切削油の種類や特徴、注意点など解説!
本日は切削油について解説していきます!
切削油の種類や特徴、注意点など解説していきますので是非ご覧ください♪
切削油とは
切削油とは、金属加工において切削や研削を行う際に使用される潤滑剤・冷却剤の総称です。
工作機械で金属を削ったり磨いたりする際、工具と素材の間には激しい摩擦や熱の発生が起こります。
このような加工環境において、切削油は潤滑・冷却・洗浄・防錆といった多くの機能を果たし、工具の寿命を延ばしたり、製品表面の品質を向上させたりするために不可欠な存在です。
切削油は加工方法や素材、目的によって使い分けられます。
例えば、鋼やステンレスなど熱を持ちやすい金属を高速で加工する際には、冷却性に優れた水溶性切削油が使われます。
一方で、アルミや銅合金などの非鉄金属や難削材を高精度で加工する場合には、潤滑性に優れた油性切削油が選ばれることもあります。
切削油には大きく分けて「油性切削油」と「水溶性切削油」の2種類が存在し、それぞれに長所と短所があります。
油性は潤滑に強く焼付き防止に優れる一方、冷却力や環境負荷が課題となります。
水溶性は冷却力に優れる反面、錆や腐敗、工具への潤滑性能での劣位が課題となるため、添加剤などでバランスを取ることが重要です。
近年では、環境配慮の観点から生分解性のある植物由来の切削油や、人体に優しい添加剤が使われることも増えており、工場の安全衛生面でも注目されています。
また、IoTやセンサーによって切削油の状態をリアルタイムで監視・制御する「スマートクーラント管理」など、技術の進展も進んでいます。
このように、切削油はただの「潤滑油」ではなく、加工品質・生産性・工具寿命・環境配慮といった要素に密接に関わる、ものづくりの現場にとって極めて重要な役割を担っています。
切削油の主な役割と効果
切削油は金属加工における“縁の下の力持ち”ともいえる存在で、作業効率や製品品質の向上に大きく寄与します。
切削油の主な役割は大きく分けて5つあり、それぞれが加工条件の改善とコスト削減に繋がる重要な機能を果たしています。 1. 冷却作用
金属を加工すると、工具とワーク(加工対象物)の間に摩擦熱が発生します。
この熱が蓄積すると、工具の早期摩耗やワークの熱膨張・変形、さらには焼き付きなどのトラブルの原因となります。
切削油はこの摩擦熱を効果的に吸収・拡散し、加工温度を安定させる「冷却剤」として働きます。
特に水溶性切削油は高い熱容量と伝熱性を持ち、冷却効果が強力で、連続加工や高速回転加工など熱の影響が大きい場面において重宝されます。
2. 潤滑作用
切削加工では、工具が金属表面を滑らかに移動しながら切りくずを除去する必要があります。
この際に潤滑性が不足していると、摩擦が増加して切削抵抗が大きくなり、工具寿命が短くなるだけでなく、表面仕上げも粗くなってしまいます。
油性切削油は特に潤滑性能に優れ、硬質材料やねばりのある金属の加工において工具とワークの間の“すべり”を助け、摩擦を減らします。
これにより、加工効率と精度の両立が可能となります。
3. 洗浄作用
加工中には金属粉や切りくず、工具やワークの表面から剥がれた微細な汚れが発生します。
これらが工具や機械内部に蓄積すると、加工不良や故障の原因となります。
切削油にはこれらの汚染物質を流し去る「洗浄作用」があり、加工環境の清浄さを維持します。
特に流動性が高く、泡立ちにくいタイプの切削油は洗浄効果が高く、NC旋盤やマシニングセンタなどの自動加工機との相性が良いとされています。
4. 防錆作用
金属加工後の部品や工具は、空気中の湿気や酸素と反応して錆びやすくなります。
これを防ぐために、切削油には防錆剤が添加されていることが多く、加工中および加工後の短期間においてワークや機械部品の表面を保護します。
特に鉄系材料の加工では防錆性能の有無が製品品質に直結するため、切削油の選定において重要なポイントとなります。
5. 表面仕上げの改善
適切な切削油を用いることで、加工面の光沢や平滑性が向上します。
潤滑性が高いほど、工具と素材の接触面がなめらかになり、バリや傷の発生も抑えられます。
とくに精密加工や鏡面仕上げを要する部品では、切削油の性能が製品の見た目や機能性に大きく関わってきます。
切削油の分類(油性・水溶性)
切削油は、大きく分けて「油性切削油」と「水溶性切削油」の2種類に分類されます。
これらは成分構成や物理的特性、適用分野が異なり、加工する素材や使用環境に応じて適切に使い分ける必要があります。
それぞれの特徴と用途を詳しく見ていきましょう。
■ 油性切削油の概要と特徴
油性切削油は、その名のとおり「鉱物油」や「合成油」などの基油を主成分とし、各種添加剤を配合して作られています。
水を含まず、原液のまま使用されるため、潤滑性能が非常に高く、切削抵抗の低減や焼付き防止に優れています。
特に深穴加工、タップ加工、ねじ切り加工、ブローチ加工など、強い圧力や高い摩擦がかかる重切削に適しています。
油性切削油には主に以下の2つのタイプがあります。
・活性型油性切削油:極圧添加剤(硫黄系や塩素系)を多く含み、高負荷下での潤滑に優れます。ただし、銅や黄銅など非鉄金属に対して変色を起こす場合があり、使用には注意が必要です。
・非活性型油性切削油:極圧添加剤を使用せず、潤滑油本来の性能を重視したタイプ。光学部品やアルミ加工など、仕上げ面の品質が重要な用途で使用されます。
利点としては潤滑性能の高さと腐敗しにくい点が挙げられますが、反面、冷却性能に劣り、発火点が低いため高温加工では火災リスクがある点、またミストや煙の発生による作業環境への影響も課題です。
■ 水溶性切削油の概要と特徴
水溶性切削油は、水に溶かして使用するタイプで、主に乳化剤や防錆剤、潤滑添加剤を含む濃縮液(原液)を水で希釈して使います。
冷却性能に優れており、高速加工や連続加工、アルミ・鋼などの一般的な切削・研削作業に広く用いられています。
水溶性切削油には以下のようなタイプがあります。
・乳化型(エマルジョンタイプ):油分を多く含み、ミルク状に白濁した液体。潤滑性と冷却性のバランスが良く、汎用的に使いやすい。
・ソリューション型(透明タイプ):水に完全に溶けるタイプで、油分が少ないため洗浄性と冷却性が高く、工具やワークの汚れが少ない。
・半合成型:乳化型とソリューション型の中間で、冷却性と潤滑性をバランス良く両立するタイプ。多くの工作現場で採用されています。
水溶性切削油のメリットは、冷却力が高く、火災リスクが低く、作業環境が比較的クリーンに保てる点です。
一方で、水を含むため微生物による腐敗や臭気の発生が課題となり、定期的な濃度管理やフィルタリングが必要です。
また、防錆性能にも注意が必要です。
■ 加工に応じた分類の使い分け
一般的に、以下のような基準で使い分けられます。
・油性切削油:ねじ切り、タップ、リーマ、ブローチ、重切削、精密部品の仕上げ加工など。
・水溶性切削油:旋盤、フライス盤、マシニングセンタ、平面・円筒研削などの一般加工、連続生産ラインなど。
また、加工素材の種類(鋼、アルミ、銅、チタンなど)や、工具材質(ハイス、超硬)、加工条件(速度・送り・深さ)に応じて、最適な切削油を選定する必要があります。
各種切削油の特徴と用途
油性切削油の種類と特徴
油性切削油は、切削時の摩擦を低減し、工具とワークの間の潤滑を強化することで、加工品質と工具寿命を向上させることを目的としています。
潤滑性能に優れることから、特に重切削や難削材の加工、ねじ切りやブローチ加工などにおいて、他の潤滑手段では対応しきれない過酷な条件下でも効果を発揮します。
本項では、油性切削油の分類、各タイプの添加剤、特徴、用途について詳しく解説します。
■ 油性切削油の基本構成
油性切削油の主成分は「基油(ベースオイル)」です。
鉱物油(ミネラルオイル)が一般的ですが、近年では環境負荷を考慮した合成油や植物油ベースの製品も増えています。
これに加え、加工条件に応じて「極圧添加剤」「防錆剤」「酸化防止剤」などが配合され、性能を調整しています。
■ 種類別の分類と特徴
1. 非活性型油性切削油
非活性型油性切削油は、硫黄や塩素などの極圧添加剤を含まず、ベースオイルの持つ潤滑性能だけで機能するタイプです。
反応性が低いため、銅・真鍮・アルミなどの非鉄金属に対して変色や腐食の心配が少なく、外観重視の加工や精密部品の仕上げ加工に多く用いられます。
利点:
・加工後のワークが変色しにくい
・焼付き防止性能が高く、表面仕上げが良好
欠点:
・極圧性能がやや劣り、重切削や難削材には不向き
2. 活性型油性切削油
活性型は、硫黄・リン・塩素などの極圧添加剤を含有し、高温・高圧下でも潤滑性能を維持できるよう設計されています。
金属表面に化学的な皮膜を形成し、工具の焼付きや損傷を防ぎます。
特に難削材(ステンレス鋼、チタン合金など)のタップやねじ切りにおいて威力を発揮します。
利点:
・優れた極圧性により、高負荷加工でも工具寿命が長い
・焼付き防止効果が高く、深穴・重切削に最適
欠点:
・銅・黄銅など非鉄金属に対して変色の可能性あり
・加熱時に煙や臭気が出やすく、作業環境対策が必要
■ 添加剤の種類と役割
油性切削油の性能は、添加される各種成分によって大きく左右されます。
以下に主な添加剤の種類とその役割を示します。
・極圧添加剤(EP添加剤):高温・高圧条件下でも油膜を保持し、摩耗や焼付きを防止。
・防錆剤:加工後のワークや機械の部品表面を酸化から守る。
・酸化防止剤:切削油の劣化(酸化)を防ぎ、長寿命を実現。
・消泡剤:機械の稼働中に発生する泡を抑え、潤滑・冷却性能を安定させる。
・清浄剤:スラッジや切粉の堆積を防ぎ、装置の清潔性を保つ。
■ 用途と選定のポイント
油性切削油は、その優れた潤滑性能により、以下のような加工に適しています。
・ねじ切り加工(タップ、ダイス)
・ブローチ加工
・リーマ仕上げ
・深穴あけ(ガンドリル)
・歯切り(ホブ、シェーパー)
・難削材(SUS、Ti合金)の加工
選定の際には、対象金属の種類、加工方法、要求精度、工具の材質、環境対応などを総合的に判断する必要があります。
特に近年では、環境負荷低減の観点から、植物油ベースの製品やミスト発生量の少ない低粘度タイプの導入が増えています。
水溶性切削油の種類と特徴
水溶性切削油は、水をベースにした冷却液で、冷却性能に優れていることから高速・高能率の金属加工に広く使用されています。
特にマシニングセンタやNC旋盤などの量産加工機においては、切削熱の抑制とワークの熱変形防止のために不可欠な存在です。
水と油の特徴をバランスよく組み合わせるため、各種の添加剤や乳化剤が使われ、冷却性、潤滑性、防錆性を高めています。
■ 水溶性切削油の分類
水溶性切削油は、大きく分けて以下の3タイプに分類されます。
それぞれの特徴と使用シーンを見ていきましょう。
1. 乳化型(エマルジョンタイプ)
油分を多く含み、使用時には水と混合してミルク状の白濁液になります。
潤滑性に優れ、重切削にも対応可能な水溶性切削油の中で最も一般的なタイプです。
添加された乳化剤によって油分が水中に分散し、潤滑と冷却のバランスを実現します。
利点:
・冷却性と潤滑性を両立できる
・広範な加工に適応(鉄・アルミ・銅など)
欠点:
・長期間の使用で乳化が不安定になりやすい
・バクテリア繁殖による腐敗や悪臭が生じやすい
2. ソリューション型(透明タイプ)
油分が少なく、水に完全に溶ける透明な液体です。
洗浄性と冷却性が高く、切りくずや加工粉の排出性にも優れています。
軽切削や研削加工など、潤滑性よりも冷却性と清浄性が重視される用途に適しています。
利点:
・機械やワークが汚れにくく、清掃が容易
・細かい加工粉のある研削に最適
欠点:
・潤滑性能が低く、工具寿命がやや短くなる傾向
・防錆性能の確保が必要
3. 半合成型(セミエマルジョンタイプ)
乳化型とソリューション型の中間に位置し、油分を適度に含みながらも、透明または半透明に近い性状を持ちます。
冷却・潤滑・防錆・清浄性のバランスが良いため、マシニングセンタやNC旋盤を用いた一般加工に広く採用されています。
利点:
・メンテナンスが比較的容易で、長期間安定して使用可能
・多品種少量生産や複合加工に適する
欠点:
・製品によっては価格が高め
・加工環境や素材によって適応が異なる場合がある
■ 添加剤の役割
水溶性切削油は、多機能化のためにさまざまな添加剤が配合されています。
以下は代表的な添加剤の一例です。
・乳化剤:油と水を安定的に混ぜる
・防錆剤:ワークや機械の錆発生を抑制
・殺菌剤:腐敗や悪臭の原因となる細菌の繁殖を防止
・界面活性剤:洗浄性や切りくず排出性を向上
・極圧添加剤:潤滑性を補強し、工具摩耗を抑制
添加剤の配合バランスによって、加工現場での使い勝手や持続性能に大きな差が生じます。
■ 水溶性切削油の管理と課題
水溶性切削油は、その高性能ゆえに定期的なメンテナンスが欠かせません。
特に以下の点に注意が必要です。
・濃度管理:希釈倍率が適切でないと冷却性能や潤滑性が大きく低下します。リフラクトメーター(屈折計)を用いた定期測定が推奨されます。
・腐敗防止:タンク内にバクテリアが繁殖すると悪臭が発生し、加工品質にも悪影響を及ぼします。定期的なフィルター交換や清掃が重要です。
・水質の影響:使用する水の硬度や成分により、油の乳化安定性や性能に影響を与えるため、水質の確認も必要です。
■ 主な用途
水溶性切削油は以下のような加工に向いています。
・一般的な旋盤・フライス・ボール盤加工
・マシニングセンタでの高能率加工
・研削加工(平面・円筒・内面研削など)
・非鉄金属の冷却重視の切削
加工内容に応じた切削油の選定基準
切削油の選定は、加工効率や工具寿命、製品品質を左右する重要な要素です。
不適切な選定は、焼付きや工具摩耗の原因となり、生産性やコストに大きな悪影響を及ぼします。
切削油を正しく選ぶには、加工の種類、素材の特性、使用する工具、環境・安全性の観点など、複数の要因を総合的に考慮する必要があります。
本項では、加工内容別に適した切削油の選定ポイントを詳しく解説します。
■ 1. 加工方法に応じた選定
加工方法ごとに求められる性能が異なるため、それぞれに合った切削油を使用することが重要です。
加工方法 | 推奨切削油 | 選定理由 |
---|---|---|
旋盤加工 | 水溶性(半合成型) | 冷却重視。工具寿命と表面粗さのバランスが求められる。 |
タップ加工・ねじ切り | 活性型油性切削油 | 高圧がかかるため極圧性能が必要。焼付き防止が重要。 |
フライス加工 | 水溶性(乳化型 or 半合成型) | 冷却と潤滑の両立。工具摩耗の抑制が求められる。 |
研削加工 | ソリューション型水溶性 | 洗浄性と冷却性が重視される。研削焼け防止。 |
ブローチ加工 | 活性型油性切削油 | 長時間の連続加工で潤滑力と極圧性が必須。 |
深穴加工(ガンドリル等) | 低粘度油性切削油 or 高性能水溶性 | 切りくず排出性と潤滑性、冷却性のバランスが必要。 |
■ 2. 加工材料に応じた選定
被削材の材質によって摩擦係数、発熱量、粘り強さが異なり、それに適した切削油が求められます。
材料 | 推奨切削油 | 特徴と理由 |
---|---|---|
炭素鋼・合金鋼 | 水溶性乳化型、活性油性 | 発熱多めで冷却性必要。極圧性も重要。 |
ステンレス鋼 | 活性油性、半合成型水溶性 | 焼付きやすく、強力な潤滑が必要。 |
アルミニウム合金 | 非活性油性、水溶性(非腐食性) | 化学反応や腐食を防ぐ必要がある。乳化安定性も重視。 |
銅・黄銅 | 非活性油性 or ソリューション型水溶性 | 変色のリスクがあるため、硫黄系添加剤は避ける。 |
チタン合金・難削材 | 活性型油性、MQL専用油 | 発熱・焼付き多く、潤滑性と極圧性能が非常に重要。 |
■ 3. 工具材質に応じた選定
工具材質との相性も、油選定では見逃せません。
ハイス(高速度鋼)工具には高温耐性のある油が、超硬工具には冷却重視の水溶性が適することが多いです。
工具材質 | 傾向と推奨 |
---|---|
ハイス工具 | 耐熱性高く油性と好相性。極圧添加剤入りが有効。 |
超硬工具 | 熱に弱いため冷却性重視。水溶性が有効。 |
セラミック・CBN等 | 基本的にドライ加工向きだが、難削材ではMQLなど併用するケースも。 |
■ 4. 加工条件(速度・送り・深さ)
高回転・高送りの加工では、発熱量が多くなるため冷却性能が重視されます。
一方、低速・高負荷の重切削では極圧性能が重要です。
条件 | 推奨方向 |
---|---|
高速・高送り | 冷却性の高い水溶性切削油 |
低速・高負荷 | 潤滑性・極圧性に優れた油性切削油 |
■ 5. 環境・安全性の配慮
最近では、作業者の安全や工場の環境対策も選定時の重要な視点です。
ミスト発生が少ないタイプ、皮膚刺激が少ない製品、または生分解性が高く廃棄しやすい製品など、用途だけでなく「持続可能性」も求められています。
・人体への安全性:刺激性の少ない添加剤、無毒設計など
・臭気や腐敗対策:抗菌性の高い添加剤配合
・排水・廃液処理対応:生分解性が高く、分離処理しやすいもの
・省エネ性・MQL適性:最小量で最大効果を発揮する新世代切削油
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