ダイヤルゲージとは!?使い方や種類など簡単解説!
本日はダイヤルゲージについて解説していきます!
使い方や種類、注意点など解説しますので、是非ご覧ください♪
ダイヤルゲージとは
ダイヤルゲージとは、主に寸法の変化やわずかな変位を測定するために使われる精密測定器具の一つであり、目盛り付きのダイヤルと可動するスピンドル(測定子)によって構成されています。
構造自体は比較的シンプルですが、その仕組みは極めて精密で、高い測定再現性を持つことから、製造業や機械工学、品質管理の分野で広く利用されています。
基本構造としては、以下の要素が主な構成部品となります。
まず中心となるのは「スピンドル(またはプランジャー)」と呼ばれる棒状の部品で、対象物に接触して上下に動きます。
このスピンドルの動きは、内部に設けられた歯車(ラック&ピニオン機構)によって回転運動に変換され、ダイヤルに取り付けられた指針(針)を回すことで、変位量を目視で確認できる仕組みになっています。
ダイヤルゲージは通常、0.01mm(10ミクロン)単位の分解能を持っており、高精度な測定が可能です。
指針の回転はスピンドルの移動量に比例しており、たとえば指針が一回転することで1mmの移動を示すように設計されていることが多いです。
また、内部にはリターンスプリングが組み込まれており、スピンドルが元の位置に戻る際の安定した動きを支えています。
一般的なダイヤルゲージには「目盛環」と呼ばれる調整可能なリングがあり、指針の初期位置を任意のゼロ点に合わせることができます。
これにより、測定値の差分を直接読み取る「比較測定」が容易になります。
たとえば、基準となるワークと比較対象となるワークの寸法差を、機械的に数値化して確認することができます。
この構造により、ダイヤルゲージは機械の加工精度の確認や、平面度・真直度の測定など、様々な精密測定に対応可能です。
また、磁気スタンドやアームを併用することで、ワークに対して安定した状態で設置できるため、現場での使い勝手にも優れています。
さらに近年では、内部構造をより高精度にし、摩擦やバックラッシュ(遊び)を極力抑えた「高精度型」や、衝撃に強い構造を持つ「耐衝撃型」など、用途に応じたバリエーションも豊富に展開されています。
まとめると、ダイヤルゲージは「スピンドルの直線運動 → 歯車による回転運動への変換 → 指針の移動」というシンプルながらも精密な構造によって、微小な変位を高精度に可視化することができる測定器具です。
その堅牢さと精度のバランスにより、今もなお多くの現場で重宝されている存在です。
測定方式の種類(プランジャ型・テストインジケータ型)
ダイヤルゲージにはいくつかの構造タイプがありますが、代表的なものとして「プランジャ型」と「テストインジケータ型(レバーテスト型)」の2種類が存在します。
それぞれの構造や用途に明確な違いがあり、使用環境や測定対象によって適切な使い分けが求められます。
プランジャ型ダイヤルゲージ
「プランジャ型」は、もっとも一般的なダイヤルゲージの形式です。
前項で説明したように、測定子(スピンドル)が上下方向に直線運動し、その変位が内部のラック&ピニオン機構を介してダイヤル上の指針に反映される構造となっています。
この形式は、主に垂直方向の変位を測定するのに適しており、例えば機械加工後の製品の平面度や、治具に装着した製品の高さ測定、工作機械のレベル出しなどに用いられます。
剛性が高く安定した構造を持っているため、繰り返し精度が高く、安定した測定が可能です。
また、比較的大きなストローク(測定範囲)を持っており、0〜10mm程度まで対応できる製品も多くあります。
ただし、スピンドルが真っ直ぐにしか動かないため、測定面に対して常に直角に設置する必要があり、斜め方向や曲面の測定には不向きです。
設置角度の自由度は低いものの、構造がシンプルで操作性に優れているため、多くの工場や現場で広く採用されています。
テストインジケータ型(レバーテスト型)
一方で「テストインジケータ型」は、測定子がレバー式(てこの原理)になっており、回転運動によって変位を測定する形式です。
一般に「レバーテスト」や「レバーゲージ」とも呼ばれ、接触子が横方向に振れることで内部機構が回転し、変位を指針の移動に変換する仕組みです。
この形式は、非常に小さな変位(例えば0.002mmなど)を高精度に検出できるため、主に精密測定用途に適しています。
特に、ワークの曲面や斜面、入り組んだ箇所の測定など、設置角度に柔軟性が求められる場面で力を発揮します。
たとえば、旋盤加工時にワークの振れをチェックしたり、穴の位置精度や同芯度を確認したりする際に重宝されます。
レバーが軽く動作するため、被測定物に与える圧力が小さく、測定誤差が発生しにくいという利点もあります。
その一方で、構造がやや複雑であることから、衝撃に弱く、慎重な取り扱いが求められます。
また、測定範囲は狭く、0.2mm〜0.8mm程度の製品が主流です。
両者の使い分け
プランジャ型とテストインジケータ型は、それぞれの特徴から適した使用シーンが異なります。
大まかな目安としては、直線方向の比較的大きな変位測定にはプランジャ型、微小で高精度かつ角度自由度の高い測定にはテストインジケータ型が適しています。
また、両者は磁気スタンドやダイヤルホルダーを使用することで、同じような設置方法が可能ですが、測定精度や目的に応じて、最適な形式を選ぶことが測定品質を左右します。
製造現場では両者を併用して、粗測定と精密測定を用途別に使い分けることが一般的です。
ダイヤルゲージの用途と使用例
平面度・真直度・同芯度の測定
ダイヤルゲージは、機械加工や組立の現場において、「平面度」「真直度」「同芯度」といった幾何公差に関わる要素を視覚的かつ定量的に把握するための非常に有効な測定器です。
これらの幾何精度は、機械部品の性能や組立精度に直結するため、品質管理や検査工程において重要な指標とされています。
以下に、それぞれの測定方法とダイヤルゲージの活用例を解説します。
平面度の測定
平面度とは、面がどれだけ理想的な平坦面に近いかを示す幾何特性です。
特定の面上の複数点をダイヤルゲージで測定し、その高さのばらつきを見ることで評価されます。
具体的には、精密な定盤(基準となる平面)上に測定対象を載せ、マグネットスタンドなどで固定したダイヤルゲージを使って、対象面を走査します。
スピンドルが上下に動くことで針が振れ、その最大値と最小値の差を記録すれば、平面度のばらつき(=誤差)が数値化できます。
この方法は、部品の座り具合や、面同士の密着性が重要な場面において特に有効です。
たとえば、フランジや基盤、機械の取付面などでは、わずかな平面の歪みが装置全体の性能に悪影響を及ぼすことがあるため、ダイヤルゲージを用いた平面度のチェックは欠かせません。
真直度の測定
真直度は、ある直線がどれだけ真っすぐであるか、つまり直線性を表す指標です。
主にレール、シャフト、ガイドなどの直線部品や、スライド面などの加工面が対象となります。
測定方法は、定盤もしくは精密な直定規(ストレートエッジ)と組み合わせて使用し、対象物に沿ってダイヤルゲージをスライドさせながら測定値を記録していきます。
この際の針の振れ幅が、直線性のずれ量となります。
例えば、スライドガイドの真直度が悪いと、工作機械の精度に直接影響するため、量産前にこの項目を厳しくチェックすることが一般的です。
また、シャフトの曲がりを測る際にも、両端をVブロックに載せて回転させ、中心部の振れを測ることで真直度を評価することができます。
同芯度の測定
同芯度は、ある軸と別の軸がどれだけ同じ中心線上にあるかを示す精度で、回転体や組合せ部品のバランスを取る上で非常に重要です。
例えば、歯車の穴と軸、ベアリングとシャフトなどが代表例で、これらの芯がズレていると、振動や摩耗、異音の原因となります。
同芯度の測定には、被測定物をチャックなどで回転させながら、外周または内径にダイヤルゲージの測定子を当てて測定します。
回転中に針が振れる量(ラジアルランアウト)を記録し、最大と最小の差でズレを定量化します。
非常に小さなズレでも問題となるため、0.01mm以下の測定分解能を持つダイヤルゲージが求められます。
特に旋盤などの芯出し作業では、ワークをつかんで回転させながらゲージで振れをチェックし、芯が合うまで微調整する作業が頻繁に行われます。
この工程が不十分だと、加工精度や寿命に大きく関わるため、熟練した技術と正確なダイヤルゲージの読み取りが必要です。
加工品の寸法検査・比較測定
ダイヤルゲージは、製造現場や品質保証部門において「加工品の寸法検査」や「比較測定」のツールとして非常に重宝されています。
その最大の特長は、微小な寸法の変化や違いを、視覚的に分かりやすく、しかも高精度に確認できる点にあります。
特に「比較測定」においては、絶対寸法を測るノギスやマイクロメータとは異なり、基準値との差異を効率よく検出することが可能です。
比較測定の基本原理とメリット
比較測定とは、あらかじめ基準となる寸法のワークにダイヤルゲージをゼロセットし、以降は測定対象のワークとの差異だけを読み取る方法です。
この手法は、同一ロットの製品におけるばらつき確認や、規格外品の選別などに非常に有効です。
例えば、あるシャフトの直径が規格値φ20.00±0.02mmであるとき、基準となるφ20.00mmのマスターゲージにゼロを合わせておけば、次に測定するワークの誤差(±方向の寸法差)を一目で確認できます。
このような比較測定では、ダイヤルゲージの針の振れ幅がそのまま誤差量を示すため、数値読み取りのスピードと確実性に優れています。
熟練した検査員であれば、寸法が上限公差を超えているか下限公差を下回っているかを一瞬で判断できるため、量産工程での流れ作業に適しています。
各種冶具との組み合わせによる検査体制
加工品の寸法検査では、ダイヤルゲージ単体だけでなく、専用の測定冶具と組み合わせて使用されることが一般的です。
たとえば、シャフトやピンの径を測定する際には、Vブロックやスナップゲージ、固定台と一体化された比較測定装置が用いられます。
こうした冶具により測定点が一定に保たれ、測定誤差を最小限に抑えることができます。
また、ワークの高さ測定には「ハイトゲージ」とダイヤルゲージを組み合わせたセットが使用され、製品の段差や段付き部分の確認に適しています。
平面に置かれたワークの厚みを、定盤とハイトゲージの間で読み取ることで、正確な高さ寸法が取得できます。
加工精度の傾向分析にも活用
ダイヤルゲージは一つひとつの測定値を記録するだけでなく、繰り返し測定によって寸法変化の傾向を把握するのにも役立ちます。
例えば、工具の摩耗による寸法変化を検知するために、定期的に加工品をダイヤルゲージで検査し、数値が徐々に偏ってきた場合は、刃物の交換や調整のタイミングを判断する材料になります。
また、製品の公差管理においては、ダイヤルゲージを使用して得られた測定値を統計処理(例:X̄-R管理図)に活用することで、工程能力の把握や異常の早期発見も可能です。
このように、単なる検査道具としてだけでなく、プロセスコントロールの一環としてもダイヤルゲージは活躍しています。
限界と注意点
ただし、ダイヤルゲージは高精度な機器であるため、取扱いには十分な注意が必要です。
測定中の強い衝撃や横方向からの力、温度変化などによって、スピンドルの動作や内部のギア機構に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、正しいゼロ点の設定を行わなければ、比較測定としての信頼性が損なわれるため、定期的な基準ゲージとの照合や校正が不可欠です。
機械据付け時の芯出し・レベル調整
ダイヤルゲージは、製造現場における精密機械の設置・調整作業においても極めて重要な役割を果たしています。
なかでも「芯出し」と「レベル調整」は、機械の性能や寿命に直結する基本作業であり、ダイヤルゲージの使用が欠かせません。
これらの作業は、目視や水準器では測れないレベルの精度が求められる場面が多く、微細なズレや傾きの確認・修正において、ダイヤルゲージの信頼性と感度が大きな力となります。
芯出し作業における活用
芯出しとは、主に回転体の中心軸が他の部品と正確に同一軸線上にあるかを調整する作業です。
例えば、モーターとポンプ、あるいはスピンドルとチャックの間で芯ずれがあると、振動、異音、摩耗の原因となり、機械トラブルの大きな要因となります。
この芯出し作業では、対象物を回転させながらダイヤルゲージの測定子を当て、針の振れ幅(振れ量)を確認します。
振れがゼロに近づくように、モーターや台座の位置を微調整することで、中心軸を合わせていきます。
特に同心度(軸方向の芯のずれ)や偏心量(軸と回転中心のずれ)を調べる際に有効で、機械設置作業の正確さを保証する手段として広く利用されています。
芯出しには、以下のような作業方法があります。
・外周芯出し(ラジアルランアウト測定):回転するシャフトや穴の外周に測定子を当て、中心軸のずれを検出。
・端面芯出し(アキシアルランアウト測定):回転面に垂直な端面に測定子を当て、傾きや波打ちを確認。
いずれの方法も、針の振れが最小となる位置を探ることで、正確な芯合わせが可能です。
レベル調整における使用法
機械の「レベル調整」は、機械本体が水平方向に正しく設置されているかどうかを確認し、必要に応じてアジャスターボルトやスペーサーで調整する作業です。
これは単なる水平・垂直の整合だけでなく、工作精度や部品寿命、振動の発生に影響を与える重要な要素です。
一般には水準器(レベル)を用いて大まかな調整を行いますが、最終的な精密確認や微調整には、ダイヤルゲージが効果的です。
たとえば、精密定盤上にスライドテーブルを置き、端から端まで測定子を滑らせることで、レベルの傾きを読み取ることができます。
もしテーブルの両端で針の読みが異なれば、それだけ傾斜があるということになり、調整の必要性があることが分かります。
さらに、CNC機やフライス盤、旋盤の据付け時には、ベッドやガイドウェイのレベル測定にもダイヤルゲージが使用されます。
これにより、稼働時の不均等な負荷や加工誤差を事前に防ぐことができ、結果として安定した生産体制を確立することが可能になります。
測定の信頼性を確保するために
芯出しやレベル調整にダイヤルゲージを用いる際には、マグネットベースや精密スタンドを活用し、ゲージの揺れや振動を抑える工夫が求められます。
また、温度変化による金属の膨張や機械の変形も影響を与えるため、できるだけ一定温度の環境下で行うことが望ましいです。
作業中は指針の動きに集中し、回転軸の位相ごとの針の位置を記録して、調整の指標とします。
このように、ダイヤルゲージは機械据付けの最終精度を担保する上で欠かせない測定工具です。
芯出しとレベル調整の両方に対応できる汎用性を持ち、機械性能と長期的な安定稼働の鍵を握る存在と言えるでしょう。
種類と選び方のポイント
ダイヤルゲージとデジタルゲージの違い
ダイヤルゲージとデジタルゲージは、いずれも非常に高精度な長さ・変位測定が可能な測定器ですが、その構造や表示方法、使い勝手、適用範囲には明確な違いがあります。
ここでは、それぞれの特徴と違い、使い分けのポイントをわかりやすく解説します。
表示形式の違い
最大の違いは、測定結果の「表示方法」にあります。
・ダイヤルゲージは、機械的な指針(針)によって数値を表示します。時計のような目盛盤の上で針が動くことで、測定量を視認します。
・デジタルゲージは、電子式の液晶ディスプレイ(LCD)に測定値が数値としてデジタル表示されます。小数点以下の数値まで明確に読み取れるため、読み間違いのリスクが少なく、誰が見ても同じ値が得られるのが大きなメリットです。
ダイヤル式は慣れた作業者にとっては直感的で素早く読み取れる一方、デジタル式は経験の浅い作業者でも正確に測定値を確認できます。
構造と信頼性
構造面では、ダイヤルゲージは内部に小さなギアやレバーが組み込まれた完全な機械式構造で、電源を必要としません。
そのため電池切れの心配がなく、屋外や電源の確保が困難な場所でも使用可能です。
また、構造が比較的単純であるため、故障しても修理や分解調整がしやすいというメリットがあります。
一方、デジタルゲージは電子センサーとマイクロプロセッサを内蔵した電気機器であり、バッテリーや電池を必要とします。
高機能で多機能な分、振動や衝撃、湿気、磁気などに対する耐性はダイヤル式に比べてやや劣る傾向があります。
現場環境が厳しい場合には、保護等級(IP等級)を確認することが重要です。
精度と分解能
一般的に、デジタルゲージの方が分解能(最小目盛)に優れる傾向があります。
たとえば、ダイヤルゲージの分解能が0.01mmであるのに対して、デジタルゲージでは0.001mmやそれ以下の精度を持つものも多く、微小変化を高精度に読み取る必要がある場面では特に有利です。
ただし、測定精度自体は機構設計や製品の品質によって大きく左右されるため、分解能が高いからといって常に正確とは限りません。
測定機器としての精度は、カタログに記載された「指示誤差」や「繰返し精度」で確認することが重要です。
機能性と拡張性
デジタルゲージは、その電子的な構造を活かして、多くの追加機能を持っています。
たとえば、
・データ出力(USB、Bluetoothなど)でPCやデータロガーに連携可能
・測定値のゼロリセット、プリセット、反転表示がワンタッチ
・最小/最大値の自動記録、比較測定モードなど
これにより、測定値の記録・統計分析や工程管理が必要な現場では非常に効率的です。
IoTや自動化が進む製造現場では、デジタルゲージの優位性が年々高まっています。
一方で、ダイヤルゲージは「見る」「読む」「比べる」といったシンプルな操作性に優れ、現場の勘と経験が活きるツールでもあります。
アナログ特有の“針の動き”から微細な変化を察知できるため、繰り返し測定の安定性や傾向判断には今でも根強い人気があります。
コスト面と選定ポイント
コスト面では、一般的にダイヤルゲージの方が安価です。
シンプルな構造で製造コストが低いため、複数台の導入や消耗品としての扱いがしやすいという点もメリットです。
デジタルゲージは初期費用が高めですが、機能や精度を活かせる現場では、長期的に見れば効率性や正確性の向上につながるため、コストパフォーマンスが高いといえるでしょう。
測定範囲と分解能の選定基準
ダイヤルゲージを正しく選定する上で、最も重要なポイントの一つが「測定範囲」と「分解能(最小目盛)」です。
これらは使用目的や測定対象の精度要求に応じて適切に選ばなければ、測定の信頼性を損なうだけでなく、作業効率の低下や不適合リスクにつながります。
この項では、それぞれの意味と、選定時の判断基準について解説します。
測定範囲とは何か?
ダイヤルゲージの測定範囲とは、スピンドルが移動できる「ストローク」の最大量、つまりどの程度の変位を測れるかを表します。
たとえば、測定範囲が「0〜10mm」のゲージであれば、スピンドルは10mmまで押し込まれても正常に測定が可能です。
一般的なダイヤルゲージの測定範囲には以下のような種類があります。
・小ストローク型(〜1mm、〜2mm):非常に高精度な位置決めや比較測定に最適。
・標準型(〜10mm):多くの加工品や組立品の検査に幅広く対応。
・大ストローク型(〜25mm以上):大型ワークや大きな変位の測定に適する。
ただし、測定範囲が広くなるほど内部構造も複雑になり、反比例して「分解能」が粗くなる傾向があります。
そのため、「広ければ良い」というわけではなく、測定する対象の変位量を事前に把握した上で、必要最小限のストロークを持つモデルを選ぶことが鉄則です。
分解能とは何か?
分解能(または最小目盛)は、ダイヤルゲージが「どれだけ細かい変化を読み取れるか」を示す指標です。
これは通常、「0.01mm」や「0.001mm」といった単位で表され、数字が小さいほど精密な測定が可能です。
たとえば
・分解能0.01mm → 針1目盛で0.01mmの変化を示す
・分解能0.001mm → より高精度な検査・比較に使用される
注意点として、分解能が高い(=精密)ゲージを選んでも、実際の測定精度は「測定対象物の表面状態」や「作業環境」によって大きく左右されるため、必要以上に細かい目盛を追求することは逆効果になることもあります。
測定範囲と分解能のバランスを取る
理想的なダイヤルゲージの選定は、以下のようなバランスで考えると良いでしょう。
測定対象の変位幅 | 推奨測定範囲 | 推奨分解能 |
---|---|---|
〜0.5mm | 1mm | 0.001mm〜0.01mm |
〜2mm | 5mm | 0.01mm |
〜10mm | 10mm | 0.01mm |
〜20mm | 25mm | 0.01mm〜0.05mm |
〜50mm | 50mm以上 | 0.01mm〜0.1mm |
つまり、「高精度を求める=分解能を細かく」ではなく、「測定対象の変位に見合ったストロークと分解能」の選択が基本です。
測定目的ごとの選定基準
用途別にみた測定範囲・分解能の選び方も重要です。
・加工品の比較検査(量産品の寸法管理):0.01mmの分解能で十分な場合が多い。
・金型や精密部品の検査:0.001mmクラスの高分解能が求められる。
・芯出し作業や振れ測定:分解能0.01mm、測定範囲1〜5mm程度が適切。
・一般組立・レベル調整:10mm以上の測定範囲があると作業性が高い。
また、現場の作業環境(振動、温度、作業者のスキル)によっても、読み取りのしやすさや耐久性を含めた「現実的な選定」が求められます。
高精度を狙いすぎない注意点
高分解能のダイヤルゲージは「測定精度が高い」と思われがちですが、実際には誤差の影響も受けやすくなります。
たとえば、分解能0.001mmのゲージは手の震えやワークの微小なバリ、接触面のゴミなどによって簡単に針が動いてしまい、測定値が安定しないことがあります。
したがって、「必要な精度」と「実用性」のバランスを見極めることが非常に重要です。
このように、ダイヤルゲージを選ぶ際には、「何を測るか」「どのくらいの精度で測るか」「どんな作業環境か」という条件を総合的に考えた上で、適切な測定範囲と分解能を選定することが、正確で効率的な測定の第一歩です。
使用環境に応じた保護構造・耐久性の考慮
ダイヤルゲージは精密機器であるため、使用環境の影響を受けやすく、適切な保護構造と耐久性の確保が非常に重要です。
特に工場や建設現場、金属加工などの環境では、粉塵・油・水・衝撃・温度変化などがゲージに深刻なダメージを与える可能性があります。
ここでは、使用環境ごとのリスクと、それに対応する保護構造・設計の選び方について詳しく解説します。
ダイヤルゲージの脆弱性とは?
ダイヤルゲージの内部には、非常に細かいギア機構やスピンドル、てこ装置が搭載されています。
これらは高精度な測定を可能にする一方で、以下のような外的要因によって誤動作や破損が生じやすくなります。
・粉塵・切粉の侵入:小さな隙間から金属粉や砂塵が入り込むと、内部のギアが噛み込んで破損したり、針の動きが鈍くなったりする。
・油・水の飛散:油性クーラントや水分が侵入すると、内部部品が腐食し、寿命を著しく縮める。
・衝撃・落下:スピンドルや針に強い衝撃が加わると、ゼロ点がずれたり、内部構造が変形したりする。
・温度変化:金属部品の膨張・収縮によって精度に誤差が生じやすくなる。
そのため、現場での使用を前提としたダイヤルゲージには、こうした環境的リスクを考慮した設計が必要不可欠です。
防塵・防水性能(IP等級)の確認
近年では、IP規格(Ingress Protection)に準拠した防塵・防水型ダイヤルゲージが登場しています。
IP等級とは、外部からの固体・液体の侵入に対する保護レベルを示すもので、たとえば「IP65」などと表記されます。
IP等級 | 保護内容 |
---|---|
IP54 | 防塵形。粉塵の侵入を防ぎ、飛沫水にも耐性あり。 |
IP65 | 完全防塵。水の直接噴射にも耐える。 |
IP67 | 完全防塵+短時間の水没にも耐性あり。 |
切削油や水分が飛ぶような加工現場では、最低でもIP54以上、可能であればIP65以上の防水性能を備えたモデルを選ぶと安心です。
特にデジタルゲージでは、基板や配線の保護が重要なので、IP保護等級の確認は必須です。
耐衝撃・堅牢性への配慮
作業中にうっかり落としたり、機械にぶつけたりすることは現場では珍しくありません。
こうした事故を想定し、以下のような設計が施されているゲージを選ぶと安心です。
・ショックプルーフ構造:針の軸受けに衝撃吸収機構を設けて、落下時のゼロ点ズレや内部破損を防ぐ。
・外装の金属ボディ・ゴムカバー:筐体の強度を高め、ケース割れやフレーム変形を防ぐ。
・スピンドルガイド付き設計:誤って斜め方向からスピンドルを押しても、軸が傷まない構造。
また、マグネットスタンドやフレキシブルアームを使うことで、本体を直接持たずに固定でき、落下や接触のリスクも軽減できます。
温度管理と精度の関係
ダイヤルゲージの多くは金属製で、温度変化に敏感です。
特に以下のような条件では、測定誤差の要因になります。
・高温の加工品を測定(熱膨張による誤差)
・炎天下や冷所での測定(ゲージ自体の伸縮)
・測定者の手の熱でスピンドルが暖まる
これを防ぐためには、以下のような工夫が有効です。
・使用前にゲージと測定物を同一温度に慣らす(温度順応)
・スピンドルにはゴムや樹脂製のグリップを使用する
・高温用の耐熱ゲージ(専用設計)を使う
保管とメンテナンスも重要
・耐久性を保つためには、使用後の清掃・保管も非常に大切です。
・使用後は乾いた布で表面の油・切粉を拭き取り、埃を落とす。
・可動部に微量の機械油を塗布して、サビや摩耗を防ぐ。
・保管時は専用ケースに入れ、湿度・衝撃から保護する。
また、精度維持のためには、年に1回程度の定期校正や点検も推奨されます。
このように、ダイヤルゲージは使用環境によって大きくパフォーマンスが左右されるため、「測定精度」だけでなく、「環境耐性」や「構造の堅牢性」まで含めて選定・運用することが、長期的に安定した測定を行うための鍵となります。
アスクでももちろんダイヤルゲージ所有しております。
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