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試作人基礎講座

公開日: | 更新日: | 試作人基礎講座

真空浸炭焼入れの原理や適した材質とは?

本日は真空浸炭焼入れについて解説していきます!
原理や適した材質、メリット・デメリットなど解説していきますので、是非ご覧ください♪

真空浸炭焼入れとは

真空浸炭焼入れとは、減圧した炉内にメタン・プロパン・エチレン・アセチレンなどの炭化水素系のガスを直接炉内に装入して、ガスの熱分解によって生じる活性炭素を、材料の表面に浸透させる熱処理方法です。

真空浸炭焼入れを施した材料は、表面が硬くなり耐摩耗性が得られます。
また、材料の内部は硬さが低いため、高い靭性も有しています。

真空浸炭焼入れは、主に低炭素鋼に施す熱処理で、用途としては自動車部品や機械部品などで採用されています。

真空浸炭焼入れのメリット

炎の画像 焼き入れイメージ

●耐摩耗性の向上

真空浸炭焼入れは、ガス浸炭焼入れに比べて軟化層の発生がしにくく、より製品の耐摩耗性を向上させられます。
浸炭を真空炉内で処理することで、浸炭深さのバラツキが抑えられるのもポイントです。

●粒界酸化がなく、品質向上につながる

真空浸炭焼入れは、名前の通り真空状態の炉内で処理を行うため、安定して材料全体に炭素を供給できるだけでなく、材料の表層部に粒界酸化が発生しない特徴があります。

粒界酸化とは、酸素や二酸化炭素などの酸化性雰囲気中で熱処理をした際に、金属製品の表層部が酸化する現象のことで、ひびの原因となるものです。
以上のことから、真空浸炭焼入れを行った製品は、粒界酸化材料表面のトラブルが軽減され、品質の向上につながります。

●ステンレス鋼の浸炭が可能

真空浸炭焼入れは、ガス浸炭焼入れでは不可能だったステンレス鋼に対しても浸炭を行えます。

●作業効率の向上

真空浸炭焼入れは、最大1100℃程度の高温で熱処理が可能なほか、炉の立ち上がりが素早く行えます。
浸炭層の深さは処理温度と時間に比例するので、高い温度で熱処理が可能な真空浸炭焼入れは、作業時間の短縮を実現します。

●環境にやさしい

真空浸炭焼入れは、地球温暖化の原因とされるCO2などの温室効果ガスの排出が少なく、環境にやさしい特徴があります。

●優れた安全性

真空浸炭炉内は完全密封された状態で、炎や煙が発生しません。
これにより、火災や爆発のリスクがなく、安全に使用できます。

真空浸炭焼入れのデメリット

●コストが割高になる場合がある

コストアップに落ち込むイメージ

真空浸炭焼入れは、複数の製品を混載処理することが困難なため、ガス浸炭焼入れに比べるとコストが少し割高になる場合があります。

●ススが発生しやすい場合がある

真空浸炭炉内に炭化水素系ガスを供給すると、熱分解により大量のススが発生してしまいます。
そのため、炉のメンテナンスが煩雑になる場合があります。
ただし、浸炭ガスにアセチレンガスを用いて、低い圧力で供給するなどの手順により、ススの発生を抑える方法もあります。

真空浸炭焼入れの原理と工程

真空浸炭焼入れは、低炭素鋼を加熱・浸炭を行うことで炭素が材料の表面に拡散します。
そのあとに焼入れを行うと、材料表面が高炭素濃度化し、高硬度で優れた耐摩耗性が得られます。
このとき、材料の内部は低炭素濃度のままとなっており、優れた靭性も同時に得られます。

真空浸炭焼入れに適した材質

・SCM415
・SS400
・SPCC

また、真空浸炭焼入れは、難浸炭材と言われているSUS304のステンレス鋼に対しても対応が可能です。
優れた耐食性を有するSUS304に表面硬化を行うことで、あらゆる分野の製品に活用できます。

鋼の浸炭硬化層深さ

真空浸炭焼入れでの品質を決める要素に、浸炭の深さがあります。
真空浸炭焼入れの深さは、【JIS B 6905:1995 金属製品熱処理用語】にて、「有効硬化層深さ」と「全硬化層深さ」の2種類がJISにて規定されています。

有効硬化層深さ

有効硬化層深さは、「硬化層の表面から、規定する限界硬さの位置までの距離」と定義されています。

また、【JIS G 0557:2019 鋼の浸炭硬化層深さ測定方法】では、限界硬さが550HVにて設定されていることから、有効硬化層深さは一般的に「焼入れのまま、又は200℃を超えない温度で焼き戻ししたときの表面から、550HVまでの距離」を意味します。

全硬化層深さ

全硬化層深さは、「硬化層の表面から、硬化層と生地との物理的又は化学的性質の差異が区別できない位置までの距離」とJISで定義されています。
簡単に言うと、材料の表面から炭素が侵入している所までの距離を指します。

真空浸炭焼入れを行った材料は、内部に行くにつれて硬さが低い値を示します。
ただし全硬化層深さは、有効硬化層深さのように明確な硬さの基準があるわけではなく、素地と有効硬化層深さの区別がつかないところまでの距離を指しています。

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株式会社アスク

【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
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