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試作人基礎講座

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3Dプリンターの基本構造とその仕組み

3Dプリンターは、設計データをもとに立体物を積層方式で造形する革新的な技術です。
その基本構造は、主に「造形プラットフォーム」「材料供給装置」「駆動機構」「制御装置」の4つの主要な要素から成り立っています。
これらの要素が連携することで、精密な造形が可能となり、製造業や医療、教育などさまざまな分野での活用が進んでいます。
本項では、これらの構成要素とその役割について詳しく解説します。

3Dプリンターとは

3Dプリンターとは、デジタルデータを元に三次元の立体物を造形する装置です。
従来の削り出しや鋳造などの製造方法では、金型や工具を用いて材料を加工するため、複雑な形状や内部構造を作るには高度な技術やコストが必要でした。
これに対し3Dプリンターは、「積層造形」と呼ばれる手法を用い、材料を一層ずつ積み重ねることで立体物を直接作り出します。
デジタル設計データ(CADデータなど)がそのまま造形指示として使用されるため、設計から製造までの一貫したプロセスが非常に効率的になります。
初期の3Dプリンターは1980年代に米国で開発され、当時は主に樹脂材料を用いた試作品の作成に限られていました。
しかし近年では、樹脂だけでなく金属粉末やセラミック、複合材料、食品用材料、さらにはバイオ材料まで幅広く対応可能になっており、製造業、医療、教育、建築、航空宇宙など多岐にわたる分野で応用が進んでいます。
また、従来の製造方法では不可能だった複雑な形状や軽量化構造の部品も作成できるため、設計自由度が格段に向上しています。
さらに、個人向けの家庭用3Dプリンターが普及したことで、趣味や教育用途でも立体造形が可能になり、従来の模型や手作り工作の概念を大きく変えつつあります。
3Dプリンターは単なる試作ツールに留まらず、製品の少量生産やカスタマイズ生産、さらにはデジタルデータを使った分散型製造の基盤技術としても注目されています。
特に設計変更の多いプロトタイプ作成や個別仕様の部品製造においては、時間とコストの両面で大きなメリットを発揮します。
このように、3Dプリンターは現代の製造プロセスを大きく変革する可能性を秘めた技術です。

3Dプリンターの基本構造と動作原理

3Dプリンターの基本構造は大きく分けて「造形プラットフォーム」「材料供給装置」「駆動機構」「制御装置」の4つから成り立っています。
造形プラットフォームは、積層される材料が置かれる土台であり、多くのプリンターでは加熱機能を備え、材料の密着性を高めています。
材料供給装置は、樹脂フィラメントや粉末、液体樹脂などを造形に適した形で供給する装置です。
熱溶解積層(FDM)ではフィラメントを加熱して押し出し、粉末焼結(SLS)では粉末をレーザーで焼結、光造形(SLA)では光硬化樹脂にレーザーやプロジェクター光を照射する方法が用いられます。
駆動機構はX、Y、Zの三軸に沿ってノズルやレーザーを精密に動かすもので、CADデータ通りの形状を積層造形するための重要な部分です。
制御装置は造形プロセス全体を管理するコンピューターで、造形データをGコードなどの制御信号に変換し、ノズルの移動速度、材料押出量、温度管理などを制御します。
積層造形の基本原理は、CADなどで作られた3Dデータを断面ごとに分割し、2D断面を順に積み重ねることで三次元構造を作る点にあります。
この方法により、従来の加工では困難だった内部空洞や複雑な幾何形状も直接造形可能です。
また、材料を必要な部分にのみ積層するため、従来の切削加工に比べ材料の無駄が少なく、省資源で環境負荷の低い製造方法としても注目されています。
さらに、デジタルデータを活用することで、造形物の設計変更が容易に行え、短期間での試作や個別仕様品の製造に非常に適しています。
これらの特性により、3Dプリンターは単なる模型作成のツールではなく、産業用途における革新的な製造手段として確立されつつあります。

3Dプリンターの種類

FDM方式(熱溶解積層方式)

FDM(Fused Deposition Modeling)方式は、最も広く普及している3Dプリンターの方式であり、教育現場から趣味のDIY、さらには試作品の開発や小規模生産の現場まで幅広く利用されています。
その仕組みは比較的シンプルで、熱で溶かした樹脂フィラメントをノズルから押し出し、プラットフォーム上に細い線として積層していくというものです。
積み重ねられた層が固まることで立体物が形成され、これを繰り返すことで三次元形状が完成します。
使用される材料は主に熱可塑性樹脂であり、代表的なものにPLA(ポリ乳酸)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PETG(耐久性の高いポリエチレンテレフタレート系)、ナイロンなどがあります。
最近では炭素繊維やガラス繊維を混合したフィラメントも登場しており、強度や耐熱性を大幅に向上させることが可能です。
FDM方式の最大のメリットは、その低コスト性と取り扱いの容易さにあります。
3Dプリンターの中では比較的安価に導入でき、フィラメントの材料費も手ごろです。
また、機械構造がシンプルなためメンテナンスも容易であり、教育分野や個人の趣味としての導入が進んでいます。
さらに、造形サイズの自由度が高い点も強みです。
小型の卓上モデルから、大型フレームを備えて数十センチ単位の大物を造形可能な産業用まで幅広く展開されています。
特にプロトタイピングの現場では、短時間で大きさや形状を確認できることから、製品開発の初期段階で重宝されています。
一方で、デメリットも存在します。
まず積層跡が表面に残るため、滑らかな仕上げを求める場合には研磨や塗装などの後処理が必要です。
また、オーバーハング形状やブリッジ形状を造形する際にはサポート材が必要となり、その除去にも手間がかかります。
さらに、熱収縮による反りやひび割れといったトラブルも発生しやすく、特にABSのような高温材料では造形環境の安定性が重要です。
温度制御された造形室やヒートベッドを備えることで、これらの問題をある程度解消できます。
近年の進化としては、デュアルノズルやマルチマテリアル対応機の普及があります。
これにより、異なる色のフィラメントを同時に使用したり、可溶性サポート材を利用して複雑な形状をスムーズに造形することが可能となりました。
また、産業用途においては強化ナイロンやカーボンファイバー混合フィラメントを活用し、実際に使用可能な治具や部品を造形するケースも増加しています。
今後は、より高精度で高速なFDMプリンターや、自動後処理機構を備えたシステムの登場により、その用途はさらに拡大すると考えられます。
FDM方式は、手軽さと実用性を兼ね備えた入門から実務まで幅広く使える方式であり、3Dプリンター市場の成長を支える基盤技術として位置づけられています。

SLA方式(光造形方式)

SLA(Stereolithography)方式は、液体樹脂に光を照射して硬化させ、積層していく方式です。
世界で初めて商業化された3Dプリンター技術でもあり、現在でも高精度造形が必要な分野で幅広く使われています。
仕組みとしては、紫外線レーザーを樹脂の表面に照射し、その部分を硬化させて一層を形成します。
その後、プラットフォームをわずかに移動させて新しい樹脂層を供給し、再び光を当てて硬化させます。
このプロセスを繰り返すことで三次元形状が構築されます。
近年ではDLP(Digital Light Processing)方式と呼ばれるバリエーションもあり、こちらはプロジェクターで一層全体を一度に硬化させるため、造形速度が大幅に向上しています。
SLA方式の強みは、その圧倒的な造形精度と表面仕上げの美しさにあります。
層の厚みは25ミクロン程度まで制御可能であり、滑らかで透明感のある造形も実現可能です。
このため、精密部品の試作、ジュエリーの原型、歯科用模型、医療分野での手術用ガイドなど、寸法精度が要求される領域で特に重宝されています。
また、材料となる光硬化樹脂には多様な種類があり、標準樹脂、耐熱樹脂、柔軟樹脂、透明樹脂、生体適合性樹脂など、用途に応じて選択可能です。
これにより、単なる試作にとどまらず、実際の医療器具や機能性部品にも利用されるようになってきています。
しかし、SLA方式には課題も少なくありません。
まず造形後に未硬化樹脂を洗浄し、二次硬化を行う必要があるため、作業工程が増えて扱いに手間がかかります。
また、光硬化樹脂は材料コストが高く、長期間の使用で黄変や脆化が起こりやすいという問題もあります。
そのため、長期的な耐久性を必要とする部品には適さない場合があります。
さらに、光源の出力や光学系の調整が精度に直結するため、機器のメンテナンスやキャリブレーションが重要です。
応用分野としては、医療・歯科業界での活用が特に進んでいます。
例えば歯科では、患者の口腔内をスキャンしたデータから高精度な模型や矯正器具を作成することができます。
また、手術計画に基づいたガイドやカスタムインプラントの試作も行われています。
ジュエリー分野でも、精密で繊細なデザインを短時間で製造できるため、従来のロストワックス製法と組み合わせた生産に利用されています。
今後の展望としては、SLA方式のスピード向上と材料の多様化が進むことで、試作品だけでなく実用的な最終製品の生産にも広がっていくことが期待されます。
特に生体適合性や高耐熱性を備えた新しい樹脂の開発が進めば、航空宇宙や医療機器などの高付加価値分野での活用がさらに拡大するでしょう。

SLS方式(粉末焼結方式)

SLS(Selective Laser Sintering)方式は、粉末状の樹脂や金属を用い、レーザーを照射して選択的に焼結させる方式です。
粉末層を敷き詰め、その表面にレーザーを走査して必要な部分を固めることで一層を形成します。
その後、プラットフォームを下げ、新しい粉末層を供給して再びレーザーを照射し、積み重ねていきます。
このプロセスを繰り返すことで、複雑かつ高強度な立体物が完成します。
使用される材料はナイロンやポリアミド、ガラスビーズ入りナイロン、さらにはアルミやステンレス、チタンなどの金属粉末にも対応可能です。
SLS方式の最大の特徴は、サポート材を必要としない点です。
造形中に未焼結の粉末が周囲を支える役割を果たすため、複雑な内部構造や空洞、格子状の軽量構造をそのまま造形できます。
これはFDMやSLA方式では困難な設計の自由度を実現しており、従来の製造方法では不可能な部品を直接製作することができます。
また、造形物は樹脂や金属の焼結体であるため、耐久性や耐熱性に優れ、実際の機械部品や航空宇宙産業のコンポーネントとしても利用可能です。
特にナイロン系材料は衝撃に強く、摩耗に耐えるため、機能性試作や小ロット製造で多く活用されています。
デメリットとしては、まず設備コストが非常に高い点が挙げられます。
レーザー発振器や粉末供給装置、温度制御システムなど高度な機構を備える必要があり、導入には数百万円から数千万円規模の投資が必要です。
また、粉末材料の取り扱いには安全管理が求められます。
微細粉末は吸入の危険性や爆発リスクがあるため、専用の換気設備や防護具が欠かせません。
さらに、造形後には余剰粉末を除去し、場合によっては焼結後の熱処理や表面仕上げを行う必要があるため、後処理工程も手間がかかります。
応用分野は非常に幅広く、航空宇宙、自動車、医療、産業機械など、強度や耐久性を必要とする分野で利用されています。
例えば航空業界では、軽量かつ複雑形状の部品をSLS方式で製作し、燃費効率の向上や部品点数の削減に貢献しています。
医療分野では、患者ごとにカスタマイズされた義肢やインプラントを製作するケースも増えています。
さらに金属粉末を用いる「金属3Dプリンター(SLMやEBM)」もSLS方式と類似しており、これらは次世代製造技術の中心として注目されています。
今後の展望としては、粉末のリサイクル効率向上や造形速度の高速化、より微細なレーザー制御技術の進化により、SLS方式のコストダウンと品質向上が進むと考えられます。
これにより、試作だけでなく量産プロセスへの導入も現実味を帯びつつあります。
特に航空宇宙や医療分野では、従来不可能だった設計の実現が可能となるため、設計思想そのものを変えるインパクトを持った技術として成長し続けるでしょう。

3Dプリンターの活用分野

製造業・試作分野での活用

3Dプリンターは製造業において、特に試作・プロトタイピングの工程で大きな役割を果たしています。
従来の加工方法では、設計変更が発生するたびに金型や治具を作り直す必要があり、時間とコストがかかるという課題がありました。
3Dプリンターを用いることで、CADデータを直接造形データに変換し、迅速に物理モデルを作成できます。
これにより設計段階での検証が短期間で可能になり、製品開発サイクルの大幅な短縮が実現します。
例えば自動車産業では、エンジン部品や内装部品の形状確認、組み立て検証のための試作モデルを3Dプリンターで造形し、デザインの問題点を早期に把握できます。
また、航空宇宙分野では、複雑な内部通路や軽量化構造を持つ部品の試作が容易になり、性能評価や風洞試験に使用されます。
さらに、3Dプリンターは少量生産やカスタマイズ品の製造にも適しています。
従来の金型生産では小ロットの部品を作る場合、単価が非常に高くなるため非効率でした。
しかし3Dプリンターを活用すれば、1個からでも形状変更に柔軟に対応できるため、試作品だけでなく、限定生産部品やカスタムパーツの製造にも活用可能です。
また、金属3DプリンターやSLS方式の樹脂3Dプリンターを利用すれば、実際の使用に耐える部品を作成できるため、試作モデルだけでなく最終製品の一部として利用できるケースも増えています。
加えて、3Dプリンターは製造工程の効率化にも寄与します。
複雑な形状を一体で造形できるため、従来は複数部品を組み合わせる必要があった構造も単体で作れることがあり、組み立て工数の削減や品質管理の簡略化に繋がります。
特に産業機械や精密機器の部品において、この利点は大きく、製造プロセスの最適化やコスト削減に貢献します。
さらに、材料の無駄が少ない積層造形方式の特性から、廃材削減や環境負荷低減の観点でもメリットがあります。
このように、製造業における3Dプリンターの活用は、単なる試作支援にとどまらず、製品開発の効率化、部品の軽量化、コスト削減、少量多品種生産など、幅広い効果をもたらしています。
今後は、材料の多様化や造形速度の向上により、さらに製造現場での重要度が高まると考えられます。

医療・歯科分野での活用

医療・歯科分野では、患者一人ひとりに最適化された医療機器や治療補助具を作ることが求められます。
3Dプリンターはこの分野で非常に有効な技術であり、個別化医療の実現に大きく貢献しています。
例えば歯科では、患者の口腔内スキャンデータをもとに、矯正用のマウスピースや義歯の原型、歯型模型を3Dプリンターで作成することができます。
これにより、従来の石膏模型や手作業による補綴物作製よりも精度が高く、短期間で製造が可能となります。
また、手術用のガイドやカスタムインプラントの製造にも3Dプリンターは活用されています。
手術計画に基づき、骨の形状に完全にフィットするインプラントやガイドを事前に造形することで、手術時間の短縮や精度向上が実現します。
さらに、生体適合性材料を用いた3Dプリンターは、骨補填材や人工関節の製造にも対応可能で、患者ごとの形状に合わせた部品製造が可能です。
近年では、金属3Dプリンターを使用してチタン製の人工関節を作製するケースも増えています。
医療分野での3Dプリンターの利点は、精密性とカスタマイズ性だけではありません。
手術のリハーサル用模型としても活用でき、複雑な手術のシミュレーションや医学生の教育にも役立ちます。
これにより医療ミスの防止や手技習熟の効率化が期待されます。
また、低コストで迅速にモデルを作成できるため、緊急手術や稀少症例への対応にも有効です。
さらに、歯科や補綴物の分野では、患者のデジタルデータをクラウド経由で共有して遠隔地でも部品作成が可能となり、地域医療への貢献も見込めます。
一方で課題も存在します。
生体適合性の確認や、材料の強度・耐久性の評価、造形後の滅菌処理などが不可欠であり、医療機器として使用するためには規制や認証取得も必要です。
しかし技術の進歩により、より安全で高品質な造形が可能になりつつあり、今後は個別化治療やカスタム医療機器の標準化にもつながると考えられます。

建築・インテリア・教育分野での活用

建築分野では、3Dプリンターは模型製作やデザイン検証、さらには実物サイズの建築部材製造に活用されています。
従来、建築模型は手作業で紙や木材を切り出して組み立てる必要があり、時間と労力がかかりました。
3Dプリンターを用いることで、CADデータから正確に建築模型を造形でき、設計意図を視覚的に確認しやすくなります。
これにより、設計段階での修正が容易になり、コミュニケーションコストの削減にもつながります。
また、建築デザインの提案やコンペ用模型作製のスピードが向上することから、設計事務所やデザイン事務所での導入が進んでいます。
さらに、近年では大型3Dプリンターを用いて、コンクリートや特殊樹脂を積層して実物サイズの建築部材や家具、インテリア製品を作る試みも進んでいます。
これにより、複雑な曲面や内部構造を持つデザインの実現が可能となり、従来の木型や型枠を使った工法では困難だった形状も造形できます。
また、建材の無駄を削減できる点や、軽量化・断熱性の高い内部構造の実現も可能で、省エネルギー建築やサステナブル建築への応用も期待されています。
教育分野においては、3Dプリンターは学生の創造力や理解力を向上させるツールとして注目されています。
理科や技術の授業で分子モデル、建築模型、機械部品、歴史的建造物の模型などを3Dプリンターで作製することで、抽象的な概念を具体的に理解する助けになります。
さらに、設計・プログラミング・製造工程を一貫して体験できることから、STEAM教育(科学・技術・工学・芸術・数学)においても重要な役割を担っています。
学生は自分で設計したデータを造形することで、設計力や問題解決能力、試行錯誤の重要性を学べます。
このように、建築・インテリア・教育分野における3Dプリンターの活用は、設計の精度向上、デザイン自由度の拡大、教育効果の向上といったメリットを提供し、従来の手作業や単純模型作製の限界を大きく超える成果をもたらしています。
今後は大型造形機や新材料の登場により、より実用的な建材や家具、教育用教材の作成が可能となり、さらに活用範囲は広がるでしょう。

3Dプリンターのメリットと課題

メリット:設計自由度と短納期の実現

3Dプリンターの最大のメリットの一つは、従来加工では困難だった複雑形状の造形が可能である点です。
FDMやSLA、SLSなどの積層造形技術は、部品を一体で作ることができるため、従来の切削加工や鋳造では困難だった内部構造や格子状構造、オーバーハング形状なども直接作ることが可能です。
これにより、軽量化や機能性を高める設計が実現できます。
特に航空宇宙、自動車、医療分野では、軽量化と強度確保が製品性能に直結するため、3Dプリンターは設計の自由度を飛躍的に拡張する手段として重要です。
さらに、設計データをそのまま造形データとして利用できるため、短納期での試作や製造が可能です。
従来のプロトタイピングでは、金型作製や切削加工に数日~数週間かかる場合がありますが、3Dプリンターを活用すれば、数時間~数日で完成品を手に取ることができます。
これにより設計段階での試作・検証の回数を増やすことができ、設計の精度や製品品質を高めることが可能です。
また、設計変更が発生してもデータを修正するだけで新たに造形できるため、柔軟な対応が可能であり、開発サイクルの短縮やコスト削減にも貢献します。
加えて、3Dプリンターは少量生産やカスタマイズ品の製造に適している点もメリットです。
1個単位の試作や限定生産でも高精度に作れるため、従来の金型生産ではコストが割高になる少量多品種生産に最適です。
例えば、医療用インプラントやカスタム義肢、個人向け商品などでは、患者や顧客ごとのデータに合わせて造形できるため、個別最適化された製品を迅速に供給できます。
このように、設計の自由度、短納期対応、個別化対応という3つの利点が3Dプリンターの大きな強みとなっています。
さらに、造形過程で材料の無駄が少ない点や、組み立て工程の削減につながる一体成形も可能で、製造工程全体の効率化にも寄与します。

メリット:コスト削減と少量多品種生産

3Dプリンターは、従来の製造手法に比べて初期設備投資や材料コストの削減に寄与する場合があります。
特に試作やプロトタイプ製作の段階では、金型作製費用や工具費用が不要であり、1個単位での製造が可能なため、小ロット生産のコストが大幅に低減されます。
従来の金型生産では、少量の製造に高額な金型費用がかかるため、試作や限定品製造のコストが高くなってしまうという課題がありました。
3Dプリンターでは、CADデータを直接造形データに変換して積層造形できるため、少量多品種生産に最適です。
さらに、組み立て工程や加工工程の削減もコスト面でのメリットです。
複雑形状や多部品構造を一体で造形できるため、従来必要だった複数部品の加工や組み立て工数が不要になります。
これにより、組み立て作業の手間や不良率を削減でき、製造効率が向上します。
また、材料の無駄が少ない点も経済的利点の一つです。
粉末焼結や樹脂押出積層では、必要な部分だけを造形するため、切削加工のように余剰材料を大量に削り出す必要がありません。
廃材の削減により、環境負荷低減にもつながります。
コスト削減の観点からは、輸送コストの軽減効果もあります。
従来は部品を外部の加工業者に発注して製造する場合、輸送費や納期による制約が発生しましたが、3Dプリンターを社内に設置することで、必要な部品を必要な時に即座に製造でき、輸送コストやリードタイムの短縮が可能です。
また、個別カスタマイズ製品や地域特化型製品の製造にも対応しやすく、顧客満足度の向上とコスト効率化を両立できる点も大きなメリットです。
ただし、材料費や高精度機器の導入コストは場合によって高くなるため、コスト評価は用途や生産量に応じて慎重に行う必要があります。
それでも、少量生産、個別化、複雑形状の一体成形といった点では、従来製造手法よりも明確な経済的メリットを提供できる技術であることは間違いありません。

課題:材料・精度・生産性の制約

3Dプリンターには多くのメリットがありますが、材料、精度、造形速度などの面で課題も存在します。
まず材料面では、FDM方式やSLA方式では使用できる樹脂の種類が限定されており、耐熱性や耐薬品性、耐摩耗性などが制約されることがあります。
SLS方式や金属3Dプリンターでは材料の自由度は広がりますが、粉末材料の取り扱いや安全管理、コストが課題となります。
また、造形物の物性や耐久性は材料特性に依存するため、実用部品として使用する場合には十分な強度評価や後処理が必要です。
精度面でも、3Dプリンターには限界があります。
FDM方式では積層方向の粗さが残るため、高精度部品には研磨や後処理が必須です。
SLA方式は高精度ですが、造形サイズや光学系の制限により、大型部品の製造や長期使用には注意が必要です。
SLS方式や金属プリンターでは寸法精度が材料やレーザー条件に左右されることがあり、工程管理や温度制御が重要です。
また、造形後の熱処理や研磨などの後処理も必要で、完成までの手間や時間を考慮する必要があります。
生産性の面でも、積層造形はどうしても時間がかかる傾向があります。特に高精度・高強度・大サイズの部品では、造形時間が数十時間~数日かかる場合もあります。大量生産や高スループットが求められる場合には、従来の射出成形や切削加工の方が効率的です。
さらに、大型プリンターや金属3Dプリンターは設備コストが高く、導入には慎重な判断が必要です。
このように、3Dプリンターは設計自由度や短納期、小ロット生産には大きなメリットがありますが、材料制約、精度・表面仕上げ、造形速度、生産規模の面ではまだ限界があります。
これらの課題を理解した上で、適材適所で導入することが重要です。
今後は材料開発の進展や造形速度の高速化、精度向上の技術革新により、これらの課題も徐々に解消されつつあり、産業全体での応用範囲はさらに広がることが期待されています。

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株式会社アスク

【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
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