SUS440Cとは!?性質や用途などご紹介します!
本日はSUS440Cについて解説します!
性質や用途などご紹介しますので、是非ご覧ください♪

SUS440Cとステンレス鋼
SUS440Cの属するマルテンサイト系を中心にステンレス鋼の種類とそれぞれの種類の組成の構成や、機械的性質と物理的性質について紹介します。
ステンレス鋼とは
ステンレス鋼はJIS G0203用語では以下のように定義されています。
「ステンレス鋼はCrの含有率を10.5%以上、炭素の含有率を1.2%以下として耐食性を向上させた合金鋼です。」
ステンレス鋼は、鉄にクロム(Cr)を入れて錆びない鉄鋼として広く利用されています。
ステンレス鋼の種類は、基本的に次の5種類です。
・オーステナイト系
・フェライト系
・マルテンサイト系
・オーステナイト・フェライト系
・析出硬化系
今回解説するSUS440Cは、マルテンサイト系のステンレス鋼です。
ステンレス鋼の種類ごとの特徴は以下の通りです。
オーステナイト系 | 常温でオーステナイト組織を示します。 クロムとニッケルを主成分としています。 SUS304に代表されます。 もっとも耐食性に優れている、低高温時の特性に優れるなどの特徴があります。 一般的製品のほか、化学・原子力などのプラント部材に使用されます。 |
フェライト系 | Cr>10.5%有して、常温でもフェライト組織を示します。 SUS430に代表されます。 耐食性が優れ、安価という点で、一般的な製品に使用されます。 |
マルテンサイト系 | SUS440Cに代表され、炭素量を増やし、熱処理で硬化させてマルテンサイト組織とします。 焼き入れによって、非常に硬い金属組織に変化します。 耐食性に優れ、高強度・耐熱性にも優れ、ポンプ・ターブンなどの部材に使用されます。 |
オーステナイト・フェライト系 | 常温でオーステナイト組織とフェライト組織とが混在します。 SUS329に代表されます。 クロムとニッケルを主成分とし、応力腐食割れが生じにくい特徴があり、海水用復水器や熱交換器のプラント装置部材に使用されます。 |
析出硬化系 | アルミニウム、銅、他の元素を添加して、熱処理によって添加した元素の加工物が析出し、硬度が高くなったという特徴を有します。 SUS630に代表されます。 タービンやスプリング部材に使用されます。 |
ステンレス鋼の組成とSUS440C
以下の表は、各種ステンレス鋼の組成の構成についてのまとめです。
種類 | 記号 | C | Si | Mn | P | S | Ni | Cr | Mo | Cu | その他 |
オーステナイト系 | SUS304 | <0.08 | <1.0 | <2.0 | <0.045 | <0.03 | 10 | 20 | - | - | - |
SUS316 | <0.08 | <1.0 | <2.0 | <0.045 | <0.03 | 14 | 18 | 3 | - | - | |
フェライト系 | SUS430 | <0.08 | <1.0 | <1.0 | <0.04 | <0.03 | - | 14 | - | - | Al 0.3 |
マルテンサイト系 | SUS420J2 | 0.40 | <1.0 | <1.0 | <0.04 | >0.03 | <0.6 | 14 | |||
SUS440C | 1.2 | <1.0 | <1.0 | <0.04 | <0.03 | <0.6 | 18 | <0.75 | |||
オーステナイト・フェライト系 | SUS329J1 | <0.08 | <1.0 | <1.5 | <0.04 | <0.03 | 6 | 28 | 3 | - | |
析出硬化系 | SUS630 | <0.07 | <1.0 | <1.0 | <0.04 | <0.03 | 7 | 18 | - | - | Al 1.5 |
SUS440Cは、SUS440A→SUS440B→SUS440Cの順に炭素の量が多くなって、硬さを向上させています。
またマルテンサイト系の鋼種は、SUS410を元として、元素量の増減で特性を変えて特徴ある鋼種に系統立てらています。
SUS440Cの機械的性質と物理的性質
各種ステンレス鋼の機械的性質と物理的性質について、SUS440Cのマルテンサイト系を中心に整理し、どのような点に違いがあるかを見てみましょう。
分類 | JIS記号 | 硬さ (HV) |
耐力 N/㎟ |
伸び % |
引張強さ N/㎟ |
密度 g/㎤ |
融点 (℃) |
熱伝導率 W/(mK) |
熱膨張係数 10-6/℃ |
備考 |
オーステナイト系 | SUS304 | <218 | >205 | >40 | >520 | 7.9 | 1450 | 16 | 17 | |
SUS316 | <200 | >205 | >40 | >520 | 7.9 | 1450 | 16 | 17 | - | |
フェライト系 | SUS430 | <200 | >205 | >22 | >420 | 7.7 | 1500 | 26 | 10 | - |
マルテンサイト系 | SUS420J2 | >220 | >540 | >12 | >740 | 7.7 | 30 | 10 | 焼き入れ焼き戻し状態 | |
SUS440C | >653 | >1300 | >4 | >1600 | 7.7 | 1500 | 24 | 10 | ||
オーステナイト・フェライト系 | SUS329J1 | <290 | >390 | >18 | >590 | 8 | 1400 | 21 | 11 | - |
析出硬化系 | SUS630 | <400 | >1175 | >10 | >1310 | 7 | 1450 | 18 | 11 | 熱処理H900 |
参考 | S45C | <160 | >490 | 17 | 690 | 7.8 | 1400 | 44 | 11 | 焼き入れ/焼き戻し |
SUS440Cの硬度は、焼き入れ焼きなまし後の硬度で、HVで650以上です。
耐力や引張強度も高くなって、強度は高いほうでしょう。
またSUS440Cの熱伝導率は24です。
熱伝導率は、オーステナイト系と析出硬化系が、低くなっていますが、マルテンサイト系はやや高い値です。
S45Cの熱伝導率は44なので、熱伝導率はあまり大きくないといえます。
SUS440C材の切削加工
SUS440Cを切削加工するにあたり、はじめに切削の基本事項とSUS440Cの切削性について紹介します。
またSUS440Cの切削加工を行うときの影響や、SUS440Cの切削加工時の注意ポイントを解説します。
SUS440Cの切削性
快削材とは、硫黄や鉛などを添加することで被削性を向上させた材料です。
切削が容易になり、その分きれいな仕上がりが期待できるなどの利点があります。
日切削物が快削材かを決めるものに被切削係数(基準100)があり、45以下を難削材としています。
ステンレス鋼の系統ごとの被切削係数は、次のようになります。
・オーステナイト系→50~35 ・フェライト系→65~50 ・マルテンサイト系→55~40
SUS440Cは、マルテンサイト系の被切削係数が平均50程度ですので、難削材とはいえませんが、切削条件が変動するような場合には、難削材となることがあります。
SUS440Cの切削加工時には、物理的特徴に留意して切削する必要があります。
快削の基本とSUS440Cへの影響
工具の刃先が工作物に食い込むと、工作物切削部がせん断力で切りくずとして排出され、刃先と工作物の接触熱、切りくずと刃先が接触する摩擦熱、刃先と仕上げ面が接触する摩擦熱が発生します。
また刃先が工作物を切削する力は、反力の切削抵抗力として、刃先にかかります。
これらの発生熱や抵抗力は、刃先の摩耗やチッピングなどの損傷として、工具の寿命と仕上げ面の精度や滑らかさに影響します。
また被削性が良いと評価されるポイントとして、以下の5点があります。
A)切削抵抗が小さいこと
B)切削温度が上がらないこと
C)切りくずが処理しやすい形状で流れること
D)仕上げ面が滑らかに仕上がること
E)工具の寿命が長いこと
A)~D)の切削評価には、次のa)~f)の項目が影響します。
a | 硬度の大きさ (かたさ) |
SUS440Cのように硬度が大きいと、刃先との接触時の切削抵抗も大きくなり、刃先に衝撃力を与え、摩耗や破損をしやすくなります。 |
b | 熱伝導率の大きさ | 切削時の大きな発熱は工具刃先に熱衝撃を与え、摩耗・破損の要因となります。 発生した切削熱は、通常は材料からの切りくずに熱が伝わり、切りくずとともに排出されます。 SUS440Cのように熱伝導率が小さい材料は、切削条件によっては切削熱を逃がし難くなることがあり、刃先の摩耗やチッピングなどが生じやすくなります。 |
c | 加工硬化性の大きさ | 加工硬化により硬くなった材料を切削することで、刃先に負担がかかり、摩耗や損傷が起こりやすくなります。 SUS304のオーステナイト系ステンレスは加工硬化が起こりやすいですが、SUS440Cのマルテンサイト系のステンレス鋼は、加工硬化が起きにくい材料です。 |
d | 工具との親和性の深さ | 工具の材質と材料の材質が化学的に物質間の結合しやすさがある場合、高温の刃先と切りくずの溶着が起こり、刃先の摩耗と損傷の原因となります。 |
e | 強度の大きさ | 強度が大きいと変形しにくいです。 例えば切削速度と送り速度が大きくなって切削力が増えれば切削抵抗も増え、刃先に負担が大きくかかり、刃先を痛める要因となります。 SUS440Cの硬さと引張強さは非常に大きいので、強度の高い材料といえます。 |
f | 靭性の大きさ (粘さの有無) |
粘り強い材料は、切削時に刃先で切り分けることが簡単にできず、切削抵抗を増やします。 切削抵抗の増加は、刃先への力の負担が大きくなり、刃先を痛める要因となります。 SUS440Cの伸びは4%以上、絞りは10%以上です。 SUS304と比べれば粘り強さは低いといえるでしょう。 なお、オーステナイト系SUS304は、伸びが40%、絞りが60%で、粘り強さが大きく、難削材となる要因の一つです。 |
SUS440Cは難削材ではないため、切削加工に影響することはありませんが、以下の4つの項目が影響を及ぼす値が近いため、切削条件によっては影響値を超える場合があります。
・硬度の大きさ(かたさ)
・熱伝導率の大きさ
・工具との親和性の深さ
・強度の大きさ
切削加工に当たっては、初期の切削条件と、現状の変化した切削状態に注意することが大切です。
SUS440Cの切削時のポイント
SUS440Cの切削加工では、材料の硬さと強度、熱伝導率、工具刃先の形状、切りくずの形状などが密接に関係して、刃先にかかる切削熱や切削抵抗の大きさの変動が現れます。
切削条件を操作することでこれらの変動を減らし、摩耗や損傷を少なくすることが大切です。
ここではSUS440Cの安定した切削加工を行うためのポイントを紹介します。
SUS440Cの硬度と強度についての対策
高硬度の材料は高速で切削することが一般的ですが、普通の切削加工時のすくい角30°位では、刃先が欠けやすくなります。
そのため、すくい角を負とする、ネガティブすくい角の刃先の工具を使用します。
すくい角を負とすると、切削抵抗が大きくなり刃先の負担が増えるため、切削条件を変えるなどで負担を減らすことができます。
また高硬度の材料の切削時には、切削条件をどれだけ変えられるかなどテスト切削を行い、工具の強度や形状、切削条件などを決定します。
SUS440Cの熱伝導についての対策
熱伝導率はそれほど小さくないため、通常の切削加工で発生する切削熱は、切りくずに伝熱され、ともに排出されます。
しかし切削速度と送り速度の変更によって刃先切削温度が上がると、切削抵抗が増えて切削温度が上昇します。
SUS440Cは熱伝導率がそれほど高くないため、温度上昇が高いと刃先温度を冷やせるだけの熱量を切りくずから排出できないことがあります。
また切削条件変更がうまくコントロールできない時、切りくずの形状によっては熱伝導だけで刃先の発生熱を十分に下げることができない場合もあります。
対応は以下の通りです。
・切削速度と送り速度などを遅くして熱の発生をコントロールします。
・潤滑用液は刃先の潤滑作用だけでなく冷却効果もあるため、十分な量の潤滑油を噴射することも有効です。
・切りくずと刃先の接触部に潤滑油を常時流すことで、切りくずが刃先に融着しないようにします。
・刃先がポジティブ(正)すくい角を使用する場合は、切りくずの形状が流れる形であれば、刃先のすくい角度を大きく(最大30°)して、切りくずから刃先の接触域をなくし、切り刃の温度を下げます。
SUS440Cと工具との親和性についての対策
SUS440C材と工具とに親和性がある場合は構成刃先ができやすくなるため、工具を親和性のないものに交換します。
工具の硬さはSUS440C材の硬さの4倍程度のものを選定します。
こちらの記事ははじめの工作機械様の記事を参照しております。
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