材料解説シリーズ~S20C編~
本日はS20Cについて解説していきます。
機械的性質や用途、注意点など解説していきますので、是非ご覧ください♪
S20Cとは
S20CはS25Cと並び、熱処理しないで使用する低炭素鋼としてよく使われています。
炭素量のSS400と比べると、S20Cはキルド鋼であることや、成分が保証されることから高品質となります。
S20Cは浸炭焼入れによって強度を高めることもでき、溶接も可能なため、用途を選ばず使用できる材料です。
S20Cの機械的性質
S20C以下の鋼種は、浸炭焼入れすることもできます。
浸炭焼入れの場合、200℃程度の焼き戻し後、表面硬さはHV650~700程度になります。
中心部はHV200程度となります。
冷間引抜き加工されたみがき鋼棒(S20C-D)は、焼きならし状態の引張り強さよりも強くなります。
下記は、旧JISに掲載されていた、直径25mmの標準試験片での機械的性質です。
もっと太い材料の場合は質量効果により強度が低下するので注意が必要です。
熱処理 | 降伏点 MPa |
引張り強さ MPa |
伸び % |
絞り % |
シャルピー 衝撃値 J/㎠ |
硬度 HB |
焼きならし | 245以上 | 400以上 | 28以上 | - | - | 116~174 |
焼きなまし | - | - | - | - | - | 114~153 |
焼入れ焼戻し | - | - | - | - | - | - |
S20Cの熱処理
S20CのJISに規定された基本的な熱処理条件は下記のとおりです。
必ずしもこの通りである必要はなく、必要な強度や硬さを得るために熱処理条件は変更すべきです。
焼きならし | 焼きなまし | 焼入れ | 焼戻し |
870~920℃空冷 | 約860℃炉冷 | - | - |
熱処理条件はあくまでも基本であり、必ずしもこの通りである必要はありません。
浸炭焼入れは、930℃程度で3~4時間浸炭後、そのまま800℃まで下げて、焼入れを行います。
その後、200℃程度で低温焼き戻しして使用します。
S20Cの物理的性質
S20Cのヤング率などの物性値は、下表のとおりとなります。
ただし下記の値は必ずしもS20Cそのものではなく、炭素量が近い炭素鋼の値となりますので、参考までにしてください。
特に熱伝導率や固有抵抗は、成分のバラツキによる変動が大きくなりますのでご注意ください。
物理的性質 | 物性値 |
縦弾性係数(ヤング率)[GPa] | 205~206 |
横弾性係数[GPa] | 79~82 |
ポアソン比(常温) | 0.27~0.29 |
密度[g/㎤] | 7.84~7.86 |
比重 | 7.84~7.86 |
融点[℃] | 1660~1770 |
熱伝導率[W/(m・K)] | 44~60 |
熱膨張係数[10-6/K] | 10.7~11.6 |
固有抵抗[10-8Ω・m] | 13.3~19.7 |
比熱[J/(kg・K)] | 0.474~0.494 |
S20Cの使い方と注意事項
S20Cの用途
S20Cは、切削加工して生材のまま使用する小部品全般に適します。
浸炭焼入れも可能で、母材の強度は低いですが、浸炭焼入れすることで表面に圧縮応力が残り、疲労強度が高くなります。
S20Cの切削加工性
S-C材の切削加工性は良好ですが、その中でもS20Cは柔らかく切削性がやや劣ります。
NC旋盤加工などの場合、切りくずが絡むなどの問題が起こりがちです。
切削性改善のため、S20Cに鉛を添加した鉛快削鋼(S20CL、S20CFなど)も流通しているので、大量生産の場合は適用も考慮すべきです。
ただし鉛については、自動車メーカーなどで非鉛化が検討されており、RoHS(EUの特定有害物質の使用制限)などの規制にて、今後使用できなくなる可能性もあります。
S20Cの溶接性
SS400よりも、S20Cの溶接性は良好で、安定した品質の溶接が可能です。
炭素当量が低いので、溶接熱影響部があまり硬化せず、割れなどのトラブルの心配が少ない材料です。
S20Cの浸炭焼入れ
S20Cを浸炭焼入れして用いた場合は、表面はもちろん、中心部の強度も高くなるので、強度が要求される部品にも適します。
SS400との使い分け
S20Cの焼準の機械的性質を見ると、400MPa以上となっていて、ちょうどSS400と同じになっています。
SS400には炭素量の規定がありませんが、通常0.2%前後のことが多くこれもS20Cに近くなっています。
品質
S-C材は成分規定があり、品質が安定しています。
S-C材はキルド鋼から、合金鋼と同様の管理のもと製造されます。
SS材も現在は連続鋳造で作られるためキルド鋼が多くなっていますが、一部まだリムド鋼のものもあります。
リムド鋼の場合は脱酸が不十分で、リンや硫黄の偏析が多く、組織が不均質で材料欠陥が多いため、低温脆性を示す可能性もあり、信頼性の要求される用途には向きません。
使い方
SS材でも溶接はほとんどの場合、問題なくできます。
しかし、品質の劣るSS材もあるので、トラブルを起こすこともあります。
はだ焼入れなど熱処理もできますが、SS材はばらつきが大きく浸炭焼入れすると異常組織になりやすくなります。
よって、SS材は基本的に生のまま使います。
溶接する場合、信頼性の要求される部品の場合は、S-C材を選ぶべきです。
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