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試作人基礎講座

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アルミニウム青銅とは:高機能銅合金の基本特性と産業応用

アルミニウム青銅は、銅を母材にアルミニウムを主成分として添加した高機能銅合金の一種であり、耐食性・耐摩耗性・高強度・耐熱性を同時に兼ね備えた材料として広く利用されています。
この合金は5〜12%程度のアルミニウムを含有し、その独自の組成により緻密な酸化皮膜(Al₂O₃)を形成することで腐食環境に対して強い耐性を示すとともに、金属間化合物の生成によって機械的強度や靭性が向上します。
本稿では、アルミニウム青銅の基本的な定義、代表的な特性、そして用途の広がりについて解説します。
これにより、設計・材料選定・製造プロセスにおける理解を深めることを目的としています。

アルミニウム青銅とは

アルミニウム青銅(Aluminum Bronze)は、主成分である銅(Cu)に対して約5〜12%程度のアルミニウム(Al)を添加した銅合金であり、さらにニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)などを微量添加することで特性を最適化できる高機能合金群である。
一般的な銅合金の中でも機械的強度・耐食性・耐摩耗性のバランスに優れ、特に腐食環境下での信頼性が求められる分野で広く採用されている。
添加されたアルミニウムは、銅との固溶体形成により強度を高めるだけでなく、表面に安定なアルミナ(Al₂O₃)保護皮膜を生成する。
この皮膜は海水・淡水・多くの化学薬品に対して高い耐食性を示し、鉄鋼材料や他の銅合金では腐食が進行しやすい環境でも優れた耐久性を発揮する。
また、アルミニウム青銅は耐熱性にも優れ、摺動部品のように温度上昇が避けられない用途でも寸法安定性を保つことができる。
さらに高い弾性率と強靭性を備えているため、軸受、ギア、ポンプ部品などの高荷重部品にも用いられる。
非磁性材料である点も特筆すべき特徴で、医療機器周辺や磁気干渉が問題となる設備での部品材料としても適している。
電気伝導率は純銅より低いものの、構造材としての性能を重視する用途では十分な値を有している。
総じて、アルミニウム青銅は「高強度」「耐食性」「耐摩耗性」「耐熱性」「非磁性」という複数の要求特性を同時に満たすため、他の銅合金やステンレス鋼に対する優位性を発揮する場面が極めて多い。
この多機能性こそが、航空機部品、海洋設備、エネルギープラント、産業機械など幅広い分野で選定され続ける理由であると言える。

化学成分と組織構造

アルミニウム青銅の主成分は銅(Cu)とアルミニウム(Al)であるが、その比率や添加元素の有無によって合金の組織構造と特性は大きく変化する。
一般的に5〜12%のアルミニウムを含有し、アルミニウム量が増加するほど強度は高くなる。
一方、12%を超えるとβ相が増え靭性が低下しやすくなるため、強度と加工性のバランスを考慮して適切な組成が選択される。
組織的には、α相(固溶体)とβ相(高温相)の割合が特性を決定づける。
α相は靭性と耐食性を担い、β相は強度を向上させる。
一部の高強度グレードでは、熱処理によってβ相をマルテンサイト状に変化させ、さらなる機械的強度を得ることもできる。
また、ニッケル(Ni)は耐食性と高温強度を、鉄(Fe)は強度と耐摩耗性を向上させる効果があり、海水用途ではこれらの添加が必須とされる。
組織構造の最大の利点は、表面に自然に生成される緻密なアルミナ皮膜である。
これはステンレス鋼のクロム酸化皮膜と同様に安定性が高く、酸化や腐食の進行を抑制する。
また、アルミナ皮膜は自己修復性を持ち、機械的に傷ついた場合でも周囲の酸素と反応して再形成されるため、長期的な耐久性が確保される。
このように、アルミニウム青銅の成分設計は単なる「銅にアルミを加えただけの合金」ではなく、精緻な材料工学的アプローチに基づいて特性を最適化した結果である。
組織制御と添加元素の効果を理解することは、製造条件の最適化、使用環境に応じたグレード選定、さらには寿命予測にも関わるため極めて重要である。

代表的な規格と種類

アルミニウム青銅は国際的に規格化されており、JIS・ASTM・ISOなど多くの規格で詳細に分類されている。
日本ではJIS H 5111、H 5120などで鋳造材・鍛造材が規定されており、代表的な材料としてC6191、C6241、C6301などが挙げられる。
中でもC6301(ニッケルアルミ青銅)は海水耐食性に優れるため、海洋関連設備の標準材料として広く採用されている。
ASTM規格では、B148やB150により合金組成や機械的性質が定められている。
特にC95500、C95800などの合金は国際的に使用実績が多く、バルブ、ポンプ、船舶用部材で高い信頼性を得ている。
種類により、耐摩耗性重視型、耐食性重視型、高強度型など用途別に特徴が分かれており、適切な材料選定が重要となる。
また、加工形態によっても分類される。鋳造材は複雑形状に対応し、高い耐食性を持つ点が利点で、一方で鍛造材は靭性と強度に優れるため高荷重部品に適している。
さらに近年では、特殊熱処理により強度を向上させた高強度タイプや、摺動性を高めた改良型など、産業ニーズに応じて多様なバリエーションが開発されている。
規格と種類の把握は、設計者・調達担当者・加工業者にとって極めて重要である。
用途環境、求められる強度、腐食要因、加工性などを総合的に評価し、最適なグレードを選定することで、製品の信頼性と寿命を大きく左右する。
アルミニウム青銅は単一の材料ではなく、「用途特化型の合金群」であるという理解が正しい。

アルミニウム青銅の主要特性

青銅のイメージ

機械的強度と靭性

アルミニウム青銅が幅広い産業分野で高評価を得ている最も大きな理由のひとつが、銅合金としては特筆すべき高い機械的強度と優れた靭性である。
通常、銅合金は加工性に優れるものの強度に乏しいというイメージを持たれることが多いが、本材は5〜12%のアルミニウム添加により固溶強化が進み、さらにニッケルや鉄の微量添加によって強靭性が大幅に改善されている。
特に鍛造タイプのアルミニウム青銅では、引張強さ700〜900MPa級に達するグレードも存在し、一般構造用鋼材を凌駕する強度を発揮する場合もある。
強度の根幹を支えているのは、α相とβ相の混合組織である。
α相は延性と靭性に富み、耐衝撃性を確保する。
一方、β相は高温で安定な相であり、適切な熱処理によりマルテンサイト様組織に変態することでさらなる強度向上が可能となる。
これらの組織制御により、アルミニウム青銅は強度と靭性を両立させた材料設計を実現している。
この点は、銅合金でも高強度タイプとして知られるベリリウム銅とは異なり、毒性を含む元素を使用しないという安全性の高さも産業界で支持される理由である。
荷重を受ける回転部品、ポンプのインペラ、ギア、軸受部材など、金属材料として高い強度と衝撃抵抗が求められる用途において、本材の採用実績は極めて豊富である。
また、落下衝撃や振動が頻発する産業機械では、単純な静的強度よりも衝撃靭性や繰返し荷重に対する疲労強度が重要視されるが、アルミニウム青銅はこのような要求にも良好に応える。
これは靭性の高さに起因するものであり、破断に至るまでの塑性変形能力が高いため、過負荷や異常荷重に対して安全余裕が確保される構造となっている。
さらに、金属疲労に対しても高い耐性を示す。
特に鉄添加型のC63200やニッケル含有型のC63000では、疲労限が高く、長期の繰返し応力にさらされる機械部品に適している。
これらの性能は海洋設備、製造装置、エネルギープラントなど長期信頼性が重視される分野で高く評価されており、ステンレス鋼や鉄鋼材からの置換も進んでいる。
以上のように、アルミニウム青銅は単なる銅合金の枠を超え、強度と靭性の両立を実現した、高性能構造材料としての地位を確立している。
その特性は材料設計・機器信頼性設計において非常に有用であり、高負荷環境下での長寿命化に大きく貢献する素材である。

耐食性と海水環境での耐久性

アルミニウム青銅は、数ある銅合金の中でも特に海水耐食性に優れる合金として知られている。
この圧倒的な耐食性を生み出しているのが、表面に形成される緻密なアルミナ(Al₂O₃)保護皮膜である。アルミナ皮膜は海水中の塩分、酸素、硫黄化合物に対して極めて安定であり、一度形成されると腐食反応を大幅に抑制する。
また、この皮膜は自己修復性を持つため、擦過傷や摩耗で表面が露出しても再び酸化皮膜が形成され、長期的な耐久性が確保される。
海洋環境には、一般的な金属材料にとって非常に厳しく、塩化物による孔食、応力腐食割れ(SCC)、局部腐食、生物付着による腐食促進など、多様な腐食因子が存在する。
特にステンレス鋼では塩化物環境で孔食が発生しやすいが、アルミニウム青銅はこの点で優位性を発揮する。
アルミナ皮膜は塩化物イオンに対して耐性が高く、局部腐食の進行を阻止する。
また、SCCに対しても比較的強く、荷重のかかる部材でも安定した耐久性を保つ。
さらに、海水流動環境での耐キャビテーション性にも優れる。
ポンプのインペラ、船舶のプロペラ、海水ポンプ部品では、気泡の崩壊による表面損傷が問題となるが、アルミニウム青銅は硬度・靭性が高いため、キャビテーション侵食を受けにくい。
特にニッケルアルミ青銅(C63000、C95500など)は海水用途における標準材として各国海軍、造船業、海洋プラントで広く採用されている。
また、生物汚染(バイオファウリング)抑制効果がある点も大きな利点である。
銅合金特有の抗菌性により、海洋生物の付着を抑える効果が期待できるため、熱交換器、水路、海水配管などで性能低下を防止できる。
この特性はメンテナンスコスト削減にも寄与するため、長期間使用される設備ほど価値が高い。
以上のように、アルミニウム青銅の耐食性能は、海洋環境、化学薬品環境、湿潤環境といった腐食が懸念される条件下で極めて信頼性が高い。
ステンレス鋼では腐食リスクが残る場面や、鉄鋼材では耐久性が不足する用途において、本材は最適な選択肢となる。

耐摩耗性・耐キャビテーション性

アルミニウム青銅は、銅合金の中でも特に耐摩耗性に優れた材料として評価されている。
その理由は、素材内部に形成される均質なα+β混合組織、および鉄・ニッケルといった添加元素によって強化された高硬度組織にある。
これにより、スライディング摩耗、アブレッシブ摩耗、接触疲労を伴う摩耗など、多様な摩耗形態に対して高い耐性を示す。
特に荷重の大きい摺動部品、ギア、ベアリングライナーなどでは、摩耗による寸法変化が少なく、長寿命化を実現できる点が高く評価されている。
耐摩耗性が必要な材料は一般に高硬度材料が選ばれる傾向にあるが、アルミニウム青銅は硬度だけでなく靭性も備えている点が重要である。
硬度が高くても靭性が低い材料は、衝撃を受けた際にチッピングや割れが生じる可能性があるが、本材は塑性変形能力が高いため、摩耗を伴う衝撃環境でも安定した性能を発揮する。
この特性は、建設機械やプレス機器の部品など、繰り返し衝撃荷重がかかる用途で特に重要である。
さらに、アルミニウム青銅の大きな特徴としてキャビテーション侵食への強さが挙げられる。
キャビテーションとは、液体中の気泡が崩壊する際に局所的な高圧が発生し、金属表面を破壊する現象である。
ポンプやバルブ、船舶プロペラなど流体機器において発生しやすく、材料にとって非常に過酷なダメージを与える。
アルミニウム青銅は高い硬度と靭性のバランスにより、このキャビテーション侵食に強く、実機環境での実績も豊富である。
特に海水ポンプではステンレス鋼を凌ぐ耐キャビテーション性を発揮するケースも多く、海洋プラントでは標準的な選定材料となっている。
また、表面処理との相性も良好で、熱処理による硬度向上や、ショットピーニングによる表面強化が容易である。
これにより、摩耗の厳しいトライボロジー領域においても最適化が可能となり、過酷な使用条件でも安定した性能を確保できる。
総じて、アルミニウム青銅は「摩耗・衝撃・流体侵食」という複雑な要因が重なる環境で最も威力を発揮する素材であり、耐久性と信頼性を同時に求められる機械装置にとって極めて有用な材料である。

アルミニウム青銅の加工性

鋳造性と鋳造時の注意点

アルミニウム青銅は、銅合金の中でも比較的鋳造性に優れる材料であり、鋳物として重要な産業資材のひとつである。
特に海水ポンプ、バルブ、プロペラ、産業機械部品など、鋳造によって複雑形状を効率的に製造する用途で高い適性を示す。
ただし、鋳造性に優れるとはいえ、アルミニウム含有量が高いことに起因する特有の挙動が存在するため、適切なプロセス管理が不可欠である。
まず、アルミニウム青銅は溶湯の酸素親和性が高く、溶解時に酸化物が生成しやすい。
特に溶湯表面に形成される酸化皮膜は、鋳込み時に巻き込まれると欠陥の原因となるため、溶解炉内でのスラグ管理、適切なフラックスの使用、溶湯表面の清浄化が必須となる。
加えて、溶湯の温度管理も重要であり、過熱しすぎると酸化が増え、過少だと流動性不足を招く。
一般に1100〜1200℃程度が鋳込み温度の基準とされる。
また、アルミニウム青銅は凝固収縮が比較的大きい材料であるため、適切な押湯設計が不可欠となる。
収縮孔の発生を防ぐためには、肉厚部に押湯を設け、凝固の順序を制御する必要がある。
さらに、冷却速度によって組織が大きく変化する点も特徴で、急冷するとβ相が多く残存し硬度が高くなる一方、緩冷するとα相主体となり靭性が向上する。
このため、製品仕様に応じた鋳型材料の選定や冷却条件の設定が品質に直結する。
さらに注意すべき点として、アルミニウム青銅はガス巻き込みによるピンホール欠陥が発生しやすい傾向がある。
水素吸収に敏感な特性を持つため、溶湯の脱ガス処理が欠かせない。
一般に窒素吹き込みや真空脱ガスが用いられ、鋳造欠陥の抑制に大きく寄与する。
また、鋳造後の熱処理も重要である。
鋳造状態では内部応力が残りやすく、機械加工時に歪みが発生する場合があるため、通常は応力除去焼鈍が行われる。
以上のように、アルミニウム青銅は鋳造性に優れた材料である一方、アルミニウム特有の酸化、ガス吸収、収縮挙動を踏まえたプロセス管理が必要となる。
適切な溶解・鋳込み技術、押湯設計、脱ガス、冷却制御を組み合わせることで、高信頼性の鋳物製品を安定して製造できる点が、本材の大きな利点であり、多様な産業においてその利用価値は極めて高い。

熱処理方法と組織制御

青銅のイメージ

アルミニウム青銅は、熱処理によって機械的性質を大きく変化させることができる合金であり、組織制御を適切に行うことで強度、硬度、靭性、耐摩耗性などの特性を最適化できる点が重要である。
一般的な銅合金に比べて熱処理の効果が大きく、鋳造材・鍛造材いずれにおいても熱処理は性能設計の中核をなす。
アルミニウム青銅の組織は主にα相、β相、κ相(各種金属間化合物)から構成される。
α相は延性に富む固溶体であり、靭性確保に寄与する。
一方、β相は高温領域で安定し、冷却過程で変態することで硬度・強度の向上につながる。
また、鉄やニッケルの添加によって形成されるκ相は、耐摩耗性や硬さを高める効果がある。
熱処理の基本は、まず溶体化処理(ソリューション処理)である。
一般に900〜950℃程度で加熱し、α相およびβ相を均質化させる。
その後、急冷することでβ相を保持し、材料硬度を向上させることが可能となる。
この処理により、鋳造材の粗大組織が改善され、機械加工性や機械的特性が向上する。
特に高強度が求められるギア、ベアリング、重機部品などでは、溶体化処理が重要である。
次に、時効処理(エイジング)が行われる。
溶体化後の材を450〜650℃で保持することで、β相の分解が進み、強化相が析出することで硬度がさらに向上する。
この段階で析出される相の種類や分布は、添加元素の種類や含有量に大きく依存するため、材質に応じた最適条件の設定が求められる。
また、時効処理によって内部応力が緩和されるため、寸法安定性が向上し、機械加工後の歪みが抑えられるという利点もある。
一方で、靭性を重視する用途では、速い冷却を避け、徐冷や焼鈍を行うことでα相主体の組織を得る。
この処理により、衝撃荷重に対して優れた耐性を持つ部材が得られるため、高い信頼性が求められる機械部品に適している。
このように、アルミニウム青銅の熱処理は単なる強度向上だけでなく、用途に応じた多角的な性能最適化を可能にする。
組織制御の自由度が高い点も、本材が設計材料として優れている理由のひとつである。

機械加工の難易度と対策

アルミニウム青銅は、銅合金としては比較的硬く、靭性も高いため、機械加工において一定の難易度を伴う材料として知られている。
特に高強度型のニッケルアルミ青銅や鉄強化型グレードでは、工具摩耗が激しく、切削条件の最適化が不可欠である。
しかし、適切な工具選定、切削条件、冷却潤滑の管理を行うことで、高い寸法精度と表面品質を維持することが可能となる。
まず、アルミニウム青銅は硬度が高いため、一般的な超硬工具でも摩耗が進みやすい。
特に切削熱による工具刃先の劣化が起こりやすいため、コーティング工具(TiAlN、AlCrNなど)の使用が推奨される。
これにより摩耗寿命が延び、安定した切削が可能となる。
エンドミル加工や旋削加工ではポジティブ形状の工具を選択することで切削抵抗を減らし、発熱を抑制する効果が得られる。
切削条件については、過度な高速切削を避け、適度な切削速度と送りを確保することが重要である。
特に切削速度を高く設定すると表面硬化が起きやすく、その後の加工が難しくなる場合があるため注意が必要である。
また、切削時にはバリが発生しやすいため、仕上げ工程でのバリ取りを前提とした工程設計が求められる。
潤滑・冷却も機械加工の成否を左右する重要な要素である。
アルミニウム青銅は切削熱が溜まりやすいため、十分なクーラント供給が必要となる。
高圧クーラントを使用することで切りくず排出が安定し、加工面の品質も向上する。
また、乳化系クーラントよりも油性クーラントが適した場面もあるため、加工条件や製品寸法に応じたクーラント選定が求められる。
さらに、加工硬化が起こりやすい点も重要な特徴である。
工具が摩耗した状態で加工を続けると、被削材表面が硬化し、加工が急激に困難となる。
これを避けるためには、適切な工具交換サイクルの管理、切削深さを一定に保つことが有効である。
総じて、アルミニウム青銅の機械加工は難しい部類に入るものの、適切な条件設定により安定した品質を確保できる材料である。
機械加工性の理解は本材を扱う上で欠かせない要素であり、設計・製造の両面で重要な知識となる。

アルミニウム青銅の用途

海洋・造船分野での活用

アルミニウム青銅が最も高い評価を得ている分野の一つが、海洋・造船分野である。
これは同材料が備える海水耐食性、耐キャビテーション性、耐摩耗性、非磁性という複数の重要特性が、海洋環境の要求と極めて高い親和性を持つためである。
海水は金属材料にとって非常に厳しい腐食環境であり、塩化物イオン、溶存酸素、流速変動などが複合的に作用する。
そのような環境下においても、アルミニウム青銅はアルミナ皮膜の自己修復作用により長期間安定した耐食性を維持し、腐食進行が遅いことが実績として証明されている。
具体的な用途としては、船尾軸受、プロペラ、ポンプ部品、海水バルブ、シートリング、シールリング、海洋構造物の取付金具などが挙げられる。
特にプロペラについては、回転中の圧力変動によってキャビテーションが発生し、一般金属では表面が破壊されることが多い。
しかしアルミニウム青銅はキャビテーションに対する耐性が高く、損傷進行が遅いため、長期間にわたり安定した推進性能を維持できる。
このため、世界中の船舶でプロペラ材として広く採用されている。
さらに、海水ポンプのインペラやケーシングでは高流速の海水が通過するため、腐食と摩耗の両面への対策が必要である。
アルミニウム青銅はこの要求に適合しており、高い耐摩耗性と耐食性によりメンテナンス周期を延ばし、設備稼働率の向上に貢献する。
加えて、同材料は非磁性であるため、磁気センサーを搭載する艦艇や潜水艦などの軍事用途にも適する。
磁気的な影響を最小化し、機器の誤作動を防止することができる。
港湾設備や海中構造物においても、ボルト、ナット、連結金具などにアルミニウム青銅が採用される。
こうした部材は常に海水に晒されるため、耐食性と機械的強度が両立した材料である必要がある。
この材料選定により、構造物全体の寿命を伸ばし、維持管理コストを低減できる。

産業機械・エネルギープラントでの利用

産業機械やエネルギープラントでは、高荷重、摩耗、熱、腐食など多様な負荷が部品に加わる。
アルミニウム青銅は、これら複数の負荷条件すべてに対して高い適応力を持ち、「一つの材料で複数性能を確保したい」というニーズに最適な材質として認知されている。
代表例として、産業用ポンプ、圧縮機、バルブの摺動部品、軸受、ギア、ライナー、シートリングなどが挙げられる。
これらの部品は、摩擦、衝撃、振動、熱膨張などに耐えながら長期安定稼働する必要があり、単一特性だけ優れていても十分ではない。
アルミニウム青銅は、高強度・高靭性・耐摩耗性・耐疲労性を兼ね備えているため、こうした重要部品に広く採用されている。
エネルギープラントでは、蒸気タービン部品、海水冷却設備、熱交換器、バルブ、弁座などに使用される。
特に海水を利用する冷却設備では、耐食性が材料選定の最重要ポイントであり、ステンレス鋼でも孔食・隙間腐食が発生する場合がある中で、アルミニウム青銅は極めて安定した性能を発揮する。
高温環境における強度維持能力や、腐食と摩耗が同時に進行する環境下での安定性は、他の銅合金と比較しても突出している。
また、アルミニウム青銅は非磁性のため、センサー類や精密機器周辺の部品としても採用される。
磁気誘導計測を用いる設備では、周囲部材の磁性が測定誤差の原因となることがあるが、アルミニウム青銅はその点で非常に安全性が高い。
さらに、火花を発生させにくい特性(難燃性)もあり、石油・ガス設備や化学プラントなど爆発リスクのある環境でも信頼されて利用されている。
総じて、産業機械・エネルギープラント分野におけるアルミニウム青銅の最大の価値は、「過酷環境でも安定稼働する信頼性」と「複数性能の総合力」である。
これにより、寿命延長・停止時間削減・メンテナンスコスト低減に大きく寄与している。

航空機・自動車分野での機能部品

航空機や自動車産業では、軽量化、高強度、耐摩耗性、耐熱性、そして長期信頼性が同時に求められる。
アルミニウム青銅はこれらの要求特性を高いバランスで満たしているため、特定の高機能部品に採用されている。
とくに航空機では、安全性確保の観点から「高負荷環境に耐え、長期間性能が劣化しない材料」が重要視される。
アルミニウム青銅は疲労強度が高く、腐食疲労にも強いため、航空機用ブッシュ、ベアリング、油圧作動システム部品、ギア関連部品などに使用される。
摺動性の高さと焼き付きにくさは、潤滑状態が変動する航空機の機構部にとって大きな利点である。
自動車分野では、従来は鉄系材料が中心であったが、耐食性・軽量性・耐摩耗性の観点からアルミニウム青銅が採用される場面が増えている。
特に、電動化の進展に伴い、静粛性と摺動性能への要求が高まっており、アルミニウム青銅は摩擦係数が低く、ギア音・摩擦音の抑制にも寄与する。
このため、EV用モーター部品、電動ポンプ部品、燃料システムのバルブシート、各種ベアリングなどで採用されている。
さらに、アルミニウム青銅の耐熱性はターボチャージャー周辺の高温部品にも適している。
高温下で強度低下が少ない特性により、耐久性の向上と熱変形の抑制に貢献する。
また、耐腐食性の高さは、冷却水・油・燃料に晒される部品の寿命延長に寄与し、メンテナンス頻度を低減できる。
航空機・自動車のいずれの用途においても共通する利点は、「軽量でありながら高強度で、過酷環境でも安定した摺動性能を発揮する」という点に集約される。
アルミニウム青銅は鉄鋼材料より軽量で、ステンレス鋼より耐摩耗性に優れ、リン青銅より強度が高い。
これらの特性が組み合わさることで、高い信頼性と性能を要求される先端産業で重要な役割を果たしている。

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株式会社アスク

【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
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