ポリカーボネートってどんなもの?詳しく解説していきます!!
ポリカーボネートってどんなもの?ってことで本日の材料解説シリーズはポリカーボネートです!
詳しく解説していきますので、是非ご覧ください♪

PC(ポリカーボネート)とは
ポリカーボネート(Polycarbonate、略称:PC)は、合成樹脂の一種で、熱可塑性プラスチックに分類されます。
非常に高い強度と優れた透明性を兼ね備え、耐衝撃性にも優れているため、多様な分野で広く利用されています。
1950年代にアメリカの化学者ヘルムート・シュタルクらによって開発されて以来、その特性の高さから急速に普及しました。
化学的には、ポリカーボネートはビスフェノールA(BPA)と炭酸塩ジクロリドの重合によって合成される高分子化合物です。
分子構造はカーボネート基(–O–(C=O)–O–)を骨格に持ち、この構造が強度と耐熱性をもたらしています。
カーボネート結合は比較的安定で、外部からの衝撃や熱による分解に強い性質を持っています。
ポリカーボネートは透明性が高く、光の透過率は90%以上にも達します。
これによりガラスの代替材料としても利用されることが多いです。
しかもガラスよりもはるかに軽量で割れにくいため、安全性の面で優れています。
たとえば防弾ガラスの中間層やヘルメットのバイザー、スマートフォンのスクリーンなどに使用されているのもこのためです。
また、熱可塑性樹脂であるため、加熱すると柔らかくなり成形が容易です。
これにより射出成形や押出成形が可能で、複雑な形状の製品を大量生産できるのも大きな特徴です。
工業的な加工性の良さと性能のバランスの良さが、電子機器の筐体、自動車部品、光学レンズ、建築資材など多岐にわたる用途で選ばれる理由となっています。
一方で、ポリカーボネートは紫外線に弱いという弱点があり、長時間屋外で使用すると劣化し黄変やひび割れが生じることがあります。
そのため、UVカット剤の添加や表面コーティングなどの耐候処理が行われることが多いです。
また、耐薬品性に関しても一部の有機溶剤に弱いため、使用環境によっては注意が必要です。
まとめると、ポリカーボネートは強靭かつ透明な熱可塑性樹脂で、軽量で割れにくい特性を持つためガラスの代替や耐衝撃性が求められる用途で非常に有用な材料です。
加工性の高さや多用途性も相まって、現代のさまざまな産業で欠かせないプラスチック素材となっています。
化学構造と分子特性
ポリカーボネート(PC)は、その名前のとおり「カーボネート基」を基本骨格に持つ高分子化合物です。
化学的には、主にビスフェノールA(BPA)とホスゲン(COCl₂)あるいは炭酸ジエステルなどを原料として合成されます。
ビスフェノールAのフェノール基とホスゲン由来のカーボネート基がエステル結合することで、–O–(C=O)–O–という構造を持つ繰り返し単位が形成されます。
これが「ポリカーボネート」と呼ばれる所以です。
このポリマー鎖は剛直性が高く、分子全体が比較的硬くしっかりした構造を持っています。
芳香環(ベンゼン環)を含むことで剛性が増し、それが耐熱性や高強度を実現する大きな要因となっています。
実際、ポリカーボネートのガラス転移点(Tg)は約145℃と、他の熱可塑性樹脂に比べて高く、比較的高温でも変形しにくい特性があります。
また、分子間力としてはファンデルワールス力や水素結合が主に働いており、これによって密な結晶構造ではなく「非晶性(アモルファス)」の状態で存在することが多いのも特徴です。
結晶性が低い=アモルファス構造ということは、内部構造に方向性や規則性がなく、分子がランダムに並んでいる状態です。
このアモルファス性により、ポリカーボネートは非常に高い透明度を持ちます。
結晶が光を散乱する原因になるため、非晶性ポリマーの方が光学的に優れている傾向があります。
さらに、この分子構造は耐衝撃性にも寄与します。
分子鎖が比較的柔軟で、エネルギーを吸収する働きを持つため、外部からの力が加わっても亀裂が入りにくく、割れにくいという性質が得られます。
例えば、同等の透明性を持つアクリル(PMMA)と比べても、ポリカーボネートは約10~20倍の衝撃強度を持つと言われています。
ただし、分子構造に含まれるビスフェノールA(BPA)は、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)として議論の対象となってきました。
そのため、近年ではBPAを含まない「BPAフリー」ポリカーボネートや、代替モノマーを使った新しいカーボネート系樹脂の開発も進められています。
これらは医療や食品分野での安全性要求を満たすために重要視されています。
まとめると、ポリカーボネートはその独自の化学構造によって、耐熱性、耐衝撃性、透明性といった数々の優れた特性を実現しています。
この分子レベルでの特性理解が、材料選定や加工条件の最適化において非常に重要です。
他のプラスチックとの分類上の違い
ポリカーボネート(PC)は、数あるプラスチックの中でも「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」に分類される高性能樹脂の一つです。
この分類上の位置づけを明確にすることで、なぜポリカーボネートが高機能材料として評価されているのか、その理由を理解しやすくなります。
まず、プラスチックは大きく分けて「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」の2つに分類されます。
熱可塑性樹脂は加熱することで柔らかくなり、冷却すると再び硬化する性質を持ち、何度でも加熱と冷却を繰り返すことで加工が可能です。
一方、熱硬化性樹脂は一度硬化してしまうと再加熱しても柔らかくならず、再成形ができません。
ポリカーボネートは前者の「熱可塑性樹脂」に分類され、成形やリサイクルが比較的容易です。
さらに熱可塑性樹脂の中でも、安価で大量生産向けの「汎用プラスチック(例えばポリプロピレンやポリエチレン)」と、高性能を要求される「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」に分かれます。
ポリカーボネートはこのエンプラに分類され、以下のような特性を備えています。
・高い耐熱性(Tg 約145℃)
・優れた耐衝撃性(アクリルの10倍以上)
・高透明性(光透過率90%以上)
・良好な寸法安定性(成形収縮が小さい)
・電気絶縁性が高い
・難燃性(自己消火性を持つ)
これらの性能が、他の汎用プラスチックとの大きな違いを生んでいます。
たとえば、アクリル(PMMA)は透明性では匹敵するものの、衝撃に弱く割れやすいという欠点があります。
一方、ポリエチレンやポリプロピレンは柔軟性と耐薬品性に優れますが、透明性や剛性には劣り、寸法精度も高くはありません。
ポリカーボネートはその中間的でありながら、非常にバランスの取れた特性を持つため、ガラスの代替や構造部材などにも使えるのが特徴です。
また、分類上のもう一つの重要な特徴として、ポリカーボネートは「非結晶性(アモルファス)」の樹脂に属します。
これは分子が不規則に配列している状態で、結晶性樹脂に比べて透明性が高く、吸水膨張や成形時の収縮が少ないという利点があります。
非結晶性ゆえに、複雑形状の精密部品の成形にも適しています。
まとめると、ポリカーボネートは熱可塑性・非結晶性のエンジニアリングプラスチックに分類され、高強度・高透明性・高耐熱性を兼ね備えることで、他のプラスチック材料とは一線を画した性能を持っています。
これが、構造材から光学用途、さらには家電製品や医療機器に至るまで幅広く活躍する理由です。
ポリカーボネートの主な特性
高い耐衝撃性とそのメカニズム
ポリカーボネート(PC)が他の多くのプラスチックと一線を画す最大の特徴の一つが、その「非常に高い耐衝撃性」です。
一般的な樹脂材料の中でも、衝撃に対する強さは群を抜いており、「割れないプラスチック」と称されることもあります。
この特性は建材や自動車部品、さらには防弾材料などの過酷な使用環境で選ばれる大きな理由の一つです。
まず、耐衝撃性とは、外部からの衝撃や力に対してどれだけ割れずに変形して吸収できるかという性質を指します。
ポリカーボネートは、例えばアクリル樹脂(PMMA)に比べて10〜20倍、一般的なガラスに比べると250倍以上の耐衝撃性を持つとされます。
このため、高所に設置する照明カバーや産業機械の安全カバー、スポーツ用ゴーグルなど、落下や衝突リスクの高い環境に適しています。
この高い耐衝撃性を生み出す要因として、化学構造が大きく関係しています。
ポリカーボネートの分子鎖は、芳香環(ベンゼン環)を含むことで剛直性を持ちつつも、カーボネート結合によりある程度の柔軟性を保っています。
このバランスのとれた構造によって、分子鎖同士が衝撃エネルギーを効果的に分散・吸収する働きをします。
特に、アモルファス(非結晶)構造であるため、衝撃の伝達が均一になり、応力が局所に集中しにくいことも重要なポイントです。
また、ポリカーボネートは、クラック(亀裂)が発生しにくく、仮にひびが入っても急激に破断するのではなく、じわじわと変形しながら力を吸収する「延性破壊」の性質を持ちます。
これは脆性破壊(割れるように壊れる)を起こしやすい材料とは大きく異なる特徴で、安全性を高めるうえで非常に有効です。
衝撃試験としては「アイゾッド衝撃強度」や「シャルピー衝撃強度」といった指標があり、ポリカーボネートはこれらの試験でも極めて高い数値を記録しています。
例えば、ノッチ付きアイゾッド衝撃試験では、一般的なポリプロピレンが約0.5〜1.0 kJ/m²のところ、ポリカーボネートは60〜80 kJ/m²と、桁違いの数値を誇ります。
ただし、衝撃に強いということは変形しやすいという意味でもあります。
そのため、構造材として使用する場合には、寸法安定性や剛性を確保するために充填材(ガラス繊維など)を加えたグレードが用いられることもあります。
こうした工夫によって、さらに用途の幅が広がっているのが現状です。
まとめると、ポリカーボネートの耐衝撃性は、分子構造の柔軟性と剛性の絶妙なバランス、非結晶性構造、そして延性破壊の性質によって生まれた特性です。
この「割れない安心感」が、多くの製品設計者やエンジニアから信頼される理由となっています。
優れた透明性と光学特性
ポリカーボネート(PC)の大きな特長の一つに「優れた透明性」があります。
一般的なプラスチック素材の中でも、非常に高い光透過率を有しており、光学用途やディスプレイカバー、照明部材など、視認性や見た目の美しさが求められる製品に多用されています。
その透明度は90%以上に達し、アクリル(PMMA)と並ぶトップレベルの光学性能を誇ります。
この透明性の根源は、ポリカーボネートが「非結晶性(アモルファス)」である点にあります。
非結晶性とは、材料内部の分子がランダムに配置され、規則的な結晶構造を持たない状態のことを指します。
結晶構造を持つ素材では、光が内部の結晶粒界で散乱し、透明性が失われやすくなりますが、ポリカーボネートのような非結晶材料では、この散乱が抑えられるため、可視光を高効率に透過させることが可能です。
また、屈折率が高く(約1.586)、光の制御がしやすいという点も注目される特性です。
このため、レンズ素材やCD・DVDなどの光ディスク、さらにはカメラや顕微鏡の一部構成部品にも用いられています。
特に高精度の成形が可能であることから、細かな光学素子の成形にも適しており、光学グレードのポリカーボネートは、光拡散性や反射防止処理と組み合わせて、照明機器やディスプレイ用途に多数導入されています。
ただし、透明性が高いということは、傷や汚れが目立ちやすいという弱点にもつながります。
ポリカーボネートは表面硬度がアクリルなどと比べてやや低く、擦れやすい傾向にあります。
そのため、表面にハードコート処理(硬質膜のコーティング)を施して、傷付きにくくする技術が一般的に使われます。
たとえば、スマートフォンの液晶保護フィルムや、自動車のヘッドランプレンズに採用される場合には、必ずこのような表面処理が施されているのが一般的です。
さらに、紫外線への耐性が低いため、長期間屋外で使用すると黄変や劣化を引き起こすことがあります。
これに対処するために、UVカット剤を添加したグレードや、紫外線吸収剤を含むコーティングを施した製品が開発されています。
これにより、長寿命の透明部材として建材や看板、バス停の屋根材、ガードシェルターなどに広く使われています。
総じて、ポリカーボネートは優れた透明性と光学制御性を備えており、アクリルと比べても割れにくく安全性が高いため、視認性が求められるあらゆる分野で重宝されています。
製品の美しさと耐久性を両立させたい場面では、最適な選択肢の一つといえるでしょう。
耐熱性・難燃性の特性と応用
ポリカーボネート(PC)は、プラスチック材料の中でも比較的高い耐熱性を持つ素材として知られています。
そのガラス転移温度(Tg)は約145℃に達し、一般的な熱可塑性樹脂よりも高温環境下での変形や物性低下が少ないことが特徴です。
このため、電子部品や照明機器など、発熱を伴う機器類においても安定した性能を発揮します。
まず、耐熱性の面から見てみましょう。
ポリカーボネートは、熱を加えても分子構造が比較的安定しており、100℃を超える環境下でも連続使用が可能です。
短時間であれば130〜135℃程度までの使用に耐えることができます。
特に電子機器の内部部品や自動車のエンジンルーム付近の部品など、高温が想定される場所での採用例が多くあります。
さらに注目すべきなのが「自己消火性」、つまり難燃性を有している点です。
多くのポリカーボネート製品は、UL94(プラスチックの燃焼性に関する規格)で「V-2」や「V-0」等級を取得しており、火源が除かれると自然に火が消える性質を持ちます。
この特性は、火災リスクの低減が求められる電子・電気製品、特にPCケース、配電盤、照明器具、家電製品の筐体などで重要な意味を持ちます。
難燃グレードのポリカーボネートは、さらに添加剤やフィラーを加えて、燃焼時の発煙量を抑制するなど、安全性向上の工夫も施されています。
一方で、ポリカーボネートは耐熱性に優れているとはいえ、熱変形温度(HDT)は約125〜135℃程度であり、熱硬化性樹脂やPEEK(高耐熱エンプラ)ほどの耐熱性はありません。
そのため、200℃を超えるような過酷な条件では、より高性能な樹脂との使い分けが必要です。
加えて、成形時にはその耐熱性と流動性のバランスが設計に大きく関わってきます。
ポリカーボネートは高温でないと溶融しにくく、成形温度も約280〜320℃と比較的高温域が必要ですが、安定した寸法精度と低い成形収縮率により、精密部品への応用も可能です。
応用分野としては、電子機器の内部部品、照明器具のリフレクター(反射板)やカバー、電気絶縁体、さらには医療機器のハウジングなどが挙げられます。
熱による変形や火災リスクを回避する必要がある環境下で、ポリカーボネートの性能は大きな強みとなっています。
総じて、ポリカーボネートは優れた耐熱性と難燃性を兼ね備え、安全性が重要視される用途において非常に信頼性の高い材料です。
熱的ストレスに対して安定した性能を発揮するため、過酷な使用環境下でも安心して利用できる素材といえるでしょう。
加工性と成形のしやすさ
ポリカーボネート(PC)は、優れた機械的特性や光学性能に加えて、「加工のしやすさ」においても非常に優秀な熱可塑性樹脂です。
成形性が良く、複雑な形状の部品でも高精度で大量生産できることから、家電製品、自動車部品、光学部材、建材など幅広い分野で活躍しています。
まず、ポリカーボネートは「熱可塑性樹脂」であるため、加熱によって軟化し、冷却によって固化する性質を持ちます。
これにより、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形といった多様な成形方法が可能で、非常に自由度の高い加工が実現できます。
特に射出成形においては、寸法精度が高く、形状再現性にも優れているため、精密部品の製造にも適しています。
加工時の成形温度は約280〜320℃とやや高温ですが、熱安定性が高いため分解や変質が起きにくく、加工途中でのトラブルも少ないのが特徴です。
また、成形収縮率も0.5〜0.7%程度と低く、寸法変動が少ないことから、組立部品など寸法精度が要求される用途でも安心して使用できます。
切削加工においても、ポリカーボネートは比較的良好な切削性を示します。
CNC旋盤やマシニングセンタなどの一般的な切削機械で加工が可能で、バリやひび割れが出にくく、研磨や仕上げもきれいに仕上がるため、試作品や少量多品種生産にも対応しやすい素材です。
また、接着・溶着といった二次加工にも適しています。
例えば、超音波溶着や高周波溶着、さらには有機溶剤を用いた接着など、多様な接合方法に対応できるため、組立や複合部品の製造においても自由度が高いです。
ただし、ポリカーボネートは一部の有機溶剤(特にアセトンやクロロホルムなど)に対して化学的に弱いため、使用する接着剤や溶剤の選定には注意が必要です。
成形の自由度という観点では、薄肉成形やリブ構造の成形にも適しており、軽量化が求められる製品設計において大きなメリットとなります。
また、透明性を損なわずに成形できるため、透明カバーやレンズ類のように光学性能を必要とする用途にも最適です。
ただし、表面硬度がやや低いため、キズつきやすいという欠点もあります。
この点については、ハードコート処理などの表面処理を施すことで対応が可能で、近年では加工後にコーティングを一体で行う製法も普及しています。
まとめると、ポリカーボネートは成形温度や機械的な制御に対する許容範囲が広く、さまざまな加工方法に対応できる「加工適性の高い素材」といえます。
そのため、精密性、透明性、耐衝撃性などが求められる製品において、コストと品質のバランスを保ちながら高機能部品を実現できる非常に魅力的な樹脂です。
他素材との比較
アクリル樹脂(PMMA)との比較
ポリカーボネート(PC)とアクリル樹脂(PMMA)は、いずれも高い透明性を持つプラスチックであり、ガラス代替素材として多くの場面で競合する存在です。
しかし、それぞれの素材には明確な特性差があり、用途に応じた使い分けが重要です。
まず最もよく比較されるのが透明度と外観です。
アクリルは光透過率が約92〜93%と非常に高く、ポリカーボネートの約88〜90%と比べてもわずかに上回ります。
また、アクリルは透明感がクリアで、光沢も美しく、高級感を演出する用途(看板、ショーケース、インテリアパネルなど)に好まれます。
対して、ポリカーボネートはわずかに黄みを帯びることがあり、光学的美観という点ではややアクリルに劣ると評価される場合もあります。
しかし、衝撃強度の点では両者に大きな差があります。
アクリルはガラスの約10〜15倍の耐衝撃性を持つものの、ポリカーボネートはそのさらに10倍、つまりガラスの250倍ともいわれる驚異的な耐衝撃性能を有しています。
このため、防犯用の窓材、ヘルメットバイザー、飛散防止パネルなど、破損時のリスクが高い場面ではポリカーボネートが優先されます。
また、耐熱性でも違いがあります。
アクリルの連続使用温度は約70〜90℃とされ、熱に弱く変形しやすいのに対し、ポリカーボネートは約120〜130℃まで耐えられ、熱的安定性に優れています。
このため、熱のかかる照明カバーや家電筐体などではポリカーボネートの方が適しています。
一方で、表面硬度についてはアクリルの方が高く、キズがつきにくい性質があります。
ポリカーボネートは耐衝撃性に優れる分、柔軟性が高く、逆にキズがつきやすいため、ハードコート処理が必要となる場面が多いです。
加工性に関しては、両者とも熱可塑性樹脂であるため、加熱成形や切削加工が可能です。
ただし、アクリルは溶剤接着が容易で、美しい接合面を作れる一方、ポリカーボネートは一部の溶剤に弱く、応力クラックの原因になることがあります。
接着や溶着においては、慎重な材料選定と工程管理が必要です。
コスト面では、アクリルの方が一般的に安価であるため、コスト重視の用途ではアクリルが選ばれることが多いです。
逆に、価格が高くても安全性や耐久性を重視する場面ではポリカーボネートが優位です。
まとめると
特性項目 | ポリカーボネート | アクリル |
---|---|---|
透明性 | ◎(高いがPMMAに劣る) | ◎(非常に高い) |
耐衝撃性 | ◎(非常に高い) | ○(中程度) |
耐熱性 | ○(120℃前後) | △(80℃前後) |
表面硬度 | △(傷がつきやすい) | ○(やや硬い) |
加工性 | ○(切削・成形可能) | ◎(接着もしやすい) |
コスト | △(高価) | ◎(比較的安価) |
このように、両者にはそれぞれの強みと弱みがあり、用途やコスト、要求性能に応じて選定されます。
ABS樹脂との比較
ポリカーボネート(PC)とABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)は、いずれも工業用途で広く用いられる熱可塑性樹脂です。
しかし両者は性能・価格・加工性など多くの点で異なる特徴を持っており、目的に応じて適材適所で使い分けられています。
ときには「PC/ABS合金樹脂」として、両者の長所を融合させた材料も存在するほど、それぞれに独自のメリットがあります。
① 耐衝撃性と機械的強度の違い
ABS樹脂は耐衝撃性に優れた材料として知られますが、ポリカーボネートはそれをはるかに上回ります。
ABSはブタジエンゴムの成分によって靭性(粘り強さ)を付与されており、一般的なプラスチックよりも衝撃に強い一方で、ポリカーボネートのような「割れにくさ」「変形しても破断しない性質」には及びません。
例えばスマートフォンのケースや家電製品の筐体、玩具などの衝撃がある程度までしか想定されていない用途にはABSで十分対応できますが、ヘルメット、保護パネル、防弾素材など、安全性が重視される場面ではポリカーボネートが選ばれます。
② 耐熱性の違い
ABSの耐熱温度はおおむね80~100℃程度で、長時間の高温にはあまり強くありません。
これに対し、ポリカーボネートはTg(ガラス転移点)145℃前後を誇り、120℃以上の環境下でも使用可能です。
そのため、ドライヤーの部品、照明器具、車載機器など、発熱を伴う場面ではポリカーボネートの方が適しているといえます。
③ 加工性と成形性
加工性の面では、ABSの方が一般に優れています。
ABSは比較的低温で成形が可能(約200~240℃)で、流動性も良好であり、複雑形状や薄肉成形に向いています。
さらに塗装性・接着性も良く、二次加工しやすい素材です。
一方、ポリカーボネートは高温での成形が必要(約280~320℃)で、成形機にかかる負荷も大きくなります。
ただし、ポリカーボネートは低収縮で寸法安定性に優れるという長所があります。
④ 外観と表面性
ABSはツヤ消しやマット仕上げがしやすく、表面の風合いをコントロールしやすいため、外観重視の製品に適しています。
ポリカーボネートは透明性が高いため、見せる部品や光学部品に有利ですが、表面硬度が低くキズが付きやすいため、コーティング処理が必要な場合が多いです。
⑤ コスト比較
ABS樹脂は非常にコストパフォーマンスに優れた材料で、量産性の高い製品で重宝されます。
ポリカーボネートは性能が高い分、価格も高く、コスト制約がある場面では選定が難しいこともあります。
このため、機能と価格のバランスを取る必要がある場合には、「PC/ABS合金」が採用されることもあります。
⑥ 用途の違い
用途分野 | ポリカーボネート | ABS樹脂 |
---|---|---|
耐衝撃性が要求される部品 | ◎(ヘルメット、防犯窓) | ○(玩具、工具の外装) |
高温下での使用 | ◎(照明器具、車載部品) | △(50〜80℃程度が限界) |
外観・塗装性 | △(表面処理必要) | ◎(ツヤ、マット両対応) |
コスト重視の量産品 | △(高価) | ◎(安価) |
まとめ
ポリカーボネートは「高機能・高性能志向」、ABSは「コスト・加工性重視」という立ち位置です。
両者の特性を見極め、求められる強度、耐熱性、外観、コストのバランスを総合的に判断することで、最適な材料選定が可能になります。
ガラスとの性能比較と選定理由
ポリカーボネート(PC)は「透明で割れにくい」素材として、しばしばガラスの代替材料として選ばれます。
しかし、ポリカーボネートとガラスは構造材としての成り立ちや性質が根本的に異なっており、使い分けには明確な理由があります。
ここでは両者の性能を比較しつつ、なぜポリカーボネートがガラスの代替として選ばれるのか、その選定理由を詳しく解説します。
① 透明性・光学性能
ガラスは透明材料として長い歴史を持ち、透過率は約90〜92%と非常に高く、色の歪みも少ないため光学的に優れています。
ポリカーボネートもまた約88〜90%の透過率を持ち、肉眼での透明度はほぼ遜色ありません。
しかし光の屈折や分散という点では、ややガラスの方が有利で、特に高精度のレンズやプリズムなどには現在もガラスが使用されています。
ただし、ポリカーボネートは非結晶性(アモルファス)であるため、製造時の厚みによる透過率のばらつきが少なく、均質性が高いという長所があります。
また、曇り防止・UVカット・光拡散などの加工が容易なため、光学用途にも十分対応できる性能を持っています。
② 耐衝撃性
この点こそが、ポリカーボネート最大の強みです。
ガラスは圧縮には強いが、引張や曲げには非常に弱く、ちょっとした衝撃や落下で容易に割れてしまいます。
一方、ポリカーボネートはガラスの約250倍もの耐衝撃性を持ち、ハンマーで叩いても割れないほどの靭性があります。
さらに、割れた場合もガラスのように鋭利な破片にならず、安全性が非常に高いのです。
この特性は、建築用の防災パネル、暴風雨対策の窓材、学校・施設の天窓、銀行の防犯ガラス、さらには防弾ガラスの中間層にも応用されています。
③ 重量と施工性
ガラスの比重は約2.5に対し、ポリカーボネートは約1.2と半分以下の軽さです。
このため、大型の部材でも軽量化ができ、施工負担の軽減や躯体への荷重低減につながります。
特に屋根材や垂直面に取り付ける部品では、軽量性は設計上の大きなメリットになります。
また、加工性もポリカーボネートの方が優れており、現場での切断や穴あけも容易です。
④ 耐熱性・耐候性
ガラスは高温(数百度)にも耐える無機素材であり、紫外線や酸化にも強く、経年劣化しにくい素材です。
対してポリカーボネートはTgが145℃前後で、200℃を超えるような高温には向きません。
また、紫外線による黄変や劣化のリスクもあるため、屋外用途ではUVカット処理などの対策が必要です。
ただし、近年は耐候性を向上させたUVコート付きグレードや、紫外線吸収剤を添加した製品が主流となっており、長期屋外使用にも対応しています。
⑤ コストと経済性
素材単価としては、一般的にガラスの方が安価です。
ただし、施工時の破損リスク、重量による輸送・施工費、飛散防止対策などのトータルコストを考えると、ポリカーボネートの方が経済的になることもあります。
特に、破損時の安全性が重視される用途(学校・病院・交通機関など)では、初期費用がやや高くてもトータルで有利と判断されることが多いです。
⑥ 用途選定の実例
用途 | ガラスが優位 | ポリカーボネートが優位 |
---|---|---|
一般住宅の窓 | ◎(光学性・耐候性) | △(防犯目的なら◎) |
防犯・飛散防止パネル | ×(割れる危険) | ◎(非常に安全) |
屋根材・天窓 | △(重い・破損時危険) | ◎(軽量・施工しやすい) |
光学レンズ・プリズム | ◎(高精度対応) | ○(簡易レンズには十分) |
建築外装(看板等) | △(重く高コスト) | ◎(加工しやすく割れにくい) |
まとめ
ポリカーボネートは、ガラスにはない耐衝撃性と軽量性、施工性を備えており、安全性や作業効率を重視する用途ではガラスの強力な代替材となります。
反対に、光学性能の極限まで求められる用途や、高温・長期間の屋外使用などではガラスが依然として優位な場面もあります。
こうした両者の特性を的確に把握することで、最適な材料選定が可能となります。
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