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試作人基礎講座

公開日: | 更新日: | 試作人基礎講座

TIG溶接の特徴や加工方法お伝えします!

本日はTIG溶接について解説していきます!
特徴や加工方法などお伝えしていきますので、是非ご覧ください♪

必達試作人
必達試作人
TIG溶接について学んでいってください

TIG溶接とは

溶接

TIG溶接は、Tungsten Inert Gas(タングステン不活性ガス)溶接を略したもので、アーク溶接法の一種です。
そのアーク溶接法の中でも、タングステンを電極に用いた非溶極式に分類され、溶接部をアルゴンなどの不活性ガスでシールドしながら、必要に応じて溶加材を溶かしこんで溶接する方式です。

アーク溶接

溶接には、融接、圧接、ろう接の3種類の方法があります。
これらの方法は、被溶接材料(母材)を接合しますが、TIG溶接は融接による溶接法の一つです。

溶接の種類

●融接・・・熱で母材を溶かし、必要に応じて溶かした溶加材を加え、凝固させて接合する。
●圧接・・・圧力を母材に加えて接合する。
●ろう接・・・母材を溶かすことなく、溶加材のみを溶かし、溶加材を接着剤のように用いて母材を接合する。

融接による溶接法は、母材を溶かす手段により、ガス溶接、アーク溶接、レーザー溶接、電子ビーム溶接に分けられます。
TIG溶接は、これらの溶接法の中のアーク溶接にあたります。

融接の種類

●ガス溶接・・・可燃性ガスを燃焼させることで発生する熱で母材を溶融する。
●アーク溶接・・・気体中の放電現象に伴って発生する熱で母材を溶融する。
●レーザー溶接・・・レーザー光を照射することで母材を溶融する。
●電子ビーム溶接・・・加速した電子を衝突させることで母材を溶融する。

非溶極式アーク溶接

アーク溶接は、母材を溶かすと共に電極を溶かし、溶加材として用いる溶極式と、消耗しない電極を用いて別に溶加材を添加する非溶極式に分けられます。

TIG溶接は、非溶極式のアーク溶接法で、融点が3380℃と金属の中で最も高融点のタングステン、もしくはタングステン合金を電極として使用します。

なお、タングステンを電極に用いる非溶極式には、プラズマ溶接という溶接法もあります。
TIG溶接と似通った方法ですが、その違いは電極をノズルとプラズマガスで包み込むことで、アークが広がらないように絞っていることです。

それにより、そのアークは電流密度が高く、熱効率や熱集中性もTIG溶接と比べて高くなります。
そのため、精度が高く、速度が早い優れた溶接法と言えるでしょう。
ただし、プラズマ溶接は、TIG溶接よりも高コストであるというデメリットがあります。

ガスシールドアーク溶接

アーク溶接では、アーク放電を安定的に維持する、酸化を防止するなどの目的から、溶接部をガスでシールドする場合があり、シールドガスを用いる方式をガスシールドアーク溶接と言います。

TIG溶接は、ガスシールドアーク溶接に分類されますが、特にシールドガスに不活性ガスを用いることからイナートガスアーク溶接と呼ばれることもあります。

TIG溶接で使用されるシールドガスは、酸素を含まないアルゴン・ヘリウム・アルゴンとヘリウムの混合ガス・アルゴンと水素の混合ガスの4種類に限られています。
その理由は、電極に用いるタングステンが高温化で酸化しやすく、千数百℃程度まで融点が低下してしまうことがあるからです。

なお、ヘリウムや水素を含んだ混合ガスは、アーク放電の発熱量の上昇による、溶け込み深さの増大や溶接速度の向上を目的として用いられます。
しかし、水素含有の混合ガスでは、水素を吸収して強度が低下する水素脆化が生じることがあるため、使用可能なのはオーステナイト系ステンレス鋼とニッケル合金に限られます。

交流TIG溶接

アルミニウムやマグネシウムをTIG溶接する場合は、アーク放電のクリーニング作用を活かすことができる交流が主に使用されています。

TIG溶接では通常、電極が陰極、母材が陽極の正極性で、直流を流して溶接を行います。
これは電子を放出する電極に比べ、電子が衝突する母材側がより加熱されることを理由とします。

一方、電極が陽極、母材が陰極の逆極性では、電子が衝突する電極が消耗すると同時に、電子を放出する母材表面の酸化物が還元され、酸化物が取り除かれるクリーニング作用が生じます。
逆極性での溶接は、電極の消耗により長時間溶接できないという欠点があるものの、酸化膜の融点が2000℃超と高く、正極性での溶接が困難なアルミニウムやマグネシウムなどでは極めて有効です。

そこで、アルミニウムやマグネシウムには、クリーニング作用を活かすと共に電極の消耗も抑制した交流TIG溶接が用いられています。

TIG溶接の原理

溶接器具

TIG溶接では、電極と母材間に高電圧を加え、高電流を流すことで起こるアーク放電によって生じる熱を利用して溶接します。

アーク放電は、電極と母材間の電位差によって不活性ガスの電離が進行し、本来絶縁体である気体が導電性を持つプラズマとなることで起こります。
プラズマは、電流路になってアーク放電を保つ役割を果たすと共に、熱を発生して母材や溶加棒を溶かします。
細いタングステン電極と母材との間に生じるアーク放電は、電極から母材に向かって拡がるベルのような形状となり、中心部で1万数千℃、外周部でも1万℃程度の高温を示します。

このアーク放電の維持には、適切な電圧と電流の供給が必要です。
その電圧と電流の関係は不活性ガスがアルゴンの場合、アークが長いほど必要な電圧は大きくなります。
ただし、TIG溶接機は一般に、溶接電流のみが設定可能で、設定された電流を出力するために電圧を自動で増減する定電流特性を備えたものが多いです。

アーク放電を維持するために必要な電圧と電流は、使用する不活性ガスによっても大きく異なります。
例えば、溶接電流を200Aとすると、ヘリウムではアルゴンの約2倍の電圧が必要です。
そのため、ヘリウムを不活性ガスに用いる場合には、溶接機の最大電圧が十分に高いものを選ぶ必要があります。

TIG溶接では、溶接電源に母材を接続し、通常はトーチの電極を陰極、母材を陽極とします。
そして、リモコンボックスやトーチの手元のスイッチで、ガスの供給や電流の入切を操作して溶接を実施します。

アーク放電が発生すると、母材と溶接する金属、および溶加棒が溶けだして溶融池を形成します。
この溶融池が凝固したものがビードとなるので、溶接の性能や品質、仕上がりの美しさは溶融池の状態によって左右されます。

TIG溶接の特徴

融接の特徴

融接の特徴
・溶接継手の強度が高い
・気密性や水密性に優れる
・溶接熱で母材の性質が変化することがある
・局所的な加熱と冷却により変形、または残留応力が生じることがある
・外観からの溶接品質の確認が困難である

圧接と比べた融接の特徴
・溶接継手の構造を簡素化できる
・厚さに制限がほとんどない

溶接継手について

溶接における2つの母材の接合部分、もしくは接合しようとしている部分を溶接継手と言います。
代表的な溶接継手には、突合せ溶接継手、重ね溶接継手、隅肉溶接継手が挙げられます。

アーク溶接の特徴

TIG溶接はアーク溶接の一つでもあることから、アーク溶接に共通した以下のような特徴があります。

アーク溶接の特徴

・アーク放電の温度が5000℃以上と高温であるため、高温で割れる金属は溶接できない
・接合する母材が導電体でないと溶接できない

ガス溶接に比べたアーク溶接の特徴

・熱集中性に優れるため、溶接精度が高い
・エネルギー密度が大きいため、高融点金属の溶接が可能で、溶接速度も早い

レーザー溶接や電子ビーム溶接と比べたアーク溶接の特徴

・熱集中性に劣るため、溶接精度が低い
・エネルギー密度が小さいため、溶け込みが浅く、溶接速度が遅い
・溶接速度が遅く、溶接範囲が広いため、歪みが発生しやすい
・溶接装置が安価

非溶極式アーク溶接の特徴

TIG溶接は、アーク溶接の中でも非溶極式の溶接法ですが、非溶極式であることから以下のような特徴を持ちます。

TIG溶接の特徴

・タングステンの融点は金属中で最も高いので、あらゆる金属の溶接が可能
・溶加材を別途加える必要がある
・電極の溶融を考慮する必要がないため、溶加材の種類や添加量、溶接電流を独立して設定できる
・溶加材の溶融に時間がかかるため、溶接速度が遅い
・長時間の作業が可能
・アーク長を一定に保ちやすい

ガスシールドアーク溶接の特徴

TIG溶接は、シールドガスを使用するアーク溶接でもあります。
そのためTIG溶接は、ガスシールドアーク溶接に共通する以下のような特徴を持ちます。

ガスシールドアーク溶接と共通する特徴

・シールドガスを別に用意する必要がある
・風の影響を受けやすいため、防風対策が必要になることがある
・大気の混入によるブローホールやピットの発生を抑制できる
・被覆材を使用する場合に生じる凝固スラグが発生しない

TIG溶接の特徴

TIG溶接は、アーク溶接の他の溶接法と比較して、以下の特徴を持ちます。

他の溶接法と比較した特徴

・鉄鋼、ステンレス、ニッケル合金、銅合金、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金など、ほとんどの金属を溶接できる
・高品質、高性能の溶接継手が得られ、ビードの外観にも優れる
・広範囲の電流域で溶接に適したアーク放電が得られる
・溶接姿勢の制約が少ない
・溶融池が安定しているため、その挙動を明瞭に観察できる
・有害な溶接ヒューム(溶融金属の蒸気)の発生が少ない
・火花が出ないため、スパッタの発生がほとんどない
・静音性に優れる
・手動溶接では、同時にトーチと溶加棒を操作しなければならず、熟練と技量が要求される
・不活性ガスやタングステンが比較的高価なため、溶接経費がやや高い

溶接姿勢について

溶接姿勢は、溶接をする際の作業者と溶接部の位置関係を指す言葉です。
溶接姿勢には、下向、立向上進、立向下進、上向、横向の5つの姿勢があります。
これらの溶接姿勢は、溶融池に作用する重力の方向を変えるため、溶接速度や溶け込み深さ、ビード形状などに影響を与えます。

TIG溶接のメリット・デメリット

TIG溶接は、初心者でも扱いやすい溶接方法であるため、個人がDIYや趣味などで溶接するときやプロが鉄工所で細かい溶接をするときなど、幅広い用途に活用されています。

メリット

①溶接する金属を選ばない

TIG溶接は、金属の中で最も融点の高いタングステンを電極としているため、炭素鋼・ステンレス鋼・低合金鋼などの鉄系金属からニッケル合金・銅合金・アルミニウム合金・チタン合金・マグネシウム合金などの非鉄系金属まで、工業用で使用されるほとんどの金属の溶接が可能です。

②耐食性や靭性に優れた溶接で強度を高める

TIG溶接は、溶接部を保護するシールドガスにより、耐食性や靭性に優れた溶接が可能なので、強度を高めることができます。

③溶接の品質が良い

不活性ガスを使用して溶接するTIG溶接は、溶けた金属(スラグ)や金属粒がパチパチ跳ねるスパッタや、金属表面の穴やくぼみ(ピット)ができにくい溶接方法です。
そのため、溶接後に溶接部のスラグ清掃やスパッタ除去の手間が必要ない美しい仕上がりが見込めます。

溶接肉も少ないので、薄板・複雑な形状の溶接など、精密な溶接も質がよくできます。

TIG溶接は、シールドガスで溶接部を保護し、空気をシャットアウトしながら溶接するため、金属表面が酸化しにくくスラグも発生せず、不純物の混入も少なくなるので、溶接部位の欠陥が起きにくくなります。
なのでTIG溶接は、RT検査・PT検査・MT検査などの検査の合格率も高く、品質の良い溶接法なのです。

④溶接部の仕上がりがキレイ

電極が溶けないため、母材の溶接部の視野がきちんと確保でき、複雑な形状でもよく見て溶接することができます。
また、溶接速度が遅いため、初心者でもゆっくり丁寧に溶接作業ができるため、溶接部が滑らかで光沢がある美しい仕上がりになります。

⑤共付け(ナメ付け)が可能

ナメ付けとも呼ばれる共付けとは、溶加棒を使用せずに母材同士を直接接合する溶接のことで、TIG溶接ならではの溶接法です。

共付けする場合、溶接部には余分な溶接肉がつかず、母材同士の馴染みも良い仕上がりになります。
ステンレスの薄板などを接合するのに適しています。

⑥火花が出ては困る環境下での溶接が可能

スラグ・火花などが出てはいけない環境下でも、火花が出ないTIG溶接法なら溶接することができます。
例えば原子力発電所や繊維工場など、火花で火災や事故などが起きやすい環境下での溶接に、TIG溶接は向いています。

⑦作業音が静か

火花を散らさず溶接できるため、他の溶接方法より作業中の騒音が極めて少なく、作業への集中力を高めるのはもちろん、周りへの迷惑も少なくなります。

デメリット

①風の影響を受けやすい

TIG溶接は、溶接部位をシールドガスで覆う必要がありますが、シールドガスは風が吹くと飛んでしまうため、屋外の溶接には向いていないといえます。
屋外でTIG溶接を行う場合は、風除けをするなどの溶接環境を養生する、アルゴン流量を増やす、大容量ガスレンズに変えるなどの対策が必要になり、コストや手間、作業時間がかさみます。

②溶接速度が遅い

TIG溶接は、溶接速度が他の溶接法より遅いため、溶接作業に時間がかかり、大量生産や短時間での溶接には向かない溶接法です。

作業効率を上げるためには、対策として電流を上げる方法しかありません。
作業効率を優先したい場合は、半自動溶接や被覆アーク溶接に変更する方が良いでしょう。

③ランニングコストがかかる

タングステンの電極は消耗が少ないので、溶接を長時間連続してできますが、シールドガスに使用する不活性ガスが高価なため、ランニングコストがかかるのがデメリットです。

シールドガスの流量を適切にすることや、シールドガスの仕入れ値を交渉するくらいで、根本的な解決は難しいです。

④作業者の熟練度で仕上がりが左右される

手作業で細かく精密な溶接を美しく仕上げるためには、技術の習得が必要になります。
ローリング・浮かし・溶加棒の送り方などの技術を身に付けなければなりません。

しかもシールドガスが高価なため、練習を重ねにくく、習得に個人差が出ることもあり、作業者の熟練度の違いで仕上がりの美観が違ってきます。

⑤保護メガネが必要

TIG溶接は、火花などは発生しませんが、強い光が発生します。
この光が直接目に入ると、角膜や網膜にダメージを与えるため、角膜炎症・白内障・網膜損傷などを招く危険性があります。
電気性眼炎などを防ぐためにも、保護メガネなどを着用する必要があります。

TIG溶接の用途

TIG溶接は、他の溶接方法では難しいとされる、ステンレスやアルミの母材を溶接するときに向いている方法です。

火花やスパッタなどがないため、クリアな視界で溶接でき、美しい仕上がりが実現できるので、什器など複雑な形状や細かい溶接、仕上がりの美観を重視する製品の溶接に適していると言えます。

しかしTIG溶接は、他の溶接方法に比べ溶接速度が遅いため、作業効率から考えると、溶接箇所があまり多くない製品に用いることがおすすめです。

つまりTIG溶接は、作業効率より美観重視の溶接方法という事になります。

他にも、ステンレスの薄物同士の接合や、溶加棒を使用しない共付け(ナメ付け)にもTIG溶接がおススメです。

TIG溶接に向いている製品例

・バイクや車の部品
・パイプ類の接合
・船の部品の接合
・小物製作
・ステンレスやアルミの材質の接合
・溶接部の美観が重要な製品の接合

こちらの記事はMitsuri Media様の記事を参照しております。

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【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
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