072-808-5555 電話でお問い合わせ
LINEでお問い合わせ

試作人基礎講座

公開日: | 更新日: | 試作人基礎講座

軽量化×量産の定番合金 ― ADC12がもたらす“形になる革新”

現代の製造現場において、「軽く、強く、そして確実に量産できる」素材を探すことは、まさに技術革新とコスト競争の狭間に立つ命題です。
そんな中、ADC12は、アルミニウム・シリコン・銅(Al-Si-Cu)系合金の代表格として、鋳造性・機械的強度・寸法安定性・コスト性能という複数の重要要素を高い次元で両立します。
つまり、複雑な形状を高精度に量産するダイカスト部品の世界で、「まず検討すべき材料」として確固たる地位を築いてきたのです。
本稿では、まずADC12の定義と特徴を明らかにし、その上で細部設計や加工・用途展開へと視野を広げていきます。
なぜこの合金が“軽さ”と“量産性”を両立する鍵となるのかを、材料設計の根底からひも解いていきましょう。

ADC12とは

ADC12は、日本工業規格(JIS H 5302)に定められたアルミニウム合金ダイカスト材の中でも最も代表的な材料の一つです。
主成分はアルミニウム(Al)であり、これにシリコン(Si)や銅(Cu)を加えたAl-Si-Cu系合金に分類されます。
特に、シリコンを約10〜12%、銅を約1〜3%含むことで、優れた鋳造性・機械的強度・耐摩耗性・寸法安定性を兼ね備えている点が特徴です。
これらの特性バランスの良さから、ADC12は自動車、電機、精密機械など、あらゆる分野で最も広く使用されているアルミダイカスト材料となっています。
ダイカスト(Die Casting)とは、溶融金属を高圧で金型に注入して成形する鋳造法の一種です。
この製法では、金型の複雑な形状を高い寸法精度で再現でき、大量生産にも適しています。
しかし、溶湯の充填性や凝固収縮の影響を受けやすく、材料には流動性・鋳造性・強度のバランスが求められます。
ADC12はこれらの要求に最も適した組成を持ち、薄肉・複雑形状の部品でも高い成形精度を実現できます。
また、ADC12は鋳造後の機械加工性にも優れており、切削やタップ加工が容易です。
そのため、ダイカスト後に追加加工が必要な構造部品にも多く採用されています。
さらに、溶解温度が比較的低く、金型の寿命を延ばしやすいという点も、生産現場で重視されるメリットの一つです。
加えて、材料コストが安価でリサイクル性にも優れることから、環境負荷の低減にも寄与しています。
一方で、ADC12にはいくつかの注意点も存在します。
例えば、延性や靭性が低く、衝撃や塑性変形を伴う用途には適していません。
また、耐食性は純アルミやマグネシウム合金に比べて劣るため、屋外環境や海水環境下で使用する場合には塗装や表面処理(アルマイト・クロメートなど)が必要です。
さらに、熱膨張率が比較的大きいため、高温環境下では寸法変化を考慮する必要があります。
総じて、ADC12は「鋳造性と機械的強度のバランスが最も取れた標準的ダイカスト材」と評価されており、鋳造部品設計の基本素材として世界的に定着しています。
自動車のトランスミッションケース、エンジンハウジング、電子機器の筐体、産業機械の構造部品など、軽量化・量産化が求められるあらゆる分野において、その存在は欠かせません。

ADC12が広く用いられる理由と歴史的背景

ADC12がこれほどまでに幅広い分野で採用されているのは、その材料特性のバランスの良さと、ダイカスト産業の発展とともに最適化されてきた歴史的背景によるものです。
アルミニウム合金ダイカストが産業的に普及し始めたのは20世紀中頃で、当初は主に家電部品や小型機械部品が中心でした。
軽量で加工性の高いアルミニウムは、鋳鉄や黄銅などに代わる新素材として注目されましたが、当時の材料では鋳造性や寸法精度、強度にばらつきがあり、安定した量産が難しいという課題がありました。
その中で登場したのが、アルミニウム・シリコン・銅系合金(Al-Si-Cu系)の代表格であるADC12です。
シリコンを高濃度に含有することで、鋳造時の流動性を格段に向上させ、複雑形状でも欠陥の少ない成形が可能となりました。
また、銅の添加により機械的強度や耐熱性も確保され、エンジンやトランスミッションなどの高温環境下で使用される自動車部品にも適用できるようになりました。
これにより、ADC12はダイカスト業界の「標準合金」として確立し、JIS規格にも早期に登録されました。
1970年代以降、自動車産業が軽量化を進める中で、ADC12の需要は飛躍的に増加しました。
鉄や鋼からアルミへの材料転換が進むなかで、ADC12は強度・鋳造性・コストの三拍子がそろった素材として重宝されました。
例えば、エンジンハウジング、クラッチケース、ホイールキャップ、オルタネーターハウジングなど、多くの主要部品がADC12製へと置き換えられていきました。
さらに、電機・電子分野でもADC12の特性は高く評価されました。
アルミは電磁波遮蔽性に優れており、複雑な筐体形状にも対応できるため、ノートパソコンの筐体や通信機器のフレームなどにも使用されています。
近年では、EV(電気自動車)やロボティクスの軽量構造部品としても採用が拡大しており、環境性能の向上やエネルギー効率化にも貢献しています。
こうした背景の裏には、ダイカスト技術そのものの進化もあります。
金型精度の向上、真空ダイカストやスクイズダイカストの導入などにより、ADC12の性能を最大限に引き出せる製造技術が確立されました。
つまり、ADC12は単なる「材料」ではなく、ダイカスト産業全体の技術進化を支えた基幹合金としての役割を担ってきたのです。
現在でも、ADC12は「迷ったらまずこれ」と言われるほどの信頼性を持つ標準材です。
新たな高強度・高耐食合金が登場しても、ADC12のようにコストと生産性のバランスを取れる材料は限られており、その地位は揺るぎません。

化学成分と特徴的な性質

ADC12の化学成分と役割

ADC12は、アルミニウムを主成分とするAl-Si-Cu系合金であり、その代表的な組成は以下の通りです。

成分 含有量(%) 主な役割
Si(シリコン) 9.6〜12.0 鋳造性・耐摩耗性・寸法安定性の向上
Cu(銅) 1.5〜3.5 強度・硬度・耐熱性の向上
Fe(鉄) 1.3以下 金型との溶着防止、組織安定化
Mn(マンガン) 0.5以下 Feの悪影響緩和、靭性の補強
Mg(マグネシウム) 0.3以下 析出硬化、強度向上
Zn(亜鉛) 1.0以下 鋳造性補助、耐食性の微調整
Al(アルミニウム) 残部 軽量性・導電性・耐食性の基盤

ADC12イメージ

このように、ADC12は複数の元素をバランス良く組み合わせることで、鋳造性・強度・加工性・コストの最適バランスを実現しています。
まず、最も重要な元素がシリコン(Si)です。
Siは溶融アルミの流動性を大幅に向上させ、金型の隅々まで均一に充填することを可能にします。
これにより、薄肉・複雑形状の鋳造品を高精度で製造できるのです。
また、Siは凝固時の体積収縮を小さくし、鋳造後の寸法安定性を高めます。
さらに、Siは硬度を上げるため、摺動部品や耐摩耗性が求められる用途にも適しています。
次に銅(Cu)は、ADC12の強度と硬度を高める主要元素です。
Cuを添加すると析出硬化が起こり、引張強さや疲労強度が向上します。
そのため、高温下や負荷の大きい自動車部品にも使用可能になります。
ただし、Cuを過剰に添加すると耐食性が低下するため、1.5〜3.5%の範囲に厳密に制御されています。
この絶妙なバランスが、ADC12の“実用強度と耐久性”を支えています。
鉄(Fe)*、ダイカスト金型との溶着(ソルダリング)を防ぐために不可欠です。
溶融アルミは鉄を侵す傾向があるため、Feを適量添加することで金型表面への付着を防ぎ、金型寿命を延ばします。
ただし、Feが多すぎると脆い金属間化合物(Al-Fe-Si系)が形成され、靭性や延性が低下するため、1.0〜1.3%程度に調整されています。
マンガン(Mn)はFeと結合して複雑な化合物を形成し、Feの悪影響を抑制します。
さらに、組織を微細化して強度と靭性を補強します。
マグネシウム(Mg)は析出硬化を促進し、強度と耐熱性をわずかに向上させますが、過剰に添加すると鋳造割れが生じやすくなるため、0.3%以下に抑えられます。
亜鉛(Zn)は寸法安定性を補助し、耐食性をわずかに改善する調整的な成分です。
このように、ADC12の化学組成は、「量産性・寸法精度・強度・経済性」を最大化するための最適設計といえます。
その完成度の高さから、JISのみならず国際規格(ISO、ASTM、EN)にも相当する合金が存在し、世界中で標準ダイカスト材として採用されています。

ADC12の機械的特性と物理的性質

ADC12は、アルミニウム合金の中でも特にダイカスト用として標準的に用いられる材料であり、優れた鋳造性とバランスの取れた機械的特性を兼ね備えています。
そのため、自動車部品や電機製品の筐体など、強度・寸法精度・生産性が求められる場面で幅広く利用されています。
ここでは、ADC12の機械的および物理的特性について詳しく解説します。
まず機械的性質の代表値として、引張強さ(Tensile Strength)は約310 MPa、耐力は約160 MPa、伸びは約1%前後です。
これらの値は、ダイカスト材としては比較的高い強度を示す一方、延性が低いことを意味しています。
これは、鋳造過程で微細な気孔や偏析が発生しやすいことに起因しており、ADC12が「強いがやや脆い」性質を持つ理由の一つです。
そのため、衝撃荷重を受ける用途には不向きですが、静的荷重や剛性が重要な部品には非常に適しています。
また、ブリネル硬さは約80〜100 HBであり、比較的硬質な材料に分類されます。
この硬さは、シリコンや銅の含有によって実現されており、摩耗しにくく、表面の擦過抵抗にも強いという利点を持ちます。
そのため、ギヤケースやモーターハウジングなど、回転部品を支持する部品にも使用されます。
さらに、ADC12の比重は約2.74、融点は約577℃で、軽量かつ熱に対して安定しています。
鉄鋼材料(比重7.8前後)に比べて約3分の1の重さであり、軽量化が求められる分野では特に有利です。
また、熱伝導率は約96 W/m・Kと高く、放熱性にも優れるため、LED照明筐体やエンジン周辺部品など、熱を効率的に逃がす必要がある用途に最適です。
一方で、ADC12の線膨張係数は約21×10⁻⁶/Kと比較的大きく、温度変化によって寸法が変化しやすいという特徴もあります。
設計段階では、組み合わせる材料との膨張差を考慮する必要があります。
また、電気伝導率は約23〜26% IACSと、純アルミに比べて低いものの、実用的な導電性を持っています。
これらの物理的性質と機械的特性のバランスによって、ADC12は「軽くて強い」「熱にも強い」「量産に適した」万能合金としての地位を確立しています。
機械加工性や寸法安定性も良好であり、ダイカスト成形後の後加工も容易です。
結果として、コストと性能のバランスに優れるADC12は、他のアルミ合金よりも総合的な使い勝手に優れた実用金属材料といえます。

ADC12の耐食性と表面処理適性

ADC12はアルミニウムを主成分とするため、基本的には自然酸化皮膜による耐食性を備えています。
しかし、その耐食性能は純アルミや耐食性合金(例:A5052、A6063など)に比べるとやや劣ります。
これは、ADC12に含まれる銅(Cu)や鉄(Fe)といった不均一な組織成分が、腐食の電位差を生み出し、局部腐食(ピッティング)やガルバニック腐食を引き起こしやすいためです。
特に、湿気や塩分を含む環境下では腐食進行が早くなる傾向があります。
ただし、ダイカスト成形によって形成されるADC12の表面は非常に緻密で、鋳造欠陥が少ない場合には、空気中で自然酸化皮膜が速やかに形成されるため、日常的な環境下では十分な耐食性を発揮します。
この酸化皮膜(Al₂O₃)は数ナノメートル程度の薄い膜でありながら、内部への酸素や水分の侵入を防ぎ、表面を保護する働きを持っています。
さらに、耐食性を向上させるためには、各種表面処理が有効です。
代表的なものとしては、以下のような処理方法があります。

・アルマイト処理(陽極酸化)

アルマイト処理はアルミの表面に厚い酸化皮膜を人工的に形成する方法です。
しかしADC12の場合、含有するSiやCuが酸化皮膜の生成を妨げるため、A5052などの展伸材と比べて皮膜の均一性や外観の美しさに欠けるという課題があります。
そのため、装飾目的よりも防食・絶縁目的で採用されることが多く、硬質アルマイト処理よりも化成皮膜処理や塗装との併用が一般的です。

・クロメート処理・三価クロメート処理

鋳肌をそのまま活かしたまま耐食性を付与したい場合、クロメート処理が有効です。
特に近年では環境対応の観点から、六価クロムを使用しない三価クロメート処理が主流になっています。
この処理により、鋳肌のままでも耐湿性・防錆性を確保でき、自動車のハウジング部品などで広く用いられています。

・塗装・粉体塗装

ADC12は塗料との密着性が比較的良好であり、プライマー処理を行うことで長期耐久性を確保できます。
エポキシ系やポリエステル系の粉体塗装は、屋外機器・照明筐体などに採用される代表的な方法です。
塗膜が物理的にも化学的にもバリアとなり、耐食性を飛躍的に向上させます。

・めっき処理(ニッケルめっき・クロムめっきなど)

機能性と装飾性を両立させる場合、めっき処理も選択肢となります。
ADC12の表面はSiが露出しているため、めっき前処理にジンケート処理などの下地処理を施す必要があります。
これにより密着性が向上し、耐食性だけでなく、導電性や反射性の改善にも寄与します。

このように、ADC12はそのままでも一定の耐食性を有しつつ、環境や用途に合わせた表面処理で性能を大きく向上できる点が特徴です。
とくに、電装品筐体やエンジン周辺部品のように湿熱環境に晒される場合には、化成処理+塗装、またはクロメート処理+シール剤といった多層防食構造が採用されます。
総じて、ADC12の耐食性は「環境条件によって変化する性能」と言えます。
設計段階で適切な表面処理を選定することで、軽量・高精度・耐久性を兼ね備えたアルミ鋳造部品として長期信頼性を確保することが可能になります。

ADC12の加工性と鋳造性

ADC12のダイカスト特性と鋳造性の高さ

ADC12は、日本のJIS規格で定められた代表的なアルミニウムダイカスト用合金であり、その優れた鋳造性と加工性の高さから「ダイカストの標準材」として広く利用されています。
自動車部品、家電筐体、情報機器のフレームなど、複雑形状かつ大量生産が求められる製品では、ADC12が最も多く採用されているといっても過言ではありません。
その理由は、化学成分の絶妙なバランスによって得られる流動性・離型性・寸法安定性の高さにあります。
まず、ADC12の主成分はアルミニウム(Al)ですが、これにシリコン(Si:約9〜11%)と銅(Cu:約1.5〜3%)を加えることで、鋳造性と機械的強度が飛躍的に向上しています。
シリコンは溶湯の流動性を高める役割を持ち、溶けた金属が金型の隅々まで均一に行き渡ることを助けます。
これにより、薄肉・複雑形状・細部の再現性に優れた鋳造品が得られます。
さらにシリコンの添加によって凝固収縮が減少するため、引け巣や割れの発生を抑制できる点も大きな利点です。
一方で、銅の添加は機械的強度を高めるとともに、被削性(削りやすさ)を改善します。
ダイカスト部品では、鋳造後にタップ加工や面削などの二次加工が必要になることが多いため、切削性の良さも重要な特性です。
ADC12はこの点でも優れており、金型から取り出したままの状態でも寸法精度が高く、最小限の加工で製品化できるというメリットを持ちます。
また、ADC12はダイカスト工程において離型性(型離れの良さ)が非常に良好です。
これは合金中のSiとCuが適度に金型との反応を抑えるためであり、金型寿命の延長にもつながります。
さらに、鋳造時の湯回り性の良さと気泡欠陥の少なさにより、鋳肌が滑らかで美しい外観を得やすく、表面処理や塗装との相性も良好です。
ADC12のもう一つの大きな特徴は、寸法安定性の高さです。
凝固時の体積変化が小さいため、冷却後も変形や歪みが少なく、高い寸法精度が要求されるダイカスト部品に適しています。
自動車のトランスミッションケースやエンジンブラケット、電子機器のヒートシンクなど、0.1mm単位の精度が求められる用途でも安定した品質を確保できます。
加えて、ADC12は熱処理を必要としないダイカスト材という点も生産上の大きな利点です。
一般的な鋳造用アルミ合金(AC4Cなど)はT6処理などの熱処理で強度を得ますが、ADC12は鋳造のままで実用強度を確保できるため、コスト削減と生産効率の向上を同時に実現します。
この特性により、年間数十万個単位で製造される部品にも適用しやすく、量産効果を最大限に発揮できます。
総じて、ADC12は「流動性が高く、鋳造しやすく、加工もしやすい」という、ダイカスト向け材料に求められる要素をすべて兼ね備えています。
その結果、他のアルミ合金に比べて欠陥発生率が低く、コストパフォーマンスに優れることから、ダイカスト業界では「まずADC12を検討するのが基本」とまで言われています。
まさに、実用性と経済性を両立した万能な鋳造用アルミ合金です。

鋳造欠陥の傾向と対策

鋳造は金属を溶解して型に流し込み、冷却・凝固させて製品形状を得る工程ですが、工程特有の物理・化学的条件により多くの欠陥が発生する可能性があります。
鋳造欠陥は製品の機械的特性や外観、寸法精度に直接影響するため、その傾向と対策を理解することは高品質製品を得るうえで不可欠です。
代表的な欠陥には気孔、巣(空洞)、ひけ(収縮孔)、割れ、表面粗さ不良、偏析などが挙げられます。

1. 気孔・ガス欠陥

気孔は金属内部に小さな空隙が形成される現象で、鋳造中の溶融金属に含まれるガス(空気、酸素、水素など)が原因です。
特にADC12などアルミニウム合金では水素ガスの溶解度が高く、冷却中の放出により微細気孔が生じやすい傾向があります。
対策としては、溶湯の脱ガス処理、鋳型通気の改善、湯温や注湯速度の最適化が有効です。
また、金型鋳造では型内圧を調整してガス逃げ道を確保することも重要です。

2. ひけ・収縮孔

鋳造金属は凝固・冷却時に体積が収縮するため、内部に空洞が生じることがあります。
特に厚肉部や急冷部では収縮孔が発生しやすく、製品強度や耐圧性に影響します。
対策としては、適切なフィーダー(補給溶湯)の配置、冷却速度の均一化、肉厚の設計最適化などが挙げられます。
また、複雑形状では多段注湯や補助加熱を用いて凝固パターンを制御する方法も有効です。

3. 割れ・ひずみ

鋳造金属は冷却過程で熱応力が生じ、割れや変形を引き起こすことがあります。
特に急冷や厚肉と薄肉の急激な温度差が存在する場合に顕著です。
対策としては、型温や湯温の管理、均一な肉厚設計、熱処理による応力緩和が有効です。
また、ADC12などのアルミニウム合金では溶湯温度が高すぎると割れが起きやすいため、適正温度範囲内での注湯が重要です。

4. 表面不良・偏析

表面粗さやスキン欠陥は金型の摩耗や砂型の質、注湯条件に影響されます。
偏析は合金成分が不均一に固化する現象で、機械的性質のばらつきの原因になります。
対策としては、型の表面処理、溶湯攪拌、適切な冷却制御が有効です。
総じて、鋳造欠陥の傾向は材料特性、型設計、注湯条件、冷却条件など多くの要因が複合的に影響します。
そのため、欠陥発生のパターンを把握し、工程ごとに原因を分析して対策を講じることが不可欠です。
近年ではCAE解析による凝固シミュレーションも活用され、事前に欠陥発生リスクを予測して型設計や注湯条件を最適化する取り組みも進んでいます。
こうした統合的な管理により、鋳造製品の品質安定化と生産効率の向上が期待できます。

主な用途と実用例

自動車

自動車部品への応用

現代の自動車産業において、材料選定は車両性能、燃費、安全性、耐久性に直結する非常に重要な要素です。
特に軽量化と強度の両立が求められる箇所では、鋳造アルミ合金や特殊鋼材などの使用が広がっています。
例えばエンジン周りの部品やトランスミッションケース、サスペンション部品などでは、軽量かつ高い機械的強度を持つ合金が採用されることが多く、これにより車両全体の燃費改善や走行性能向上が可能になります。
さらに、衝撃吸収や振動対策が求められるボディ部品やシャシーでは、耐衝撃性や疲労強度に優れた金属材料が不可欠です。
近年では、複雑形状のダイカスト部品を用いることで、部品数を減らして組み立て工程を効率化するとともに、車両の総重量削減にも寄与しています。
また、熱伝導性が重要なエンジンや電子制御モジュール周りの部品では、適切な合金を選ぶことで冷却効率や耐熱性を確保し、長期的な信頼性を向上させることができます。
このように、自動車部品への応用では、材料の物理的特性、加工性、コストバランスを総合的に判断したうえで最適な合金が選定されており、近年は電動化や自動運転技術の発展に伴い、さらに多様な要求に対応できる材料開発が進んでいます。

電機・機械分野での利用

電機・機械分野においては、耐熱性、耐摩耗性、電気・熱伝導性、加工性など、材料に求められる性能が多岐にわたります。
例えば精密機械や家電製品、産業用機械の構造部品では、寸法安定性や機械的強度が重視されるため、特定のアルミ合金やステンレス鋼材が広く利用されています。
これにより長期使用における形状変化や摩耗を抑え、製品寿命を延ばすことが可能です。
また、電気・電子部品向けでは、放熱性や電気絶縁性も重要な要素です。
ヒートシンクやモーターハウジング、スイッチング部品などには熱伝導性の高い金属材料が用いられ、効率的な熱管理により電子部品の性能維持と安全性向上に寄与しています。
さらに、工作機械や精密機械部品においては、加工性や表面仕上げの品質が重要です。
ダイカストや精密加工によって複雑形状を一体成型することで、組立工程を簡略化し、精度を確保することができます。
加えて、機械分野では耐摩耗性や耐腐食性も重視されます。
例えば潤滑部品やベアリング、歯車などでは、摩擦や腐食による性能低下を防ぐために、表面処理や適切な材料選定が不可欠です。
このように、電機・機械分野での材料活用は、製品の信頼性、効率、長寿命化に直結しており、各分野の要求性能に応じた最適設計が求められています。

試作全国対応!
簡単・最短1時間お見積り

アスクならこんなお困りごとを解決します!

  • 他社では納期が間に合わないと言われた
  • 急な設計変更があった
  • 他社ではできないと言われた
  • 海外調達品の手直し・追加工
今すぐ無料でお見積りを依頼する

もっとアスクの事を知りたい!という方は
こちらもご覧ください!

株式会社アスク

【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
知っているようで知らない加工に関する知識をお届けします!

他、ブログ記事もご覧ください♪

動画の投稿もしておりますので良ければご覧ください♪