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試作人基礎講座

公開日: | 更新日: | 試作人基礎講座

POM(ポリアセタール)とは?特性や長所、短所をご紹介♪

やってまいりました、材料解説シリーズ!!!!
本日はPOM(ポリアセタール)のご紹介です♪

必達試作人
必達試作人
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POM(ポリアセタール)とは

POMの試作品

プラスチックには様々な種類が存在します。
PU(ポリウレタン)のようにゴムのような弾性を持つ素材から、アクリルのように高い透明度を持つ素材、ナイロン(ポリアミド)のように繊維として使用される素材など、その特性は様々です。
そんなプラスチック素材の中において、特に機械的特性に優れるものをエンジニアリング・プラスチックと呼びます。

通常のプラスチックに比べて特に強度に優れ、耐熱性や耐摩耗性といった特定の機能が大幅に強化されているプラスチックとなります。
このエンジニアリング・プラスチックには、厳密な定義はありませんが、一般的に耐熱性に優れており、100℃以上の環境に長時間さらされたとしても、その機械的特性を失いません。

このように、エンジニアリング・プラスチックは、本来熱に対して弱いはずのプラスチックが大幅に強化されることで、軽量であるプラスチックの特性と、金属のような強度を併せ持つ素材と言えます。

POM(ポリアセタール)は、エンジニアリング・プラスチックのなかで5大汎用エンプラの1つに数えられる素材で、ポリアミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレートと並び称される素材です。
その特性は耐摩耗性に優れた素材で、自己潤滑性があります。
また剛性や靭性といった機械的特性にも優れ、高い温度安定性を持つ素材です。

POM(ポリアセタール)は、特にこうした特性から、金属の代替品として使用されることが多い素材です。
主な用途として、ギヤ(歯車)やベアリングといった回転するものや、グリップやフック、カバーといった耐久性が求められるパーツ類、最近ではリコーダーや木管楽器や金管楽器にも使用され、パーツとしての機能性が求められる部分に使用されることが多い材料です。

POM(ポリアセタール)の歴史

POM(ポリアセタール)を初めて開発したのは、世界第三位の化学会社デュポン。
1952年ごろに初めて合成された素材で、1956年に特許を取得、1960年になって製造が開始された素材です。
開発したデュポンによってDelrinⓇ(デルリン)の商標が登録され、POM(ポリアセタール)ではなくDelrinⓇの製品名で知られるようになりました。

また、POM(ポリアセタール)は、このDelrinⓇの他に、1961年にアメリカCelanese社(現Ticona社)によって開発され、ポリプラスチックス社によって販売されたジュラコンが登場します。
POM(ポリアセタール)は、分子構造によってホモポリマーとコポリマーの二種類に分類されるが、デュポンが開発したDelrinnⓇがホモポリマーであり、ジュラコンはコポリマーの代表格と言えます。

POM(ポリアセタール)は1960年代初頭に生産が開始され、すぐにその高い耐摩耗性からベアリング(軸受)に使用が開始されます。
その後も高い強度と滑らかな自己潤滑性、安価というメリットから徐々に広まり、ねじやギア、フルートやホイッスルといった楽器類などにも使用が広まっています。
また、それ以外にも電子機器関連のカバーやモジュールパーツ、自動車用部品など、強度や耐久性、耐摩耗性といった機能が要求される部分には、信頼性の高いプラスチック素材として普及しています。

POM(ポリアセタール)の長所と短所

POM(ポリアセタール)は、5大エンジニアリング・プラスチックとして優れた機能を持っています。
その特性はいくつかありますが、その中で最も代表的な機能が耐摩耗性と高い強度です。
POM(ポリアセタール)は、自己潤滑性が高いことから優れた摩耗性を持ち、同時に耐疲労性、高温下でも使用に耐える耐クリープ性を持ちます。
また電気的特性に優れ、電気絶縁性が高いという機能も持ち、電子機器関連のパーツ、カバー類などでの使用にも最適です。

さらには従来から金属に変わる素材として、ベアリングをはじめ、ギヤ(歯車)などの代替素材として活躍しています。
一方で、POM(ポリアセタール)にも欠点があります。
分子構造そのものに酸素が含まれているため、可燃性が高く燃えやすいという点です。
また、結晶性が高く透明性がないといった点もあります。
こうした特性はPOM(ポリアセタール)の一部の特性であり、以下にその長所と短所をまとめました。

POM(ポリアセタール)の長所

長所のイメージ

耐摩耗性:自己潤滑性が高く、プラスチックの中で最も高い耐摩耗性を持つ
機械的強度:高い引張強度を持ち、高温下での使用にも耐えうる
耐衝撃性:靭性が高く、高い耐衝撃性を持つ
耐クリープ性:高温の環境下においても、長時間の使用に耐えうる特性を持つ
弾性率:高い弾性と弾性回復率を誇る。バネにも使用される素材。
吸水性:吸水性が小さく、水による形状変化がない。
寸法安定性:寸法安定性が高く、小さい部品などにも最適。
電気絶縁性:電気絶縁性が高い。
温度性:高温から寒冷まで幅広い温度環境下での使用に耐える。
耐薬品性:耐薬品性や耐溶剤性に優れる。
後加工:レーザー加工や切削などに適している。

POM(ポリアセタール)の短所

難燃性:分子構造に酸素を含むため、難燃性がなく燃えやすい。
耐候性:分子構造に酸素を含むため、外部での使用で変化する。安定剤が必要。
接着性:接着性が悪く、適当な接着剤がない。溶接は可能。
耐酸性:強酸には弱い。(有機溶剤、アルカリには耐えうる)
透明性:透明性がない

POM(ポリアセタール)の製法と種類

POM(ポリアセタール)は結晶性プラスチックとして、オキシメチレン構造によるポリマーである。
ホルムアルデヒドのみが重合したホモポリマーと、ホルムアルデヒドにエチレンオキシドが加わったコポリマーの2種類に分かれます。
均質重合体であるホモポリマーのPOM(ポリアセタール)が、デュポン社が開発したDelrinnⓇであり、共重合体のコポリマーの代表格と言われるのが、ポリプラスチックス社のジュラコンです。

どちらもPOM(ポリアセタール)として使用されています。
このホモポリマーとコポリマーの性能の違いは、基本的にどちらもPOM(ポリアセタール)としての機能を持っているが、若干性能が異なります。
ホモポリマーの方が、融点が175℃と高く、結晶性も高いため、強度や耐熱性などがコポリマーよりも優れています。
一方でコポリマーは、融点がホモポリマーよりも10℃低く、結晶性が低いため、寸法安定性に優れる素材です。

また耐薬品性や耐アルカリ性などはホモポリマーよりも優れています。
どちらの素材もベースとなる特性は同じですが、若干性能が異なるため、使用する際には注意が必要です。
ちなみに一般的に販売されているPOM(ポリアセタール)のメーカーでは、ホモポリマーとして、デュポン社のDelrinⓇ、ティコナ社のCelConⓇ、旭化成のテナック、コポリマーとしてはポリプラスチックのジュラコン、旭化成のテナック、三菱ガス化学のユピタールなどがあります。

POM(ポリアセタール)の加工

加工のイメージ

POM(ポリアセタール)で作られる製品の多くが、エンドユーザー向けのコンシューマプロダクトというよりは、工業用で使用する製品が多いです。
ねじやベアリング、ギヤ(歯車)、カバー、ファスナー、クリップといった種類が多く、機械部品や自動車用部品、文房具類などでの使用が盛んです。
こうした工業用パーツとしての使用が盛んな理由は、エンジニアリング・プラスチックとしてのPOM(ポリアセタール)の高い性能にもよるが、その一方で加工の難しさという要因も少なからず存在します。

金型加工の難しさや、射出成形からブロー成形、押出成形に対応

POM(ポリアセタール)は、加熱して柔らかくし、冷却して硬化するといった熱可塑性樹脂の一種類ではありますが、結晶性が高く、さらには結晶化が早いといった特性を持つことから、金型を使った成形方法では射出成形やブロー成形が中心で、最近では押出成形に対応したグレードのPOM(ポリアセタール)も登場しています。
またPOM(ポリアセタール)の特性として熱収縮率が高く、金型への密着性は高くないため、扱いが難しい素材でもあります。

例えば、金型の表面に細かいシワ模様をつけて表面加工するシボ加工などには密着性が低いことから、細かい表面を再現することが難しく、向かない素材とも言えます。
POM(ポリアセタール)は、こうした独特の樹脂としての特性を持つことから、デザイン性が求められるコンシューマ向けプロダクトよりも、機能性が優先されるパーツ類での使用が盛んだと思われます。
ちなみにPOM(ポリアセタール)の成形方法で主流となるのが、高圧力で金型に押し込む射出成形となります。

金属の代替品として重宝されるベアリングの成形などでも射出成形が用いられます。
この場合は金属の周りをPOM(ポリアセタール)で成形するといったインサート成形という特殊な射出成形を用います。
インサート成形は、金属と樹脂といった異なる素材の組み合わせや、異なる色の成形、例えば、パソコンのキーボード、コンセントの電源プラグといったものにも使用される加工方法です。

切削やレーザー加工に適した素材

その一方で、切削加工には適しており、フライス加工などの機械加工には適しています。
また、レーザーカッターでの使用やレーザー加工に対応している素材で、レーザーでの文字入れなども可能な素材です。
例えばデザイン性が要求されるコンシューマプロダクトで使用する場合には、レーザー加工での刻印、文字入れなどができる素材として重宝されるでしょう。

例えば、単なる印刷による文字入れに比べて、高級感や重厚感を出すのにはレーザー加工が立体感も出せ、重厚感も出せます。
POM(ポリアセタール)はこうした加工にも使える素材です。

POM(ポリアセタール)の接着

POM(ポリアセタール)は、基本的に結合したり接着したりすることが極めて難しい素材です。
一般的な接着剤ではほぼ接着させることが不可能で、POM(ポリアセタール)を接着するためには特殊な方法が必要となります。
POM(ポリアセタール)を接着するためには大きく分類すると二つの種類があります。

一つ目が、表面加工と接着剤による接着。
POM(ポリアセタール)はそのままの状態では接着することができませんが、表面をエッチングなどで加工する事で接着することが可能となります。
エッチングとは表面加工の技法の1つで、化学薬品などを用いて表面を腐食させる加工方法です。
POM(ポリアセタール)の場合は高温でクロム酸でエッチング加工したのちに、エポキシ樹脂やポリウレタン製の接着剤で接着することが可能となります。

POM(ポリアセタール)を接着する第二の方法は、溶着です。
溶着とは、樹脂を接合する技術の1つで、熱可塑性樹脂を接着する技術です。
熱可塑性樹脂は加熱すると柔らかくなる特性を持っていますが、この溶着とは熱可塑性樹脂を融点を超えるまで加熱し、圧力を加え、分子レベルで結合させてしまおうという加工方法になります。
POM(ポリアセタール)は溶かして、分子レベルで結合させる溶着という方法で接着することが可能です。

強度と耐久性が求められるパーツに最適な素材

POM(ポリアセタール)は高度なエンジニアリング・プラスチックとして、高い強度や耐摩耗性が要求される製品に使用されます。
その代表的なものがギヤ(歯車)やベアリングといった回転運動が伴い、機械を稼働させるパーツ類です。
またブラシの柄やグリップ、フックといった強度が求められるプロダクトの素材として重宝される素材でもあります。
その分野は工業用パーツから楽器、日用品のパーツなど、エンジニアリング・プラスチックらしく強度と耐久性が要求される部分にパーツとして使用されることが多いです。

その一方で樹脂としての特性から金型での成形に限定があり、接着などもできないことから、適切な使用方法が求められる素材と言えます。
また、こうした熱可塑性樹脂としての難しい特性からか、新たな製造技術である3Dプリンター用の材料としては未だ登場していないのが現状です。

しかし、もともと押出成形には不向きであったものが対応可能なグレードが登場したりと、進化が進んでいます。
こうしたことから、今後のPOM(ポリアセタール)の開発動向にも注目したい素材です。

こちらの記事はi-MAKER様の記事を参照しております。

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株式会社アスク

【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
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