072-808-5555 電話でお問い合わせ
LINEでお問い合わせ

試作人基礎講座

公開日: | 更新日: | 試作人基礎講座

投影機とは?精密測定の「目」としての役割

投影機(プロファイルプロジェクター)は、工業製品や部品の外形、寸法、形状を高精度かつ非接触で検査するための光学機器です。
その基本的な仕組みは、ワークに光を当ててその影をスクリーン上に拡大投影し、あらかじめ定めたスケールやテンプレート、測定線と比較することで、寸法・角度・形状などを確認するものです。
視認性が高く、非接触で検査できるという利点から、精密加工部品や樹脂成形品などの外観チェックに多く用いられています。

投影機とは

投影機とは、工業製品や部品などの外形や寸法、形状を高精度かつ非接触で検査するための光学機器です。
一般に「光学投影機」あるいは「プロファイルプロジェクター」とも呼ばれます。
測定対象物(ワーク)に光を当ててその影をスクリーン上に拡大投影し、あらかじめ定めたスケールやテンプレート、測定線と比較することで、寸法・角度・形状などを確認する仕組みです。
とくに、視認性が高く、非接触で検査できるという利点から、精密加工部品や樹脂成形品などの外観チェックに多く用いられています。
投影機の基本的な構造は、主に以下の4つの要素で構成されます。
①光源、②投影レンズ、③測定ステージ(ワークを置く台)、④投影スクリーンです。
まず、内蔵された光源(ハロゲンランプやLEDなど)から照射された光が、ワークを透過または反射し、そのシルエット(影像)を投影レンズを通してスクリーンへ映し出します。
この投影レンズの倍率によって、ワークの画像が拡大され、操作員は拡大された影像を見ながら測定を行うという流れです。
投影される画像は、倍率が一定で歪みが少ないため、測定対象を明確に観察することができます。
また、スクリーン上には格子線や分度目盛などが設けられており、ワークの外形とこれらの基準線を重ねて見ることで、寸法や角度のズレを直感的に判断できます。 さらに、近年ではCCDカメラや画像解析ソフトを組み合わせ、デジタル表示や自動測定にも対応した投影機も登場しており、アナログとデジタルの両方の利点を取り込んだモデルもあります。
仕組みとしては非常にシンプルでありながら、目視で直接確認できるため、初心者でも扱いやすく、トレーニングの手間が少ないのも特徴です。
その一方で、測定の正確さは使用者の視力や慣れにも依存する側面があり、操作時には注意が求められます。
例えば、測定する際に焦点が合っていなかったり、視線の角度がずれていたりすると、測定値に誤差が生じやすくなります。
また、投影方式には大きく分けて「透過方式(透過投影)」と「反射方式(反射投影)」の2種類があります。
透過方式は、光を下から照射してワークを透かし、その影を上方のスクリーンに映すタイプで、透明または半透明のワークに適しています。
一方、反射方式は、上から光を当てて反射光を利用して投影するタイプで、金属部品など不透明な素材にも対応できます。
総じて、投影機は非接触で視認性の高い検査を実現する非常に有用な装置であり、精密測定の入門機器として多くの現場に導入されています。
次項では、その歴史的な背景と技術の進化について詳しく見ていきます。

投影機の歴史と進化

投影機(プロファイルプロジェクター)は、20世紀初頭に登場し、工業製品の寸法検査や品質管理のための代表的な光学測定器として長く活躍してきました。
その誕生の背景には、機械加工の精度向上とともに、製造現場での迅速な検査ニーズの高まりがありました。
とくに、金属部品の量産化が進んだ時代においては、複雑な形状や微細な寸法を効率よくチェックするための機器として、投影機の役割は非常に重要でした。
初期の投影機は、主に「アナログ式」であり、光源に白熱電球を用い、投影倍率も固定されたレンズを備えていました。
スクリーン上には格子目盛や分度線が描かれ、検査員が目視で拡大された形状と基準線を比較し、寸法の合否を判断するスタイルでした。
こうした投影機は、工作機械や金型などの部品製造現場で、シンプルな構造と扱いやすさから広く受け入れられていきました。
やがて、1960年代から1970年代にかけて、光学機器の技術向上により、投影精度や倍率のバリエーションが増え、用途の幅も拡大します。
照明に関しても、ハロゲンランプの登場により光量が安定し、視認性が向上しました。
また、この時期には透過方式と反射方式の両対応型も普及し、さまざまな素材への適用が可能となります。
ステージの移動精度や目盛スケールの改良により、数μm単位の精密測定も行えるようになり、「高精度測定機器」としての地位を確立していきました。
その後、1990年代以降になると、電子化・デジタル化の波が検査機器にも押し寄せ、投影機にも新たな変化が訪れます。
CCDカメラによる影像取り込みや、画像処理ソフトウェアとの連動により、従来は目視で行っていた測定や比較作業を自動化・半自動化することが可能となりました。
これにより、オペレーターの熟練度に左右されにくい、再現性の高い検査が実現されます。
さらに最近では、デジタル投影機(デジタルプロファイルプロジェクター)が登場し、スクリーンの代わりに高解像度モニターを使用するタイプも増えてきました。
光源には長寿命かつ高輝度のLEDが採用され、レンズもズーム式や多倍率対応の自動切り替え機構が搭載されています。
また、PCと接続してCADデータとの重ね合わせ比較や、測定データの自動記録・レポート出力なども可能となり、品質管理のデジタル化にも大きく貢献しています。
こうした進化の背景には、製造業のグローバル化とともに高精度・高速・省人化といったニーズが高まったことがあります。
特に医療機器や電子部品、半導体部品などのマイクロ精密部品では、数μm単位の測定精度が求められ、それに対応できる投影機の高度化が不可欠でした。
今日では、投影機は「古典的」な検査機器でありながら、その基本原理は変わることなく、用途や精度要求に応じて進化を遂げてきました。
デジタル技術との融合により、今なお第一線で活躍する測定機器のひとつといえるでしょう。

類似機器との違い(顕微鏡・測定顕微鏡など)

投影機と機能が似ている光学測定機器としては、「実体顕微鏡」「測定顕微鏡」「デジタルマイクロスコープ」などが挙げられます。
これらはいずれも拡大観察や寸法測定が可能ですが、構造や使用目的、測定精度、操作方法などに明確な違いがあります。
ここでは、特に「顕微鏡」「測定顕微鏡」との違いに焦点を当てて、それぞれの特徴や使い分けについて詳しく説明します。

■ 投影機と顕微鏡の違い

まず、実体顕微鏡(ステレオ顕微鏡)との違いについてです。
実体顕微鏡は、拡大率が比較的低く(一般に5〜50倍程度)、立体的な視野で観察できるのが特徴です。
対象物を上から斜めに照明し、両眼で観察する構造となっているため、凹凸や立体構造を把握しやすく、はんだ付けや微細な部品の外観チェック、組立作業などに適しています。
一方、投影機は平面方向の寸法や輪郭形状を正確に観察・測定するために設計されており、立体感の把握には適していません。
また、投影機では基本的に影像(シルエット)を測定するため、材質や表面状態に関係なく輪郭精度の測定が可能です。

■ 投影機と測定顕微鏡の違い

次に、測定顕微鏡との違いについてです。
測定顕微鏡は、投影機よりも高倍率(最大で数百倍)での観察・測定が可能で、微細加工部品や微小形状の検査に適しています。
通常、CCDカメラと画像処理ソフトが付属しており、画面上で対象物を精密に測定できる点が特長です。
投影機では全体的な輪郭や角度・形状の比較が得意であるのに対し、測定顕微鏡は部分的な詳細寸法(小径穴、微細段差など)を精密に測定したい場合に向いています。
構造的にも、測定顕微鏡は対物レンズを上下させてピントを調整し、ステージをX・Y方向に移動させて測定対象を確認します。
対して投影機は、ワークを置いたステージ全体を動かすことで測定位置を調整し、スクリーンに映された輪郭と基準線で比較測定を行います。
測定結果の出力方法も異なり、測定顕微鏡はデジタル表示や自動記録が前提であるのに対し、古典的な投影機は目視による読取りが中心です(※近年はデジタル対応型も増加中)。

■ 適材適所での使い分け

このように、投影機は「外形や輪郭形状の比較・寸法測定」に特化しており、工程内検査や製造ラインでのスピーディな判断に向いています。
一方、顕微鏡や測定顕微鏡は「表面状態の観察」や「高倍率の微細寸法測定」に優れており、研究開発や品質保証部門での詳細評価に適しています。
たとえば、切削工具の摩耗状態を観察するには顕微鏡が適し、部品のシャフト径をチェックするには投影機、マイクロホール径を精密測定するなら測定顕微鏡が有効です。
また、測定者のスキルにも違いが出ます。
投影機は視認性が高いため比較的初心者でも扱いやすい一方、測定顕微鏡ではピント調整や測定操作に一定の熟練が求められる場面もあります。
さらに、導入コストの面では、アナログ式投影機は比較的安価に導入できるのに対し、デジタル測定顕微鏡は高機能である分、コストも高くなる傾向にあります。

投影機の構造と主要部品

投影機

光源・レンズ系の役割と種類

投影機の中でも、光源とレンズ系は「像を作る」ための中核的な役割を担っています。
正確な測定や観察を行うには、ワーク(被検査物)を明るく均一に照らし、その影像を歪みなく拡大する必要があるため、これらの部品の品質や性能は、投影機全体の精度や使い勝手に大きく影響します。

■ 光源の役割と特徴

投影機の光源は、ワークに対して光を照射し、その影をスクリーンに映し出すための基本的な要素です。
一般的に「透過型投影機」では、ワークの下部に光源が配置され、上向きに照射する構造となっています。
このとき、ワークの形状に沿って光が遮られたり透過したりすることで、スクリーンには明暗のコントラストで構成された影像(シルエット)が映し出されます。
従来、光源には白熱灯(タングステンフィラメント)が使用されていましたが、寿命が短く、点灯時の温度上昇が激しいという欠点がありました。
これに代わって、現在では「ハロゲンランプ」や「LED光源」が主流になっています。
ハロゲンランプは明るくて安定した発光が可能で、多くのアナログ型投影機に搭載されてきましたが、近年は「長寿命」「低発熱」「省電力」といった特徴を持つLED光源にシフトしつつあります。
LED光源は、点灯直後から明るさが安定するためウォームアップ時間が不要で、頻繁なON/OFFにも耐えることから、作業効率の向上にもつながります。
また、寿命が長く交換の手間が少ないため、メンテナンス性の面でも有利です。

■ レンズ系の役割と倍率

光源によってできた影像を拡大し、正確にスクリーンへ投影するのが「投影レンズ」の役割です。
投影レンズは、焦点距離(f値)によって投影倍率が異なり、代表的な倍率には1×、5×、10×、20×、50×、100×などがあります。
倍率が高くなるほど、より微細な部分まで詳細に観察できますが、同時に視野(画面に映る範囲)が狭くなり、光量不足にも注意が必要です。
一般的な投影機では、レンズを交換式にしており、ワークの大きさや測定箇所に応じて最適な倍率を選ぶことが可能です。
高倍率レンズでは、色収差や像のゆがみが目立ちやすいため、複数枚のレンズを組み合わせたアクロマート設計やアポクロマート設計など、高精度の補正が施されています。
また、高精度な投影機では、ズーム機構付きの可変倍率レンズを備えているモデルもあり、倍率を変えるたびにレンズを交換する手間が省けるため、作業効率が向上します。

■ レンズと光源の組み合わせによる投影性能

光源とレンズは単独で機能するものではなく、投影精度を確保するためにはその組み合わせが極めて重要です。
たとえば、高倍率レンズを使用する場合、明るく均一な照明が求められるため、高出力LEDや集光装置を備えた光学系が必要となります。
一方、低倍率で広視野の観察を重視する場合は、逆に過剰な光量は不要で、影像全体のコントラストを重視した光源調整が重要になります。
また、反射投影機では、斜め上方向から照明を当て、表面反射を利用して影像を作るため、反射角度や拡散特性を考慮した光源設計が必要となります。
このため、透過式と反射式では使用される光学部品が一部異なることもあります。
このように、投影機の性能を左右する光源とレンズ系は、用途や対象物に応じた適切な選定と組み合わせが不可欠です。
精度重視か、操作性重視か、あるいはコストやメンテナンス性を優先するかによっても、選ぶべき仕様は異なります。

スクリーン・投影面の特徴

投影機における「スクリーン(投影面)」は、測定対象物の影像を映し出し、観察・測定を行うための最終表示面です。
スクリーン上に明瞭な影像を正しく表示できるかどうかは、視認性や測定精度、作業効率に大きく影響するため、スクリーンの構造や設計、加工精度は非常に重要な要素といえます。

■ スクリーンの構造と設計

投影機のスクリーンは、通常、円形または正方形のガラスまたはアクリル板でできており、その表面には目盛や基準線が正確に印刷されています。
投影倍率に応じたスケールや角度線、直交線(X・Y軸)などが配置され、オペレーターが投影された影像とこれらの基準を照らし合わせて、寸法・角度・位置関係を視覚的に確認できるよう設計されています。
スクリーンは透過性ではなく、影像を受け取る反射面です。
したがって、明るい照明環境でも反射や映り込みを抑えるよう、表面には光の乱反射を防ぐマット処理や反射防止コーティングが施されています。
投影面の背景は、コントラストの確保と目の負担軽減のため、中間色(グレー系)に設定されていることが多く、投影されたシルエットとの明暗差で輪郭が明瞭に浮かび上がるようになっています。

■ 表示目盛と測定補助機能

スクリーン上には、以下のような補助目盛が印刷されており、測定作業をサポートします。
・直線目盛(X・Y軸方向):水平方向と垂直方向に引かれた基準線。位置合わせや並行・直角の確認に使用。
・分度線(角度目盛):中心を起点に放射状に描かれた目盛で、角度測定や傾きの判定に使用。
・十字線(クロスライン):中央に交差した線で、対象物の中心合わせや原点基準の設定に利用。
・リング目盛(サークルスケール):円形の目盛が描かれており、同心円や曲線部品の比較に有効。
これらの目盛は投影倍率に合わせて設計されており、1×用、10×用など倍率ごとに専用スクリーンが採用される場合もあります。
また、スクリーンの目盛精度は非常に高く、μm単位で印刷されているものもあり、正確な寸法測定に不可欠です。

■ スクリーンのサイズと視認性

スクリーンのサイズも、作業効率と密接に関わっています。
一般的には直径300mm〜600mm程度のものが多く、表示される影像が大きければ大きいほど、細部の確認や測定がしやすくなります。
一方で、スクリーンが大きいと投影光学系の設計も難しくなり、装置自体が大型化する傾向があります。
近年のデジタル投影機では、物理的なスクリーンを使わず、モニターに影像を表示するタイプも増えており、画面上に拡大画像と電子スケールを重ねて表示することができます。
これにより、スクリーンの摩耗や目盛の読み取りミスを回避しつつ、画像保存や自動記録にも対応可能となっています。

■ 投影像の歪みと補正

スクリーンに映し出された影像の歪みは、測定結果に大きな誤差をもたらすため、極力抑えなければなりません。
歪みの主な原因には、投影レンズの収差、スクリーンの湾曲、ステージの傾きなどがあり、高精度な機種ではこれらを補正するための機構や校正ソフトウェアが組み込まれています。
また、定期的に行われるトレーサビリティ校正においても、スクリーンの精度検査は重要なチェックポイントとなります。
このように、スクリーンは投影機の「目」とも言える重要な構成要素であり、精度・見やすさ・機能性のすべてが測定作業の正確性と効率を左右します。
使いこなすためには、スクリーンの目盛読み取りや照明条件の調整といった基本操作の理解が欠かせません。

測定ステージとスケール機構の解説

投影機における測定ステージとスケール機構は、ワーク(被検査物)を正確な位置に保持し、寸法を定量的に測定するための心臓部ともいえる存在です。
いくら高精度な光学系やスクリーンを備えていても、ステージやスケールが不正確であれば正しい測定はできません。
この項では、測定ステージの構造や移動方式、スケール機構の種類と特徴、そしてそれぞれの精度・操作性について詳しく解説します。

■ 測定ステージの構造と可動域

測定ステージとは、ワークを固定して投影機にセットするためのテーブル状の構造です。
ステージはX軸(左右方向)・Y軸(前後方向)にスライド移動できる構造を持ち、測定対象を画面中央などの観察・測定しやすい位置に調整する役割を果たします。
ステージの可動範囲(移動量)は機種によって異なりますが、一般的な機種ではX軸・Y軸ともに50〜200mm程度の可動域を持っています。
大型投影機や自動測定対応のモデルでは、300mm以上の広範囲な移動に対応するステージも存在します。
ステージ自体は、高硬度アルミや精密研磨鋼などで構成され、熱変形や摩耗を抑える設計が施されています。
また、Z軸(高さ方向)はピント調整に使用されるため、ステージ全体が上下できる構造を採用している場合もあります。
このZ方向の動きにより、ワークの厚みや凹凸に合わせて焦点を合わせ、鮮明な影像を得ることができます。

■ ステージの操作方式(手動 vs. 自動)

投影機のステージには大きく分けて「手動式」と「自動式」の2種類があります。
・手動式:マイクロメーターヘッドや送りハンドルを用いて、オペレーターが手動でステージを動かす方式です。構造がシンプルで故障リスクが少なく、初期導入コストも抑えられるため、工程内検査や教育用途に広く使われています。
・自動式(CNC制御):モーターと制御装置によってステージを自動で移動させる方式です。自動測定プログラムに従って複数箇所の測定を連続的に実行できるため、検査時間の短縮やヒューマンエラーの防止に効果的です。高精度・大量測定を要する品質保証部門や量産工場で多く採用されています。

■ スケール機構の種類と測定精度

測定ステージの位置を正確に数値化するためには、「スケール(目盛)」が必要です。
投影機では、ステージの移動量を検出して数値表示するスケール機構として、以下のような方式が用いられています。
・メカニカルスケール(アナログ目盛):ダイヤルゲージやマイクロメーターを用いた方式。安価で構造がシンプルですが、読み取りに習熟が必要で、操作ミスや視差誤差が生じやすいという難点があります。
・ガラススケール(デジタルリニアスケール):ステージの移動に応じてガラスに刻まれた目盛パターンをセンサで読み取り、位置をデジタル表示する方式。最小表示単位は1μm〜0.1μmと高精度で、再現性・信頼性に優れています。多くの中〜上位機種に搭載されています。
・マグネティックスケール:磁性体上のパターンをセンサで読み取る方式。油や汚れに強く、過酷な環境でも安定した精度が得られますが、ガラススケールほどの分解能は持たないことが多いです。
これらのスケールと連動した「表示ユニット(カウンタ)」も重要です。
最新機種では、測定値をデジタル表示するだけでなく、角度計算や比較測定、合否判定などの機能が統合されており、測定作業の効率化に大きく寄与しています。

■ 測定精度と操作性のバランス

測定ステージとスケールは、単なる構造部品ではなく、投影機の「精密な測定能力」を担う中心的な機構です。
これらの設計と品質によって、測定精度(例:±2μm以下)、再現性、操作時の滑らかさが大きく左右されます。
また、オペレーターの操作負担を軽減するため、軽いタッチで移動できるリニアガイド方式や、ストッパー付きのクランプ機構なども導入されています。
こうした細部の工夫が、測定の効率と信頼性を支えています。
このように、測定ステージとスケール機構は、投影機の正確な寸法測定を支える不可欠な要素です。
装置の選定や使用時には、光学系だけでなく、これら機構の精度・操作性・拡張性にも目を向けることが、安定した測定結果を得るための鍵となります。

回転機構と角度測定機能

投影機における回転機構と角度測定機能は、主に「角度付きの寸法」や「斜め方向の特徴」を測定・観察する際に欠かせない機構です。
ワークの向きを正確に変えたり、指定の角度で測定を行ったりすることで、直線測定では対応できない幾何公差の確認や複雑な形状の評価が可能となります。
この項では、回転ステージの仕組み、角度目盛の読み取り方法、そして角度測定の実際について解説します。

■ 回転ステージの役割と構造

投影機には、ワークの角度を自由に調整できる「回転ステージ(ロータリーステージ)」が備えられているモデルが多くあります。
これは、測定ステージまたはその中心部に設けられた円形のテーブル部分で、中心軸を回転させることにより、ワークを0~360度の範囲で任意の角度に回転させることができます。
この回転により、例えば斜め45度に傾いたエッジを水平方向に合わせ、長さや位置を測定したり、特定の角度で加工された穴やスリットの配置角度を正確に評価したりできます。
回転機構には以下のような構造が用いられます。
・ベアリング支持構造:滑らかでガタつきの少ない回転を可能にする精密ボールベアリングを使用。精密測定に対応。
・クランプ機構付き:回転させた後に任意の位置で固定できる機構。測定中のブレやズレを防ぎます。
・ゼロリセット機能:回転角度を0°に設定できる初期位置調整機能があると、繰り返し測定や比較が容易になります。

■ 角度目盛(分度目盛)の設計

多くの投影機では、スクリーンまたはステージ上に角度目盛(分度目盛)が印刷または刻印されています。
これにより、回転ステージの現在の角度を読み取りながら、正確な方向合わせが可能です。
代表的な目盛の種類には以下があります。
・粗目盛(5°~10°単位):目視で素早くおおよその角度を確認。
・細目盛(1°~0.1°単位):高精度測定に対応したマイクロ分度目盛。
・バーニヤスケール(副尺):最小読み取り単位をさらに細かくする補助スケール。
高精度機種では、デジタル表示の角度センサー(エンコーダ)を備えた回転機構も存在し、リアルタイムで角度を数値表示しながら測定作業を行えます。
角度センサーの分解能は0.01°~0.001°のものもあり、非常に微細な傾きや回転の測定が可能です。

■ 角度測定の実践と応用例

角度測定は、単に角度を読み取るだけではなく、形状評価や組立誤差の判定など、さまざまな工程で活用されます。
以下はその代表的な例です。
・加工部品の傾斜角度確認:切削やプレスで形成されたテーパー部や斜面の角度を投影して確認。
・穴位置の偏差評価:基準点からの放射状配置や等間隔配置のズレを角度として評価。
・ギアやカムの歯形測定:回転させながら各歯の傾きや対称性を確認。
・時計・機械部品の組立検査:微細な角度差が動作に影響する精密部品で重要。
また、CNC制御の投影機では、角度設定を自動化し、複数の測定ポイントをプログラムによって連続測定することが可能です。
これにより作業者の負担軽減と信頼性の高いデータ取得が両立します。

■ 精度確保のための注意点

角度測定の精度を保つには、いくつかの留意点があります。
・ゼロ合わせの正確性:回転ステージの基準位置(0°)を正確に合わせることが前提条件。
・スクリーンとの視差対策:角度読み取り時の視点ずれを防ぐため、目線は常に垂直に保つ。
・クランプの適正使用:測定時に回転が動かないよう、必要に応じてステージを確実に固定。
・熱変位の防止:長時間の使用で機構が温まると微細な膨張が生じるため、安定した室温環境が望ましい。
このように、回転機構と角度測定機能は、寸法だけでなく形状や傾斜の評価を行う上で非常に重要です。
特に精密加工品や複雑な幾何形状の評価においては、この機構の有無が測定の成否を大きく左右します。

投影機の主な種類と用途別分類

投影機は一見すると同じような外観を持っていますが、用途や精度要求に応じて様々な種類が存在します。
製造現場、品質管理部門、研究開発など、使われる現場や目的に応じて適切なタイプを選ぶことが重要です。
この項目では、投影機の代表的な分類と、それぞれの特徴・適した使用環境について解説します。

光学式投影機(アナログ型)

光学式投影機は、もっとも古くから使われている伝統的なタイプです。
オペレーターが肉眼でスクリーン上の影像を観察し、目盛を使って寸法や角度を読み取ります。

特徴:

・レンズによる拡大投影方式で、ワークのシルエットを鮮明に表示。
・測定は主に手動で行い、スケールやマイクロメーターによる読み取りが中心。
・電子制御部が少なく、故障しにくく長寿命。

主な用途:

・加工現場での工程内検査。
・シンプルな形状の部品測定(ネジ、Oリング、プレス部品など)。
・導入コストを抑えつつ、基本的な寸法確認をしたい場合。

メリット・デメリット:

メリット デメリット
シンプルで扱いやすい 測定に熟練が必要
機構が単純でメンテナンス性良好 データ保存や自動処理ができない
導入コストが比較的低い 精度の高い比較測定に限界あり

デジタル式投影機(ハイブリッド型)

投影機

デジタル式投影機は、光学式の良さを活かしつつ、画像処理やデジタル表示を組み合わせた進化型です。
操作性や測定効率の向上が図られています。

特徴:

・CCDカメラを通して投影像をモニターに表示。
・測定値はスケールと連動したデジタル表示(X・Y値、角度など)。
・ソフトウェアによる画像比較・計測が可能。

主な用途:

・品質保証部門での記録付き測定。
・図面との比較や輪郭検査。
・効率化とデータ管理を両立したい現場。

メリット・デメリット:

メリット デメリット
誰でも簡単に高精度な測定が可能 光学式より本体価格が高くなる傾向
測定データの保存・出力ができる 定期的なソフトウェアメンテナンスが必要
自動化・検査の標準化がしやすい 機能を活かすには教育が必要なこともある

CNC投影機(全自動型)

CNC投影機(Computerized Numerical Control)は、測定工程を完全に自動化したタイプで、複雑な部品や大量測定に対応可能です。

特徴:

・ステージ移動、フォーカス、測定、合否判定まで自動で実行。
・プログラム設定により同一形状の繰返し測定が可能。
・工場のIoT化・自動化の中核機器として使用。

主な用途:

・製品出荷前の最終検査。
・同一部品の大量連続検査。
・多点測定が必要な精密部品や医療機器部品。

メリット・デメリット:

メリット デメリット
大量測定や複雑測定が短時間で可能 導入コストが非常に高い
ヒューマンエラーの低減・トレーサビリティ向上 専門的な知識・設定技術が必要
測定作業を夜間・無人化可能 装置のメンテナンス体制が重要になる

特殊用途型投影機(カスタムモデル)

標準機では対応できない特殊な測定ニーズに応じて、機能や構造をカスタマイズした投影機です。

例:

・大型スクリーン投影機:直径800mm以上の大物ワークの測定用。
・斜め投影対応型:傾斜構造物や非対称部品の正確な影像取得に対応。
・クリーンルーム対応型:半導体・医療業界向けに防塵・抗菌仕様。

用途:

・航空機部品、自動車エンジン部品、精密医療機器など。
・特殊素材(反射性、透明性など)を扱う現場。
・高度な信頼性・環境適応性が求められる測定現場。

このように、投影機は単なる「拡大装置」ではなく、測定精度、効率、データ管理、工程自動化といった目的ごとに最適なタイプを選択する必要があります。
導入を検討する際には、現場の要求精度、測定対象のサイズ・材質、作業者のスキル、予算などを総合的に考慮することが重要です。

試作全国対応!
簡単・最短1時間お見積り

アスクならこんなお困りごとを解決します!

  • 他社では納期が間に合わないと言われた
  • 急な設計変更があった
  • 他社ではできないと言われた
  • 海外調達品の手直し・追加工
今すぐ無料でお見積りを依頼する

もっとアスクの事を知りたい!という方は
こちらもご覧ください!

株式会社アスク

【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
知っているようで知らない加工に関する知識をお届けします!

他、ブログ記事もご覧ください♪

動画の投稿もしておりますので良ければご覧ください♪