PE(ポリエチレン)の特性や長所、短所など徹底解説!!
本日はPE(ポリエチレン)について解説していきます!
特性や長所・短所など詳しく解説しますので是非ご覧ください!!!
目次
PE(ポリエチレン)とは?
PE(ポリエチレン)は、プラスチック素材の中において最も原料価格が安く、加工しやすい素材の1つです。
プラスチックはさまざまな分子と分子の配合によって、様々な特性を出すことができる素材ですが、PE(ポリエチレン)は最も単純な構造を持つ高分子素材であり、様々な加工方法に対応しています。
例えばPE(ポリエチレン)は、高圧力で金型に注入する射出成形とも相性が良く、押出成形やブロー成形などのプラスチック加工とも相性が良い素材です。
こうした加工のしやすさや、原材料として安価ということから、大量生産される製品や素材に適しており、ラップやフィルム、食品容器、農業用フィルムといったシート状のものから、バケツや洗面器といったシンプルな雑貨類、灯油缶、土木用シートからサンダルまで、あらゆるもののプラスチック素材として使われています。
一般的に商用利用されるPE(ポリエチレン)は、VLDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)の二種類に分類されるが、さらにこれに加えてゴム弾性に優れるEVA樹脂が加わります。
それぞれによって、剛性や耐薬品性といった機械的特性は異なりますが、基本的には容器類やフィルム、シートなどの原材料としての使用が多いです。
またPE(ポリエチレン)は最近のリサイクルの流れから、リサイクル加工され再利用されるケースも多いです。
そうしたリサイクルでは、回収したPE(ポリエチレン)の製品をペレット状に分解し、溶かした後で上記で述べた加工方法により再利用されるケースが多いですが、最近では3Dプリント技術の登場により、FDM(熱溶解積層法)の3Dプリンターの材料でもあるフィラメントに含まれるケースも登場しています。
PE(ポリエチレン)の歴史
PE(ポリエチレン)の歴史は、プラスチック素材の中において比較的古い部類になります。
その素材が発見されたのは偶然で、1898年にドイツの化学者であるハンス・フォン・ペヒマンがジアゾメタンという有毒ガスの研究実験中にPE(ポリエチレン)を発見したとされています。
その後PE(ポリエチレン)が実際に商業利用にまで広まるには約半世紀以上の時間がかかっています。
具体的なPE(ポリエチレン)の合成法が開発されたのは1930年代で、その後1950年代に入り、PE(高性能ポリエチレン)を安価に開発する方法が確立され、世界的にプラスチック素材が広まることとなりました。
この商業利用できるPE(ポリエチレン)の開発には、1951年にアメリカのフィリップス石油の研究者が開発した酸化クロムと、1953年にドイツのノーベル化学賞受賞の化学者カール・ツィーグラーが開発したチーグラー・ナッタ触媒の存在が大きいです。
とりわけカール・ツィーグラーが開発したチーグラー・ナッタ触媒はエチレンを重合させる触媒として大きくPE(ポリエチレン)の商業化を前進させたと言えるでしょう。
PE(ポリエチレン)の特性
PE(ポリエチレン)の最大の特長は安価で加工がしやすいことから、大量生産される製品に向いています。
ラップやシートなどの包装類をはじめ、バケツやタンクなどの容器類やケースといった簡単な構造のものがほとんどです。
こうした製品を見てもわかるとおり、PE(ポリエチレン)の特性は、火や熱には弱いといった特性を持ちます。
上記の製品なども火や熱で簡単に燃えてしまうものが多いです。
その一方でPE(ポリエチレン)は寒さに強く、-20℃程度までなら耐えられるといった特性を持ちます。
また、その他のPE(ポリエチレン)の特性として挙げられるのが、防水性と絶縁性、耐油性の高さです。
PE(ポリエチレン)は吸水性がほとんどないため防水性が高く、比重も軽いため水に浮きます。
バケツやタンク、容器といった製品に多用されるのも、PE(ポリエチレン)の防水性の高さによります。
また絶縁性が高いため電気はほとんど通しません。
その一方でPE(ポリエチレン)は接着性が悪いという特性を持つことから塗装や印刷は注意が必要です。
またPE(ポリエチレン)は、上記で述べた通り、低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレン、EVA樹脂で特性が異なります。
また、これに加えて、超高分子まで分子量を高めた超高分子量ポリエチレンなる存在もあります。
PE(ポリエチレン)の長所
耐寒性:-20℃程度までならば耐えうる
防水性:吸水性がほとんどないため、防水性が高い。容器などに最適。
絶縁性:電気絶縁性が高く、電気を通さない。
耐薬品性:耐薬品性も高い。
耐油性:耐油性にも高く、石油タンクなどの素材にも使用される。
PE(ポリエチレン)の短所
耐熱性:耐熱性は低いため火や熱に弱い。
接着性:接着性は低く、印刷や塗装には注意が必要。
LDPE(低密度ポリエチレン)の特性
LDPE(低密度ポリエチレン)の最大の特性は、水よりも軽い比重にあります。
また耐薬品性や電気絶縁性は高く、柔軟で低温でも脆くなりません。
ラップやフィルムといった包装材、食品用容器に最適です。
その一方で耐熱性は低く簡単に燃えます。
LDPE(低密度ポリエチレン)の比重は0.91-0.92、荷重たわみ温度100℃以下、耐熱温度70℃~90℃。
HDPE(高密度ポリエチレン)の特性
HDPE(高密度ポリエチレン)の特性はLDPE(低密度ポリエチレン)よりも剛性が高く、また耐薬品性や電気絶縁性も高いです。
白っぽい色で、透明性は低いです。
このHDPE(高密度ポリエチレン)はバケツや洗面器といった雑貨類をはじめ、灯油タンク、フィルム、袋に至るまで幅広く使われています。
HDPE(高密度ポリエチレン)の比重は0.92-0.96、荷重たわみ温度130℃以下、耐熱温度90℃~110℃。
PE(ポリエチレン)の製法
PE(ポリエチレン)はエチレンが重合した単純な構造の高分子で、基本的にはメチレンの繰り返しによって作られています。
しかし、重合法や分子量によって様々な種類を作り出すことができ、その密度や機械的特性も異なります。
この様々なPE(ポリエチレン)の製法は、1976年のカミンスキーによるメタロセン触媒の開発が大きいです。
ドイツのノーベル化学賞を受賞したツィーグラーが開発したチーグラー・ナッタ触媒によってPE(ポリエチレン)の商業利用が広まったが、このカミンスキーの開発によりPE(ポリエチレン)の分子量などがコントロールできるようになりました。
PE(ポリエチレン)の種類
EVA樹脂は通常のPE(ポリエチレン)とは違う特性を持ち、PE(ポリエチレン)の中においても汎用性が高く、幅広い分野のプロダクトに使用されている素材です。
一方で、超高分子量ポリエチレンは、スーパーエンジニアリングプラスチックに分類されるほどの素材です。
その耐衝撃性はエンジニアリングプラスチックの代表とも言えるポリカーボネートを上回る機械的特性を持ちます。
ある意味超高分子量ポリエチレンはもはや別物と言っても過言ではないでしょう。
それぞれ特性や用途は全く異なりますが、PE(ポリエチレン)の種類として重要な素材だと言えます。
EVA樹脂
EVA樹脂は、エチレン ビニールアセタート コポリマーの略称で、その名の通り、エチレンに酢酸ビニールを共重合させた樹脂です。
一般的なPE(ポリエチレン)に比べて、柔軟性やゴム弾性に優れた性能を発揮し、比重が軽いです。
このEVA樹脂は、PE(ポリエチレン)の中においても非常に幅広い分野の製品に使用されています。
前述の農業フィルムや包装フィルムに始まり、サンダルや三輪車のタイヤ、雑貨類、シート、パイプ、ケースといった各産業分野で多用されるPE(ポリエチレン)です。
EVA樹脂の特性をまとめると、柔軟性、引張強度に優れるだけではなく、耐衝撃性、低温特性にも優れています。
また、透明性が高く光沢があり、耐候性にも優れ、外での使用にも十分耐えうる機能を発揮します。
PE(ポリエチレン)と異なる点としては、接着性に優れ、着色がしやすい素材とも言えます。
その一方で、耐酸性やアルカリ性には弱いという特性もあります。
超高分子量ポリエチレン
超高分子量ポリエチレンとは、通常のPE(ポリエチレン)とは違い、スーパーエンジニアリングプラスチックに分類される高性能な素材です。
エンジニアリングプラスチックとは、強度や耐熱性、耐衝撃性といった特定の機械的特性を強化されているプラスチック素材のことです。
通称エンプラと呼ばれるこの分野のプラスチック素材は、特殊な環境下でも使用出来たり、金属の代わりとして使用されるほど高いレベルを持ちます。
スーパーエンジニアリングプラスチックは、その中でもより強化された種類のもので、「耐熱温度は150℃以上で長期間使用できる性質」を持ち、溶剤などにも高い耐久力を持つものです。
超高分子量ポリエチレンは、このスーパーエンジニアリングプラスチックの1つとみなされています。
一般的なPE(ポリエチレン)との違いは、まずその構成する分子量が違います。
通常のPE(ポリエチレン)は分子量が2万からおおくても30万程度ですが、超高分子量ポリエチレンはその名の通り、分子量が100万から700万まで高めたものです。
この超高分子量ポリエチレンによって、低温から高温といった環境下においても長期間使用することが可能で、なおかつポリカーボネートを上回る非常に高い耐衝撃性を持っているとされています。
またこの素材が優れている特性としては、これほど強靭な特性を持っているにも関わらず、非常に軽く比重が0.92-0.94というレベルだ。
これは通常のPE(ポリエチレン)とほぼ変わらないレベルである。
さらには耐摩耗性にも優れた性能を発揮し、砂を用いた摩耗試験においても高い機能を発揮します。
こうした強靭な機械的特性から使用される製品も様々で、耐摩耗性の機能から歯車やギアなどになります。
また軽くて丈夫でなおかつ生体安全性の機能から、人工骨や義肢の材料などにも使用されます。
糸状にすることでピアノ線の8倍の強度を持つことから、登山や船舶のロープとしての使用が盛んです。
超高分子量ポリエチレンの特性
耐衝撃性:ポリカーボネートを上回る非常に高い機能を持つ。
耐熱性:高温でも機械的特性が変わらない。
耐摩耗性:砂による研磨試験にも耐える。自己潤滑性を持つ。
比重:0.92-0.94と非常に軽い。
防水性:吸水率が低く水を通さない。
耐薬品性:耐薬品性に優れる。
食品安全性と生体安全性に対応
PE(ポリエチレン)の加工と用途
PE(ポリエチレン)はプラスチック素材の中で、最も加工しやすい素材として知られていますが、一般的なPE(ポリエチレン)は射出成形やブロー成形、押出成形、真空成形、さらには発泡成形やカレンダー成形などにも対応しています。
射出成形
PE(ポリエチレン)で代表的な身の回りのプロダクトといえば、バケツや洗面器、容器などの雑貨類が挙げられます。
こうした容器状のプロダクトは、、金型によるプラスチック加工の代表とも言える射出成形によって作り出されます。
射出成形はプラスチックの大量生産を代表する加工方法で、約200℃近い高温でプラスチックを溶かして、高圧力で金型の中に押し込んで冷却し、固めて固形化するといった成形方法です。
その特長は生産性の良さと、高品質なクオリティのプラスチックパーツを作ることができる点にあります。
生産性は製品によって異なりますが、早いものでは数秒間で1個の割合で生産することが可能で、バケツや洗面器、容器などの日常的に頻繁に使用するプロダクトには最適と言えます。
製品の形状を形作った金型が完成すれば、あとは一度に大量生産することができます。
また、射出成形の特長として、高温でドロドロにに溶かしたプラスチックを、分子レベルで高圧力で金型に注入することができるため、製品の仕上がりにムラがなく、美しい外観の完成度が期待できます。
一方その反面、金型に押し込まれる圧力は1平方センチメートルあたり、200kg~500kgレベルの高圧力に達するため、金型はこの高圧力に耐えうる設計がされていなければならず、金型自体の設計と製造にも高額な費用が掛かります。
この射出成形はPE(ポリエチレン)以外のプラスチック素材にも対応しており、最も幅広く使用されていると言っても過言ではありません。
ちなみにバケツや洗面器、容器などの底部を見てみると、小さな丸いへこみがあり、この突起部が射出成形機のポンプから金型に押し込まれる部分を表しています。
ブロー成形
もう一つ、PE(ポリエチレン)で作られる代表的な製品で、別のプラスチック加工をとる製品、それが水や灯油をいれるポリタンクです。
このポリタンクを成形するのはブロー成形という加工方法で作られます。
ブロー成形とはプリフォームと呼ばれる筒状の容器を高温で熱し、金型で固定したのちに、空気を高圧力で吹き込み、金型に達するまで膨らませて形を固定、冷却して製品にする製法になります。
簡単に説明すると、吹きガラスのようなイメージで、高温で溶けたプラスチックの筒を金型に張り付くまで吹いて膨らませるという製法です。
ポリタンクはこのブロー成形によって作られますが、実はこのブロー成形ではかなり大きな容器も作る事が可能で、自動車のガソリンタンクなどもこの方法で作られます。
ちなみにガソリンタンクの製造に使用されるブロー成形は、樹脂を多層化した多層ブロー成形という成形方法がとられます。
また使用されるPE(ポリエチレン)も高密度ポリエチレンが使用されることとなります。
インフレーション成形
ブロー成形の一種でインフレーション成形という方法で作られるPE(ポリエチレン)の製品があります。
それがスーパーやコンビニなどで日常的に使用するポリ袋です。
この「ポリ」もPE(ポリエチレン)製ということを示しています。
このインフレーション成形という加工方法ですが、同じブロー成形でもポリタンクなどとは若干異なり、PE(ポリエチレン)を押し出し機で薄く抽出し、それに空気の圧力を吹き込み膨張させて風船のようにしてからローラーで巻き取る方法になります。
ちなみにインフレーションとは膨張という意味で、インフレーション成形で引き伸ばされたポリ袋は薄くて丈夫という特性を持ちます。
その薄さは20ミクロン~30ミクロンにもなるほどです。
また、このインフレーション成形で作られるPE(ポリエチレン)の製品でサランラップがあります。
サランラップはアメリカでは環境への配慮から低密度ポリエチレンが使用されます。
このようにPE(ポリエチレン)は分子と分子の構成がシンプルであるということから、極めて加工性が高く、様々なプラスチック加工方法で使用される素材です。
さらにはこうした加工性から、大量に消費されるものの製造に向いていると言えます。
ポリ袋や容器、バケツといった雑貨類なども消費が多いプロダクトで、見た目としてもポリカーボネートなどのような高機能は求められません。
素材は機械的特性もですが、使用用途や消費量といった面からも最適なものを選ぶ必要があります。
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