製造業の基本知識~幾何公差~
本日は製造業では基本となる幾何公差について解説していきます!
少し長くなるかもしれませんが、最後までお付き合いください♪
幾何公差とは
幾何公差とは、簡単に説明すると形状や位置関係などの誤差の許容範囲を指示して規定するものです。
JISではJIS B 0021にて「製品の幾何特性仕様(GPS)-幾何公差表示方式-形状、姿勢、位置及び振れの公差表示方式」にて幾何公差に関する概要が定義されています。
GPSとは形状や姿勢、位置関係などのことで、公差は誤差の許容範囲を指します。
寸法公差(サイズ公差)との違い
寸法公差とは、簡単に説明すると基準寸法に対して許容できる範囲を指示し規定することです。
例えば、基準寸法を100mmとすると、いくら精度の高い技術でも100mmちょうどに仕上げることは難しいです。
そこでどれくらいの誤差であれば品質や性能に問題がないかを検討し、誤差の範囲を指示するのが寸法公差です。
寸法の誤差が許容できる上限を最大許容寸法、下限を最小許容寸法と呼び、それぞれ基準寸法からの差(許容差)を指示します。
このように、サイズや長さ、その他角度の許容差を指示できるのが寸法公差の特徴です。
規制できる公差の範囲
幾何公差と寸法公差では、規制できる公差の範囲が異なります。
例えば四角いワークでの場合、寸法公差で長さと厚みの許容範囲を指示します。
これだと寸法公差さえ見ればサイズ感は把握できますが、図形の形状までは規制されません。
そこで幾何公差の指示を加えます。
寸法公差に加えて平面度(どれだけ平らな面であるべきなのか)や基準面に対する平行度(2つの直線や平面が平行であること)を規定することで、具体的にどのような形状が求められているのか明確に理解できます。
寸法公差はあくまでもサイズや長さ、角度しか指示できないため、形状や姿勢、位置関係に関しては都合良く解釈できてしまいます。
その部分まで細かく指定し「理想とする形状がどのようなものか」、図面上で把握できるようにするのが幾何公差です。
測定方法の違い
寸法公差と幾何公差では、測定方法が異なります。
長さの場合、寸法公差は基本的に2点間測定が原則で、長さであれば「2点間の長さ」に対する公差しか指示できません。
・湾曲した形状
・変形した形状
などは、寸法公差で細かく指示することが難しく、あいまいな解釈を残した状態となります。
一方で、幾何公差は明確な基準のもとに測定されます。
ルールに従って形状や姿勢、位置関係などが細かく指定されているので、解釈が一定になるところが特徴です。
幾何公差の分類と種類
幾何公差は下記4つの分類に分かれています。
■形状公差
対象形体の基本的な形状を規定する幾何公差
■姿勢公差
基準に対してその形態の姿勢を規定する幾何公差
■位置公差
基準に対してその形態の位置を規定する幾何公差
■振れ公差
回転軸を中心に対象物を回転させたときにその形体の振れを規定する幾何公差
形体に規定する内容により、どのような幾何公差を指示するのかが異なります。
幾何公差を指示するために必要な記号や指示方法の事例を踏まえてご紹介していきます。
形状公差
形状公差とは、対象形体の形状自体のばらつき範囲を規制する幾何公差です。
データムを必要とせず、単独で形状を指示できます。
■真直度
真直度はどれだけまっすぐであるべきか指定します。
面全体ではなく直線要素に対して適用されるところが特徴で、面内の直線要素や母線、中心線の曲がりなどを規制します。
長尺物の反りの許容値を規制する場合などにも使われます。
■平面度
平面度はどれだけ平らな面であるべきかを指定します。
どれだけ厳密に加工しても、平面には凸凹が発生します。
平面度を指定すると、最も凸な部分と最も凹な部分が公差幅の2平面間の間に収まらなければなりません。
面の凸凹を抑えたい場合に指示します。
■真円度
真円度はどれだけ正確な円形であるべきかを指定します。
先にも解説したように、寸法公差では断面内での円の歪み具合までは指定できません。
真円度を指定することで「どれだけ成果うな円でなければならないか」を指示できます。
■円筒度
円筒度はどれだけ正確な円筒形であるべきかを指定します。
円筒度は「真円度」と「真直度」の意味が含まれ、どれだけ正確な円形でどれだけまっすぐであるべきかが規制され、円筒形体の歪みや反りなどを指示できます。
■線の輪郭度(形状公差)
形状公差での線の輪郭度は「輪郭線の歪み」を規制します。
意図したとおりの輪郭線となるように、輪郭線の歪み具合を指示します。
■面の輪郭度(形状公差)
形状公差での面の輪郭度は「輪郭面の歪み」を規制します。
線の輪郭度とは異なり、指定した面全体が対象となります。
意図したとおりの輪郭面となるよう、輪郭面の歪み具合を指示します。
姿勢公差
姿勢公差とは、ある基準に対しその形体であるべき姿勢の範囲を規定する公差です。
基準となるデータムが必要となる幾何公差となります。
■平行度
平行度は基準に対してどれだけ平行であるべきかを指定します。
平面度は単独の平面を指すのに対し、平行度は基準となる直線や平面が存在します。
■直角度
直角度は基準に対してどれだけ直角であるべきかを指定します。
直角度は角度で指定するのではなく、指示された形体が収まらなければならない範囲(平行な2平面間の距離や円筒域)で指定します。
■傾斜度
傾斜度では基準に対してどれだけ指定の角度であるべきかを指定します。
指定する形体は、基準に対して平行や直角ではない角度の形体が対象となります。
直角度と同様に角度で指定するのではなく、指示された形体が収まらなければいけない範囲(平行な2平面間の距離や円筒域)で指定します。
位置公差
位置公差とは、ある基準に対しその形体のあるべき位置の範囲を規定する幾何公差です。
形状や姿勢を含めた位置関係を規制します。
基準となるデータムが必要となる幾何公差となります。
■位置度
位置度は基準に対してどれだけ正確な位置にあるべきかを指定します。
穴やボスの位置を指定する以外にも、面の位置などを指定する場合にも使えます。
■同軸度
同軸度は基準に対して同軸な円筒軸がどれだけ同軸であるべきかを指定します。
円筒形状同士の軸のズレや傾きを規制したいときに使います。
■同心度
同心度は基準に対して同軸上にある中心点がどれだけ同心であるべきかを指定します。
同軸度は軸を規制するのに対し、同心度は中心点を規制するところが違います。
■対称度
対称度は基準に対して対称な形体の中心などがどれだけ正確な位置にあるべきかを指定します。
2面幅など、対称形体の位置や姿勢を規制したいときに使います。
■線の輪郭度(位置公差)
線の輪郭度は基準に対して輪郭線がどれだけ正確な位置にあるべきかを指定します。
形状公差での線の輪郭度とは異なり、データムを用いて基準となる位置に対するズレなどを指示します。
■面の輪郭度(位置公差)
面の輪郭度は基準に対して輪郭面がどれだけ正確な位置にあるべきかを指定します。
形状公差での面の輪郭度とは異なり、データムを用いて基準となる位置に対してのズレなどを指示します。
振れ公差
振れ公差とは、回転軸を中心に対象物を回転させたときに、その形体の振れの範囲を規定する幾何公差です。
データムが必要な幾何公差となります。
■円周振れ
円周振れは基準に対して部品を回転させた際の任意の円周上での振れをを規制します。
円周振れを判定する場合には、任意の円周上での振れ幅が公差内に入っていればOKですが、指定された形体範囲においては、どこで判定しても公差内に入っている必要はあります。
■全振れ
全振れは基準に対して部品を回転させた際の表面全体の振れを規制します。
全振れの場合には、指示された面全体の振れ幅が同一の公差範囲内でなければなりません。
こちらの記事はsigmetrix様の記事を参照しております。
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