S10Cの強度や加工性など解説していきます!
本日は材料解説シリーズ~S10C編~です。
強度や硬度、加工性など解説していきますので、是非ご覧ください♪
S10Cとは
S10Cは、JIS G4051(機械構造用炭素鋼鋼材)で規定された鋼材です。
機械構造用炭素鋼は、S-C材と呼ばれ、キルド鋼から合金鋼と同様の管理で製造されるので高品質です。
その中でS10Cは、ハダ焼き(浸炭焼入れ)専用鋼であるS09CKを除けば、最も炭素量が低い鋼材であり、柔らかく、冷間加工に適しています。
また、浸炭焼入れを行って使用されることも多い材料です。
浸炭焼入れして使う材料としてはS09CK、S15CK、S20CKがありますが、そこまで厳密な成分管理を必要としない、一般的な用途に適した材料です。
S10Cの機械的性質
浸炭焼入れして使う場合は、200℃程度での低温焼戻しで使用されますので、表面硬さはHV650~700になります。
炭素が拡散されない中心部は、HV150程度になります。
表面だけ硬くて中が柔らかいと、いわゆる豆腐に薄氷のような状態となり、表面が割れやすくなるので注意が必要です。
下記は、旧JISに掲載されていた、直径25mmの標準試験片での物性値です。
もっと太い材料の場合は、質量効果により強度が低下しますので注意が必要です。
熱処理 | 降伏点 MPa |
引張り強さ MPa |
伸び % |
絞り % |
シャルピー 衝撃値 J/㎠ |
硬度 HB |
焼きならし | 205以上 | 310以上 | 33以上 | - | - | 109~156 |
焼きなまし | - | - | - | - | - | 109~149 |
焼入れ焼戻し | - | - | - | - | - | - |
S10Cの熱処理
熱処理条件
焼きならし | 焼きなまし | 焼入れ | 焼戻し |
900~950空冷 | 約900炉冷 | - | - |
浸炭焼入れは、930℃程度で3~4時間浸炭後、そのまま800℃まで下げて、焼入れを行います。
その後、200℃程度で低温焼戻しして使用します。
S10Cの物理的性質
下記の値は必ずしもS10Cそのものではなく、炭素量が近い炭素鋼の値となりますので、参考程度としてください。
特に熱伝導率や固有抵抗は、成分のバラツキによる変動が大きくなりますのでご注意ください。
物理的性質 | 物性値 |
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | 206 |
横弾性係[GPa] | 79 |
ポアソン比(常温) | 0.27~0.29 |
密度[g/㎤] | 7.86 |
比重 | 7.86 |
融点[℃] | 1770 |
熱伝導率[W/(m・K)] | 57~60 |
熱膨張係数[10-6/K] | 11.3~11.6 |
固有抵抗[10-8Ω・m] | 13.3~13.4 |
比熱[J/(kg・K)] | 0.474~0.477 |
S10Cの使い方と注意事項
S10Cの用途
S10Cの用途は、柔らかさを生かして冷間加工する部品、良好な溶接性が必要な部品、浸炭焼入れして使用する部品などです。
強度は低いですが、浸炭焼入れすることで表面に圧縮応力が残り、疲労強度が必要な用途にも適しています。
S10Cの加工性
S-C材の切削加工性は良好ですが、その中でもCが少ないS10Cは、粘りがあるので切削性はやや劣ります。
やわらかいので塑性加工は容易にできます。
S10Cの浸炭焼入れ
浸炭焼入れ専用鋼として、S09CKが用意されていますが、S10Cでも問題なく浸炭焼入れが可能です。
S20Cなどでの浸炭焼入れと比較して、中心部が柔らかくなるので強い面圧をかけた場合などにへこみができると表面が割れることがあります。
有効浸炭深さ(HV550)から中心部にかけての硬度分布が急変しないように、炭素の拡散時間を長くするなど熱処理条件を工夫すると好結果が得られます。
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