072-808-5555 電話でお問い合わせ
LINEでお問い合わせ

試作人基礎講座

公開日: | 更新日: | 試作人基礎講座

クロムめっきとは?特徴など徹底解説します!

本日はクロムめっきについて解説していきます!
特徴など解説しますので、是非ご覧ください♪

クロムめっきとは

クロムめっきとは、金属表面にクロム(Cr)を電気化学的に被覆する表面処理の一種であり、主に「装飾クロムめっき」と「硬質クロムめっき」の2つに大別されます。
どちらも電解めっきの一種であり、クロム酸を主成分とする電解液を用いて行われますが、目的やめっきの厚み、下地処理の工程などに明確な違いがあります。
まず「装飾クロムめっき」は、主に美観を目的とした処理で、鏡面のような美しい銀白色の光沢と高い耐食性を特徴とします。
このタイプのクロムめっきは、厚みが非常に薄く、通常は0.1~0.3μm程度です。
装飾クロムめっきでは、クロム層の下に「ニッケルめっき」や「銅めっき」を施す多層構造が一般的であり、下地のニッケル層が主に防食性を担い、クロム層が光沢と表面硬度、耐摩耗性を付加します。
自動車の外装部品(バンパーやモール)、水栓金具、バイクのマフラーや装飾パーツなどで多く用いられています。
一方、「硬質クロムめっき」は、機能性を重視した工業用のクロムめっきです。
こちらは非常に厚いめっき層(数μm~数百μm)を形成し、高い表面硬度(HV800~1000程度)、優れた耐摩耗性、耐熱性、さらには良好な潤滑性を提供します。
このため、金型部品、油圧シリンダー、シャフト、ローラー、ピストンなど、過酷な摺動環境や長寿命が求められる産業用機械部品に広く採用されています。
また、硬質クロムめっきはその均一性にも優れており、複雑形状部品の機能性向上にも寄与します。
両者の最も大きな違いは「目的」と「厚さ」にあります。
装飾クロムめっきは主に外観と軽い防錆を目的とし、薄膜仕上げで済むのに対し、硬質クロムめっきは耐摩耗性や機能強化を目的として、厚膜仕上げが必要です。
また、装飾クロムめっきは家庭用品や自動車外装など身近な製品に多く見られますが、硬質クロムめっきは製造設備や工具、産業用部品など業務用の用途が中心です。
このように、同じ「クロムめっき」であっても目的や性能に応じて種類が分かれており、用途に最適な処理方法を選ぶことが重要です。
以降の項目では、これらのクロムめっきがどのような技術で施され、どのような特性・応用例を持ち、またどのような課題があるのかを詳細に解説していきます。

使用されるクロムの化学的特性

クロム(元素記号:Cr)は、周期表の第6族に属する遷移金属で、原子番号は24です。
銀白色の光沢を持ち、空気中でも比較的安定な金属として知られています。
クロムはその独特な化学的特性から、めっき用途において非常に重要な素材であり、耐食性・耐摩耗性・硬度・光沢性など多くの機能性を金属表面に付与します。
クロムの最大の特性の一つは「耐食性の高さ」です。
これは、クロムが空気中の酸素と反応して形成する「不働態皮膜(酸化クロム皮膜)」によるものです。
この酸化皮膜は非常に緻密で、内部の金属を酸化や腐食から保護する役割を持ちます。
しかもこの皮膜は自己修復性を持ち、傷がついた場合でも空気中の酸素と反応して再生されるため、長期間にわたり安定した耐食性能を発揮します。
また、クロムは高い「硬度」を持つ金属であり、そのモース硬度は約8.5、ビッカース硬度に換算するとHV800~1000程度です。
この硬さはめっき層に応用されると、摩耗に強い表面処理として有効であり、特に硬質クロムめっきではこの特性が最大限に活かされます。
金型部品やシャフトなどの高耐久性が要求される部品において、長寿命化やメンテナンス頻度の低減に寄与します。
さらに、クロムは金属としての「化学的安定性」にも優れています。
強酸や強アルカリに対して比較的耐性があり、高温環境でも腐食しにくいため、化学プラントや高温機器の部品にも適しています。
加えて、クロムは優れた「熱反射性」や「光沢性」も持っており、特に装飾クロムめっきでは鏡面仕上げによる高級感の演出に活かされます。
ただし、めっき処理で使用されるクロムは「金属クロム」そのものではなく、通常は六価クロム(Cr⁶⁺)の形で水溶液中に溶かされた「クロム酸(H₂CrO₄)」として存在します。
六価クロムは電解めっきにおいて電極上に金属クロムを析出させるための主要成分ですが、その毒性や環境リスクが高いため、適切な管理と廃液処理が必要不可欠です。
この点は後述する環境対応の項目でも詳述します。
近年では、六価クロムに代わる安全なめっき手法として「三価クロム(Cr³⁺)」を用いためっきも注目されています。
三価クロムは毒性が低く、環境規制にも適合しやすいですが、従来の六価クロムに比べて硬度や光沢性に劣る部分もあるため、用途によって使い分けられています。
このように、クロムはその優れた化学的特性によって、工業製品や日用品の表面処理に幅広く用いられています。
ただし、機能性の裏に潜む環境・安全面への配慮も重要な視点であり、クロムの扱いには高度な技術と管理体制が求められるのです。

クロムめっきの歴史と産業的背景

クロムめっきの歴史は20世紀初頭に始まります。
初めて実用的なクロムめっきが開発されたのは1910年代のアメリカで、アメリカの化学者ポール・R・クルックシャンク(Paul R. Krug)とオリヴァー・W・マグワイア(Oliver W. Maguire)によって研究が進められたとされます。
当時の目的は主に耐摩耗性や耐食性の向上でしたが、やがてその金属光沢の美しさが注目され、装飾用途への展開も進みました。
1920年代から1930年代にかけて、クロムめっきは自動車産業で急速に普及します。
特にアメリカでは、フォードやシボレーといった自動車メーカーが、バンパーやラジエーターグリル、モールなどの外装部品に装飾クロムめっきを採用しました。
これにより、クロムめっきは高級感や先進性の象徴とされ、一気に一般消費者の目にも馴染みのある存在となります。
装飾的要素と実用性の両立が評価され、多くの家庭用品、家具、電化製品にも波及していきました。
一方、工業分野においては、硬質クロムめっきが1940年代以降に本格的に導入されました。
第二次世界大戦中から戦後にかけて、航空機や兵器の部品に使用されることで技術が進化し、その後、油圧シリンダー、ピストン、金型、ローラーといった高精度・高耐久を求められる機械部品の分野に広がっていきます。
特に硬質クロムの高硬度・耐摩耗性・潤滑性の高さは、金属加工業界で不可欠な表面処理技術として確立されました。
日本におけるクロムめっきの普及も高度経済成長期に加速します。
1950年代から1970年代にかけて、自動車産業や家電製品の大量生産が始まり、クロムめっき技術の導入が広がりました。
表面処理業界では、地域ごとに多くのめっき工場が誕生し、下請け・外注加工の重要な一翼を担う存在となります。
しかし、1980年代以降、環境保護意識の高まりとともに、クロムめっきに使用される「六価クロム」の毒性や発がん性が社会問題化します。
欧米を中心に六価クロムの使用規制が強化され、日本でも労働安全衛生法や水質汚濁防止法によって厳しい管理が義務付けられるようになりました。
この背景から、代替技術である三価クロムめっきやPVD(物理蒸着法)なども登場し、用途に応じた使い分けが進んでいます。
近年では、SDGsや脱炭素の流れの中で、より安全かつ環境にやさしい表面処理技術が求められていますが、それでもクロムめっきはその機能性の高さゆえに、依然として不可欠な技術です。
特に航空・自動車・金型・油圧機器などの分野では、他に代えがたい性能を提供するため、今後も改良と安全対策を重ねながら活用されていくでしょう。

クロムめっきの工程と技術

前処理(脱脂・酸洗いなど)の重要性

クロムめっきをした部品

クロムめっきをはじめとする電解めっき全般において、前処理は極めて重要な工程です。
前処理の良否が、その後のめっき層の密着性や外観、耐久性に直接的に影響するため、「めっきの7割は前処理で決まる」とも言われるほど、製品品質の根幹を担っています。
クロムめっきの前処理には、主に以下のようなステップがあります。
①脱脂、②水洗、③酸洗い(または電解脱脂)、④活性化。
これらの工程を適切に実施することで、母材表面の油分、酸化被膜、微粒子、サビなどの不純物を除去し、金属クロムが母材にしっかりと密着する状態を整えます。
最初の工程である「脱脂」は、加工油や指紋などの有機系汚れを取り除く工程です。
アルカリ系の薬液や有機溶剤を用いて浸漬・超音波・電解などの方法で行われます。
脱脂が不十分だと、油分が表面に残留し、後工程でのめっきが局所的に剥がれやすくなったり、めっきがムラになる原因となります。
次に行うのが「水洗」で、脱脂剤や汚れをしっかりと洗い流す目的があります。
ここで不純物が残っていると、次の酸洗い工程で化学反応を妨げたり、異常反応を引き起こすことがあります。
水洗は一見地味ですが、複数槽での流水洗浄やエアブローによる乾燥が品質確保のカギとなります。
「酸洗い」は、金属表面に酸化膜やスケール(酸化鉄など)が付着している場合に、それを除去するために行われます。
通常は希塩酸や硫酸などの酸を用いて、表面を化学的にクリーンな状態にします。
鉄や銅、真鍮など素材によって適切な酸の種類と濃度が異なり、過度に反応させると母材を傷める危険もあるため、熟練した管理が必要です。
また、酸洗いに加えて「電解脱脂」や「アノード活性化処理」が行われる場合もあります。
特に高精度なめっきが求められる場合は、陰極に製品を接続し、電流を流すことで金属表面を電気的に活性化させ、さらに密着性を向上させます。
これは主に硬質クロムめっきや工業用めっきにおいて多用される手法です。
最後に行う「活性化」は、金属表面の最終的な酸化膜除去と電位調整の役割を果たします。
この状態でめっき槽に投入することで、めっき液中のクロムイオンが均一に金属表面に析出しやすくなり、均質で高密着なクロム層が形成されます。
もし前処理が不完全なままめっき処理を行えば、めっき層が剥離したり、ピンホールやブリスター(気泡状の膨れ)が発生したりするなど、深刻な不良につながります。
見た目は良好でも、数日〜数週間後に問題が顕在化することもあり、信頼性に直結します。
このように、前処理は単なる「汚れ落とし」ではなく、めっきの成功と長寿命化のために不可欠な工程です。
適切な設備と薬剤、そして確かな作業管理によってこそ、クロムめっきの真価が発揮されるのです。

電解めっきプロセスの概要と条件管理

クロムめっきは、電解めっき法(Electroplating)によって金属表面にクロムを析出させる技術です。
このプロセスは一見単純に見えますが、実際には非常に繊細かつ高度な条件管理が要求される処理であり、品質・性能・外観すべてに直結する重要工程です。
電解めっきの基本的な仕組みは、電解液(クロム酸+硫酸など)に浸したワーク(製品)を「陰極(マイナス極)」として接続し、電源装置から直流電流を流すことで、電解液中のクロムイオン(通常は六価クロム:Cr⁶⁺)が陰極表面に還元されて金属クロムとして析出する、というものです。
一方、陽極には不溶性の鉛合金(鉛-スズ、鉛-アンチモンなど)が使われることが一般的で、電流を通すための役割のみを果たします。
クロムめっきの中でも特に特徴的なのが、電解液の組成です。
多くの場合、「高濃度のクロム酸(CrO₃)」と、少量の硫酸(H₂SO₄)を混合した溶液が使用されます。
一般的な濃度比は、クロム酸が250~400 g/L、硫酸が2.5~4.0 g/Lで、これは「クロム酸:硫酸=100:1」という極端な比率です。
この硫酸は触媒的役割を果たし、めっき反応を効率よく進行させるうえで欠かせません。
プロセス中で特に重要なのが「電流密度」と「温度管理」です。
電流密度とは、製品表面に流れる電流の強さ(A/dm²)を指し、通常は20~60 A/dm²程度で管理されます。
電流密度が高すぎると、局部的な過剰析出やバーン(焼け)と呼ばれる表面異常が発生し、逆に低すぎるとクロムの析出効率が落ち、所望の厚みが得られません。
また、製品形状によって電流分布が不均一になりやすいため、ジグや治具設計、補助電極なども非常に重要です。
温度管理も同様に重要で、めっき液の温度は45~60℃程度に保たれるのが一般的です。
温度が低すぎると析出反応が遅くなり、高すぎるとクロム酸の分解や水素ガスの発生が活発化し、めっき品質が不安定になります。
加温には耐酸ヒーター、冷却には水冷コイルなどが用いられ、厳密な温度制御が求められます。
また、クロムめっき特有の注意点として「カソード電流効率の低さ」があります。
これはクロムの電解析出時に水素も一緒に発生するため、実際にクロムが析出する効率は10~15%と非常に低く、大部分の電流が副反応に使われてしまいます。
そのため、長時間の処理が必要であり、電解設備の耐久性や電力コストへの配慮が求められます。
さらに、析出中に生じる水素ガスの泡が製品表面に残ると、めっきムラやピンホールの原因になるため、液中の攪拌やエア抜き構造も必要です。
また、処理中に発生するクロムミストは人体に有害なため、ミスト回収装置(スクラバー)や局所排気設備の設置も法的義務となっています。
このように、電解めっきプロセスは化学反応と電気制御の複雑なバランスの上に成り立っています。
高品質なクロムめっきを安定して得るためには、電流、液組成、温度、時間、治具設計、攪拌・排気など、すべての条件を厳密に管理し、定期的なメンテナンスと試験分析を行うことが不可欠です。

めっき厚みの制御と品質保証のポイント

クロムめっきの品質を左右する重要な要素のひとつが、「めっき厚みの制御」です。
めっきの厚みは、用途や要求される機能に応じて設計されるものであり、装飾クロムめっきでは通常0.1~0.3μm程度、硬質クロムめっきでは数μmから数百μmに及ぶこともあります。
この厚みが適切でないと、製品の性能や寿命に大きく影響を与えるため、製造現場では厳格な管理と検査が欠かせません。
めっき厚みの制御は主に「電流密度×時間」の積によって決まります。
これはファラデーの法則に基づいており、電流密度を高く、処理時間を長くすれば、理論的には厚いめっき層が得られます。
しかし、現実の工程では製品形状の複雑さ、局所的な電流集中、液流の乱れ、温度変動などにより、厚みは不均一になりやすいため、単純な計算だけでは管理できません。
特に硬質クロムめっきの場合、シャフトや金型、油圧シリンダーなど精密部品に対して、均一な膜厚と面粗度を確保する必要があります。
これには「冶具設計」や「補助陽極の設置」などが有効で、電流分布を意図的にコントロールすることで均一な析出を実現します。
また、回転めっきや揺動めっきのように、製品を動かしながら処理する手法も、厚みの均一性を確保するために使われます。
膜厚の測定には、非破壊式と破壊式の手法があり、用途に応じて選択されます。
非破壊式では、「蛍光X線膜厚計(XRF)」や「渦電流式膜厚計」などが用いられ、短時間で測定可能です。
特に量産品や装飾品の全数検査において重宝されます。
一方、より正確な測定が必要な場合や硬質クロムめっきで厚膜を確認する際には、「断面研磨による顕微鏡観察」や「マイクロスコープでの測定」といった破壊式の方法が用いられることもあります。
また、めっき層の品質保証には厚みだけでなく、以下のような項目も重要です。
・密着性:母材とクロム層がしっかり接着しているか。クロスカット試験や剥離試験などで評価されます。
・外観:光沢、色合い、ピンホールやクラックの有無。目視や顕微鏡による検査が行われます。
・硬度:特に硬質クロムでは表面硬度(HV800~1000以上)が求められ、マイクロビッカース硬度計で測定されます。
・耐食性:塩水噴霧試験(SST)や湿潤試験などで評価され、特に装飾クロムで重要視されます。
製品仕様や使用環境によっては、厚みのばらつきが直接的なクレームや信頼性問題につながる場合もあるため、工程能力(Cp、Cpk)の維持や工程内管理(インプロセスチェック)も重要となります。
たとえば、定期的なテストピースの処理と測定、液分析、電流・温度・時間の記録管理などが行われています。
このように、クロムめっきの品質保証は厚みの均一性と再現性を高いレベルで維持する技術と管理体制に支えられています。
とくに産業用途では、単なる外観品質だけでなく、耐摩耗性や機能性の根幹をなす要素として、厚み制御と検査は極めて重要なのです。

クロムめっきの特性と利点

クロムめっきをした部品

優れた耐摩耗性・耐食性

クロムめっきが幅広い産業で重宝される最大の理由のひとつが、その優れた耐摩耗性と耐食性にあります。
特に硬質クロムめっき(Hard Chrome Plating)は、摺動部品や金型、シリンダー、シャフトなど、過酷な摩擦環境や腐食環境下で使用される部品に対して、その性能をいかんなく発揮します。
まず、耐摩耗性について解説します。
クロムめっきは、表面硬度が極めて高いのが特徴で、ビッカース硬度(HV)で800〜1000程度に達します。
これは焼入れ鋼やセラミックにも匹敵する硬さであり、長時間の摺動や衝撃を受けても表面が摩耗しにくい性質を持ちます。
そのため、ピストンロッドやロール、射出成形用金型、スライド部品など、繰り返し接触や摩擦が発生する箇所での採用が多くなっています。
クロムめっき層は、細かなマイクロクラック構造を有しており、これは一見欠点のようにも見えますが、逆に潤滑油を保持する微細なポケットとして機能し、摺動時の摩擦係数を低減し、焼き付きやかじりを防止する効果もあります。
これにより、摩耗と熱による劣化を抑えることができ、部品の長寿命化に貢献します。
次に、耐食性について見てみましょう。
クロム自体は化学的に非常に安定した金属であり、大気中や多くの酸性・アルカリ性環境でも腐食しにくい特性を持ちます。
これは、クロム表面に自然に形成される不動態被膜(パッシブフィルム)が、酸化を抑制するためです。
この保護被膜は自己修復性があり、表面に微細な傷がついてもすぐに再生されることで、金属基材の腐食を防ぎます。
ただし、前述したように、硬質クロムめっきは微細なクラックを多数含むため、塩水環境や酸性ガス環境では腐食因子がクラック内部に侵入するリスクもあります。
そのため、極めて高い耐食性が求められる用途では、下地にニッケルめっきを施す「ニッケル+クロムの複合めっき」や、複数層の多層構造で保護性能を強化する手法も一般的です。
また、実使用環境での耐久性評価としては、塩水噴霧試験(SST)や、湿潤試験、腐食促進試験などが行われ、何百時間、何千時間にわたる耐食性が求められるケースもあります。
自動車部品や建築金物、屋外機器などではこうした耐食性が不可欠であり、単なる外観維持にとどまらず、機能維持や安全性にも関わってくる問題です。
このように、クロムめっきはその高硬度・耐摩耗性・耐食性を活かして、過酷な条件下でも安定した性能を発揮する優れた表面処理技術です。
適切な前処理、設計、めっき厚管理、そして使用環境への理解を踏まえることで、最適な耐久性と信頼性を得ることができます。

装飾性と光沢性

クロムめっきは、産業用途での耐久性だけでなく、優れた装飾性と光沢性によっても高く評価されています。
自動車部品、住宅設備、家電、ファッション雑貨、バイクのパーツなど、外観品質が求められるさまざまな製品に採用されており、いわゆる「装飾クロムめっき(Decorative Chrome)」というカテゴリで広く認知されています。
クロムめっきの装飾的な魅力のひとつは、鏡面のような美しい光沢です。
この輝きは、クロム金属特有の高い反射率と、めっき処理後に行われる研磨処理や下地処理との組み合わせによって生まれます。
実際には、クロム層自体は非常に薄く(0.1〜0.3μm程度)、この層の下には「ニッケルめっき層」や「銅めっき層」が複数層にわたって敷かれており、これらの層が光沢感や深みを演出しています。
たとえば、自動車のバンパーやグリルに見られるメタリックな輝きは、「銅+光沢ニッケル+半光沢ニッケル+クロム」といった多層構造で構成されています。
これにより、単なる金属の輝きではなく、奥行き感のある鏡面反射が得られ、製品に高級感と存在感を与えるのです。
また、クロムめっきには変色や酸化に対する高い抵抗性もあります。
通常の鉄やアルミ、亜鉛などは大気中の湿気や化学物質にさらされると変色や腐食を起こしますが、クロムは酸素と結合して薄い酸化皮膜(不動態被膜)を形成し、それが基材を保護します。
この特性により、屋外環境や湿度の高い室内でも、美しい外観を長期間維持することができます。
さらに、クロムめっきの色調は「クールな青白い銀色」であり、ステンレスのような無機質な印象を持ちつつも、より明るく洗練された印象を与えます。
この色味は現代的なデザインや工業製品と非常に相性がよく、多くの製品デザイナーや建築家にも好まれてきました。
近年では、環境規制の影響や意匠性の多様化に対応するため、「黒クロムめっき」や「サテン調クロムめっき」、「三価クロムめっき(トリバレントクロム)」などの装飾クロムも登場しています。
特に三価クロムめっきは、従来の六価クロムよりも環境負荷が低く、色味もややグレーがかった落ち着いた風合いを持ち、欧州を中心に需要が拡大しています。
装飾性を最大限に活かすためには、下地処理の品質が極めて重要です。
めっきの光沢は、母材表面の平滑性に大きく依存するため、前処理工程でのバフ研磨、電解研磨、脱脂・酸洗などが丁寧に行われなければなりません。
下地に微細な傷や異物があると、クロム層を通してそのまま目に見えるため、最終製品の美観を大きく損ねる原因となります。
このように、クロムめっきは機能性と装飾性を両立する数少ない表面処理技術の一つであり、その輝きは単なる見た目の美しさだけでなく、製品のブランドイメージやユーザー体験にも直結しています。

その他の機能的特性(耐熱性、潤滑性など)

クロムめっきは、耐摩耗性・耐食性・装飾性といった代表的な特性だけでなく、耐熱性や潤滑性といったその他の機能的特性にも優れています。
これらの特性は、特定の産業用途や過酷な環境下での使用において、クロムめっきを他の表面処理技術よりも有利にしています。

耐熱性

まず注目すべきは、クロムの高い耐熱性です。
金属クロムは非常に融点が高く、約1907℃に達します。
めっきとして使用されるクロム皮膜は、そこまでの温度には達しないものの、通常の使用条件下では500〜600℃程度までの耐熱性を保持するとされており、この温度領域でも表面の酸化や変色が少なく、硬度や寸法安定性を保つことができます。
この耐熱性の高さから、クロムめっきは以下のような高温環境下での部品に多用されます。
・エンジン内部部品(ピストン、バルブシート)
・樹脂成形用の金型(高温加熱される)
・スチールロール(熱圧延や焼き付けに使用)
また、加熱後もクロムめっき層は酸化皮膜を形成しやすく、この皮膜が内部への酸化進行を抑えるという自己防御的なメカニズムを持っており、特に空気中での高温酸化への耐性に優れています。

潤滑性と離型性

クロムめっきはまた、潤滑性や離型性にも特徴があります。
これは、クロムめっき層に形成される微細なクラック構造と表面の硬度が関係しています。
これらのクラックが油分を保持することで、潤滑効果が持続しやすくなり、金属同士が直接接触して焼き付くリスクを低減します。
この性質は、以下のような用途で特に有効です。
・油圧シリンダーのピストンロッド(潤滑油の保持と摺動性向上)
・射出成形機や押出機のスクリュー部品(樹脂の離型性と磨耗防止)
・金属プレス金型(製品が金型に張り付くのを防ぐ)
さらに、クロムの低摩擦係数(鋼材に対して約0.15〜0.2程度)も、摺動部における摩擦損失の低減や、エネルギー効率の向上に貢献します。
これは他の硬質めっき(例えばニッケル系)にはない、クロム特有のメリットです。

化学的安定性と電気特性

クロムは化学的にも非常に安定しており、多くの酸・アルカリに対して耐性を持ちます。
特に、硝酸やアンモニアなどの化学薬品を扱う装置では、クロムめっきが耐薬品性を担保する材料として選定されることがあります。
また、電気抵抗が高いため、電気的な絶縁性が必要な箇所で使われることもあります。

総合的な機能材料としての価値

このように、クロムめっきは単なる表面の装飾や保護を超えた、多機能なエンジニアリングマテリアルとしての位置付けを持ちます。
高温でも性能を維持し、潤滑油を保持し、腐食にも強いという特性を組み合わせることで、クロムめっきは航空機、船舶、エネルギープラント、医療機器など、多様な分野での高信頼性部品の表面処理として欠かせない存在になっています。

試作全国対応!
簡単・最短1時間お見積り

アスクならこんなお困りごとを解決します!

  • 他社では納期が間に合わないと言われた
  • 急な設計変更があった
  • 他社ではできないと言われた
  • 海外調達品の手直し・追加工
今すぐ無料でお見積りを依頼する

もっとアスクの事を知りたい!という方は
こちらもご覧ください!

株式会社アスク

【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
知っているようで知らない加工に関する知識をお届けします!

他、ブログ記事もご覧ください♪

動画の投稿もしておりますので良ければご覧ください♪