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試作人基礎講座

公開日: | 更新日: | 試作人基礎講座

型彫放電加工とは?仕組みから特徴・活用分野まで徹底解説!

本日は型彫放電加工について、記事を書いていきたいと思います!
製造業に携わっている方であれば当たり前のことかもしれないですが、是非お付き合いください♪

必達試作人
必達試作人
型彫放電などの精密加工は大阪のアスクへ!

型彫放電加工とは

型彫放電加工(英語では「Die-sinking EDM」または「Ram EDM」)は、電気放電現象を利用して金属材料を加工する方法の一つです。
電気を流すことで発生する高温のスパーク(火花)を利用し、ワーク(加工対象の金属)を溶かして削っていく非接触加工です。
放電加工には主に「ワイヤ放電加工」と「型彫放電加工」があり、型彫放電加工はグラファイトや銅などで作られた「電極」を使用し、その形状をそのままワークに転写するように彫り込むのが特徴です。
主に金型製作に使用される加工法で、複雑な形状の内部加工や深い凹部の加工に強みがあります。

電極とワークの関係性・加工液の役割

放電の電極

型彫放電加工では、まず加工したい形状に合わせた「電極」を製作するところから始まります。
この電極は加工したい形の“型”であり、ワークと対向するようにセットされます。
加工時には、電極とワークの間に誘電体(通常は絶縁油)が満たされ、この中でパルス電圧をかけることで瞬間的な放電が発生します。
放電はマイクロ秒単位で起こり、局所的な高温(およそ8000〜12000℃)によりワークの表面が溶解・蒸発し、加工されます。
また、加工中に発生する微細な金属片(スラッジ)は加工液によって洗い流されるため、加工液は放電の制御と加工精度の両方において重要な役割を果たします。

マシニング加工やワイヤ放電加工との違い

型彫放電加工は、他の加工法と比べて独自の強みと制限を持っています。
たとえば、マシニング加工(切削加工)では、工具を高速回転させて材料を削り取りますが、この方法は比較的加工速度が速く、広範囲の素材に対応可能です。
ただし、切削工具が直接ワークに接触するため、高硬度材や複雑形状の内部加工には不向きな場合があります。
一方、ワイヤ放電加工は、細いワイヤを電極として使用し、輪郭を切り出すような加工に特化しています。
非常に高精度な直線・曲線カットが可能ですが、内部をくり抜くような立体的な加工には制限があります。

それに対して型彫放電加工は、三次元の複雑な凹形状を精密に加工できるという点で大きなアドバンテージがあります。
例えばプラスチック射出成形金型のキャビティ部や、微細な溝を持つ放熱フィン形状など、切削では困難な形状を加工する場面で活躍します。
デメリットとしては、加工速度が遅く、電極の設計・製作に手間がかかる点が挙げられます。
このように、加工目的や形状に応じて、各加工法を使い分けることが重要です。

使用される電極材料とその特徴

型彫放電加工で使用される電極には、主に銅、グラファイト(黒鉛)、銅タングステン合金などが用いられます。
銅は加工精度が高く、良好な導電性を持つため仕上げ加工に適しています。
一方で、グラファイトは加工性が良く、電極の消耗が少ないため、荒加工や大型の電極に使われることが多いです。
銅タングステン合金は、放電耐性が高く高精度な仕上げにも強いため、金型の精密加工に適しています。
選定基準は、加工対象の材質や加工形状、求められる精度などに応じて変化します。
電極の選定は型彫放電加工の品質を左右するため、非常に重要な工程です。

電極設計・放電条件・加工液管理の重要性

型彫放電加工において高い加工精度を実現するためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
まず最も基本的でありながら影響が大きいのが電極設計です。
加工時に発生する電極側の摩耗を見越して「摩耗補正」を行う必要があり、これを正確に行わなければワークの形状や寸法精度に大きな誤差が生じます。
また、電極材料の選定も精度に直結するため、用途に応じてグラファイトや銅タングステンなどを使い分けることが求められます。

次に、放電条件(パルス電流・電圧・ON/OFF時間)の最適化も重要です。
粗加工では大きな放電エネルギーで素早く加工し、仕上げ加工では微細な放電で精度と表面粗さを整える、というように使い分けが必要です。
また、加工液(絶縁油)の管理も非常に大事です。
劣化した油やスラッジが多く混入した状態では、放電が安定せず加工精度が落ちます。
加工液のフィルター清掃や温度管理も、高品質な加工には欠かせません。

さらに、加工中の電極とワークの間隔(ギャップ)も制御対象です。
ギャップが狭すぎるとショートを起こしやすく、逆に広すぎると放電が不安定になります。
NC装置による高精度制御や、AIを用いた最適化も導入が進んでおり、今後さらに精度・安定性の向上が期待されます。

型彫放電加工のメリットとデメリット

型彫放電機

型彫放電加工の最大のメリットは、超硬合金や焼き入れ鋼など、切削加工が難しい高硬度材料にも対応できる点です。
また、工具とワークが直接接触しないため、工具摩耗の影響が少なく、繊細な加工が可能です。
さらに、微細な形状や複雑な凹部も高精度で再現できるため、精密金型の製造に最適です。
一方デメリットとしては、まず電極を別途製作する必要があるため、段取りに時間がかかること、そして加工速度が遅いため大量生産には不向きな点が挙げられます。
また、電極の消耗を考慮した補正が必要になるなど、高度なノウハウが求められます。

型彫放電加工における最新の自動化技術

CAD/CAM連携・NCプログラム・AIによる放電制御の進化

近年、型彫放電加工の現場でも自動化・デジタル化の流れが急速に進んでいます。
従来は熟練の技術者による手作業や経験則に頼る部分が多かったこの分野ですが、CAD/CAMシステムとNC工作機械の連携により、電極設計から加工までのプロセスが大幅に効率化されています。
例えば、CADデータ上でワークの形状を設計し、それをもとにCAMソフトで自動的に電極設計や放電条件の初期設定を行うことで、人為的ミスを防ぎつつ加工の標準化が図られます。
さらに、放電加工特有の難しさである「放電の安定性」を克服するために、AIを活用したリアルタイム制御の導入も進んでいます。
センサーで加工中の放電状態を監視し、放電の異常を検知して条件を自動調整するシステムなども登場しています。
また、自動工具交換(ATC)や自動電極補正装置との組み合わせにより、夜間の無人運転や大量の加工ステップを連続して行うことも可能になってきました。
これにより、加工精度の向上と生産性の飛躍的な向上が両立できるようになっています。

型彫放電加工の省エネ・コスト削減の工夫

電極寿命の最適化と加工条件の見直し

型彫放電加工は、電極製作や加工時間の長さからコストがかかるというイメージがあります。
しかし、いくつかの工夫を行うことで、加工コストやエネルギー使用量の削減が可能です。
まず、電極材料の適正な選定と電極形状の工夫により、電極寿命を延ばすことができます。
例えば、グラファイト電極の設計において、ストレスが集中する部分を避けたり、放電面積のバランスを考慮した設計を行うことで、電極の摩耗を抑え、再製作の回数を減らすことが可能です。
また、加工条件の見直しも大きな効果があります。
たとえば、仕上げ加工において放電電流やON時間を適切に抑えることで、電極消耗とエネルギー使用の両方を削減できます。
最近の放電加工機は、電力効率の良い放電パルス制御や、待機中の電力消費を抑える「エコモード」なども搭載されており、トータルでの消費電力を大幅にカットできます。
さらに、加工液のリサイクルやろ過装置の導入によって、消耗品コストも抑制できます。
小さな工夫の積み重ねが、最終的な加工原価に大きな差を生むのです。

実際の加工事例と業界別活用例

型彫放電加工は、さまざまな業界で応用されていますが、なかでも自動車業界では金型加工の定番技術として確立しています。
たとえば、エンジン部品の鋳造用金型や、樹脂部品成形のキャビティ加工では、グラファイト電極を使用して深いリブやフィン形状を高精度で加工するケースが一般的です。
また、インジェクターなどの微細部品には、マイクロ放電加工によって数ミクロン単位の精度での成形も可能です。

医療分野では、チタン合金など生体適合性のある難削材を使用したインプラント部品の成形に型彫放電加工が使われます。
複雑な表面形状や細い溝を加工する際に、工具の摩耗がほとんどないこの手法は非常に有効です。
精密機器や電子部品業界では、コネクターや金属ケースのマイクロ構造の加工に利用され、ナノレベルの精度が求められる領域でもそのポテンシャルを発揮します。
さらに、最近では航空宇宙分野でも注目されており、ニッケル合金などの超耐熱材の微細加工にも導入が進んでいます。
これらの事例からも、型彫放電加工が単なる「古い加工技術」ではなく、ハイテク産業を支える先端技術であることが理解できます。

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特に手のひらサイズの部品製作を得意としています。
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お気軽にお問い合わせください。

所有設備:CNC型彫放電加工機
対応数量:単品から小ロットが得意です。
対応材質:鉄、SUS、アルミ、銅、真ちゅうなどの一般的な金属から、チタン、インコネル、など一部の難削材、樹脂などもお任せください。※詳しくはお問い合わせください

株式会社アスク

【この記事の著者】

株式会社アスク 営業部

小ロット・小物部品の製作を手掛け、手のひらサイズの部品製作を得意としています。国家検定1級技能士が多数在籍し、一日でも早く製品をお届けするためお見積りの回答は最短1時間!
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