ツーリングとは?工作機械の精密加工を支える基盤技術
工作機械における「ツーリング」は、主軸と工具をつなぐ重要な部品群を指し、加工精度や生産性に直結する基盤技術です。
ツーリングの適切な選定と管理は、振動や芯ブレの抑制、工具寿命の延長、段取り効率の向上など、多岐にわたるメリットをもたらします。
特に、BTホルダー、HSKホルダー、CATホルダー、VDIホルダーなどのツールホルダーは、加工内容や機械仕様に応じた最適な選択が求められます。

ツーリングとは
ツーリングとは、工作機械において切削加工を行うために使用される「工具」および「工具保持具(ホルダー類)」を総合的に指す用語であり、加工精度や生産性を大きく左右する極めて重要な存在です。
一般的にはエンドミルやドリルといった切削工具そのものに加え、それを工作機械の主軸に取り付けるためのホルダーやチャック、さらにそれを固定するためのシャンクなどを含めて「ツーリングシステム」と呼びます。
つまり、工作機械と工具の間をつなぐインターフェース全体がツーリングであり、その性能が発揮されなければ、どれほど高精度な機械や優れた工具を用いても十分な加工品質を得ることはできません。
ツーリングの役割は大きく分けて二つあります。
ひとつは「工具を確実に保持し、回転や送りといった動力を正確に伝達すること」、もうひとつは「加工時の振動や変形を抑え、安定した切削を実現すること」です。
工作機械の主軸は高回転かつ高精度で動作していますが、工具と主軸をつなぐ部分にガタつきや振れがあれば、加工面の粗さや寸法精度は一気に悪化します。
さらに、その状態が続けば工具折損や主軸の損傷といった重大なトラブルにもつながります。
そのため、ツーリングは単なる「工具を取り付けるための部品」ではなく、工作機械の性能を余すところなく引き出すための重要な要素技術なのです。
また、ツーリングの良し悪しは加工効率やコスト面にも直結します。
例えば、把握力が弱いホルダーで重切削を行うと工具が滑ったり抜けたりする危険がありますが、適切なホルダーを選定すれば安全性が高まり、より効率的な加工が可能になります。
さらに、振れ精度の高いツーリングを用いれば工具寿命が延び、工具交換の頻度を減らすことができます。
これは工具コスト削減だけでなく、段取り替え時間の短縮や設備稼働率の向上にもつながるため、工場全体の生産性を押し上げる効果を持っています。
近年では、製造業における多品種少量生産化や高精度化の進展に伴い、ツーリングの重要性はますます高まっています。
航空機部品や医療機器のようにミクロン単位の精度が要求される製品では、工具そのものの精度はもちろん、ツーリングの精度が最終製品の品質を決定するといっても過言ではありません。
また、自動工具交換装置(ATC)を備えたマシニングセンタや複合加工機では、ツーリングが正確に着脱されることが必須であり、その規格や構造の違いが生産効率や段取り時間に大きく影響を与えます。
さらに、最新のツーリングにはIoTやセンサー技術が組み込まれつつあります。
例えば、工具の摩耗状態や温度、振動をリアルタイムで検知し、加工条件を最適化する「スマートツーリング」が開発されています。
これにより、従来は熟練作業者の経験に頼っていた工具交換のタイミングや加工条件の調整をデータに基づいて判断できるようになり、より安定した生産体制が実現しつつあります。
このようにツーリングは、従来の「工具保持具」という枠を超え、デジタル技術と結びついた生産革新の中心的存在へと進化しているのです。
総じて言えるのは、ツーリングは「工具と工作機械をつなぐ単なる中間部品」ではなく、「加工品質と生産性を決定づける戦略的要素」であるということです。
適切なツーリングの理解と選定、そして日常的なメンテナンスと管理は、製造業における競争力を維持するうえで欠かせない取り組みとなっています。
ツーリングが果たす役割
ツーリングの役割は、単に切削工具を機械に取り付けるだけではなく、加工精度や生産性、安全性を総合的に担保することにあります。
工作機械と工具の間をつなぐインターフェースである以上、その性能や信頼性が低ければ、いかに高性能な工作機械を導入しても十分な効果を発揮できません。
ツーリングの役割を理解することは、製造現場における工程設計や設備投資の判断を行ううえで極めて重要です。
第一に、ツーリングは「動力伝達と工具保持」の役割を担っています。
工作機械の主軸から伝達される回転力や送り力を、損失なく工具に伝えることが求められます。
例えば、エンドミルやドリルがわずかに滑ってしまえば加工精度が乱れるだけでなく、工具折損や製品不良の原因となります。
そのため、ツーリングは強固な把握力を備え、長時間の加工や重切削にも耐えうる設計であることが必要です。
また、把握力が不足すると工具が徐々に引き抜ける「工具抜け」現象が発生することもあり、これは重大な事故につながるため、ツーリングの選定と使用方法は安全性の観点からも非常に重要です。
第二に、ツーリングは「加工精度の維持」に大きな影響を及ぼします。
加工現場においては、ミクロン単位の誤差が製品不良につながるケースも少なくありません。
特に航空機部品や医療機器、自動車の精密部品などでは、高い寸法精度と表面粗さが求められます。
ツーリングがわずかに偏心しているだけでも工具の振れが大きくなり、加工面にビビりや段差が生じます。
これを防ぐためには、ツーリングの剛性や振れ精度、バランス性能が重要であり、高精度なホルダーやシャンクを使用することで安定した加工が実現できます。
つまり、ツーリングは製品品質を保証する基盤的存在であるといえるのです。
第三に、ツーリングは「工具寿命の延長」にも寄与します。
例えば、振れ精度の悪いツーリングを使うと切削負荷が刃先に偏って集中し、工具摩耗やチッピングが早期に進行します。
結果として工具交換の頻度が増え、コスト上昇や稼働率低下を招きます。
逆に、精度の高いツーリングを導入すれば工具寿命を大幅に延ばすことができ、結果として工具費用の削減や段取り替え時間の短縮につながります。
特に量産現場では、この効果が累積的に大きなコストメリットを生み出すため、ツーリングは経営的にも重要な投資対象とみなされています。
第四に、ツーリングは「段取り効率の向上」にも欠かせません。
現代の製造業は多品種少量生産が主流となっており、製品ごとに異なる工具を素早く切り替える必要があります。
自動工具交換装置(ATC)を備えたマシニングセンタでは、ツーリングが正確かつスムーズに交換できることが、段取り時間の短縮と生産効率の向上に直結します。
規格化されたツーリングシステムを採用すれば、誰でも短時間で確実に工具交換が可能となり、熟練者に依存しない安定した生産体制を構築できます。
最後に、ツーリングは「最新技術との連携」という新たな役割を担い始めています。
近年では、ツーリングにセンサーを内蔵し、切削中の温度や振動、摩耗状態をリアルタイムでモニタリングする技術が登場しています。
これにより、従来は経験則に頼っていた工具交換や加工条件の調整が、データに基づいて最適化されるようになりました。
さらに、IoTやAIとの連携によって予知保全や自動補正も可能となり、スマートファクトリーの実現においてツーリングは欠かせない存在となっています。
このように、ツーリングの役割は「動力伝達」「精度維持」「工具寿命延長」「段取り効率化」「デジタル連携」と多岐にわたります。
単なる部品ではなく、加工品質と生産効率を決定づける戦略的要素として位置づけられており、今後の製造現場においてますます重要性を増していくことは間違いありません。
ツーリングの種類と特徴
工具ホルダーの種類と役割
工具ホルダーは、切削工具を正確かつ確実に保持し、工作機械の主軸から伝達される回転力や送り力を工具に伝えるための重要な部品です。
ホルダーは単なる「工具の固定具」ではなく、加工精度・工具寿命・生産効率を大きく左右する存在であり、被削材や加工条件に応じた適切な選定が欠かせません。
近年では加工の高精度化や多様化に伴い、工具ホルダーも多様な種類が開発され、それぞれが異なる特性と役割を担っています。
まず代表的なのが コレットチャック です。
スリットが入ったコレットスリーブで工具を締め付ける方式で、幅広い工具径に対応可能であり、もっとも一般的に使用されています。
コストが比較的安価で、汎用性が高いため、多品種少量生産や試作加工の現場で重宝されます。
ただし、把握力が他の方式に比べてやや弱く、重切削や高精度仕上げには不向きな場合があります。
次に、ミーリングチャック は強力な把握力を特徴としており、特にエンドミルなどを用いた重切削加工に適しています。
芯ぶれを抑え、切削中の振動を減らすため、加工面の品質を安定させることができます。
自動車部品や大型機械部品など、大量の切りくずを排出するような加工でその効果を発揮します。
油圧チャック は内部に封入された油圧によって工具を均一に締め付ける構造を持ち、高精度で振れが少ないのが最大の特徴です。
そのため、リーマ加工や微細穴加工など、高精度が要求される仕上げ工程で多用されます。
また、着脱操作も簡単で、作業者が工具を交換する際の負担を軽減できる利点もあります。
シュリンクフィットチャック は、熱収縮の原理を利用して工具を保持する方式です。
専用の加熱装置でチャックを一時的に膨張させ、そこに工具を挿入した後、冷却によってチャックが収縮して工具を強力に保持します。
振れ精度は非常に高く、剛性も優れているため、高速回転加工や高精度の金型加工などで広く利用されています。
欠点としては専用機器が必要で、工具交換のたびに加熱・冷却の工程が発生するため、多品種加工よりも量産や精密加工に適しています。
また、近年注目されているのが 防振ホルダー です。
これはホルダー内部にダンパー機構を内蔵しており、工具の突き出しが長い場合でも切削時のびびり振動を大幅に抑制できます。
航空機や金型分野など、深穴加工や難削材加工で有効性を発揮し、従来では不可能だった加工を可能にしています。
このように工具ホルダーにはそれぞれ得意分野があり、加工条件に応じて適切に選定する必要があります。
例えば、荒加工では剛性と把握力を重視してミーリングチャックを選び、仕上げ加工では高精度の油圧チャックやシュリンクチャックを採用する、といった使い分けが一般的です。
さらに、近年では工具交換の迅速化や自動化に対応するモジュラータイプのホルダーシステムも普及しており、段取り効率の向上にも寄与しています。
総じて言えるのは、工具ホルダーは加工現場の「縁の下の力持ち」であり、目立たない存在ながら製品品質と生産性を左右する重要な役割を担っているということです。
正しいホルダーの選定と管理を行うことで、工具寿命を延ばし、加工不良を減らし、ひいては工場全体のコスト削減につながるのです。
工具シャンクと規格の違い
工具シャンクとは、工作機械の主軸と工具ホルダーを接続する部分を指し、加工現場においては「工具と機械をつなぐ重要なインターフェース」と位置づけられます。
シャンクの規格や形状は、加工の安定性や工具交換の効率、さらには加工精度そのものに大きな影響を与えます。
そのため、世界各国で標準化が進められ、現在ではいくつかの主要な規格が広く使われています。
代表的なものに BTシャンク、HSKシャンク、CATシャンク などがあります。それぞれの特徴や適用分野を理解することは、正しいツーリング選定や設備投資の判断に直結する重要な知識です。
まず、日本を中心にアジア圏で広く普及しているのが BTシャンク です。
BTシャンクはテーパー角7/24の構造を持ち、主軸との接触面が広いため安定した剛性を確保できます。
また、シャンクと主軸の対称性が高く、バランス精度に優れていることから、高回転でも安定した加工が可能です。
さらに、工具交換用の自動工具交換装置(ATC)との相性も良く、日本国内のマシニングセンタでは標準的に採用されています。
コスト面でも比較的安価で導入しやすいため、中小企業から大手メーカーまで幅広く利用されています。
ただし、工具突き出しが長くなる場合や超高速回転では剛性が不足するケースもあり、その点は他規格との使い分けが求められます。
一方、ヨーロッパを中心に普及しているのが HSKシャンク(Hollow Shank Taper)です。
HSKは中空構造を持つシャンクで、軽量かつ高い剛性を実現しています。
その最大の特徴は「主軸とシャンクの両面接触方式」にあります。
BTシャンクが主にテーパー面で接触するのに対し、HSKシャンクはテーパー面と端面の両方で主軸に密着するため、高速回転時でも高い安定性を発揮します。
この構造により、工具の引き抜けを防ぎ、振れ精度を大幅に改善できるのです。
特に航空機や自動車産業におけるアルミ合金やチタン合金の高速加工において、その効果が顕著です。
ただし、構造が複雑で製造コストが高いため、BTに比べると導入コストが大きくなる点がデメリットとして挙げられます。
アメリカを中心に使用されているのが CATシャンク(Vフランジシャンク)です。
外観やテーパー角はBTシャンクと似ていますが、フランジ部分の形状や引きネジの方式に違いがあります。
CATシャンクはアメリカのANSI規格に基づいており、アメリカ国内のマシニングセンタやCNC工作機械で広く採用されています。
しかし、国際的な工作機械の流通やグローバル化に伴い、近年ではCATからBTやHSKに切り替える企業も増えています。
これらの規格に加えて、特殊な分野では CAPTO などのモジュラー式シャンクも登場しています。
CAPTOはISO規格として認定されており、回転工具と固定工具の両方に対応できるモジュール構造を持ちます。
工具交換が迅速で、多品種少量生産や段取り替えの多い現場に適しているのが特徴です。
特に複合加工機や自動旋盤などで有効性を発揮し、欧州を中心に普及が進んでいます。
このように工具シャンクには複数の規格が存在し、それぞれに強みと弱みがあります。
選定の際には、加工内容や生産形態、導入する工作機械の仕様に応じて適切に使い分けることが不可欠です。
例えば、量産加工でコスト重視ならBTシャンク、高速高精度加工ならHSKシャンク、多品種少量生産ならCAPTO、といった具合に最適解を導き出す必要があります。
総じて言えるのは、工具シャンクは「工具と機械をつなぐだけの部品」ではなく、「加工性能を最大限に引き出すための戦略的要素」であるということです。
その規格の違いを正しく理解し、現場のニーズに合わせた選択を行うことが、安定した生産体制と高品質な製品づくりにつながります。
ツーリングの選定と運用のポイント
被削材に応じたツーリング選定
ツーリングの選定において最も重要な要素の一つが「被削材の種類」に応じた適切な工具を選ぶことです。
金属加工や樹脂加工において、削る対象となる材料は非常に多岐にわたり、それぞれの物性や加工特性に応じて最適なツーリングを選ばなければ、加工効率の低下や工具の早期摩耗、さらには加工不良による品質低下を招いてしまいます。
したがって、被削材の特徴を理解し、それに対応した工具材質・コーティング・刃形状を選択することが、ツーリング管理の核心的なポイントとなります。
まず、一般的な被削材である炭素鋼や合金鋼について考えると、これらは強度や硬さのバランスが取れているため、超硬工具やコーティング付きのハイス工具が広く用いられます。
特に高速度鋼(HSS)は安価で汎用性があるため、中小ロットや多品種生産でよく使用されます。
一方で、量産加工や高精度が要求される場合は、耐摩耗性に優れる超硬工具にTiAlNやTiCNといったコーティングを施し、摩擦抵抗の低減と耐熱性向上を図るのが一般的です。
次にステンレス鋼のような難削材では、工具選定の難易度が高まります。
ステンレスは粘り強く加工時に刃先への負荷が大きくなるため、工具が欠けやすく、また熱伝導率が低いため切削熱が集中して工具寿命を短くする傾向があります。
これに対応するためには、耐熱性と耐摩耗性に優れた超硬工具が必須となり、さらに摩擦低減効果の高い専用コーティングを施すことで工具寿命を大幅に延ばすことが可能です。
また、刃先の形状も重要で、切れ味を重視した鋭利なエッジや適切なチップブレーカーを持つ工具を選定する必要があります。
アルミニウムや銅などの非鉄金属は比較的軟らかく加工が容易ですが、逆に「溶着」や「目詰まり」が起こりやすいという課題があります。
そのため、アルミ加工には専用のポリッシュ仕上げを施した超硬工具や、摩擦を低減するダイヤモンドコーティング(DLC)工具が用いられます。
これにより、切りくずの排出性が向上し、工具寿命と加工面品質を両立できます。
特に航空機部品などではアルミ合金の加工が多く、軽量化と高精度を両立するためにツーリング選定が極めて重要となります。
さらに、チタン合金やインコネルといった超耐熱合金は、航空宇宙や医療分野で多用されるものの、加工難易度が非常に高い素材です。
これらは硬度が高く、加工時に発生する高温により工具摩耗が急速に進行します。
そのため、耐熱性を最優先した超硬工具やセラミック工具、あるいはCBN(立方晶窒化ホウ素)工具が選定されます。
また、加工条件の最適化(低速高送り、冷却液の選定)が求められるため、ツーリングと加工条件を一体的に考える必要があります。
樹脂や複合材料の加工においても、適切なツーリング選定が不可欠です。
樹脂は熱に弱く、切削熱による変形や溶融が起こりやすいため、鋭利な刃先と高い切れ味を持つ工具が望まれます。
一方、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)のような複合材は硬くて脆いため、工具摩耗や層間剥離が課題となります。
そのため、専用のダイヤモンドコーティング工具やPCD工具が多用されます。
このように、被削材に応じたツーリング選定は「材料特性 × 工具材質 × コーティング × 刃形状」という複合的な観点から検討する必要があります。
単純に「硬い材料だから硬い工具を選ぶ」といった発想では不十分であり、被削材の熱特性や加工環境も含めて総合的に判断することが重要です。
最適なツーリングを選定することで、工具寿命の延長、加工精度の安定化、生産性の向上といった大きなメリットを得ることができます。
加工条件とツーリングの関係
ツーリングと加工条件は切削加工において密接に結びついており、両者の最適な組み合わせが生産性や品質、さらにはコスト面に大きな影響を与えます。
加工条件とは、主に切削速度(Vc)、送り量(f)、切り込み深さ(ap)、回転数(n)、クーラントの有無や供給方法などを指します。
一方でツーリングは、工具本体、切れ刃材質(超硬合金、高速度鋼、セラミック、CBNなど)、工具形状、コーティング、ホルダー剛性などで構成されます。
これらの条件とツーリングの特性が適切にマッチしていなければ、加工精度の低下や工具寿命の短縮、加工コストの増大につながります。
まず、切削速度とツーリングの関係について考えると、工具材質やコーティングによって許容される速度域が大きく変わります。
例えば高速度鋼工具は靭性に優れる一方、耐熱性が低いため比較的低速での切削が求められます。
対して超硬工具やセラミック工具は耐熱性が高く、高速加工が可能です。
また、TiAlNやDLCといったコーティングは耐摩耗性や潤滑性を向上させ、高速条件や難削材加工に適応する力を発揮します。
加工条件が工具の特性に合わなければ、摩耗や欠けが急速に進行し、結果として工具コストや段取り時間の増加を招きます。
次に送り量と切れ刃形状の関係も重要です。
送り量が大きいと切削抵抗が増加するため、刃先強度の高い工具形状や剛性の高いホルダーが必要となります。
逆に微小送りによる仕上げ加工では、刃先が鋭利でチッピングしにくい工具が望まれます。
たとえば、アルミ合金などの軟質材加工では大きな送りと切り込みが可能ですが、硬質材や難削材加工では送りを制御しないと刃先破損が生じやすくなります。
さらに、切り込み深さは工具の耐久性と加工能率を左右します。
深い切り込みでは工具剛性やホルダー剛性が不足するとビビリ振動が発生し、加工面の粗さや寸法精度が劣化します。
そのため、加工条件を設定する際には工具突き出し長さを最小限に抑え、剛性を確保することが不可欠です。
ホルダーの種類(コレットチャック、油圧チャック、ミーリングチャックなど)も適正条件の実現に大きく関わります。
加えて、クーラントの使用条件もツーリング選定に直結します。
難削材や高硬度材では高圧クーラントを併用することで切り屑排出性を向上させ、工具寿命を延ばすことが可能です。
逆に、アルミ加工やグラファイト加工などではドライ加工やMQL(最少量潤滑)が選択される場合があり、この場合には摩擦低減に優れたコーティング工具が有効に機能します。
つまり、加工条件は単なる数値設定ではなく、ツーリングとのバランスの中で最適化されるべきものです。
例えば、工具寿命を最優先するなら速度や送りを抑えた条件が適切ですが、加工能率を重視するなら工具材質やコーティングのグレードを上げ、より高い条件で加工する必要があります。
逆にコスト削減を意識する場合、工具寿命と加工能率のバランスを取り、トータルの加工時間と工具費用を最小化する条件設計が重要となります。
総じて、加工条件とツーリングの関係は「性能」と「制約」のバランスを取るプロセスであり、適切な選定が加工の成功を左右します。
最先端の加工現場ではCAE解析やシミュレーションを活用し、被削材特性、工具材質、切削条件を統合的に検討して最適解を導き出す取り組みも進んでいます。
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