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試作人基礎講座

公開日: | 更新日: | 試作人基礎講座

高精度加工に最適!円筒研削盤とは??

こんにちは!本日は高精度加工にも最適な円筒研削盤について解説していきます!
メリットや注意点など詳しく説明していきますので、是非ご覧ください♪

必達試作人
必達試作人
円筒研削盤について、とくとご覧あれ!

円筒研削盤とは

円筒研削盤は、金属などの円筒状ワークの外周や内周を高精度に仕上げるための研削機械です。
主に回転するワークと高速回転する砥石の接触によって、微細な加工を行うのが基本原理です。
旋盤などの切削加工機と異なり、研削盤はきわめて高い加工精度(ミクロン単位)を実現できることが特長です。
基本構造としては、ワークを保持し回転させる「主軸台(ヘッドストック)」と、ワークのもう一方を支える「芯押台(テールストック)」、そしてワークの外径や内径を加工する「砥石台」で構成されています。
ワークは両端がセンターで支持され、精密な回転運動を与えられることで、同心円上に安定して研削されます。
砥石台は左右に移動しながらワークに接近し、徐々に材料を削り取っていきます。
加工中は冷却液(クーラント)をかけながら、熱変形や砥石の目詰まりを防ぎ、仕上がりの面粗さや精度を保ちます。
円筒研削盤では通常、手動式からNC制御、さらにはCNCによる高精度な自動加工も可能です。
NC化された円筒研削盤では、工具の位置決め、送り速度、砥石のドレッシングなどが自動化され、再現性や生産効率が大幅に向上します。
多くの工場では、製品の一貫生産ラインに組み込まれており、自動化やIoT化も進んでいます。
このように、円筒研削盤は「丸いもの」を「より正確に丸く」するための加工機械であり、特に高い精度が求められる部品(例:軸受、シャフト、ピストン、ギアなど)の加工に欠かせない存在です。

研削加工の特徴と他工法との違い

研削加工は、砥石を使って材料表面を極めて微細に削り取ることで、高精度かつ高品質な仕上げ面を得る加工方法です。
特に円筒研削盤においては、軸やシャフトのような円筒形状の外径・内径を精密に仕上げるために用いられます。
研削加工の最大の特徴は、ミクロン単位の寸法精度と鏡面に近い表面粗さを実現できる点にあります。

他の代表的な加工方法と比較すると、研削加工は以下のような違いがあります。
まず、旋盤やフライス盤による「切削加工」と比べると、研削は加工除去量が非常に少ないです。
切削加工は荒削りから仕上げ加工まで対応できますが、寸法精度は一般的に0.01mm程度が限界です。
一方、研削加工は0.001mm単位での精度制御が可能であり、仕上げ工程に特化した加工方法と言えます。
また、切削では工具摩耗による精度低下が避けられませんが、砥石は摩耗してもドレッシング(再成形)によって再利用できる点も大きな違いです。
次に、放電加工やレーザー加工などの「非接触加工」と比較すると、研削加工は接触による物理的な材料除去であるため、素材の導電性や熱伝導性に制約を受けません。
導電性がないセラミックスや樹脂系材料には対応できませんが、金属全般に対しては極めて高い安定性を持ちます。
また、鍛造や鋳造などの「成形加工」とも対照的です。
成形加工は大量生産向けで、素材を一気に所定の形状に変えるのに適していますが、寸法公差や表面品質には限界があります。
そのため、多くの場合は成形加工後に研削による仕上げが必要になります。
さらに、研削加工は熱や振動の影響を受けやすいため、加工条件の管理が非常に重要です。
過度な押しつけや冷却不足があると、研削焼けや寸法誤差の原因となります。
逆に言えば、適切な条件管理を行えば、他の加工では得られない高精度部品の製造が可能になるのです。
このように、研削加工は他の加工法とは明確な役割分担があり、主に「最終仕上げ工程」や「高精度が求められる部品」においてその力を発揮します。
加工工程全体の中で見ると、荒加工で形状を作り、研削で寸法・面精度を整えるという組み合わせが一般的です。

対応できる形状と加工精度

円筒研削盤が得意とするのは、その名の通り「円筒状」の部品の外径や内径を高精度で仕上げることです。
具体的には、シャフトや軸、ピン、スリーブ、ベアリング部品、ロール、ブッシュなどのような回転対称形状の部品が主な対象です。
これらの部品には、回転時のバランスや軸受との密着性が求められるため、ミクロン単位の寸法精度や真円度が必須となります。
対応できる形状は「真円」だけではありません。
円筒研削盤の制御方式やチャッキング方法によっては、次のような形状にも対応可能です。
・円筒外径(外丸)
・円筒内径(内丸)
・テーパー形状(円錐)
・段付き形状(段差軸)
・肩付き部品(段差と面取り)
・溝付き軸(Oリング溝など)
万能円筒研削盤やNC制御された研削盤では、複数の段付き外径、テーパー、さらには溝加工なども自動で行えるため、1チャックで多段形状を仕上げることが可能です。

加工精度についても、研削盤は群を抜いて高いレベルを誇ります。
以下に、一般的な円筒研削加工で得られる主な精度目安を示します。
・寸法精度:±1~2μm(0.001~0.002mm)
・真円度:1~3μm
・円筒度:2~5μm
・表面粗さ:Ra0.2μm以下(Ra0.05μmまで対応可能な場合も)
これらの精度は、工具摩耗が少なく、砥石を適切にドレッシングすることで安定的に維持できます。
また、クーラントによる冷却とスライド部の精密な送り制御が、加工精度を高める重要な要素です。
特に自動車や航空機、医療機器、金型部品など、高精度を要する分野では、研削工程を最後の仕上げ加工として必ず導入します。
たとえば、エンジンのカムシャフトやクランクシャフトなどは、最終的な形状精度・真円度・耐摩耗性が製品性能を大きく左右するため、研削加工が不可欠です。
一方、限界も存在します。
非回転対称形状(四角形、楕円、異形状など)は基本的には加工が困難であり、CNC多軸制御や特殊治具を用いないと対応できません。
また、ワークのサイズによっては円筒研削盤のテーブル移動量や砥石の振れ範囲に制限を受けることもあります。
まとめると、円筒研削盤は「回転対称形状の高精度仕上げ」に特化した加工機であり、その高い寸法・幾何公差精度と滑らかな表面仕上げは、他の機械加工では実現しにくい大きな強みです。
適切な設備と段取りを用いることで、非常に高度な加工要求にも応えることができます。

円筒研削盤の種類と特徴

外径研削盤(外丸研削盤)とは

CNC円筒研削盤

外径研削盤(がいけいけんさくばん)、別名「外丸研削盤」は、円筒研削盤の中でも最も一般的な機種であり、主にワークの外周(外径)を高精度に研削するために使用されます。
シャフトやピン、軸受け部品などの回転対称形状の外面を仕上げる工程において不可欠な存在です。
この機械の基本構成は、「主軸台(ヘッドストック)」「心押台」「テーブル」「砥石台」の4つの主要ユニットから成り立っています。
ワークは主軸台と心押台の間で両センター支持され、回転しながら砥石と接触する構造です。
砥石台はテーブル上を横方向や縦方向に送り、外周を正確に削っていきます。
外径研削盤にはいくつかの種類があり、目的やワークサイズに応じて使い分けられます。

【主なタイプ】

・汎用型外径研削盤
手動操作で送りや砥石の位置調整を行うタイプ。
多品種少量の加工に適しており、熟練技術者の感覚で高精度加工が可能です。

・NC円筒研削盤
数値制御によって砥石の送りや切込み量を自動制御できるタイプ。
繰り返し精度が高く、複雑な多段外径形状やテーパー形状にも対応できます。
自動化との相性もよく、中量~大量生産に対応。

・プランジ研削専用機
幅の狭い砥石で一気に外径を削る方式。
量産部品の加工に特化しており、サイクルタイムを短縮できます。
ベアリングレースやギアシャフトなどに利用されます。

外径研削盤のメリットは、以下のような点にあります。
・極めて高い外径精度(±1μm程度)
・真円度・円筒度の確保
・安定した表面粗さ(Ra0.2μm以下)
・段付き・テーパー形状も高精度で加工可能
・加工熱による変形を最小限に抑えられる
また、適切なチャッキングと心出しを行うことで、長尺シャフトでも「たわみ」を抑えた加工が可能です。
振れやビビリを防ぐため、センター支持の精度や芯間の剛性が極めて重要です。

一方で、短所としては「段取り時間がかかる」「加工除去量が少ないため荒加工には不向き」「内径加工には対応できない」といった点が挙げられます。
そのため、荒加工は旋盤などで行い、最終仕上げとして外径研削盤を用いるケースが一般的です。
まとめると、外径研削盤は高精度な円筒外径仕上げに特化した機械であり、回転精度を重視する軸部品や精密部品の製造には不可欠な加工機です。
特にNC化が進んだ現代では、自動化ラインへの組み込みや、高精度量産にも柔軟に対応できる装置へと進化しています。

内径研削盤(内丸研削盤)とは

内径研削盤(ないけいけんさくばん)、または内丸研削盤は、円筒形状のワークの「内側(内径)」を高精度に研削するための専用機です。
パイプやスリーブ、ブッシュ、ベアリングの内輪など、回転対称形状の内部に対して高精度な寸法・真円度・表面粗さを要求される場面で活躍します。
外径の加工が外側から砥石を当てるのに対し、内径研削では小径の砥石軸(スピンドル)をワーク内に挿入し、内面を加工します。
このため、砥石の径が制限され、振れやビビリの影響も大きいため、より繊細な調整と剛性設計が求められる機種です。

【内径研削盤の基本構成】

・ワーク回転軸(主軸)
・砥石スピンドル(高速回転、小径)
・テーブル送り装置(X軸、Z軸)
・心押台またはチャック装置
内径研削では、外径と違って砥石径が小さいため、砥石の寿命や剛性、ドレッシング(砥石再成形)管理がより重要です。
特に細いスピンドルは高速回転(数万rpm)することが多く、熱変形や振動を最小限に抑える設計が求められます。

【対応可能な加工内容】

・円筒内径の仕上げ
・テーパー内径(円錐状内面)
・段付き内径(段差・肩付き内径)
・同心度精度の確保(外径との同軸精度)
NC(数値制御)タイプの内径研削盤では、複雑な内面形状や複数段の内径を一括で自動加工できる機種もあります。
これにより、高精度を維持しつつ、加工時間の短縮も実現可能です。

【得られる加工精度の目安】

・寸法公差:±1~3μm
・真円度:2μm程度
・内面粗さ:Ra0.2μm以下(高精度仕様でRa0.05μm以下も可)
・同軸度(外径との位置関係):3~5μm

【内径研削盤の活用例】

・ベアリングの内輪・外輪
・スリーブ、カラー
・エンジン部品の内径(シリンダーライナーなど)
・金型部品のガイド穴やピン挿入部
これらの部品は、内径の寸法精度だけでなく、「真円度」「円筒度」「表面粗さ」「外径との同軸度」が非常に重要です。
たとえば、軸受の内輪が微妙に楕円形だった場合、回転時に振動が生じ、装置全体の性能に大きな悪影響を及ぼします。

【内径研削の課題】

内径研削は、砥石径の制約により「除去量」が少なく、荒加工には不向きです。
また、内部に砥石を挿入するため、切粉の排出や冷却が難しく、加工熱による変形や精度低下に注意が必要です。
そのため、加工中の温度管理やチャッキング精度、砥石管理がより重要になります。

内外両用型・万能円筒研削盤の特徴

内外両用型、あるいは「万能円筒研削盤(universal cylindrical grinding machine)」とは、外径研削と内径研削の両方に対応できる研削盤のことを指します。
一台で多様な形状の研削をこなせる柔軟性を持ち、特に少量多品種の加工現場や、試作・治工具製作の分野で重宝されます。
この機種の最大の特長は、砥石主軸(スピンドル)ユニットを交換可能あるいは回転可能な構造にすることで、内径と外径の両加工を実現している点です。
一般的には、標準で外径研削機能を搭載し、必要に応じて内径研削用スピンドル(補助スピンドル)を取り付ける設計となっています。

【主な構成と機能】

・回転可能な砥石台:
砥石台が旋回(スイベル)することで、テーパー形状や角度付きの外径にも対応できます。
また、旋回によって内径砥石スピンドルを所定の角度に配置することも可能です。

・内径砥石ユニットの脱着機構:
内径加工が必要なときだけ、補助スピンドルを取り付けられる構造。
外径加工との切り替えがスムーズです。

・心押台+チャック併用:
長尺物のセンター支持も、短尺物のチャッキングも対応できる構造で、加工対象の幅が広がります。

・NC制御対応機種もあり:
多段外径や複雑なテーパー、段付き内径など、複雑な形状にも自動で対応可能です。
タッチセンサーや自動補正機能を備えたモデルも存在します。

【活用例と利点】

・試作品や多工程が必要な複雑部品の加工
・内径と外径の同軸度を高精度に管理したい部品(例:軸受部品やスリーブ)
・生産品種が頻繁に変わる現場(例:金型部品や特注シャフト)
万能円筒研削盤の最大の利点は、「段取り替えの手間が少なく、一台で完結できる点」にあります。
外径→内径と加工する際に、ワークの脱着や芯出しを繰り返す必要がないため、同軸度や位置精度の維持が容易になります。
また、設置スペースの観点でも、別々の機械を導入するより省スペースで済む点は中小工場にとって大きな魅力です。

【注意点・導入時の検討事項】

・多機能である分、構造が複雑で価格が高めになる傾向があります。
・加工剛性は専用機にやや劣る場合があり、特に内径加工で振れやすい点には注意が必要です。
・オペレーターにある程度のスキルと加工経験が求められることが多いです。
万能円筒研削盤は、その名のとおり「汎用性」が最大の強みです。
生産性を重視した専用機には及ばない面もありますが、多品種や試作対応の現場では一台で内外径を一貫して仕上げられる点が非常に有利であり、導入価値は高いと言えます。

センターレス円筒研削盤とは

センターレス円筒研削盤(Centerless Grinding Machine)とは、工作物(ワーク)を主軸などで固定せず、2つの砥石と1つの支持ロールの間に挟み込んで研削を行う方式の研削盤です。
センター(心押し)を用いないことから「センターレス」という名称が付きました。
この方式は、円筒部品の外径加工に特化しており、特に量産現場において高速かつ高精度に外径を仕上げるための代表的な機械です。

【基本構造】

センターレス研削盤は、主に次の3つの要素で構成されています:
・砥石ホイール(グラインディングホイール)
加工を行う回転砥石。高回転でワークの外径を研削します。

・調整ホイール(レギュレーティングホイール)
ワークを回転させるための補助ホイールで、低速回転します。
角度を持たせて傾けることで、ワークが砥石側へ自動的に送り込まれる仕組みです。

・ワークレストブレード(支持台)
ワークの下に配置された支持部材。
この上でワークが安定して回転しながら研削されます。

【センターレス研削の種類】

センターレス研削には主に2種類の加工方式があります:
・スルーフィード(通し研削)
ワークを連続的に送りながら外径を研削する方式。
棒材やシャフトの大量生産に最適です。

・インフィード(停止研削)
ワークを所定の位置にセットして、特定の部分だけを研削する方式。
段付きシャフトなどにも対応可能です。

【特徴とメリット】

・ワークの芯出しが不要
センターレス方式では、心押しが不要で、芯出し作業が不要なため、段取り時間を大幅に短縮できます。

・高速・高精度な量産に適する
一度調整すれば、連続的に同じ加工ができ、ばらつきの少ない高精度な仕上げが可能です。

・短時間での加工
通し研削では連続加工ができるため、1個ずつチャッキングする必要がなく、時間効率に優れます。

【適用例】

・自動車部品(ピストンピン、シャフト、ベアリング部品など)
・電子部品の軸やコア部品
・切削工具用のロッド素材
・治具用スリーブやローラー

【注意点】

・ワークの形状が「円筒形状」であることが前提
偏心していたり、段差が多い形状には向いていません(ただし段付き加工にはインフィードで対応可能)。

・初期の機械調整が重要
セッティングがずれるとすぐに形状不良が発生するため、経験と技術が必要です。

・微小な振動でも影響大
高精度が求められるため、設置環境や振動対策、砥石のメンテナンスが精度維持に直結します。

センターレス円筒研削盤は、高精度かつ高スループットを両立するための強力なツールです。
特に大量生産ラインや自動加工装置と組み合わせることで、生産性を飛躍的に向上させることができます。

円筒研削盤の仕組みと加工原理

ワークと砥石の回転関係

円筒研削盤における加工の基本は、「ワーク(被削材)と砥石の相対運動」にあります。
とくに、ワークと砥石の回転方向や速度の関係は、研削の品質・精度に直結する重要な要素です。
この関係性を理解することで、より効果的かつ高精度な研削加工が可能になります。

【基本的な回転構造】

円筒研削では、以下の2つの回転が発生します。
・ワークの回転(低速回転)
主にチャックやセンターを介して回転し、外径全体が均等に削られるようにします。
回転速度は比較的低く、数十〜数百rpm程度が一般的です。

・砥石の回転(高速回転)
ワークの外周に接触して削るための回転体で、非常に高速で回転します(数千〜数万rpm)。
この高速回転によって、砥粒がワーク表面を削り取り、滑らかな仕上がりが得られます。
これら2つの回転軸は基本的に同方向(共回転)に設定されます。
これは、砥石がワーク表面を滑るように接触しながら加工を進めるためで、反対方向に回すと加工面が荒れたり、安定した研削ができなくなるためです。

【切削速度と送り速度の関係】

研削加工における重要な概念の一つに「切削速度(砥石の表面速度)」があります。
これは、以下の式で表されます。
切削速度(m/min) = π × 砥石直径(mm) × 回転数(rpm) ÷ 1000
高精度を求める場合、切削速度は通常20〜50m/s(1200〜3000m/min)程度に設定されます。
一方、ワークの回転速度はこれに比べるとずっと低く、通常は0.1〜1.0m/s程度になります。
この速度差によって、砥石がワーク表面に研削作用を及ぼすというわけです。

【摩擦と熱の管理】

回転速度と接触時間が長くなると、ワークと砥石の間に摩擦熱が発生します。
これは形状変化(熱変形)や焼き付き、クラックなどのトラブルの原因になるため、冷却液(研削液)を使って熱をコントロールすることが重要です。
さらに、砥石が過度に摩耗すると「目詰まり」や「焼け」が起こりやすくなります。
そのため、砥石のドレッシング(再生処理)を定期的に行うことで、砥粒の切れ味を保ち、適切な回転関係を維持することが求められます。

【回転方向の制御と応用】

加工精度が極めて重要な場合(例:高精度軸の仕上げや内径外径同時加工など)では、以下のような工夫も施されます。
・回転速度の制御:NC円筒研削盤では、ワークと砥石の速度をプログラム制御できるため、一定の研削条件を自動で維持できます。
・逆転による鏡面加工:一部では、ワークの回転方向を逆転させたり、極めて低速で回すことで、微細な仕上げや鏡面研削を狙うこともあります。
・CNC同期制御:ワークと砥石の回転が数値制御で同期されており、一定の接触速度や切り込み量をリアルタイムに制御することも可能です。
このように、円筒研削盤におけるワークと砥石の回転関係は、加工の品質・精度・仕上げ面粗さに大きな影響を与えます。
とくに高精度加工が求められる現場では、この回転関係をいかに安定させ、最適化するかが、技能者の腕の見せどころとなります。

送り動作と切り込みの制御

円筒研削盤における加工の精度や仕上がりは、「砥石の回転」だけでなく、「送り動作」と「切り込み制御」にも大きく依存します。
これらの制御を適切に行うことで、寸法精度、表面粗さ、加工時間のバランスを最適化できます。

【送り動作とは】

送り動作とは、研削砥石またはワークの移動によって、加工面を変化させる動きのことです。
円筒研削においては、主に以下の2種類の送りがあります。
・縦送り(軸方向送り)
ワークの長さ方向に対する移動で、外径全体を均一に研削するために使います。
砥石またはワークが一定の速度で左右に移動します。

・横送り(切り込み)
ワークの外径に対して垂直方向に移動するもので、実際に切削を行うための砥石の食い込み動作です。
これが「切り込み」と呼ばれる動作に相当します。
この2つの動作を組み合わせることで、円筒表面を全周にわたり均等に削ることができます。

【切り込みの種類】

切り込みには以下のような方法があります。
・一定切り込み方式
加工中、毎回同じ量だけ砥石をワーク方向に送り込む方式です。
シンプルで調整が容易ですが、負荷が一定ではないため、ワークに応力がかかりやすくなります。

・段階的切り込み方式(ステップイン)
粗研削では大きめに、仕上げに近づくほど切り込み量を小さくしていく方式です。
高精度仕上げに適しています。

・スパークアウト制御
研削終了直前に切り込みを止め、砥石をそのまま接触させて「火花(スパーク)」を飛ばしながら最後の表面微調整を行う動作です。
これにより、熱変形やばらつきが減少し、安定した仕上がりが得られます。

【送り速度と仕上がりの関係】

送り速度(mm/min)は、表面粗さや加工時間に直接影響を及ぼします。
具体的には、
・送りが速い場合:加工時間は短くなりますが、砥石の当たり方が荒くなり、表面粗さが大きくなる傾向があります。
・送りが遅い場合:加工時間は長くなりますが、砥石の当たりが繊細になり、滑らかな表面に仕上がります。
加工目的によって送り速度を変えることが重要であり、たとえば量産向けの粗加工では速めに、最終仕上げや精密加工では遅めに設定するのが一般的です。

【NC・CNCによる自動制御】

近年の円筒研削盤は、NC(数値制御)やCNC(コンピュータ数値制御)によって、これらの送りや切り込みがプログラムで自動化されています。
具体的には、
・加工ごとに送り速度や切り込み量を変更可能
・スパークアウト時間の自動設定
・加工回数や研削パスの記憶と再現
このような制御により、人の経験に頼らない安定した品質の加工が実現でき、特に多品種少量生産や自動化ラインでの活用が進んでいます。

研削加工は「削る量」だけでなく、「どう削るか(動かすか)」が品質を大きく左右します。
送り動作と切り込み制御は、熟練の職人が「音」「振動」「火花の様子」などで微調整していた部分でもあり、それが今ではCNC制御により再現可能になっています。

スパークアウトと仕上げ研削の重要性

円筒研削盤による加工で高精度・高品質な表面を得るためには、「スパークアウト」と「仕上げ研削」の工程が極めて重要です。
これらは研削の最終工程に位置し、寸法精度、真円度、円筒度、表面粗さといった仕上がりを左右する要素となります。

【スパークアウトとは何か?】

スパークアウト(spark-out)とは、研削加工の終了直前に切り込みを止め、一定時間砥石をそのままワークに当て続ける処理です。
このとき、砥石とワークの間では微小な火花が散り、切削ではなく研削焼けや変形の除去が進みます。
この工程は、加工中に発生した以下の問題を補正・安定化させるために実施されます。
・砥石のたわみの回復
高速回転する砥石には遠心力や切削抵抗によって「たわみ」が発生します。
スパークアウト中にそのたわみが解消されることで、正確な寸法が得られます。

・ワークの熱膨張の冷却と補正
研削中に熱を受けたワークは一時的に膨張しています。
スパークアウトによって加工熱が逃げ、常温に戻ったときの真の寸法が得られます。

・仕上げ面の微細な凹凸の除去
小さな砥粒によって連続的に表面を擦ることで、仕上げ面の微細な凹凸や焼けが抑えられ、滑らかな表面になります。

【スパークアウトの方法と設定】

スパークアウトの動作は、以下のように設定されます。
・回転は継続、切り込みは停止
ワークと砥石は通常通り回転を続けるが、切り込みを一切加えず、同じ位置で「研磨」だけを行う。

・時間制御または回数制御
スパークアウトを「○秒間行う」「○往復させる」といった設定がされており、CNC制御では正確な条件設定が可能です。
一般的なスパークアウト時間は、加工内容や材質によりますが、おおよそ5〜20秒程度。
精密加工では1分以上行うこともあります。

【仕上げ研削との違いと関係】

スパークアウトと似た概念に「仕上げ研削(仕上げパス)」があります。
これは、少量の切り込みを加えて最終的な寸法調整を行う工程で、微細な誤差修正や表面粗さの改善に使われます。
仕上げ研削とスパークアウトは連続した動作として扱われることが多く、以下のような流れになります。
・粗加工(大きな切り込み量で形状を整える)
・中仕上げ(段階的に切り込み量を減らして寸法を近づける)
・仕上げ研削(ごく小さな切り込みで寸法を合わせる)
・スパークアウト(切り込み無しで安定化と表面調整)
この最終段階の丁寧な仕上げこそが、μm単位の精度が求められる精密機械部品の研削において決定的な品質を生み出します。

【スパークアウトを怠ると?】

スパークアウトを省略した場合、以下のような問題が発生する可能性があります。
・寸法誤差(反発やたわみによるズレ)
・表面粗さの悪化(微細な凹凸の残存)
・形状精度の低下(真円度や円筒度が不安定)
特に、精度が要求されるシャフト部品や回転体では、スパークアウトの有無が製品の合否を分ける場合も少なくありません。

スパークアウトは一見すると「何もしていない時間」のように思えるかもしれませんが、実は加工品質を決定づける極めて重要なプロセスです。
近年ではCNC制御によって、最適なスパークアウト条件が自動で設定され、より安定した精度の確保が可能になっています。

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【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
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