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試作人基礎講座

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材料解説シリーズ~A2011編~

本日は材料解説シリーズ~A2011編~です。
特徴や性質など解説しますので、是非ご覧ください♪

A2011とは

A2011は、アルミニウム合金の中でもA2000系に分類される「アルミニウム・銅系合金」の一つであり、通称「フリーマシナブル合金(free-machining alloy)」として広く知られています。
JISでは「A2011」と表記され、国際的には「2011アルミニウム合金(AA2011)」とも呼ばれています。
主な用途は切削加工を必要とする小物部品や精密部品で、特に自動旋盤などによる量産加工でその真価を発揮する材料です。
A2011の最大の特徴は、「非常に優れた切削性」にあります。
これは、合金中に含まれる銅(Cu)や鉄(Fe)、鉛(Pb)などの元素の効果によるもので、切りくずが細かく砕けやすく、工具への負荷が軽減されるため、高速加工や連続加工に適しています。
A2011は市販されているアルミニウム合金の中でも特に機械加工性が良いとされ、「被削性100%」の基準材料とされることもあるほどです。
化学組成としては、銅(Cu)が主な添加元素で、約5.0~6.0%程度含まれており、その他に鉛(Pb)やビスマス(Bi)も含有されています。
鉛やビスマスの添加は被削性をさらに向上させる目的で使われます。
ただし、鉛に関しては環境規制(RoHS指令など)との関係で注意が必要な場面もあります。
最近では、鉛フリーの代替材(2011-T3 Lead-Freeなど)も開発されています。
一方で、A2011は耐食性に劣るという弱点も持ち合わせています。
銅系合金特有の性質として、湿気や塩分環境下では腐食が進行しやすいため、屋外での使用や水分に晒される環境では注意が必要です。
そのため、使用前に陽極酸化処理(アルマイト処理)などの表面処理が施されることも多いです。
強度面では、A2011は他の汎用アルミ合金(たとえばA5052やA6061など)に比べて引張強さは高いものの、靭性や耐食性では劣ります。
そのため、構造材というよりは、寸法精度や加工速度が重視される小型精密部品に適しています。
総じて、A2011は「高精度な切削加工が必要な場面で最適なアルミ合金」と言えます。
自動車や航空機の内部部品、電子機器、機械装置の小ネジやブッシュ、端子など、寸法精度と生産性が求められる用途で多く採用されているのがその証です。

機械的特性と代表的な数値

A2011は、アルミニウム合金の中でも機械的特性に優れた材料として知られ、特に「高い引張強さ」と「極めて優れた被削性」を両立している点が大きな魅力です。
ここではA2011の代表的な機械的特性について、数値データを交えて詳しく解説します。
まず、引張強さ(Tensile Strength)についてですが、A2011-T3(冷間加工+自然時効)の状態でおおよそ約330~400MPa程度の数値を示します。
これはA5052(200~300MPa前後)などの汎用アルミ合金と比較してもかなり高い部類に入り、A2011が「構造材ではなく加工用素材であるにもかかわらず、一定以上の強度を備えている」ことを物語っています。
次に、降伏強さ(Yield Strength)は、T3処理材で約275~350MPaとされており、塑性変形が始まるまでの応力にも十分な耐性を持っています。
この特性は特にねじ部品や圧入部品などにおいて、使用中の寸法安定性や変形防止に寄与します。
伸び(Elongation)はやや低めで、T3材で約10%未満、T8材(冷間加工+人工時効)になると5~7%程度に落ちることもあります。
これは高強度材料にありがちな特徴であり、靭性(粘り)よりも硬さや加工精度が重視される用途に向いていることを示しています。
ビッカース硬度(HV)はおおむね100~130HVの範囲であり、これは機械加工中の耐摩耗性に貢献します。
工具との相性も良く、切削中に素材が削りにくくなる「ガミング(切削面の溶着)」の発生も比較的抑えられています。
比重(密度)はアルミニウム合金としては標準的な約2.83 g/cm³で、軽量性というアルミの最大の利点もしっかりと活かされています。
鉄や銅と比べてはるかに軽量であるため、機械部品として組み込んだ場合のトータルウェイトの低減にもつながります。
一方で、疲労強度(Fatigue Strength)や耐衝撃性(Impact Resistance)については、他の高靭性材料と比較してそれほど高くはありません。
これは銅を主成分とするA2000系全般の傾向でもあり、繰返し荷重や強い衝撃を受ける部位での使用には不向きです。
これらの特性をまとめると、A2011は「高い強度と極めて優れた被削性を両立しつつ、軽量かつ寸法安定性に優れる」アルミニウム合金であると言えます。
ただし、用途によっては「耐食性」や「靭性」の面で他のアルミ合金(例えばA6061やA5052)の方が適している場合もあるため、特性を正しく理解した上で選定することが重要です。

A2011の加工性と製造上の利点

バイトとチップ

切削加工性の良さ

A2011は、アルミニウム合金の中でも特に「切削加工性」に優れた材料として知られており、一般には「フリーマシナブル合金(Free Machining Alloy)」として分類されます。
この「フリーマシナブル」とは、「切削性が極めて良好で、自動旋盤などによる量産加工に適している」という意味で、A2011はその代表格と言える存在です。
この優れた切削性の理由の一つは、A2011の化学成分にあります。
アルミニウムに加え、銅(Cu)を5〜6%程度含んでおり、さらに鉛(Pb)やビスマス(Bi)などの切削促進元素が微量添加されている点が特長です。
鉛やビスマスは、切削中の摩擦を減らし、被削面の温度上昇を抑え、工具の摩耗を軽減する効果があります。
また、削りカスが小さくバラけやすいため、切りくずの処理性にも優れています。
このような特性は、自動旋盤やNC旋盤、マシニングセンタなどによる大量生産向け部品において非常に有利です。
たとえば、ネジ、ブッシュ、ピン、電気接点部品など、寸法精度と仕上げ面が重要な精密小型部品の加工において、A2011は高い評価を受けています。
また、加工時間が短縮されることで、生産性の向上やコスト削減にも直結します。
さらに、A2011は工具寿命の延長という観点でも優れています。
工具と素材の摩擦が少ないため、超硬工具やハイス(HSS)などでも長期間の使用が可能であり、切削面の仕上がりも非常に滑らかです。
加工面粗度(Ra)も非常に小さく、追加の研磨や仕上げ加工を要さないケースも多いため、後工程の省略にもつながります。
特に重要なのは、「連続性の高い加工」への適応力です。
自動旋盤による連続生産や多軸機での多面加工など、連続での機械加工において、A2011の加工性は顕著なメリットとなります。
切りくずが絡まりにくく、機械の停止頻度も少ないため、設備の稼働率を高く維持できます。
ただし注意点もあります。
A2011は熱伝導性が高く、加工熱が工具に伝わりやすいため、高速回転での連続加工時には切削油の使用や、工具材質の適切な選定が必要です。
また、鉛を含むタイプのA2011はRoHS(欧州の有害物質規制)に適合しない場合があるため、医療・食品・電子関連などの業界では、鉛フリータイプのA2011(例:A2011-T3 Lead-Free)を使用する必要があります。
まとめると、A2011は「極めて優れた被削性を誇り、精密・高速・連続加工に理想的な材料」であり、旋盤加工やマシニング加工における信頼性と経済性のバランスを非常に高いレベルで実現している合金です。

熱処理とその効果

A2011は、熱処理によって機械的特性を調整できる「熱処理型アルミニウム合金(Heat Treatable Alloy)」に分類されます。
これは、冷間加工や時効処理といった工程を経ることで、引張強さや硬度などの特性を制御可能であることを意味します。
A2011では、特に「T3」および「T8」と呼ばれる熱処理状態がよく使われており、それぞれの状態によって加工性と強度のバランスが異なります。
まず、「T3処理」は、溶体化熱処理(Solution Heat Treatment)+冷間加工(Cold Working)+自然時効(Natural Aging)の組み合わせで構成される処理です。
T3状態では、A2011は優れた被削性を保ちつつ、適度な強度(引張強さ:約330~390MPa)を得ることができ、非常にバランスの良い状態とされています。
機械加工用途で最も一般的に流通しているのがこのT3材です。
一方、「T8処理」は、T3のプロセスに加えて人工時効(Artificial Aging)を施した状態です。
これにより、さらなる強度向上(引張強さ:400MPa超も可能)が期待できます。
T8材は、耐久性や寸法安定性が重視される場面に適していますが、その反面、伸びや靭性はやや低下します。
また、T8状態の材料はT3に比べてわずかに切削抵抗が上がることもあるため、加工条件の見直しが必要な場合もあります。
熱処理によって得られる性質の一つに「時効硬化(Age Hardening)」があります。
これは、溶体化処理によって固溶させた合金元素が、冷間加工や時間の経過によって析出物を形成し、材料を硬化させるという現象です。
A2011では主に銅(Cu)を主成分とする微細な析出物が硬化に寄与し、構造を安定化させます。
ただし、A2011の熱処理にはいくつか注意点もあります。
まず、熱処理温度と保持時間の管理が非常に重要です。
過熱やオーバーエージング(時効処理の過剰実施)によって、期待される強度や硬度が得られないばかりか、脆化が進む恐れもあります。
また、熱処理後に加工を行う場合、材料の内部応力による歪みや反りが発生することがあるため、二次加工時には応力除去処理(ストレスリリーフ処理)などの追加工程が有効です。
さらに、熱処理済みのA2011材(特にT8)を再び加熱するような工程(例:溶接や高温加工)に晒すと、時効硬化の効果が失われ、性能が低下する可能性があります。
そのため、熱処理済み材はできるだけ常温での加工や組立を前提に設計されるべきです。
総じて、A2011は熱処理によって性能を自在に調整できる柔軟性の高い合金です。
使用環境や目的に応じてT3やT8といった処理状態を選択することで、加工性と強度、精度保持性のバランスを最適化することが可能となります。

A2011の用途と具体的な使用例

ねじ部品

精密機械部品への使用

A2011はその卓越した切削加工性と、安定した機械的性質を兼ね備えていることから、精密機械部品への利用において極めて高い評価を得ています。
特に自動旋盤やマシニングセンタによって大量に生産される小型部品において、寸法精度・仕上がり品質・加工スピードのいずれの面でも非常に優れた特性を発揮します。
A2011が精密機械部品に適している最大の理由は、「寸法精度の高さと加工面の良好な仕上がり」です。
これは、素材が切削時に変形しにくく、なおかつ細かく粉砕される切りくずを生成する性質を持っているためです。
その結果、再加工や研磨といった後処理を最小限に抑えることができ、製造工程の効率化にもつながります。
ネジ、ブッシュ、スペーサー、ピン、シャフトなど、加工精度と表面性状が要求されるパーツにおいて、A2011は理想的な選択肢の一つです。
また、A2011は比較的高い引張強さ(約330~400MPa)と硬度(約100~130HV)を備えているため、使用環境下での寸法保持性にも優れています。
例えば、高速回転するシャフトや摩耗の懸念がある摺動部品などでも、ある程度の使用に耐えるだけの強度があります。
とはいえ、これは軽荷重や中程度の使用条件におけるものであり、高負荷や衝撃がかかる部位には、より高靭性・耐摩耗性を持つ合金(例:A7075やアルミ青銅など)との適材適所が求められます。
精密機械部品は大量生産されることが多く、加工スピードの速さは製品コストに直結します。
A2011は、非常に切削しやすいという特性により、サイクルタイム(1個あたりの加工時間)を短縮でき、コスト削減に寄与します。
自動車、空調機器、電子機器、工作機械、医療機器などの産業で、精密部品の量産にA2011が採用されている背景には、こうした経済的側面もあります。
さらに、ねじ加工との相性も抜群です。
素材が安定しており、ネジ切り中にバリが出にくく、ネジ山が崩れにくいため、電装部品や小型機構部品において高品質なねじ部品を効率よく製造できます。
タップ加工・ダイス加工ともに良好で、仕上がり精度も安定しています。
また、導電性も比較的良好であるため、電気接点やアース部材などとしての利用例もあります。
一方で、前述の通り、A2011は耐食性に劣るという性質があるため、部品が水分・油分・薬品などに長期的に曝される場合には、アルマイト処理やクロメート処理などの表面処理による保護が必要となります。
これにより腐食を防止し、製品寿命を延ばすことができます。
総じて、A2011は「高精度」「高効率」「高加工性」が求められる精密機械部品の分野において、非常に理想的な材料の一つです。
その性能と使い勝手の良さから、多くの製造現場で「一度使うと他に戻れない」とさえ言われることもあるほどです。

電子機器・航空機部品への展開

A2011は、精密機械部品に限らず、電子機器や航空機関連の部品にも広く応用されています。
これは、同合金が持つ優れた被削性・高強度・軽量性・導電性といった特徴が、これらの分野で求められる性能要件と非常に相性が良いためです。
ここでは、具体的な採用事例や求められる性能との関係を中心に、A2011の電子機器・航空機用途について詳しく見ていきます。
まず、電子機器分野においては、A2011は精密なコネクタ部品、端子、スペーサー、ヒートシンク部品、取り付けネジなどに活用されています。
電子部品は一般に「小型・軽量・高精度」を求められるため、寸法安定性が高く、高速加工に対応できるA2011の特性が非常に重宝されるのです。
また、アルミ合金として比較的高い電気伝導性(導電率:約35~40%IACS)を持つことも、電気信号を扱うパーツに適している理由の一つです。
加えて、放熱性にも優れているため、ノートパソコンのヒートスプレッダやLED照明器具の放熱板など、熱設計の一環として選ばれることもあります。
また、電子機器分野では大量生産が前提となるため、加工のしやすさ=コストパフォーマンスの高さが非常に重要です。
A2011は、CNC旋盤やタッピングセンタでの高速・高精度な切削が可能で、かつ表面仕上げの品質も高いため、追加の加工や研磨を最小限に抑えることができます。
これは、部品点数の多い電子機器製造の現場において、部品のトータル製造コストの削減に直結します。
一方、航空機分野においては、A2011は構造材としての利用はほとんどありませんが、非構造部品や補助部品、コネクタ部、操作パネルや内部構成品などでその実力を発揮しています。
航空機用部品には「軽量かつ一定以上の強度」「寸法安定性」「耐振動性」「信頼性」が求められますが、これらにおいてA2011は必要十分な性能を提供できます。
たとえば、航空機の計器盤内で使用される小型ねじやブッシュ、マウント部品、電気配線用の端子などに多く採用されています。
さらに、航空機産業では加工効率や生産性の高さも重要視されます。
A2011は被削性に優れており、工具寿命も長く、加工中のトラブルも少ないため、航空機部品メーカーにとって非常に扱いやすい素材とされています。
特に、自動旋盤や複合加工機による同時多面加工において高い効果を発揮し、短納期化・量産化の実現に寄与しています。
ただし、航空機用途においては耐食性や靭性の不足が懸念される場面もあるため、A2011はあくまで補助的な部品材や加工性重視の内部部品材として使用される傾向が強いです。
主要構造体や外装パネルなどでは、より強度・耐食性・靭性に優れたA6061やA7075が用いられることが一般的です。
まとめると、A2011はその高精度加工性・軽量性・導電性・熱伝導性を活かし、電子機器や航空機内装部品といった「高精度・中強度の小型部品」において、非常に優れたパフォーマンスを発揮する合金です。
コストと性能のバランスが求められる現代のものづくりにおいて、A2011は今後も需要の高い材料であり続けるでしょう。

他材料との比較

A5052との比較(加工性・耐食性)

A2011とA5052は、いずれも工業分野で広く使用されるアルミニウム合金ですが、それぞれに特性の違いがあり、用途や選定基準も大きく異なります。
A2011は主に高精度な切削加工用、A5052は成形性・耐食性を重視した構造材として使われることが多いです。
ここでは、両者の「加工性」と「耐食性」に焦点を当て、詳細に比較していきます。

加工性の比較

A2011は「フリーマシナブル合金」と呼ばれるほど、切削加工性に優れた材料です。
切りくずが細かく砕けて工具への負担が少なく、旋盤やマシニング加工において高精度かつ高速な加工が可能です。
被削性はアルミ合金中でトップクラスであり、自動旋盤やNC加工による大量生産に最適です。
一方、A5052は「加工性」に優れているとされますが、それは板金加工や曲げ加工などの塑性加工においての話です。
A5052は中程度の強度と良好な延性を備え、曲げ・絞り・成形加工がしやすいため、自動車の外板や筐体、建築用パネルなどに使われます。
ただし、切削加工性に関してはA2011に劣ります。
切削中にバリが出やすかったり、工具への負荷が高まりやすいため、高精度部品にはあまり用いられません。
つまり、「切削向き=A2011」「成形向き=A5052」と使い分けられるのが一般的です。
両者は加工手段そのものが異なるため、設計段階で加工方法に応じて材質を選定する必要があります。

耐食性の比較

耐食性においては、A5052が圧倒的に優れています。
A5052はマグネシウム(Mg)を主成分とする5000系アルミ合金で、自然発生する酸化皮膜によって自己防衛能力を持ち、海水や湿気、酸性環境に対して非常に強い耐食性を示します。
そのため、船舶、看板、外装材、タンク、配管など、腐食性の高い環境で使用されることが多く、表面処理を施さずに使えるケースも多々あります。
一方でA2011は、銅(Cu)を多く含むA2000系合金のため、耐食性が劣ります。
特に水分や塩分を含む環境では点食(ピッティング)や粒界腐食が進行しやすく、使用には注意が必要です。
そのため、A2011を屋外や湿気の多い場所で使う場合には、アルマイト処理やクロメート処理など、何らかの表面処理を施して保護する必要があります。
また、電食(異種金属接触による腐食)にも注意が必要で、異なる金属と接触する部位では電気絶縁処理が求められます。

まとめ

比較項目 A2011 A5052
加工性(切削) ◎ 非常に良好 △ やや劣る
加工性(曲げ・成形) △ 不向き ◎ 優れる
耐食性 △ 弱い(表面処理必要) ◎ 優れる(無処理でも使用可)
主な用途 精密部品、ねじ、ブッシュ 建材、外装、船舶部品
適する加工方法 切削、旋盤加工 曲げ、溶接、成形加工

このように、A2011とA5052は得意とする加工方法と用途が大きく異なるため、材料選定にあたっては加工方法・使用環境・コスト・性能要件をよく吟味し、適切な材料を選ぶことが肝要です。

A6061との比較(機械特性・応用範囲)

A2011とA6061は、いずれも工業製品や機械部品の分野で多用されるアルミニウム合金ですが、両者は設計思想・機械的特性・加工性・用途範囲などに明確な違いがあります。
A2011は「切削加工を前提とした高精度部品用」、A6061は「構造材や汎用部品用」として位置づけられ、それぞれの特性が異なるニーズに応えています。
ここでは、両者の違いを特に「機械特性」と「応用範囲」に焦点を当てて比較します。

機械特性の比較

A2011は銅(Cu)を主成分とするA2000系合金で、高い切削性と適度な強度(T3で330〜390MPa程度の引張強さ)を持ちます。
硬度も高く、被削性はアルミニウム合金中でもトップクラスです。
寸法安定性が高いため、精密ねじ・ピン・ブッシュなどに最適ですが、靭性(割れにくさ)や耐衝撃性は低く、溶接性もほぼ不可です。
また、耐食性も低いため、屋外や湿度の高い環境には不向きで、表面処理が不可欠です。
一方、A6061はシリコン(Si)とマグネシウム(Mg)を主成分とするA6000系合金で、引張強さはT6処理で約290〜350MPa、降伏強さも200MPaを超えるなど、構造用材料として十分な強度を備えています。
さらに、靭性や疲労強度に優れており、耐衝撃性も高いため、航空・自動車・建設分野で多用されています。
また、溶接性や耐食性にも優れており、総合的なバランスに優れた汎用材料と言えます。
つまり、機械的な「強度」自体は両者に大きな差はないものの、A6061はより「構造的な使いやすさ(靭性・溶接性)」に優れており、A2011はより「加工性(切削向き)」に特化しているという違いがあるのです。

応用範囲の違い

A2011は主に、自動旋盤による大量生産部品に使われます。
ネジ・ボルト・端子・スリーブ・ブッシュ・スペーサーなど、小型で寸法精度が求められる部品に特化しています。
特に、加工スピードと仕上げ面が重要な電子機器・精密機械部品に最適です。
構造体としての使用には不向きで、負荷がかかる部位にはあまり使われません。
一方、A6061はその汎用性の高さから、構造部品や外装部品、機械フレーム、金型部品、航空機用部品など、幅広い用途に対応しています。
特にT6材は、切削加工もある程度しやすく、強度・軽量・耐食性・溶接性のバランスが非常に良いため、「迷ったらA6061」と言われるほどの定番材料です。
また、曲げ加工や押出成形、アルマイト処理にも適しているため、設計の自由度が非常に高いのも特徴です。

まとめ

比較項目 A2011 A6061
主成分 Al-Cu系 Al-Mg-Si系
被削性 ◎ 非常に良好 ○ 良好(A2011ほどではない)
強度(T6相当) ○ 約330~390MPa ○ 約290~350MPa
靭性・耐衝撃性 △ やや低い ◎ 高い
溶接性 × 不可 ◎ 優秀
耐食性 △ 表面処理が必要 ◎ 良好(無処理でも使用可)
用途例 精密部品・ねじ 構造材・機械フレーム・航空部品

このように、A2011とA6061は同じアルミ合金であっても設計目的と加工法によって明確に使い分けるべき材料です。
切削精度と加工性を最優先するならA2011、構造的強度と多用途性を重視するならA6061を選択するのが一般的な材料選定基準となります。

A7075との比較(強度・コスト)

A2011とA7075は、どちらもアルミニウム合金に属する材料ですが、その性能特性と用途、コストには大きな違いがあります。
A2011は「加工性重視」、A7075は「高強度・高性能重視」の材料であり、目的に応じて明確に使い分けるべき合金です。
本項では、両者の「強度」と「コスト」に焦点を当てて比較し、それぞれの特性や適用範囲について詳しく解説します。

強度の比較

まず、引張強さにおいてA7075は、アルミ合金中でも最上位の強度を誇ります。
T6処理品では約540~570MPaに達し、場合によっては600MPa超も可能です。
これは、一般的な炭素鋼に匹敵する強度であり、軽量かつ高強度が必要とされる航空機やレーシングマシン、精密機構部品などに多く採用されています。
また、降伏強さも480MPa前後と非常に高く、塑性変形を起こしにくいため、長期的な寸法安定性にも優れています。
一方、A2011はT3材で引張強さ330~390MPa程度、T8材で最大400MPa超という水準ですが、これはA7075の約70%程度の強度にとどまります。
また、疲労強度や衝撃耐性においてもA7075のほうが遥かに優れています。
そのため、A2011は基本的に「高強度を必要としない用途」向け、つまり切削精度やコストパフォーマンスを優先した場面で使用されます。

コストの比較

材料コストの観点では、A2011の方が明確に安価です。
A7075は原材料価格が高く、さらに製造工程でも溶体化処理・人工時効処理・品質管理などが厳格に行われるため、単価が非常に高くなる傾向があります。
一般的には、A2011の約2倍前後の価格差が発生することもあり、小型部品や量産品においてはコスト面でのインパクトが大きくなります。
さらに、A7075は切削加工がやや難しく、工具の摩耗も早いため、加工コストも上がる傾向があります。
対してA2011は、被削性に非常に優れており、工具寿命が長く、加工時間も短いため、総合的な製造コストはA2011の方が圧倒的に低く抑えられます。

適用範囲の違いと材料選定のポイント

項目 A2011 A7075
引張強さ ○ 約330~390MPa ◎ 約540~570MPa
被削性 ◎ 極めて良好 △ やや難しい
耐衝撃性 △ 低め ◎ 高い
耐疲労性 △ 低い ◎ 優秀
溶接性 × 不可 × 不可
耐食性 △ 表面処理必要 △ 不十分(白点腐食に注意)
コスト ◎ 安価 × 高価
主な用途 精密小型部品、ネジ、スペーサー 航空・自動車・構造部材、高荷重部品

両者ともに「高性能素材」として見られることが多いですが、そのベクトルは大きく異なります。
A2011は「加工効率と精度を極限まで追求する素材」、A7075は「軽くて強い究極のアルミ構造材」として位置付けられます。
たとえば、電子機器の内部に用いられるネジやコネクタ部品にはA2011が適していますが、航空機のフレームやロードバイクのフレームなどにはA7075が選ばれます。
選定の際は、求められる強度・コスト・加工方法を冷静に分析し、最適な材料を選ぶことが不可欠です。

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【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
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