.6mm」「2.9mm」もありますが、流通性が低いので調達できる可能性が非常に低いので設計する際には注意が必要です。

板の定尺は914×2438mm、1219×2438mmがメインで流通しています。

SPCCのメリット・デメリット

SPCCのメリット

・高い加工性と成形性
・加工しやすい
・表面仕上げの美しさ
・板厚精度が高い

SPCCの優れている点は、熱間圧延鋼板よりも高い伸びを持つことによる、高い加工性と成形性です。
また加工のしやすさに加えて、板厚精度の高さや表面仕上げの美しさも熱間圧延鋼板に比べて優れています。

それでいてステンレス系材料に比べると安価であるため、コストを抑えつつ高品質高精度に仕上げたい場合に適しています。

SPCCのデメリット

・酸化しやすい
・加工後の表面処理が必須

SPCCは酸化被膜を落とした鋼材のため、非常に酸化しやすいのがデメリットです。
保管状態によって錆が発生するどころか、手で触れただけで酸化が始まってしまいます。
SPCCを使用する場合は、基本的に加工後に塗装およびメッキが必須です。

きちんと塗装・めっきを施せば、建材などとしても十分に使える材料であるともいえます。

SPCCと他の鉄規格との違い

規格 強度 価格(¥/kg) 焼き入れ効果 溶接性 耐食性
SPCC 130
SS400 115
S45C 300
SPHC 100
SECC 150
SGCC 150
ZAM 160

SPCCと他冷間圧延鋼板との違い

SPCCと同じ冷間圧延鋼板には、他にもSPCD、SPCEなどの種類があります。

SPCCが、曲げ加工・絞り加工に対して一般的である一方、SPCDは絞り用とされており、SPCCよりも伸び率が優れているものです。
自動車や電機部品の絞り加工を施す場面で使用される材料です。
また、SPCEは深絞り用と呼ばれ、深絞りが可能なよう薄板になっているものです。
車の外板やボンネットなど、深絞り加工を要する場面では、SPCEが使用されます。

SPCCと他鉄材との違い

同じ鉄材でもSPH、SPHC、SECCなど様々な種類がありますが、それらが区別される大きな違いとして、①製造方法と②板厚があげられます。

SPCCと他鉄材との違い
鉄材名 製造方法による違い 板厚による違い
SPCC(ミガキ) 冷間圧延鋼板 0.4~3.2mm
SPHC(黒皮) 熱間圧延鋼板 1.6~9mm
SPHC(酸洗) 熱間圧延鋼板 1.2~9mm
SECC(ボンデ) 電気亜鉛メッキ鋼板 0.4~3.2mm
SGCC 溶融亜鉛メッキ鋼板 0.25~3.2mm
SPTE(ブリキ) 電気めっき鋼板 0.15~0.6mm

製造方法が異なることで、価格が異なります。
例えば、SPCCとSPHCを比べると、熱間圧延鋼板をさらに冷間圧延するというひと手間を加えているSPCCのほうが、価格がやや高く設定されています。 ただ、このひと手間によって、SPCCはSPHCよりも表面が美しく、加工性に優れるという特徴を持ちます。

基本的に板厚の分類は、薄板=3mm未満、中板=3mm以上6mm未満、厚板=6mm以上とされています。
SPCCは0.4~3.2mmと板厚の幅が広く、用途に応じて適切な板厚を選びやすい素材です。
SECCやSGCCなどと比べると耐食性が劣るなど、デメリットも持ち合わせるSPCCですが、以上のようなメリットから、板金加工の現場では使用されることの多い材料です。

SPCCとSPHCの違い・使い分け

SPCC SPHC
常温で圧延する 高温で圧延する
JIS G 3141で規定 JIS G 3131で規定
精度が高い 酸化皮膜(黒皮)があり錆の進行を抑えられ、安価

SPCCは冷間圧延鋼板であり常温で圧延した鋼板なのに対して、高温で圧延した鋼板のことをSPHCといいます。
この2つは規定するJISも異なり、SPCCがJIS G 3141で規定されているのに対し、SPHCはJIS G 3131で規定されています。

SPHCは高温で加工をしているため表面に黒皮と呼ばれる酸化被膜があり、錆びの進行を抑える点が大きくSPCCよりも優れています。
そのほか、SPHCのほうが冷間圧延工程を通らない分、SPCCよりも安価な反面、SPCCに比べると精度はよくないといった特徴があります。

精度が求められる外観面にはSPCCを使用し、見えない部分にはSPHCを使うといった使い分けをすることが多いです。

SPCCとSS400の違い・使い分け

SPCC SS400
冷間圧延鋼板 熱間圧延鋼板
引張強さ270N/㎟以上 引張強さ400~500N/㎟
板厚精度や表面粗さに優れる 強度に優れる

SPCCとSS400の違いは強度です。
SS400の引張強さが400~500N/㎟と規定されているのに対し、SPCCは270N/㎟以上と強度の面で大きな差があります。

一方で、熱間圧延鋼板であるSS400に比べると、冷間圧延鋼板であるSPCCは板厚精度や表面粗さの面で優れています。
そのため、構造物など強度が求められる場面ではSS400を、精密板金や筐体など寸法精度が求められる場合にはSPCCと使い分けることが多いです。

こちらの記事はMitsuri Media様の記事を参照しております。

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株式会社アスク

【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
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