黒染め加工のメリット・デメリットご紹介します。
本日は黒染めについて解説していきます!
メリットやデメリットのほか、黒染め加工に向き・不向きな材料などもご紹介しますので、是非ご覧ください♪
黒染め加工とは
黒染め加工は、金属を化学反応によって処理する方法です。
黒染め加工を施した金属は塗ったように真っ黒になりますが、染料を使用して黒く染めているわけではありません。
苛性ソーダを多く溶解させたアルカリ溶液に鉄を浸し、加熱することで表面処理を行います。
このとき鉄の表面に酸化によって鉄さび(四酸化三鉄)が生じ、様々な効果を期待できます。
黒染め加工以外にも、SOB、四酸化三鉄被膜、黒色酸化被膜など、多くの別名があります。
四酸化三鉄の様々な種類
金属の表面処理には様々な種類があります。
大きく分けると、メッキ・塗装・アルマイトの3つで、それぞれ以下のような方法です。
・メッキ・・・金属を溶かした処理液に浸けて電気を流したり、イオン化傾向などを利用したりして、液体中の金属を製品の表面に均等に付着させる方法。
・塗装・・・金属の表面に吹き付け等で塗料を塗布して塗膜にする方法。
・アルマイト・・・アルミニウムを電解処理し、アルミニウム表面に酸化被膜をつくる方法。
黒染め加工を施す理由
鉄鋼材の防錆のため
黒染め加工を行う理由の1つは、鉄鋼材の防錆のためです。
黒染め加工がしてあれば表面が四酸化三鉄で覆われるため、広範囲で赤さびを防ぎ、腐食から保護できます。
表面処理後の寸法変化を抑えるため
黒染め加工では、表面処理をしても被膜が非常に薄い(1㎛~2㎛程度)ことが特徴です。
塗装では膜厚が厚く寸法が変わってしまいますが、黒染め加工は寸法をほぼ変えずに防錆処理をしたい場合にお勧めの方法です。
表面を黒色にするため
黒染め加工では、表面の加工状態にもよりますが製品を光沢のある黒色にできます。
単純に鉄の色そのまま、あるいは塗料などで塗装した場合と比べて、高級感のある外観となります。
表面処理を安価で行いたいため
黒染め処理は、他の表面処理よりもコストが低いのが特徴です。
しかも、一度に数多くの製品に対応できる表面処理の方法でもあります。
結果的に黒染め加工は、安くて早い表面処理として多岐にわたり重宝される方法です。
黒染め加工のメリット・デメリット
メリット
外観性が良い
黒染め加工では光沢のある黒色を自然に出すことができます。
金属の素材感は損なわずに、光沢のある黒色に仕上げることが可能です。
デザインにこだわった製品にあえて黒染め加工が用いられることもあります。
剥がれる心配が少ない
黒染めは化学反応によって表面を加工する方法です。
めっきや塗装のように剥がれるということはまずありません。
使い方によっては黒染め加工はめっきや塗装に比べて長持ちする方法と言えます。
寸法がほぼ変わらず、摩擦防止効果もある
黒染め加工では表面に処理された被膜が非常に薄いため、寸法精度に影響しません。
寸法精度が要求される製品に適していると言えます。
さらに処理後にできた被膜はある程度耐摩耗性もあるので、摩耗を防ぐという効果も期待できます。
コストが抑えられる
黒染め加工は、塗装やメッキよりもコストが低いのが特徴です。
一度にたくさんの製品を処理できるため、1つ当たりにかかるコストが低くなります。
その分、価格を抑えることができ、利益につなげることも可能です。
防錆油で錆の発生防止と潤滑性の向上になる
黒染め加工をする際、処理後に使用する防錆油は、さびの発生を防ぐだけでなく、潤滑性を高める効果も持っています。
さらに、防錆剤を用いると、防錆期間が長くなるという利点もあります。
金属部品としての使い勝手を良くする効果が期待できます。
素材の強度や性質への影響が少ない
黒染め加工の処理温度は140℃前後と、比較的低温であることが特徴の1つです。
低温での処理になるため、素材が変質・変形せず、強度や性質への影響が少ないことがメリットとして挙げられます。
耐熱性が高い
黒染め加工によって作られる四酸化三鉄の皮膜は、耐熱性が高いことも特徴です。
黒染め加工をすることで、高熱での環境が予測される機械にも使用できる金属部品を作れます。
錆びた製品は前処理できれば黒染め加工ができる
一度サビてしまった製品や素材について、サビた素材を前処理して錆を落とすことができれば、黒染め加工できるというメリットもあります。
買い換える手間や費用の節減になるでしょう。
ただし、加工ができるかどうかは錆びの度合いによります。
デメリット
防錆油を塗布しないと腐食が早まる
黒染め加工には一定の耐食性があります。
したがって、黒染め加工をすることで腐食を防ぐことも可能ですが、加工後に防錆油を塗布しないと腐食が早まるのも事実です。
防錆油を塗布する手間や費用がかかるのはデメリットと言えます。
黒以外の着色はできない
黒染め加工において、基本の色は黒のみです。
加工業者の薬品調合により、赤黒い、青黒いなど多少の色の違いはあるものの、いずれにしてもカラフルな色合いにはなりません。
他の色にしたい場合は、塗装やメッキによる加工が必要です。
黒染め加工に無機・不向きな素材
向いている素材
黒染め加工には、炭素鋼などの鉄系の素材が向いています。
実際にほとんどの場合、鉄系の素材に対して使われています。
ただし、企業によっては特殊な技術を用いて、鉄以外の素材に黒染め加工できることもあります。
不向きな素材
同じ鉄鋼でも、鋳物や熱処理された製品、ワイヤーカットしたものは、黒染め加工を施すことによって茶色くなってしまいます。
黒染め加工の特徴を十分に生かせないケースです。
ただし、上記の素材でも前処理したものであれば可能な場合もあります。
黒染め加工の手順
1.脱脂
最初に、材料表面の油脂分を十分に落とします。
油脂分が残っていると、化学反応が正常に行われないためです。
2.水洗または湯洗
脱脂に使った脱脂剤が付着している場合も、黒染め加工の化学反応を阻害してしまいます。
そこで、水または湯を使い素材を洗います。
3.黒染め処理
140℃前後で沸騰させた黒染め液の中に材料を入れ、煮沸する流れが一般的です。
4.水洗いまたは湯洗
黒染め液から製品を引き上げた段階では、製品が高温の状態になっています。
表面の黒サビが酸素に触れると赤さびに変化しますので、手早く水ですすぎつつ鋼材を冷ますことが重要です。
5.仕上げの水洗または湯洗
再びきれいな水または湯を流しながら製品を洗浄し、残留溶液を完全に洗い流します。
6.防錆処理などの仕上げ
水溶性の防錆剤や、水置換性の防錆剤などを全体に浸漬させ、防錆処理を行います。
黒染め加工をする際の注意点
黒染め加工をする際にも、注意点があります。
具体的には、黒染め加工した表面に傷がつくと、傷から錆が進行してしまうという点です。
黒染め加工の皮膜は塗装やメッキよりも薄く、強度もありません。
キズからの錆びを防ぐために、どうしても傷に気を付けることが必要です。
こちらの記事はコーティングmagazine様の記事を参照しております。
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